巻 頭 言 老健施設の稼働率を 上げるために 全老健常務理事、介護老人保健施設竜間之郷施設長 大河内 二郎 全老健の学術委員長を務めることになりました。 また、診療情報提供書に記載されている病歴は 今年は老健施設における医療、薬剤、ショートス 重要ですが、他にも把握する手段はあります。入 テイ、感染症をテーマに 4 つの健康増進等事業を 所前の容態が不明であれば、看護師や医師が居所、 実施します。これら調査研究事業への協力をお願 あるいは病院を直接訪問し、状態を確認してはい い申し上げます。 かがでしょうか。地域連携課だけではなく、病院 さて、これらの研究事業の会議や訪問先におい を訪問し、医師や看護師とコミュニケーションを て老健施設および地域医療介護の関係者の生の声 とることが、利用者獲得につながります。 をうかがう機会が多いのですが、最近は、稼働率 また、利用者の病名等を理由に入所を断ってい が低下しており、在宅復帰を進めるわけにもいか ませんか。もちろん超急性期の病態は難しい場合 ないという意見が多いです。これは、サービス付 もあるでしょうが、慢性疾患や後遺症ではどうで き高齢者向け住宅(サ高住)の増加、そして特養 しょうか。 の利用者の限定とそれに伴う死亡者の増加により、 そこで今年度の老健施設の医療の調査では、老 特養の回転率が上がり、老健施設で空きを待機し 健施設がどのような疾患や病態で利用者を断って ていた方々がすぐに入所できるようになったこと いるのかを調査する予定です。老健施設全体のウ が背景にあると考えられます。これらの外的な要 イークポイントを把握した上で研修を実施し、老 因の変化を前提として、老健施設の運営方法の見 健施設のレベルアップを図りたいと考えています。 直しを行っていく必要があります。 稼働率を改善するためのもう 1 つの視点は、地 一方、地域のケアマネからは、老健施設は入所 域医療と密接な連携をとることです。要介護者は やショートステイを利用するのに、医師の紹介状 医療機関から発生し、地域の診療所の診察を受け などが必要で、利用手続きが面倒であるとの意見 ています。したがって、地域医療連携とは、地域 が聞かれました。また、これまでの調査から、老 の医師との連携です。各地域では医師会が中心と 健施設には医師がいるにもかかわらず、様々な疾 なって地域医療介護連携の会議が開かれています。 患を断っているのではという意見も聞かれました。 つまり施設長が医師会に加入し、地域医療連携の つまり、サ高住の増加などの外的要因のせいに 会議に出席することは、利用者獲得につながりま せず、こういった意見を元に老健施設の運営方法 す。 を見直す必要があります。すなわち稼働率を上げ また、診療所の医師が利用者の薬剤の種類を減 るためには、老健施設が行っている入所制限の在 らすことが、診療報酬として評価されるようにな り方を見直すことを考えてはいかがでしょうか。 りました。老健施設においては、減薬後のフォ 例えば入所時に診断書や意見書、あるいは紹介状 ローアップが可能です。このように新しい制度の を必ず求める必要はありますか?地域のケアマネ 導入をきっかけとして地域における老健の役割、 は、こういった書類 1 枚でもハードルに感じるこ つまり地域医療介護のハブとしての役割を見直す とがあるのです。 ことが、稼働率改善につながると考えます。 老健 2016.11 ● 3 003巻頭言(四)1013.indd 3 2016/10/13 13:16:16
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