この人・あの時 シリーズ! 活躍する2016年度国際活動奨励賞受賞者 その4 お だ しょういちろう 小田 祥一朗 富士通株式会社 ネットワークプロダクト事業本部 http://www.fujitsu.com/jp/ 光網の更なる大容量化に向けた100G級光インタフェースに関するITU-T勧告の作成・改版を、 寄書提案、 審議 への参加を通じてリードし、 長距離光網に必須となるデジタルコヒーレント伝送技術に関するG.Sup39の改版 作業に、 エディタとして継続的に貢献している。 ITU-Tにおける100G級光インタフェース標準化活動への貢献 この度は、日本ITU協会賞国際活動奨励賞という名誉あ て円滑な審議に貢献して参りました。審議の促進という観 る賞を頂き、大変光栄に存じます。日本ITU協会並びに関 点では、まだまだ不十分なところがありますので、他の日 係者の皆様に厚く御礼申し上げます。 本代表の方と協力して活動を進めて行きたいと考えており 私は、2011年11月より主に陸上光伝送システム向け光イ ます。 ンタフェース(I/F)の勧告化を行っているITU-T Study 私がエディタを務めているG.Sup39は、標準技術を理解 Group(SG)15 Working Party(WP)2 Question(Q)6 する上で必要と思われる光ファイバ通信技術をまとめたも に参加し、2012年より光ファイバ通信技術を幅広く解説す のです。その際、エディタとして困難だったのは、技術内 る文書G.Sup39のエディタを務めております。 容は追加することが合意されているものの、他の文書との Q6で最も重要な勧告作業は、100G級光I/Fの勧告文書 整合性、一貫性の観点で追加文書として不十分な場合に、 作成です。その審議は、私がITU-Tでの標準化活動に携 提案者に対して修正改善を求めても、その趣旨をなかなか わり始めた2012年頃から開始されており、現在に至るまで 理解してもらえなかった時です。Q6のラポータや豊富な 文書作成が継続されています。100G級光通信システムで 標準化活動経験を持つ英語のネイティブスピーカ等に助言 は、現行の標準技術である10G級光通信システムと全く異 を仰ぎながら提案者に趣旨を説明し、共に修正文書を作成 なる伝送技術(デジタルコヒーレント伝送技術)が採用さ することで問題の解決を図りました。最終的には、2016年 れているため、I/Fを規定する物理パラメータの定義から 2月に文書の改訂を行うことができました。 新規に作成する必要があります。この物理パラメータの寄 動画ストリーミングサービス、クラウドサービスの拡大 書提案には通常、実測データが添付されるのですが、新 といったインターネットトラフィックの増加、Internet of 技術であるが故、測定系、測定条件、結果の妥当性の検 Things(IoT) , Machine to Machine(M2M)といった新 証が困難であり、 合意形成に時間がかかっている状況です。 しい通信需要の拡大に伴い、そのバックボーンを支える陸 デジタルコヒーレント伝送技術が日本発であるということ 上光通信システムの発展は今後も高く求められます。この もあり、上記の問題に対する日本への期待は高いものがあ ような背景の下、私が携わっている陸上大容量光I/Fの標 ります。私はデジタルコヒーレント光伝送システムの研究 準化は今後も重要度が増してくるものと考えられ、日本代 開発に携わった知見を活かし、例えば、評価測定系の不 表という立場で、世界の光通信インフラの発展、普及に貢 備を指摘し改善点を提案する、といったアクションを通し 献できるよう精力的に活動を続けていく所存です。 ITUジャーナル Vol. 46 No. 11(2016, 11) 65 この人・あの時 カーン アシック 株式会社NTTドコモ 先進技術研究所 情報通信クラウド研究グループ 研究主任 https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/technology/rd/ 早くからネットワーク仮想化技術に着目し、 その技術開発、 標準化に貢献、 ETSI ISG NFVでは多数の寄書を 提案し、中核的標準規格へ反映、 更に標準準拠のオープンソース開発(OPNFV)を主導し産業化を推進する など、 多岐にわたる寄与を行った。 ネットワーク仮想化技術のテレコムへの適応とその標準化 この度は、日本ITU協会賞 国際活動奨励賞なる栄誉あ 対応できるような柔軟性のあるネットワーク基盤技術とそ る賞をいただき、誠に光栄に存じます。日本ITU協会並び のオペレーションの自動化が必要です。仮想マシン(VM: に関係者の皆様に深く御礼申し上げます。 Virtual Machine)によってテレコムノードを実現すると、 私は2007年からネットワーク仮想化という柔軟なネット VMはオンデマンドで立ち上げることが可能であることか ワーク基盤設計とオペレーション技術の研究に携わってお ら、必要に応じて必要な場所にテレコムノードを立ち上げ り、2013年から ETSI Industry Specification Group Network ることが可能になります。Software Defined Networking Functions Virtualisation(ETSI ISG NFV、以下ETSI (SDN)のようなオンデマンドな経路設定技術と組み合わ NFV)にてその標準化業務を担ってきました。NFVはテ せることにより、オンデマンドで任意のネットワークトポ レコムネットワークの仮想化とそのオペレーションの仕様 ロジの実現が可能となります。ETSI NFVは仮想ノードと を策定する団体で、短期間でスピーディに結果を出すため 仮想経路の活用手法とその自動オペレーション手法をマル に時限の組織であるISGとしてETSI配下に2012年11月に設 チベンダ環境で実現できる標準仕様を世界で初めて提供 立されました。 しています。 ETSI NFVはわずか1年で300人超のコミュニティとして ETSI NFVの仕様の汎用なリファレンス実装のため、 成長しました。最初の2年間はユースケースの定義、要求 2014年10月にOpen Platform for NFV(OPNFV)という 条件の抽出、アーキテクチャ設計を行い、次の2年にオペ オープンソースコミュニティを世界中のオペレータとベン レーションアーキテクチャいわゆるManagement and ダと協力しLinux Foundation配下に立ち上げました。オー Orchestration(MANO)機構の詳細な標準仕様を決めて プンソースコミュニティはソフトウェア開発のスピードが います。MANOのプロトコル仕様、いわゆるStage 3相当 非常に速く、 OPNFVではおよそ半年に一度、 既に2回リリー の仕様の議論も始まっており、今後の2年ではネットワー スしています。 ク仮想化に関する実装手法のグローバル標準が定まること 標準仕様のオープンソース開発は珍しい試みであり、そ になります。ETSI NFVは今まで20種にも及ぶ標準化ド の経験からStage 3の標準化に必要な知見を大いに得てい キュメント(Group Specification)を公開しており、私は ます。今までの商用開発経験と合わせ、柔軟性の高い、 400件超の寄書を入力しています。 汎用仮想ネットワーク基盤のグローバルスタンダードを決 音声やデータ通信の枠組みを超え、映像、Machine-to- めていきたいと思っております。今回の受賞を励みに、今 Machine(M2M)などのサービスの出現によってテレコ 後も精進を重ね、世界の皆様に喜んでいただける技術の ムネットワークが今多様化しています。また、自然災害時 実現に向け、国際標準化活動に取り組んで参りたいと思い のようなトラフィック変動の激しい状況も生じています。 ます。今後ともご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申 多彩なサービスの要求条件、トラフィック負荷、災害等に し上げます。 66 ITUジャーナル Vol. 46 No. 11(2016, 11)
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