平成28年10月18日 憲法改正推進本部長方針について ○憲法とは何か~憲法論議の本質 憲法とは、「いかなる政党が政権に就いたとしても守らなければならない 共通のルールを定めた国家の基本」である。このことからするならば、 憲法論議とは、各政党が 選挙でより多くの議席を確保し 政権を目指し、 そ の 政 策 を 推 進 す る 政 治 活 動 、 す な わ ち 、「 政 局 」 と は そ も そ も 本 質 が 異なるものである。 中山太郎会長が作り上げた衆議院憲法調査会時代以来の運営理念の一つは、 「憲法論議は国民代表である国会議員が主体性を持って行うべき」との考え方 に基づき、審査会での議論は、各党の意見表明や委員同士の自由討議を中心と して行い、対政府質疑などは行わないことを原則とすること、二つには、 「議席数の多寡」はひとまず置き、少数会派や委員に平等に時間を配分して、 議論を尽くし、深化させ、憲法改正に必要な3分の2以上の幅広い合意形成を 目指すこと、というものであり、これらの運営理念は、国会が、国民投票を 前提に、国民に分かりやすく明快な発議をすることを念頭に置いているもので ある。 このような運営ルールの下、政局から離れて静かに議論をする条件・環境を 作って議論する憲法調査会以来の良き伝統は、 先に述べた憲法の本質に 立脚して得られたものであり、この方針の徹底が、長きにわたって与野党の 対立のため憲法論議ができなかった国会から脱却し、「憲法調査会報告書」 (平成 17 年 4 月) 、「憲法改正国民投票法制定」 (平成 19 年 5 月) 、 「三つの 宿題の解決(18 歳投票年齢などの国民投票法制定時に積み残した問題)」 (平成 26 年 6 月)という成果につながっていることは明らかである。 これからの憲法改正の道も、このことを大切に進めていくことが必要である。 その先に自ずから目指すべき方向と道筋が見えてくると考える。 ○自由民主党の憲法論議の歴史など 我が党は、昭和 30 年の結党以来、60 余年の憲法論議を積み重ねてきた。 結党当時の「党の使命」や「政綱」などによると、我が党は結党当時から 日本国憲法の三大原理を堅持することを明確にした上、一貫してその基本を 大切に自主的な憲法改正に向け努力を重ね、取りまとめを試み、近年において は、憲法の全体像を条文の形で表した「新憲法草案」(平成 17 年)及び 「日本国憲法改正草案」 (平成 24 年)を得てきた。このように自由民主党は、 現在に至るまで真摯に憲法論議を積み重ね、その成果として、数々の 「公式文書」を世に問うてきた。 他方、各党においても、それぞれ「憲法提言」や「論点整理」、改憲原案 などを発表されている。 わ た し たち 憲法改 正 推 進本 部は、 我 が 党の 過去の 憲 法 に関 する歩 み は もちろんのこと、各党の憲法に関する提言や上記の「憲法調査会報告書」 (平成 17 年 4 月)などをしっかり把握することが、まずは大切であると 考える。すなわち、我が党の憲法論議を中心としてこれまでの国会における 憲法論議の成果を俯瞰することが極めて重要であり、憲法改正推進本部として、 しっかりとこれらを勉強する場を設けて参りたい。 ○「日本国憲法改正草案」の位置付けなど 当推進本部としては、両院の憲法審査会における我が党の憲法改正に ついての取り組みに対応する必要がある。わたしたち が直近にまとめた 平成24年の「日本国憲法改正草案」は、先に述べた我が党の憲法論議を 踏まえた上で発表した党の「公式文書」の中の一つではあるが、それを 手にしてから既に4回の国政選挙を経て議員の構成が大きく変わり、また、そ の間これに対して内外から多くの意見もいただいてきた。それらを踏まえつつ、 両院の憲法審査会の議論の状況などを見ながら、これに対応できるよう、現在 の所属議員で闊達な議論を行い、党の考え方を整理する必要があると考える。 したがって、24年草案やその一部を切り取ってそのまま審査会に提案する ことは考えていない。その上で、憲法審査会において、各党各会派が意見を 持ち寄って、現憲法の足らざる点や改めるべき点など憲法改正の必要性とその 内容について熟議を重ね、我が国初めての憲法改正が世界の国々にも理解 されるよう、丁寧な合意形成を図っていくべきだと考える。 当推進本部としては、各党が今日まで憲法審査会の歩みにおいて真摯に 取り組まれたことに敬意を表しつつ、徹底した議論が尽くせるように、その 環境条件を整えることに意を払ってまいりたい。 また、すでに森本部長時代に、山口泰明組織本部長とともに各都道府県連に 憲法改正推進本部を設置することを要請したところであるが、 我が党が これまでに発表した党の改正案やその前提となる現行憲法の体系についての 理解を深めるとともに、党推進本部での議論の状況も踏まえつつ、国民の 憲法改正への合意形成を目指し、国民に憲法論議の理解を深めていただくよう、 党を挙げて努力をしていきたい。 ○おわりに 森英介・前本部長の「憲法改正推進本部の使命は、まず何より、国民の 合意形成にあり、本部は、謙虚に、真摯にそのための土俵作りの役目を果たす」 という方針を受け継ぎ、推進本部の役員や議員各位の皆様とともに、この 憲法改正推進本部における議論が、自由闊達に、オープンで透明性の 確保された形で進められるように努めて参りたい。
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