デジタルオーディオ

H28年度 群馬大学工学部 電気電子工学科 2年「電子回路I」講座
第311回アナログ集積回路研究会講演-1
デジタルオーディオ
アナログ技術とデジタル信号処理技術の重要性
本日の内容
2016.10.25
群馬大学非常勤講師
東京電機大学非常勤講師
中谷 隆之
・オーディオ機器の歴史
・CDコンパクトディスク技術
・MDミニディスク技術
・音声圧縮技術
・オーディオデジタル信号処理技術
・ハイパーソニックエフェクト
・オーディオ技術や製品の話題
・アナログ技術関連の話題
・MEMS技術が重要
まとめ
携帯型オーディオ機器の歴史
携帯音楽プレーヤー
携帯電話
記録媒体の進化:
テープ>>CD>>MD>>HDD>>半導体
記憶メディアの大容量化
Note
CD:700MB
Gb:Gビット
MD:180MB~1GB (Hi-MD)
GB:Gバイト
DVD:5GB(単層)~17GB (両面2層)
Blue-ray:25GB(単層)~128GB (4層)
HDD(ハードディスク):~10TB (パソコン用)
160GB(iPod classic)
年
容量
2003
256MB
2004
512MB
2005
1GB
2011年までは
毎年倍増
2006
2GB
2007
4GB
オーディオ用では
16GB程度で十分
2008
8GB
2009
16GB
2010
32GB
2011
64GB
2016年現在 2012
SDXCカードで 2013
最大512GB 2014
64GB
半導体メモリ
SD/microSDの容量推移
日本経済新聞2005.4.10
1バイト=8 ビット
64GB
128GB
2
オーディオ機器の歴史を作ってきたSONY
日本初:G型テープレコーダ
1950年
週刊ダイヤモンド2012.2.4に追記
3
ウォークマン:SONY
1979年(昭和54年)
ウォークマンは当時のテープレコーダの常識をくつがえす画期的イノベーション製品。
当時の常識とは、「録音できないテープレコーダなど売れるわけない。」
しかし、音楽好きの若者に、小型で持ち運べて音が良い音楽プレーヤがあったら受けるとの確信。
持ち運ぶ機器に録音機能は不要だろう、との割り切り。
この様なSONY全盛時代の発想や製品が、後にApple Steve Jobsに大きな影響を与えた
初代ウォークマン TPS-L2
33,000円 1979年
印象深いウォークマンのCM
「音は進化した、人はどうですか?」
のナレーション:1987年
4
SONY+Philipsが開発した初代デジタルオーディオ
CD:コンパクトディスク
1982年発売
ピット幅0.5μm
長さ0.83~3.56μmで
0.3μmずつ長さの違うもの9種
ピットの間隔
1.6μm
レーベル印刷面
ピットなし
ピットあり
~1.2mm
110nm
凹凸
第1世代CDプレーヤ:CDP-101(SONY)
168,000円 1982年10月1日
反射光
受光素子
(フォトダイオード)
アンプ
反射光は、位相が
そろっていて明るい
赤色レーザ
波長(780nm)
反射光は、位相が反転し
打ち消しあい暗くなる
16bit
ベートーベン第9が1枚に入る時間から
5
これもSONYが開発、録音可能とした小型デジタルオーディオ
MD(ミニディスク)
1992年発売
デジタル化されたオーディオ信号を約1/5以下にデータ圧縮し小型ディスクに録音
初代MDウォークマン1992年11月1日
右:録音再生MZ-1
79,800円
左:再生専用MZ-NH1 59,800円
MDは2012年に
生産終了
MD容量:180MB(当初)>>1GB(Hi-MD)
44.1KHzサンプリングで80分(約1/5に圧縮)
Hi-MD 最大45時間(約1/30圧縮)
MDの内部構成
MDピックアップ部
フォトダイオード
赤色レーザ
波長:780nm
フォト
ダイオード
増幅器
エレクトロニクスライフ 1992.12 日本放送出版協会
6
MDの録音/再生原理:
MDの記憶(録音)
0,1データ
により磁気
ヘッドに流す
電流向きを
変える
MDは再生専用ディスクと録音再生可能な
ディスクの2種類が規格化。
再生専用ディスクはCDと同様な原理。
録音再生可能ディスクは光磁気ディスク。
記憶時、レーザでキューリ点温度以上に高める。
光磁気層の温度がキューリ点温度を
下がった時の磁化方向が記録される。
MDの再生(録音可能ミニディスク)
MO:光磁気ディスクの原理
カー効果により、磁性にて
反射光の偏向面が回転
エレクトロニクスライフ 1992.12
日本放送出版協会
7
半導体音楽プレーヤ
2005年9月~毎年9月に新製品。
2012年以降新製品でていない。
Apple iPod nano
第7世代:2012年9月発表/10月発売
16GB(12,800円)
世代進化する毎に機能向上、
メモリ容量増大、小型化、
低価格化してきた
第6世代:2010年9月
8GB(13,800円)
第6世代改訂版:2011年10月
8GB(10,800円)
16GB(12,800円)
第5世代:2009年9月
8GB(14,800円) カメラ、マイク、
スピーカ、FMラジオ
第4世代:2008年9月
8GB(17,800円)
第3世代:2007年9月
8GB(23,800円)/4GB
第2世代:2006年9月
8GB(29,800円)/4GB/2GB
第1世代:2005年9月
4GB(2,7800円)/2GB(21,800円)
質量:約20g
タッチパネルと
液晶表示
約40mm
バッテリー
バッテリ
電子回路
第6世代 iPod nano内部
NANDフラッシュメモリ
第1世代 iPod nano基板
第6世代特長:タッチパネル
電子回路基板は極めて小さい
電池寿命:最大24時間
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デジタルオーディオ音声圧縮技術
標本化定理:サンプリング定理
・CDでは20Hz~20KHzのアナログオーディオ信号をデジタル化(サンプリング)
・サンプリング定理から、扱う最大周波数の2倍以上の周波数でサンプリング(デジタル化)すれば
原音を再生可能。CDでは44.1KHz(22.67μs間隔)ステレオでサンプリング
・アナログ信号を16ビット(65,536分の一)の分解能(細かさで)デジタル化
人間の耳のダイナミックレンジ(聞こえる最も小さい音と、最大の音の大きさの比)は1KHzの音で
約120dB=106(130dBとの説もある)と言われる。16ビットだと100dB(105)以下だが通常では十分。
高音質な音を扱う(120dBダイナミックレンジ得る)には20ビット以上の分解能が欲しい。
アナログ信号
16ビット=(1/216)
=1/65,536
の細かさで
アナログ信号を
デジタル変換
CDは
16ビット
44.1KHz
サンプリング
サンプリングされたデジタル信号
約22.7μs間隔
(1/44.1KHz)
時間
9
音声圧縮、まずは耳の働きを知る
耳の構造と音が脳に伝わる機能
・鼓膜の振動が耳小骨(つち骨、あぶみ骨、きぬた骨)を振動。耳小骨にて、音が増幅または減衰される
・耳小骨に伝わった音が蝸牛(かぎゅう)に伝わる。蝸牛の内部はゼリー状液体
・音が蝸牛内の1万個以上ある有毛細胞を刺激。有毛細胞にも音の増幅作用および減衰作用がある
・1KHz純音だと800Hz,1KHz,1.2KHzを受け持つ有毛細胞が振動する。耳は有毛細胞で音を周波数解析している
・耳の中にカチッと音の刺激がひとつ入ると有毛細胞が振動するが、
音が終わっても有毛細胞は10msくらいはダンスを続ける。
・このため連続した音が入っても、直ちには有毛細胞は反応出来ない。この様な耳の特性を利用して音声圧縮する。
・有毛細胞が小さな電気信号を発生し、らせん神経を介して脳に伝わる
を介して脳に伝達
この中に
有毛細胞
耳の不調が脳までダメにする 中川雅文著 講談社新書
耳は、
有毛細胞で
音を周波数解析
している。
10
音声圧縮のKey技術はフーリエ変換
デジタル化された音声データ量は膨大。そのままでは無線による通信や半導体などの記憶媒体に
記録する事は難しい。そこでデータ圧縮が不可欠となる。耳の聴覚特性を使って、音質劣化を最小限
としつつ音声データを最大限圧縮する技術が重要。このキーとなる技術がフーリエ変換
音声圧縮方式
時間軸データ
周波数軸データ
基本波
2次
高調波
周波数軸データ
3次
高調波
時間
4次
高調波
周波数
http://iphone.moo.jp/app/?p=374
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音のマスキング効果など
周波数領域における聴覚特性を利用し音声データ圧縮
最小可聴音特性
人間の耳は周波数特性を有する。
低い周波数と高い周波数ほど人間の
耳の感度は低下する。
耳が聞き取れる周波数特性を多数の人
にて調査したのが最小可聴音特性。
この特性以下の小さな音は聞こえないため、
音声圧縮では、最小可聴音特性以下の
信号は取り除く。これでデータ圧縮できる。
最小可聴音特性
音のマスキング効果
強い音があると、その周辺の弱い音はマスクされ聞こえなくなる.
例えばメロディが、強いシンバルによって一瞬聞こえなくなるの
もマスキング効果の一例。
マスキング効果により聞こえなくなる音の成分は取り除いて処
理しても音質は損なわずにすむ。
マスキングする時の閾値を計算し、閾値以上の成分のみを残せ
ばかなりのデータ量圧縮となる。
強い音Aがあると可聴音特性が変化し、周辺のB音が閾値以下
となり聞こえなくなる。そこでB音は除去する。
マスキング効果
最小可聴音特性
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デジタル信号処理を活用して高音質化
音声圧縮AACの拡張技術SBR
SBR (Spectral Band Replication)は、スペクトル帯域複製技術。低ビットレート符号化オーディオ
信号の再生帯域を拡大し聴感上の音質を向上させる。
SBRでは、低域成分と高域成分の音には大きな相関がある事を利用(特に楽器音)し、
低域成分から高域成分を再構成する。
SBRによる高周波帯域成分の生成
AAC+SBR コーデック構成例
32バンドの
サブバンド信号
低周波数信号を高域にコピーして
高域成分を生成
音
圧
レ
ベ
ル
周波数
SBRによるエンベロープの修正
SBRデコーダブロック
入力信号
(AAC復号データ)
SBR情報
64サブバンド
合成フィルタ
SBR
デコーダ
高域サブバンド
信号生成部
ゲイン算出
&調整部
NHKデジタルテレビ技術教科書:NHK出版
帯域拡張音声
音
圧
レ
ベ
ル
SBR情報から原音に近い形に
エンベローブを補正
周波数
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人が発声する仕組みを活用して音声圧縮
携帯電話での音声圧縮技術
CELP:Code Excited Linear Prediction
2Gで採用された携帯電話用音声エンコード・デコード方式
音声データをインデックス(コードブック)とエンベローブ
情報にて表す。5.6K~8Kbpsと非常に高い圧縮が可能。
10ms毎に80ビットの情報として送信(8kbps)
CELP
口腔
音を変化させる
人が発声するしくみ
フィルタの係数
声帯
音を出す
声帯を動かしてさまざまな
周波数の音を出す
口腔で音に変化を付ける
声帯で発生する音のうち
音声に必要なものだけが
記憶されている
PSI-CELP
結果的に人間の声
と同じような信号が
合成される
コードブック
合成フィルタ
エンベロープ情報(フィルタの係数情報)
インデックス情報
パターン番号(基本波形を指定)
番号でその内の1つを選択
携帯電話の技術とサービス 塩田著(技術評論社)
音をどのように変化させるか
を情報として指定する
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デジタル信号処理技術により音場再生
デジタルサウンドプロジェクタ
・テレビの薄型化により音質が犠牲となってきている
・最近人気なのは「サウンドバー」という外付けの
高品位サウンドユニット。特にヤマハが注力
・28mm径、22個のスピーカから構成される
「超指向性スピーカユニット」から出力される音波は
そのまま並進する。壁に衝突しても拡散、減衰しにくく
耳に到達するとあたかも反射地点に音源があるように
ユーザに認識される。
・低域は指向性ないので1個のサブウーハユニット
サウンドプロジェクタ YSP-4300
テレビ
サウンド
プロセッサ
ユーザ視聴位置にマイク設置
すると、自動的に音響効果測定
が行われる。約3分
強烈なインパルス音やノイズ音
を発生し、部屋の特性〔遅延時間
など)測定。
部屋の形状に合わせた音ビーム
の出力角度調整が行われる。
デジタル信号処理技術
(DSP)を駆使
7.1chサラウンドシステム
http://ad.impress.co.jp/special/yamaha1211/
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デジタル信号処理を駆使
8Kスーパーハイビジョン 22.2ch 3D音響システム
・145型のスーパーハイビジョンディスプレイと組み合わせた、スピーカーアレイ
・デジタル信号処理を駆使して、ディスプレイ4隅に配置された128個スピーカ(116個の7cmスピーカと
12個の小型ウーファ)にて、22.2chの3Dバーチャルサラウンドを再現
22.2ch音響システム
ディスプレイ4隅に配置された128個スピーカ
白いスピーカがバーチャル再生用
リアと上部」からの音を再生
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20130528_601247.html
16
高音質デジタルオーディオ:ハイレゾ
・従来のデジタルオーディオ音源が、16bit/~22KHz帯域
までを扱うのに対し、ハイレゾでは24bit/~96KHz帯域
までの高分解能、超高周波音を再生可能
・ハイレゾ超高音質の音源、音楽配信サービスが
2012年頃から急成長
・CDのデータ転送量は1.411Mbpsに対し
ハイレゾでは4.6Mbps~11.289Mbpsと3倍~8倍に及ぶ
・従来の音楽配信128kbpsに比べて36~88倍
再生可能な周波数帯域
CD
(dB)
ダイナミックレンジ
CD:96dB(理論値)
ハイレゾ:144dB(理論値)
ハイレゾ
22KHz
48KHz
現行CD:
44.1kHz/16bit
ハイレゾ音源:
96kHz/24bit
192kHz/24bit
DSD/2.8MHz/1bit(SACD)
DSD/5.6MHz/1bit
96KHz
CD
サンプリング周波数
22KHz
ハイレゾ
96KHz
周波数
http://www.logitec.co.jp/products/audio/lhpchr192/
http://hd-music.info/html.cgi/support_03.html
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人間の耳に聞こえない20KHz以上の超高周波がなぜ意味あるのか?
ハイレゾの原点:ハイパーソニック・エフェクト
・ハイパーソニックエフェクトとは、人間の可聴域上限をこえる超高周波成分を豊かに含む高度に複雑
に変化する音が、基幹脳を活性化する現象
・領域脳血流の増大、脳波α波の増強、免疫活性の上昇、ストレス性ホルモンの減少、音のより快く
美しい受容の誘起、音をより大きく聴く行を誘導する
・こうした効果をもつ音(ハイパーソニック・サウンド)は、人類の遺伝子が進化的に形成された熱帯雨林
の環境音や邦楽をはじめとする民族音楽の中に見出されている
様々な楽器のパワースペクトラム
この様な研究は
アナログ的センス
と興味が大切
インドネシア・バリ島の
青銅の打楽器オーケストラ
ハイパーソニック・エフェクトによる脳賦活に基づく音環境快適化の研究
総合研究大学院大学 小野寺英子
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検証実験:超高周波音は脳を活性化させる
可聴域音までだと良い音
とは感じていない
http://www.bunmeiken.jp/highlight.html
可聴域音+超高周波音
だと脳は活性化
超高周波音だけだと脳
に変化なし
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ハイパーソニック・エフェクト
耳に聴こえない超高周波振動を感受しているのは、耳ではなく体表面
ハイレゾ対応イヤホンでは
超高周波音は骨伝導で感受
している可能性がある。
皆さんもハイレゾ音源を
体感してみよう!
ハイパーソニック・エフェクトによる脳賦活に基づく音環境快適化の研究
総合研究大学院大学 小野寺英子
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究極のアナログ回路技術を駆使
ピュアオーディオの世界
・ピュアオーディオの世界も興味津々
・回路技術や素材にとことんこだわる
回路は各社各様で解析すると面白い。
プリンント基板に高価な低誘電率テフロン基板を使用など
さらにパターンは金メッキ
・装置一式揃えると数百万円以上
Accuphase
M-6200 パワーアンプ
最大出力:1200W/1Ω
価格:90万円/モノラル
M-6200カタログ Accuphase
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オーディオの世界で真空管健在なり
真空管(Vacuum Tube)
真空管とは、限りなく真空に近い状態の容器(ガラスや金属等)の内部に電極を封入し、電子を放出
する電極(陰極)を高温(ヒーターやフィラメントにて)にして、陰極表面から電子を放出させ、この電子
をグリッド(制御格子)で電圧制御し、発振、変調、検波、増幅などの作用を行うことができる電子管。
エジソンが白熱電球の実験中に発見したエジソン効果(1884年)が端緒
各種真空管
左から:ST管,GT管,mT管
1950年代まで、電子回路は真空管
が中心だった(ラジオ、テレビなど)
Eniacコンピュータ(1946年)
17,468本の真空管を使用。消費電力150kW
使用真空管
http://www.japanradiomuseum.jp/MTsuper.html
22
2010 年に35 年ぶりの国産真空管デビュー:高槻電気工業
オーディオマニア、楽器用アンプで、今でも真空管アンプが人気
高槻300B使用した
真空管パワーアンプ
2015年
Luxman MQ-300 160 万円
整流管
90,000円
出力管
165,000円(ペア)
タイプ
ST 型真空管
品名
TA-300B
型式
直熱3 極管
フィラメント電圧/ 電流
5V/1.2A AC またはDC
最大プレート電圧
450V
最大プレート電流
100mA
最大プレート損失
40W
高槻電気工業HP
タイプ
ST型真空管
品名
TA-274B
型式
直熱双二極管(整流管)
フィラメント電圧/ 電流
5V/2A AC
最大プレート電圧(RMS)
660V/ プレート毎
最大DC 出力電流
225mA
最大過渡電流
2.5A 20msec 以内
ピークプレート電流
700mA/ プレート毎
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蛍光表示管技術を応用した新たな真空管が開発された
音楽・音響機器用真空管「Nutube」
ノリタケ+コルグ 2015年1月
・真空管は、ギターアンプやオーディオ機器など、楽器/音響機器に真空管でしか表現
することができない豊かな音質で今でも人気
・蛍光表示管技術を応用してその構造を工夫し、新しい真空管「Nutube(ニューチューブ」
を開発。従来の真空管に比べ、大幅な省電力化、小型化、品質向上に成功
1) 大幅な省電力化を実現(従来の真空管比2%以下の電力で動作)
2) 小型化に成功(容積比で従来真空管の30%以下)
3) 高信頼性、長寿命(日本製、連続期待寿命 30,000時間)
4) 基板への直接取り付けが可能(取付け治具不要)
3極真空管「Nutube」
5,000円
「Nutube」を使用したギターアンプ
試作品
http://info.shimamura.co.jp/digital/special/2015/01/44294
http://ascii.jp/elem/000/000/988/988823/
24
ちょっとした回路アイデアで、
オペアンプ回路で3極真空管特性を実現
オーディオマニアでは3極真空管
出力の音が人気。
ただし、3極管は低電流領域で歪む。
理想3極真空管特性を半導体回路で実現。
真空管Ep-Ip特性のカーブ群を全て等間隔
で平行に出来るuLTC回路考案
ultra Linear Triode Circuit
回路は極めてシンプル
オペアンプ+パワートランジスタ
+3個の抵抗のみ。
抵抗値決め方で、特性制御可能。
オーバオール負帰還なし、
パワーアンプ設計可能。
ダンピングファクタも抵抗値設定で
制御可能。
アイデアは無限
無線と実験2013.2
25
アナログ回路開発では実験&評価が重要
・アナロググル(達人)は実験を重要視している
・アナログ回設計はデータシートによる机上検討やシミュレーションだけでは不十分
・検討デバイスにより実際に回路を組み、測定器を用いでデータ取得、解析が不可欠
・まずはバラック実験により、データシートに記載ない実使用回路でのAC特性などを確認
・実際にプリント基板作成し評価。基板化した後の、配置配線による性能影響を確認
「実験=ものづくり」 は楽しいよ!
アナロググル Bob Pease 実験の様子
アナロググルJim Williams実験室
http://www.ti.com/ww/en/bobpease/assets/www-national-com_rap.pdf
http://www.edn.com/electronics-blogs/anablog/4416248/Honoring-Jim-Williams
26
アナログ回路:バラック実験の方法
・ブレッドボードを使用した回路実験は、本格的な実験
にはお勧めできない。
・ネットの試作プリント基板を利用。数万円で基板作れる
・ベタ基板のうえに回路を作成。ベタ銅箔面はGNDとする。
ビデオ帯域からうまく作ればGHz帯域までの実験が可能。
ブレッドボードによる実験
ベタ基板を用いて実験回路を作る
ハンダ付け用の
ランドを作る
http://www.eleki-jack.com/mycom2/2010/09/hc08qy4a_92_ic.html
GHz回路をベタ基板に作成
カッターナイフでパターン作成。
部品はチップ部品をハンダ付け
GND
ベタのプリント基板
トランジスタ技術 2016.1
Ghz時代の高周波回路設計 市川著 CQ出版
27
アナログ回路設計
良い回路図はパターン&部品配置情報も示す
図1も図2も回路動作(結線)は全く同じであり書き方のみ異る。
良い回路図は回路動作が解りやすい他に、回路図自体に部品配置や配線情報が示されている。
図1では、雑音影響受けやすいオペアンプの反転入力(高入力インピーダンスノード)が短く書かれ、
R1やR2も反転入力近くに書かれている。
雑音影響受けにくいオペアンプ出力(低インピーダンスノード)ラインが引き回されている。
電源パスコンについても、オペアンプ電源ピン近くに配置すべき高周波特性の良いC1やC2(0.1uFセラコン)が、
オペアンプ近くに書かれ、多少離れて大容量ケミコンC3,C4(10UF)が書かれている。
すなわち、回路図に部品配置や配線情報が包含されている。
図1 良い回路図
図2 良くない回路図
28
経験的に
美しい回路基板≒高品質、高性能製品
アナログを極めた設計者のデザインは回路図を見ても、出来上がった基板を
見ても、実に美しいもの。
回路図は信号の流れの通りに描かれており、回路図がほぼそのまま、基板の部品
配置,配線となっている。
テクトロニクスオシロスコープ 200MHzプラグインアンプ7A26
http://w140.com/tekwiki/wiki/File:Tek-7a26-left.jpg
1974年
29
完成度の高いものは美しい:iPhone 7 Plus
iPhone7 ・A10 Fusionプロセッサ、デュアルカメラ
特徴 ・Felica対応(日本向け特別仕様)
・デザインの秀逸さ、シンプルな美しさ
・極めて高い完成度
・内部まで手を抜かない作り
ケースはアルミ材の削り出し
総部品数
1500個以上
2016.9.16
・3.5mmイヤホン端子廃止
・防水、防塵対策強化
10万8216円(128GB)
フロンカメラ&マイク
&スピーカ
12M
Dual
カメラ
リチウムイオン電池
2900mAh
シールド板
IPS液晶パネル
5.5インチRetina HD
1920x1080
リアカバー
Taptic
Engine
電子回路基板
A10 Fusion
プロセッサ搭載
Homeボタン
スピーカ
https://www.ifixit.com/Teardown/iPhone+7+Plus+Teardown/67384
Lightning コネクタ・アッセンブリ
30
iPhone7 Plus電子回路基板
A10プロセッサ(Apple/TSMC)
+ 3GB DRAM (Samsung)
LTEモデム
RF Power Amp
(Qualcomm)
(Skyworks, Avago)
タッチスクリーンコントローラ
(Universal Scientific)
InFO PoP
実装(TSMC)
WiFi/Bluetooth
モジュール
(村田製作所)
RFトランシーバ
(Qualcomm)
オーディオアンプ
(Cirrus)
LTE
トランシーバ
(Qualcomm)
128GB
NAND
電源管理IC
(東芝)
(Qualcomm,
Dialog)
(NXP)
オーディオ
コーデッ ク (Cirrus)
A10 Fusionプロセッサ
・Quadコアプロセッサ(big.LITTLE構成)
・16nm FinFETプロセス(TSMC)
・トランジスタ数33億個、ダイ面積125mm2
256GB版NANDは3D NANDチップ使用との記事
https://www.ifixit.com/Teardown/iPhone+7+Plus+Teardown/67384
NFC
コントローラ
ダイバシティ
レシーバ
モジュール
(Avago)
31
現在のセンサやアクチュエータには欠かせない
MEMSについて
・MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電子機械システム)は、半導体プロセスで
1チップ上に電子回路と微小機械部品(センサやアクチュエータ)を集積したデバイス。
・現在、身の回りの様々なところで使用されている。インクジェットプリンタのノズル、
加速度センサ、シリコンマイク、プロジェクタ表示素子(DLP)など
・MEMSに搭載されるアナログ電子回路は極めて重要。
高性能、高感度、低消費電力化などの回路設計技術が必要となる
MEMSの構造
http://mechanical-tech.jp/sites/mechanical-tech.jp/files/images/mch01_t01.gif
32
スマホやウェアラブル端末に必須
Micro Electro Mechanical Systems
MEMS加速度センサ
半導体プロセスで、微小なメカニカル部
品(センサ)と、アナログ信号処理電気
回路を1チップ化。
質量を持つ可動部が加速度で動き,
固定部分とで微小な容量変化を生じる。
この容量変化を電気信号に変換する。
チップ中央にセンサ部が、周辺に電気
回路が集積されている。
3軸加速度センサADXL202 Analog Devices
可動部分
固定部分
STマイクロ
http://www.analog.com/library/analogdialogue/archives/43-02/mems_microphones.html
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半導体技術によるMEMSシリコンマイク
最近のマイクロフォンは半導体プロセスを用いたMEMSシリコンマイク
シリコンマイクの進化
http://eetimes.jp/ee/articles/1104/01/news042.html
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MEMSが物理現象を活かす
ETF:electrothermal filter
ETF技術による高精度温度計:Delft大
ETF部
物質の熱拡散率を利用した高精度温度センサ
熱拡散率は物質固有の値であり、製造ばらつきの影響を
受けにくい。トリムなしで高精度温度計測可能。
シリコン上にて、周波数fdriveでヒータ駆動すると、距離s
離れた温度センサ(熱電対)には、周囲温度T0.9に比例した
位相差信号出力が観測される。
20um
n+拡散抵抗
p+/アルミ熱電対
100KHz駆動で90°遅れ(室温)
2.5mW
24pF
Auto-zero gm段
~400uV
φETF:ヒータと温度センサ
の信号位相差
s:ヒータとセンサの距離
D:シリコンの熱拡散率
T:温度
ヒ
ー
タ
43KHz
ISSCC2010 SESSION 17.4 IEEE
積分器
熱電対
0°
75°
位相ドメイン⊿Σ変調器
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発想がユニーク
海水を噴射したらアンテナになる:三菱
2016.1
・導電性のある海水を空中に噴出し、生じた水柱を
アンテナとして利用した海水アンテナ
・海岸や海上など海水があればどこにでも
大規模構造物なしに容易に設置で移動も簡単
・形状を変えると様々な周波数や指向特性を得られる
・地上デジタル放送の受信実験を行い画像受信確認
・海水アンテナの効率は約70%
(スマホ内蔵アンテナでは30~80%)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160127-00000054-impress-sci
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バイオミミクリー
生物模倣技術:シャープの家電
・「生物模倣技術」は、自然界に生息する生き物の機能や仕組みを参考にして、新たな技術開発や
性能向上に結びつける技術のこと。例えば生物の羽形状や表面の微細な凹凸構造の活用など
・「生物模倣技術」を家電分野に積極的に取り入れてきたのがシャープ
・シャープは、「イルカ」「アホウドリ」「トンボ」「ネコ」「アサギマダラ(蝶)」といった動物や昆虫を参考
にした白物家電製品を送り出してきた
トンボ、アホウドリ、イヌワシ
を参考にしたエアコン
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1402/19/news098.html
生物の機能に学ぶ
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最後に、技術者を目指す諸君へ
極めた人が、世の中を変える力を持つ
Apple 「Think Different」
ジョブズの想いが凝縮したキャンペーン
--自らを彼らに重ね合わせている-クレージーな人たちに乾杯。
はみ出し者。反逆者。厄介者。変わり者。
ものごとが世間と違って見える人。
ルールなどわずらわしいだけの人。
現状など気にもしない人。
彼らを引き合いに出すことはできる。
否定することもできる。
たたえることもけなすこともできる。
できないことはおそらくただひとつ
---彼らを無視すること。
なぜなら彼らは物事を変える人だから。
人類を前に進める人だから。
彼らをおかしいと評する人もいるけれど、
我々はそこに天才の姿を見る。
なぜなら、世界を変えられると信じるほど
Jobsも変人
おかしな人こそ、本当に世界を変える人なのだから。
ジム・ヘンソン、マーティン・ルーサー・キング、マリア・カラス、
パブロ・ピカソ、アルベルト・アインシュタイン、リチャード・ブランソン、
マハトマ・ガンディー、ボブ・ディラン、アメリア・イアハート
これ以外にもジョン・レノンやモハメド・アリ他が取り上げられた。
http://theinspirationroom.com/daily/commercials/2005/10/Apple-think-different.jpg
アナログの世界で名を残した
アナロググルも結構、変わり者多い!
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