技 術 資 料 平成 28 年 11 月1日 香川県農業試験場病害虫防除所 ハスモンヨトウの薬剤感受性検定について 県内で採集したハスモンヨトウの卵塊を3齢幼虫まで飼育して、ジアミド系の薬剤等について薬剤 感受性検定を行った。その結果、ジアミド系のプレバソンフロアブル5やフェニックス顆粒水和剤の 感受性の低下は認められなかった。 1.目的 これまでハスモンヨトウに効果の高かったプレバソンフロアブル5、フェニックス顆粒水和剤につ いて効果の劣る事例があり、感受性の低下が懸念された。そのため、これらの剤を中心に薬剤感受性 検定を行い、感受性の低下の有無を調査した。 2.調査方法 1)採集時期:平成 28 年9月 16 日~10 月 11 日 2)供試虫: サトイモなどの圃場から卵塊を採集し、3齢幼虫まで飼育して供試した。同じ卵塊からふ化 した幼虫を1個体群とした。採集場所は高松市(2か所) 、綾川町、まんのう町、三豊市及び 観音寺市(4か所)の計5市町で9個体群を供試した。 3)供試薬剤:下表のとおり 表 1 供試薬剤及び希釈倍数 薬剤名 系統名 IRAC コード 希釈倍数 プレバソンフロアブル5 ジアミド系 28 2,000 倍 フェニックス顆粒水和剤 ジアミド系 28 2,000 倍 マクロライド系 6 2,000 倍 スピノシン系 5 2,500 倍 その他 13 2,000 倍 アファーム乳剤 ディアナSC コテツフロアブル IRAC コード:IRAC(殺虫剤抵抗性対策委員会)による農薬有効成分の作用機構の分類。 4)処理及び調査方法: ダイズ葉を使用した食餌浸漬法で行った。展着剤アグラ-5,000 倍を添加した薬剤浸漬した 葉を3日間与え、処理3日後の生存虫数と死亡虫数を計数して補正死虫率を算出した。 5)供試虫数:1薬剤、1個体群当たり7頭を供試して3反復で行った。 3.結果の概要 1)プレバソンフロアブル5、フェニックス顆粒水和剤の補正死虫率はほぼ 100%と高く、感受性の 低下は認められなかった。 2)アファーム乳剤は補正死虫率が 66.7%とやや感受性の低い個体群があったが、他の個体群の補正 死虫率は高かった。 3)ディアナSC、コテツフロアブルの補正死虫率は 100%と高かった。 4.防除実施上の留意点 1)幼虫集団が食害した後は、表皮だけを残した白変葉となるか、葉脈だけを残した状態となってい るので、圃場内でこれらの葉を多く見つけたら、直ちに薬剤防除を行う。 2)圃場内及び圃場周辺の雑草は増殖源になるので、除草に努める。 3)育苗床では防虫ネットで被覆するとともに、ハウス栽培の場合は開口部を防虫ネット(4mm 目合 以下)で被覆する。 4)開花遅延等の悪影響を生じない作物では、黄色蛍光灯を設置する。 5)薬剤の効果が高いのは体長1㎝程度までの幼虫であるので、早期発見に努める。 6)連続した世代に同一の作用機構(IRAC コード)を持つ薬剤を連用しない。 7)作物によって、登録のある薬剤が異なるので、使用にあたってはラベルをよく読んで、登録の有 無や収穫前日数、使用回数等の使用基準を遵守する。 第2表 ハスモンヨトウ3齢幼虫の薬剤感受性検定結果 (処理3日後の補正死虫率%) プレバソン フロアブル5 フェニックス 顆粒水和剤 アファーム 乳剤 ディアナ SC コテツ フロアブル 2,000倍 2,000倍 2,000倍 2,500倍 2,000倍 高松市① (モモ) 100% 100% 95.2% - 100% 0% 高松市② (キウイフルーツ) 100% 95.2% 85.7% 100% 100% 0% 綾歌郡綾川町 (レタス) 100% 100% 95.2% 100% 100% 0% 仲多度郡まんのう町 (ブロッコリー) 100% 100% 95.2% 100% 100% 0% 三豊市 (サトイモ) 100% 100% 95.5% 100% 100% 0% 観音寺市① (サトイモ) 100% 100% 90.0% - 100% 0% 観音寺市② (サトイモ) 100% 100% 100% 100% 100% 0% 観音寺市③ (サトイモ) 100% 100% 66.7% - 100% 4.8% 観音寺市④ (ブロッコリー) 100% 100% 100% - 100% 0% 採集地点 (採集作物) 病害虫防除所インターネットホームページ URL: http://www.jppn.ne.jp/kagawa/ 水 (死虫率)
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