べにふうき緑茶のメチル化カテキン測定方法手順書

べにふうき緑茶のメチル化カテキン測定方法手順書
1.適用範囲
この手順書は、べにふうき緑茶の茶葉及び粉末に適用する。
2.測定方法の概要
試料を 2 %リン酸:エタノール(1:1)溶液で抽出し、0.2 %リン酸水溶液(溶離液 A)
とメタノール:アセトニトリル(18:5)溶液(溶離液 B)を移動相とする高速液体クロ
マトグラフ法により、標準品を用いてメチル化カテキン(エピガロカテキン-3-O-(3”-Oメチル)ガレート(以下 EGCG3"Me という。)を定量する。
3.注意事項
(a) 試薬の取扱方法
① リン酸は皮膚、目、呼吸器等を冒すので、使用する際は保護手袋、保護メガネ等を
着用する。
② アセトニトリルは引火性があり、蒸気の吸引は嘔吐等を起こす。また、皮膚、眼等
を刺激し炎症を引き起こすことがある。取り扱う際は、局所排気装置等を使用し、
マスク、ゴーグル等を使用する。
③ メタノールは引火性があり、蒸気の吸引は頭痛、めまい、嘔吐等を起こす。また、
眼、鼻、のどの粘膜への繰り返し接触は炎症を引き起こす。取り扱う際は、局所
排気装置等を使用し、マスク、ゴーグル等を使用する。
④ エタノールは引火性があるので、火気に注意する。
⑤ メタノール、アセトニトリルは水生生物に有害であるため、そのまま排水に捨てず、
回収し適切に処理する。
4.器具及び装置
試験に用いる器具及び装置は、次のとおりとする。
4.1
試験に用いる器具
(a) 全量ピペット:JIS R 3505 に規定する呼び容量 5 mL のもので、体積の許容誤差
の区分がクラス A のもの又はこれと同等のもの。
(b) メスピペット:JIS R 3505 に規定する呼び容量 5 mL のもので、体積の許容誤差
の区分がクラス A のもの又はこれと同等のもの。
(c) パスツールピペット:長さが 15 cm 程度のもの。
(d)
ピペット吸引器具: 前述の全量ピペット、メスピペット及びパスツールピペット
に接続可能なもの。
(e)
全量フラスコ:JIS R 3505 に規定する呼び容量 25 mL 及び 50 mL のもので、体積
の許容誤差の区分がクラス A のもの又はこれと同等のもの。
(f) メスシリンダー:JIS R 3505 に規定する呼び容量 20 mL、100 mL、200 mL、250 mL
及び 1 L のもので、体積の許容誤差の区分がクラス A のもの又はこれと同等のもの。
(g) ねじ口瓶:容量 100 mL、500 mL 及び 1 L のもの。または同等の保存容器。
(h) 薬包紙:パラピン製のもの。
(i) 薬さじ
(j) 電子微量天びん用秤量容器
(k) 温度計:30 ℃を測定範囲に含むもの。
(l) タイマー:抽出時間(60 分間)を計測することができるもの。
(m) ビーカー:水を分取するための容器。または同等の容器。
(n) ろ紙:JIS P 3801 に規定する定性分析用 2 種で、折って漏斗に入れた時、濾紙の
上部が上端から約 1 cm 下になる大きさのもの。
(o) 漏斗:ガラス製で、脚は廃液瓶及びチューブに入る太さで、本体は上記のろ紙を
入れるのに適した大きさのもの。
(p) 漏斗台:上記の漏斗を置くのに適した大きさのもの。
(q) チューブ:ガラス製、ポリプロピレン又はエタノールに耐性のある樹脂製で、容
量 15mL のもの。
(r) メンブランフィルター:フィルター材質が親水性 PTFE で、孔径が 0.45 μm でシ
リンジが装着可能なもの。(例:ADVANTEC 製
DISMIC13-HP 。型番 13HP045AN)
(s) ディスポーザブルシリンジ:ポリプロピレン又はエタノールに耐性のある樹脂製
で、上記メンブランフィルターが装着可能で容量 5 mL のもの。
(t) マイクロチューブ:ポリプロピレン又はエタノールに耐性のある樹脂製で、容量
2mL のもの。
(u) ピストン式ピペット:JIS K 0970 又は ISO 8655-2:2002 に規定される性能を満たすもの
で容量が 200 µL 及び 1000 µL のもの。
(v) ピペットチップ:上記に対応するもの。
(w) 褐色不活性処理済バイアル:使用する HPLC に適合したもので、褐色ガラス製
で容量が 2 mL のもの。
(x) バイアルの蓋:PTFE 製又は PTFE でコーティングされたセプタム付きで、上記
バイアルに対応するもの。
(y) 廃液容器
4.2
試験に用いる装置
(a) 高速液体クロマトグラフ(HPLC):JIS K 0124 に規定するもので、2 液混合グラ
ジエントが可能な送液ポンプ、オンライン脱気装置、カラムオーブン、UV 検出器(若
しくは PDA 検出器)、データ処理システムを備えたもの。
(b) 高速液体クロマトグラフ用カラム:C18 逆相カラム(内径 4.6 mm× 長さ 150 mm、
粒子径 5 μm)
(c) ガードカラム:使用する場合は上記に対応するもの。
(d) 電子天びん:最小表示桁数が 0.1 mg のものでひょう量(正しく測定できる最大
-1-
許容質量)が 200 g より大きいもの又はこれと同等以上のもの。
(e) 電子微量天びん:最小表示桁数が 0.001 mg のもの。
(f) 恒温水槽:30 ℃程度の温度に調節できるもの。
(g) 試験管ミキサー:同等の機能を有するものでも可。
(h) 超音波洗浄機:ねじ口瓶が入る大きさのもの。
(i) ミル:茶葉を粉砕できるもの(例:大阪ケミカル製 LM-2)。
5.水及び試薬
試験に用いる水及び試薬は次のとおりとする。
(a) エピガロカテキン-3-O-(3”-O-メチル)ガレート:純度 99 %以上(HPLC)の
もの。
(b) 水:JIS K 0557 に規定する A3 以上の品質を有するもの。
(c) リン酸:JIS K 9005 に規定する濃度 85 %で、特級又は同等以上の品質のもの。
(d) エタノール:JIS K 8101 に規定する濃度 99.5 %で、特級又は同等以上の品質のも
の。
(e) メタノール:高速液体クロマトグラフ用。
(f) アセトニトリル:高速液体クロマトグラフ用。
(g) L(+)-アスコルビン酸:JIS K 9502 に規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(h) エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物(EDTA2Na):JIS K 8107 に
規定する特級又は同等以上の品質のもの。
(i) やぶきた(品種)緑茶:茶葉あるいは粉末茶。マトリックスマッチング標準溶液
調製用。
6.試薬の調製
溶媒の混合比は全て体積比(v/v)とする。
6.1
抽出溶媒(2 %リン酸水溶液:エタノール= 1:1)
(a) 250 mL メスシリンダーに水を 245 mL 量り取り、500 mL ねじ口瓶に移す。更に、5
mL 全量ピペットでリン酸を 5 mL 量り取り、水を入れた 500 mL ねじ口瓶に加える。
(b)別の 250 mL メスシリンダーにエタノールを 250 mL 量り取り、(a)のねじ口瓶に
移す。
(c)(b)のねじ口瓶に蓋をして、転倒混和により均一な溶液にする。
6.2
溶離液 A(0.2 %リン酸水溶液)
(a)1 L メスシリンダーで水を 1 L 量り取り、1 L ねじ口瓶に移す。
(b)5 mL メスピペットにリン酸を 2.35 mL 量り取り、(a)のねじ口瓶に移す。
(c)(b)のねじ口瓶に蓋をして、転倒混和により均一な溶液にする。
(d)
(c)のねじ口瓶の蓋を開け、水を入れた超音波洗浄機に浸けて超音波を発生させ、5
分間脱気する。
-2-
(e)脱気後、ねじ口瓶を超音波洗浄機から取り出し、瓶の蓋を閉める。
溶離液 B(メタノール:アセトニトリル=18:5)
6.3
(a)1 L メスシリンダーにメタノールを 720 mL 量り取り、1 L ねじ口瓶に移す。
(b)200 mL メスシリンダーにアセトニトリルを 200 mL 量り取り、(a)のねじ口瓶に
移す。
(c)(b)のねじ口瓶に蓋をして、転倒混和により均一な溶液にする。
(d)
(c)のねじ口瓶の蓋を開け、水を入れた超音波洗浄機に浸けて超音波を発生させ、3
分間脱気する。
(e)脱気後、ねじ口瓶を超音波洗浄機から取り出し、瓶の蓋を閉める。
6.4
マトリックスマッチング標準溶液
6.4.1
( 1)
の調製
希釈用溶媒(1000 μg/mL(1000 ppm)EDTA含有10 mmol/Lアスコルビン酸水溶液)
(a)電子天びんの上に薬包紙を置き、風袋引きした後、薬さじでアスコルビン酸 176 mg
を量り取り、採取した試薬を 100 mL ねじ口瓶に移す。
(b)電子天びんの上に別の薬包紙を置き、風袋引きした後、薬さじで EDTA2Na 100 mg
を量り取り、採取した試薬を(a)のねじ口瓶に移す。
(c)水 100 mL を 100 mL メスシリンダーに採り、(b)のねじ口瓶に入れた後、よく混
ぜて EDTA2Na 及びアスコルビン酸を溶解する
( 2)
。
(1)やぶきた緑茶を試料と同様に抽出し、EGCG3"Meが検出限界以下であることを確認した溶液(ブラ
ンク抽出液)を試験溶液と同じ希釈倍率となるように添加した標準溶液。
(2)EDTA2Naが溶けにくい場合、水を入れた超音波洗浄機に全量フラスコを浸けて超音波を発生させ、
溶解する。
6.4.2
EGCG3"Me標準原液の調製
(a) 電子微量天びんの上に電子微量天びん用秤量容器を置き、風袋引きした後、薬さ
じで EGCG3"Me 5mg を量り取り、0.001 mg の桁まで秤量し、その値を記録する。
(b)採取した試薬を 50mL 全量フラスコに移したのち、電子微量天秤用秤量容器を電
子微量天びんの上に置き、0.001 mg の桁まで秤量し、その値を記録する。(a)で秤量
した値から、その値を引いたものを秤量した試薬の質量とする。
(c)希釈用溶媒を(b)の 50 mL 全量フラスコに入れ定容した後、よく混ぜて EGCG3"Me
3
を溶解する ( )。
(d)(c)で調製した溶液を褐色不活性処理済バイアルに 1mL ずつ小分けし、- 30
以下で保存する
℃
( 4)
。
5
(e)使用前に冷凍庫から取り出し、室温で 60 分間静置して融解し、よく混和する( )。
(3)EGCG3"Meが溶けにくい場合、水を入れた超音波洗浄機に全量フラスコを浸けて超音波を発生させ、溶
解する。
(4)調製後、少なくとも60日間、分解することなく安定していることが確認された。
-3-
(5)一度融解した溶液は、再凍結しないこと。
6.4.3
ブランク抽出液の調製
(a)やぶきた(品種)緑茶
(b)7.4 により、標準溶液
界以下
(9 )
( 6)
( 8)
を 7.1 ~ 7.3(e)により、抽出する
(7)
。
を用いて、(a)の抽出液を測定し、EGCG3"Me が検出限
であることを確認する。
(c)(a)の抽出液を褐色不活性処理済バイアルに 1mL ずつ小分けし、- 30
保存する
℃以下で
(10)
。
(d)使用前に冷凍庫から取り出し、室温で 60 分間静置して融解し、よく混和する(
11)
。
(6)茶葉の場合、約5gをミルで粉砕する。
(7)やぶきた(品種)緑茶と類似の組成になるようにカテキン試薬等を調製して用いてもよい。ただし、
試薬にEGCG3"Meが含まれることもあるので、6.4.3(b)により、EGCG3"Meが検出限界以下であるこ
とを確認すること。
(8)EGCG3"Me標準原液を希釈して、 1 μg/mL標準液を調製する。具体的には、EGCG3"Me標準原液を200
µLピストン式ピペットで100 μL採り、マイクロチューブ等の容器に入れ、次に希釈用溶媒を1000 µLピ
ストン式ピペットで900 μL採り、マイクロチューブ等の容器に入れる。蓋を閉め、ボルテックスミキ
サーでよく攪拌したのち、200 µLピストン式ピペットで100 μL採り、褐色不活性処理済バイアルに入れ
る。次に希釈用溶媒を1000 µLピストン式ピペットで900 μL採り、バイアルに入れ、蓋を閉め、ボルテ
ックスミキサーでよく攪拌し、調製する。
(9)JIS K0124:2011を参照し、シグナルSとノイズNの比、S/Nの値が3のときの目的成分の濃度を検出限
界とする。
(10)調製後、少なくとも100日間、安定していることが確認された。
(11)一度融解した溶液は、再凍結しないこと。
6.4.4
検量線用標準溶液(1,5,10,25及び50 μg/mL)の調製
6.4.4.1
50 μg/mL(50 ppm)標準液
(a)EGCG3"Me 標準原液(100 μg/mL EGCG3"Me 標準液)及びブランク抽出液を冷凍
庫から取り出し、室温で 60 分間静置して融解する。
(b)融解後、よく混和し、EGCG3"Me 標準原液を 1000 µL ピストン式ピペットで 500 μL
採り (
12)
、褐色不活性処理済バイアルに入れ、次に希釈用溶媒を 1000 µL ピストン式
ピペットで 400 μL 採り、バイアルに入れる。
(c)さらにブランク抽出液を 200 µL ピストン式ピペットで 100 μL 採り、バイアルに
入れる。蓋を閉め、ボルテックスミキサーでよく攪拌する。
6.4.4.2
25 μg/mL(25 ppm)標準液
(a)EGCG3"Me 標準原液及びブランク抽出液を冷凍庫から取り出し、室温で 60 分間
静置して融解する。
(b)融解後、よく混和し、EGCG3"Me 標準原液を 1000 µL ピストン式ピペットで 250 μL
採り (
12)
、褐色不活性処理済バイアルに入れ、次に希釈用溶媒を 1000 µL ピストン式
-4-
ピペットで 650 μL 採り、バイアルに入れる。
(c)さらにブランク抽出液を 200 µL ピストン式ピペットで 100 μL 採り、バイアルに
入れる。蓋を閉め、ボルテックスミキサーでよく攪拌する。
6.4.4.3
10 μg/mL(10 ppm)標準液(検量線用)
(a)EGCG3"Me 標準原液及びブランク抽出液を冷凍庫から取り出し、室温で 60 分間
静置して融解する。
(b)融解後、よく混和し、EGCG3"Me 標準原液を 200 µL ピストン式ピペットで 100 μL
採り
(12)
、褐色不活性処理済バイアルに入れ、次に希釈用溶媒を 1000 µL ピストン式
ピペットで 800 μL 採り、バイアルに入れる。
(c)さらに配付したブランク抽出液を 200 µL ピストン式ピペットで 100 μL 採り、バ
イアルに入れる。蓋を閉め、ボルテックスミキサーでよく攪拌する。
6.4.4.4
10 μg/mL(10 ppm)標準液(希釈用)
(a)EGCG3"Me 標準原液を冷凍庫から取り出し、室温で 60 分間静置して融解する。
(b)融解後、よく混和し、EGCG3"Me 標準原液を 200 µL ピストン式ピペットで 100 μL
採り
(12)
、マイクロチューブ等の容器に入れ、次に希釈用溶媒を 1000 µL ピストン式
ピペットで 900 μL 採り、マイクロチューブ等の容器に入れる。蓋を閉め、ボルテッ
クスミキサーでよく攪拌する。
6.4.4.5
5 μg/mL(5 ppm)標準液
(a)6.4.4.4 の 10 μg/mL EGCG3"Me 標準液(希釈用)を 1000 µL ピストン式ピペットで
500 μL 採り、褐色不活性処理済バイアルに入れ、次に希釈用溶媒を 1000 µL ピスト
ン式ピペットで 400 μL 採り、バイアルに入れる。
(b)さらにブランク抽出液を 200 µL ピストン式ピペットで 100 μL 採り、バイアルに
入れる。蓋を閉め、ボルテックスミキサーでよく攪拌する。
6.4.4.6
1 μg/mL(1 ppm)標準液
(a)6.4.4.4 の 10 μg/mL EGCG3"Me 標準液(希釈用)を 200 µL ピストン式ピペットで 100
μL 採り、褐色不活性処理済バイアルに入れ、次に希釈用溶媒を 1000 µL ピストン式
ピペットで 800 μL 採り、バイアルに入れる。
(b)さらにブランク抽出液を 200 µL ピストン式ピペットで 100 μL 採り、バイアルに
入れる。蓋を閉め、ボルテックスミキサーでよく攪拌する。
ブランク抽出液を添加しない標準溶液では、一部の高速液体クロマトグラフ分析装
置において、EGCG3"Me のレスポンスの減少が確認された。一般的に、カテキン類
は、金属に対して配位性を有し、金属の不純物を多く含むカラムや高速液体クロマト
グラフ分析装置の金属製の接液部に吸着等の相互作用を起こしたことが一因と考えら
れた。そこで、ブランク抽出液を添加したマトリックスマッチング標準溶液を用いる
ことにより、EGCG3"Me のレスポンスの減少を抑えられることを確認した。
-5-
(12)バイアルにピペットチップが入らない場合、パスツールピペットにより原液をマイクロチュー
ブ等の容器に移した後、以下の操作を行う。
7.測定手順
7.1
試料の秤量
(a)試料の入った袋を冷凍庫から取り出し、60 分間室温で静置する。
(b)茶試料を分取する薬包紙、薬さじ及び 25 mL 全量フラスコを用意する。
(c)薬包紙を電子天びんの上に置き、風袋引きをする。
(d)袋を開封し、中の試料を薬さじでよくかき混ぜる。
(e)薬さじで試料を 250 mg(240 mg 以上 260 mg 以下の範囲で量り取る)薬包紙に量
り取る。
(f)
(e)の薬包紙を電子天秤から降ろし、25 mL 全量フラスコを電子天秤の上に置き、
風袋引きをする。
(g)(e)で採取した試料を(f)の全量フラスコに移し
(13)
、0.1 mg の桁まで秤量し、
その値を記録する。すべての試料の採取が終わるまで(c)から(g)の操作を繰り返
す。
(13) 移すのが困難な場合や全量フラスコ入口の摺り合わせ部分に試料が付着する場合,漏斗を用い
てもよい。
7.2
抽出溶媒(2 %リン酸水溶液:エタノール=1:1)の添加
(a)抽出溶媒を分取する 20 mL メスシリンダーを用意する。
(b)20 mL メスシリンダーに抽出溶媒 20 mL を量り取る。
(c)7.1 で試料を採取した全量フラスコに(b)の抽出溶媒を加える
(14)
。
(d)(c)の全量フラスコの共栓をして、試験管ミキサーで軽く攪拌する。
(e)抽出溶媒をすべての全量フラスコに入れ終わるまで、(b)から(d)の操作を繰
り返す。
(14) 抽出溶媒は分注器で全量フラスコに加えても構わない。
7.3
抽出
(a)恒温水槽の電源を入れ、温度を 30 ℃に設定する。
(b)水温が 30 ℃になっていることを確認してから、7.2 の全量フラスコを恒温水槽に
入れ、60 分間静置する。
(c)抽出終了後、恒温水槽から(b)の全量フラスコを取り出し、室温になるまで静置
する。ビーカーに水を取り、これをパスツールピペットにより(b)の全量フラスコ
に加えて 25 mL に定容し、共栓をして転倒混和により均一な溶液にした後、室温で 5
分間静置する。
(d)(c)の全量フラスコに入っている溶液をろ紙でろ過する。ろ紙を入れた漏斗を漏
斗台に置き、漏斗の脚を廃液容器に入れる。漏斗に(c)の全量フラスコに入ってい
る溶液を注ぎ、最初の 2 mL を廃液容器に回収した後、廃液容器をチューブに置き換
-6-
え、次いで流出する 10 mL をチューブに回収する。
(e)(d)で得られた流出液の 2.5 mL をメンブランフィルターを装着した 5 mL ディス
ポーザブルシリンジに移し、ろ過する。最初の流出液約 1 mL は廃液容器に捨てて、
次いで流出する 1.5 mL をマイクロチューブに採取する
(15)
。
(f)ピストン式ピペットで(e)のろ液を 200 µL ピストン式ピペットで 100 μL 採取し、
褐色不活性処理済バイアルに移す。
(g)ピストン式ピペットで水を 1000 µL ピストン式ピペットで 900
μL 採取し、(f)
の褐色不活性処理済バイアルに移し、蓋を閉め、ボルテックスミキサーでよく攪拌す
る。
(h) 測定まで冷蔵庫(4 ℃)で保存する。
(15) 実験のスケジュール等で、抽出した日にHPLC分析を行うことができない場合は、流出液を採取
したマイクロチューブを冷凍庫(-20 ℃以下)で保存する。冷凍保存は1週間以内とする。HPLC分析
を行う際は、冷凍庫から取り出し、60分間室温で静置した後、(f)以降の操作を行う。
7.4
高速液体クロマトグラフ分析装置(HPLC)による分析
(a) 測定条件の設定
HPLC の取扱説明書に従い、測定条件を設定し、測定条件で作動したとき、ベースラ
インの変動が測定に支障がないことを確認する。
※測定条件
① カラム:4で指定したもの。カラムはシステムの圧力が 200 bar(20 MPa)を越え
ないものを使用する。
② ガードカラム:4で指定したもの。カラムはシステムの圧力が 200 bar(20 MPa)
を越えないものを使用する。
③ カラム温度:40 ℃
④ 移動相:6.2 で調製した溶離液 A 及び 6.3 で調製した溶離液 B
⑤ 流速:1.0 mL/min
⑥ 注入量:10 µL
(16)
⑦ 検出波長:272 nm
⑧ 分析時間:30 分
⑨ 溶出条件(例)
time(min)
A(%)
B(%)
0
77
23
12
77
23
12.01
30
70
20
30
70
20.01
77
23
ピークが溶出した後、勾配をかけ、有機溶媒の比率を高くすることにより、迅速に残
りの成分を溶出する。勾配をかけ始めるまでの時間(12 分)は適宜変更可とする。但
-7-
し、勾配をかけ始めるまでに EGCG3"Me のピークが出現し、他のピークと十分に分離
できることを条件とする。
⑩ サンプルクーラー温度:4 ℃(搭載する場合のみ)
(16) 試料導入部にオートインジェクターを用いる場合は、メーカー推奨の条件で注入する。
マニュアルインジェクターを用いる場合は、以下のとおりとする。
(a) サンプルループを完全に試料で満たす方法の場合
注入量と同量のサンプルループを使用する。
(b) サンプルループを部分的に試料で満たす方法の場合
マイクロシリンジには、最小目盛が0.1 μLで、容量が10 μLのものを使用する。
(測定条件例)
HPLC
HPLCカラム
メーカー
型式
メーカー
型式
1
アジレント・テクノロジー
Agilent 1100
和光純薬
Wakopak Navi C18-5
2
日本分光
LC-1500
インタクト
Cadenza 5CD-C18
3
日本分光
LC-2000-H
アジレント・テクノロジー
ZORBAX Eclipse XDB-C18 アナリティカル
4
島津製作所
LC-10AT
インタクト
Cadenza 5CD-C18
5
島津製作所
LC-10ADvp
和光純薬
Wakopak Navi C18-5
6
島津製作所
LC-20AB
アジレント・テクノロジー
ZORBAX Eclipse XDB-C18 アナリティカル
7
島津製作所
LC-20AD
アジレント・テクノロジー
ZORBAX Eclipse XDB-C18 アナリティカル
8
島津製作所
LC-20AD
東ソー
TSKgel ODS-80Ts
9
ウォーターズ
2795
和光純薬
Wakopak Navi C18-5
(b) HPLC の性能確認
① 設定した測定条件で作動させたとき、ベースラインの変動が測定に支障がないこと
及び② EGCG3"Me のピークに他のピークが重なっていないことを確認する。図 1 に標
準液のクロマトグラムを示す。
図1
標準液のクロマトグラム
(c) 測定
マトリックスマッチング標準溶液(1,5,10,25,50 µg/mL)及び試料溶液の順番で HPLC
により測定する。試料溶液について、マトリックスマッチング標準溶液の EGCG3"Me
の保持時間と一致したピークを、EGCG3"Me と同定する。また、分析ランの管理と
-8-
して、試料 5 点ごとに標準液(10 µg/mL)を 1 回測定し、EGCG3"Me のピーク面積の
最小値及び最大値が平均値(最小値と最大値の和を 2 で除したもの)の 90 ~ 110%で
あることを確認する。ピーク面積の最小値及び最大値が平均値の 90 ~ 110%の範囲内
に入らない場合は、再測定を行う。
(d) 検量線の作成
(c)で測定したマトリックスマッチング標準溶液について、EGCG3"Me の濃度を x
軸に、検出ピーク面積
( 17)
を y 軸にして検量線を作成する。作成した検量線は、相
関係数 r が 0.9950 以上であった場合に採用する。相関係数が 0.9950 を下回った場合
は、再測定を行う。
(17) ピークの裾を拡大して、JIS K0124:2011を参照し、以下のとおりピークの切り方を確認する。
(a) 標準液
自動で積分すると濃度によってピークの切り方が異なる場合があるので注意する。異なる場合はマ
ニュアル積分等でベースラインの引き方を修正する。
(b) 試料
マニュアル積分等で(a)のベースラインと同じ引き方にする。
8.計算
(c)において、EGCG3"Me と同定したピークについて、(d)で作成した検量線により
ピーク面積(
17)
から試料溶液に含まれる EGCG3"Me の濃度を算出し、試料中の EGCG3"Me
の添加量を次式により計算する。EGCG3"Me の添加量は小数第 3 位を四捨五入し、小数
第 2 位まで求める
(18)
。
含有量(%) =
c v d
m 10
ここに、
c: 溶液中濃度(µg/mL)
v: 抽出溶媒量(mL)
d: 注入試料調製時の希釈倍率
m: 試料質量(mg)
(18) 計算はパソコンや電卓を用いて行う。計算途中では数値を丸めない。
試験用試料の調製
茶葉はミルにより粉砕した後、ふるいを通した。粉末茶は市販されている状態のまま、
調製は行わなかった。
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共同試験結果
べにふうき緑茶のメチル化カテキン(HPLC法)
べにふうき べにふうき べにふうき べにふうき べにふうき
緑茶
緑茶
緑茶
緑茶
緑茶
参加試験室数
10
10
10
10
10
有効試験室数
10
8
10
8
10
メチル化カテキン(%)
1.085
1.077
1.365
1.559
1.889
併行標準偏差
(Sr , %)
0.022
0.015
0.020
0.021
0.030
室間再現標準偏差
(SR , %)
0.062
0.017
0.054
0.025
0.076
併行相対標準偏差
(RSDr , % )
2.0
1.4
1.5
1.4
1.6
室間再現相対標準偏差
(RSDR , % )
5.7
1.6
4.0
1.6
4.0
HorRat value
1.4
0.39
1.0
0.43
1.1
報文:
Validation of method for determining O-methylated catechin in ‘benifuuki' green tea (Camellia
sinensis L.) by inter-laboratory study,Yuji Homura, Yusuke Hiejima, Takashi Kodama, Masumi
Tanaka, Hideki Horie, Tadanao Suzuki and Akemi Yasui,Food Sci. Technol. Res., 63(7), 312-318
(2016)
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