講演1

平成28年度
厚生労働省委託事業
講習会
GHSラベルを活用した「HOW TO 職場の安全衛生教育」
2016年10月19日(水)
仙台
仙都会館
8階会議室
ラベル表示を活用した
災害の防止
日本大学理工学部
まちづくり工学科
教授
城内 博
1
目次
1.なぜラベル教育が必要か?
2.化学物質による災害事例
3.化学物質管理強化の取組
4.国際標準によるラベル表示
5.ラベル表示を活用した労働者の
安全と健康の確保
2
1.なぜ、ラベル教育が必要か?
●労働者に取扱い物質の危険性・有害性情報
を伝える制度として、ラベル表示がある。
●ラベル表示の意味を知らないで、事故に
なった事例が多い。
●法規制があるからではなく、「自分を守り、
仲間を守る」ために、ラベルに表示されて
いる危険性、有害性を理解し、事故を防止
しよう!
3
化学物質のリスクアセスメントの義務化※1及びラベル表示義務対象の拡大※2について
※1:平成26年6月の労働安全衛生法改正による。※2:平成27年6月の労働安全衛生法施行令の改正による。■施⾏⽇
平成28年6⽉1⽇
【改正趣旨】
今回の改正は、⼈に対する⼀定の危険有害性が明らかになっている化学物質について、起こりうる労働災害を
未然に防ぐため、事業者及び労働者がその危険有害性を認識し、事業者がリスクに基づく必要な措置を検討・実
施する仕組みを創設するものであり、労働安全衛⽣法施⾏令別表第9及び別表第3第1号に掲げる640の化学物質
及びその製剤について、①譲渡⼜は提供する際の容器⼜は包装へのラベル表⽰、②安全データシート(SDS) の
交付及び③化学物質等を取り扱う際のリスクアセスメントの3つの対策を講じることが柱である。
改正後
改正前
健康障害発⽣
(使⽤量や使⽤法
によってリスク
あり)
︵SDS交付努⼒義務︶
︵ラベル表⽰努⼒義務︶
約6万物質
︵リスクアセスメント
努⼒義務︶
︵SDS交付努⼒義務︶
⼀定の危険・有害な物質
拡大
胆管がん
発⽣
特別規則
健康障害多発
PCB等 (特にリスクの⾼い業務あり)
製造禁⽌
︵リスクアセスメント結果に
基づく措置の努⼒義務︶
640物質
重度の健康障害あり
(⼗分な防⽌対策なし)
安全データシート
︵SDS︶交付義務
119物質
⽯綿等
ラベル
表⽰義務
8物質
リスクアセスメント義務
特別規則
安全データシート
︵SDS︶交付義務
︵ラベル表⽰努⼒義務︶
︵リスクアセスメント結果に
基づく措置の努⼒義務︶
︵リスクアセスメント努⼒義務︶
ラベル
表⽰義務
製造禁⽌
2.化学物質による災害事例
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
急性中毒の事例
混触による有害ガス発生・中毒の事例
皮膚の薬傷事例
長期ばく露による障害発生の事例
発がん事例
火災による災害の例
爆発による災害の例
5
配布資料5 p7
①急性中毒の事例
人的被害:休業者数
1人
・事故の概要
ビニールシートにコーティングする接着剤(有機
溶剤含有)をグラビアコーターの接着の受皿に補
給する作業。
一斗缶に接着剤5㎏、トルエン3㎏、酢酸エチル3
㎏、硬化剤を混ぜ、補給時に一斗缶内をひしゃく
でかき混ぜ、グラビアコーターの接着剤受皿に補
給していたところ、気分が悪くなった。
グラビアコーター
トルエン
蒸気
・教訓
原因の第一は有機溶剤作業主任者が実務に疎く、
作業マニュアルが整備されていなかったため、作
業者の判断で作業が行われていたこと。
一斗缶
(接着剤5㎏にトルエン3㎏、酢酸エチル3㎏、
硬化剤を作業者があらかじめ混ぜたもの)
出典:職場のあんぜんサイト
接着剤を小分けする作業、接着剤を混合する作業
は、局所排気装置を備えたチャンバー内で行うよ
う設備の改善が必要。
接着剤補給作業は作業者が有機溶剤蒸気にばく露
されないような補給装置が必要。
保護具(トルエン用)を着用して作業をすること
を作業の必要条件とする。
労働災害事例より
②混触による有害ガス発生・中毒の事例
次亜塩素酸ナトリウムのラベルには
「酸」と混ぜないとあるが、多くの
混触事故が発生している。何故か。
配布資料5 p9
人的被害:休業者数
不休業者数
4人
7人
・事故の概要
塩素ガス
ホテルで、井戸水殺菌用に塩酸、温泉水殺菌用に
次亜塩素酸ナトリウムを使用。配属後間の無い作
業者が先に井戸水殺菌に使用した薬液(塩酸)と
温泉水殺菌は同じ薬液と思い、次亜塩素酸ナトリ
ウムタンクに塩酸を補充したところ、塩素ガスが
発生し、ホテル地下及び1階に充満し、宿泊客、
従業員が被災した。
・教訓
各薬液タンク及び容器に内容物質名を明示。
同じ薬液のタンク、容器は同色とする。また、形
状別に識別できるようにする。
ミスによる同様のトラブル発生のおそれはあるの
で、必要な呼吸用保護具(塩素ガス用)を備え付
け、作業時には装着を義務付けること。
次亜塩素酸ナトリウムタンク
塩酸ポリ容器
出典:職場のあんぜんサイト
労働災害事例より
配布資料5 p5
③皮膚の薬傷事例
人的被害:不休業者数
硬化促進剤
3人
・事故の概要
被災者ら3名の作業者は、化学工場内にお
ける廃棄物焼却炉の定期補修工事で、耐火
物へ、耐火物の硬化促進剤である急結剤の
吹付け作業を行っていた。その際、ノズル
とホースの接続部から飛散した強アルカリ
性の急結剤が作業者3名の皮膚に付着した
ことにより、3名とも薬傷(化学性皮膚
炎)を負った。
・教訓
適切な作業手順を定め、安全作業に係る機
器の使用、留意事項を記載する。
作業に応じた適切な保護具を選定し、労働
者に着用させる。
使用する薬剤のSDS等を入手し、危険有害
性と対策を確認する。
出典:職場のあんぜんサイト
労働災害事例より
④長期ばく露による障害発生の事例(1)
配布資料5 p15
臓器障害(肺障害)
人的被害:休業者数
出典:職場のあんぜんサイト
1名
労働災害事例より
・クレーン部品の下地塗装作
業を4年間行った労働者が、
特殊健康診断で肺の異常所見
を指摘された。
・局所排気装置の稼働、呼吸
用保護具の着用は遵守。
・塗装ブース内で、塗装する
部品と局所排気装置のフード
の間に入って作業していたた
め、塗料のミストを吸入して
いたのが原因と推定される。
配布資料5 p8
④長期ばく露による障害発生の事例(2)
鉛ヒュームによる慢性鉛中毒
• 事故の概要
人的被害:休業者数
1人
鉛を含有する水道用仕切弁の鋳物部
品製造工場で、鋳物の不必要な部分
をグラインダーで切断・研磨する作
業を18年間担当。腹痛のため血液検
査を受けた結果、血中鉛濃度が高く、
慢性鉛中毒と診断された。
• 教訓
出典:職場のあんぜんサイト
労働災害事例より
局所排気装置を稼働させる。
除じん装置の排気口は屋外に設ける。
防じんマスクを着用する。
作業環境測定および健康診断を実施
する。
10
配布資料5 p14
⑤発がんの事例(1)
胆管がん
人的被害:胆管がん発症
17人(うち7人死亡)
注:H24.12末時点
・これまで胆管がんは、国際的に
も職業がんの知見なし。
・特にジクロロメタンは、工業的
によく使われていたが、この高
濃度で長期間ばく露した事例で
初めてヒトへの発がん性が判明。
・これをきっかけに因果関係がわ
かり、国内で他にも労災認定。
・有害性が不明であること(分類
できない)は無害であることを
意味しない。
情報源:労働安全衛生総合研究所
災害調査報告書 A‐2012‐02
平成15年までの13年間に、
インク洗浄作業に関わった元
従業員ら17人が胆管がんを
発症
・原因物質は1,2-ジクロロプ
ロパン、ジクロロメタンの蓋
然性が高い
・換気せず高濃度ばく露
・ 1,2-ジクロロプロパンは
特別規則の対象外(当時)で
あったので、有害性未確認の
まま使用
配布資料5 p13
⑤発がんの事例(2)
膀胱がん
人的被害:膀胱がん発症
化学工場で、吸入防止
のため防毒マスクを作
業員全員が着用してい
たにもかかわらず発症
吸入だけでなく、
皮膚からの吸収にも
注意が必要
6人
・従業者6人が膀胱がんを発症
・6人とも扱っていた物質はオルト
-トルイジン(液体)
・再現調査では、防毒マスク、化学
防護服を着用していたが、作業前
後の尿検査で高ばく露が確認され
た。
・ゴム手袋をしていたが、オルト-
トルイジンを含有する溶剤で繰り
返し洗って使用していたと判明。
・経気吸入も少量あったが、特に皮
膚から多く吸収されていた。
配布資料6 p7
⑥火災による災害の例
溶剤の調合中に火災発生
人的被害:
作業者1名
作業者2名
上半身火傷
手指に火傷
■事故の概要:
出典:火災・事故防止に資する防災情報提供シート
(消防防災博物館)
・作業者が、携行缶からドラ
ム缶へ漏斗を使って溶剤を投
入後に漏斗内で静電気火花が
発生し、ドラム缶内の溶剤に
引火、作業者の着衣に着火し
上半身火傷。
・消火にあたった作業者2名も
手指に火傷を負った。
■教訓:
帯電防止対策(ドラム缶、漏
斗にアース、静電靴、静電服
の着用、湿度の管理)が必須。
配布資料6 p10
⑦爆発による災害の例
洗浄剤で部品の洗浄中に爆発
人的被害:
休業者数
不休業者数
2名
1名
火傷
軽度の火傷
■事故の概要:
LPG
ヘキサン
スプレー缶入り洗浄剤で部品の洗浄
中に、横にいた同僚のモーター取り
外し作業で発生したスパークが、ス
プレーガスに引火し爆発
■教訓:
・換気を十分に行う。
・モーターとバッテリーを切り離し
てから作業する。
出典:職場のあんぜんサイト
労働災害事例より
14
化学物質による災害の発生原因
●主な原因:
“危険性・有害性に関する情報不足”
■情報がなかった
■情報が知らされなかった
■情報を理解しなかった
15
情報があれば防止できた災害事例
業種
被災
者
原因物質
災害状況
事業場の措置
状況
畜産業
2
フェニト
ロチオン、
プロポキ
スル
動物用医薬品である殺虫剤を水
で希釈した消毒液を動力噴霧器
で散布していて、吐き気、嘔吐
の症状が出、有機リン中毒と
なった。
防毒マスク、保
護衣の備え付け
もなかった。
飲料
製造業
3
オゾン
ミネラルウォーターの製造工程
で、オゾン水によるペットボト
ル等の滅菌作業を行っていた労
働者が急性オゾンガス中毒に
なった。
オゾンガス排出
のための換気装
置がないうえに、
不適切な防塵マ
スクを着用させ
ていた。
食料品
製造業
1
水酸化
ナトリウ
ム(カ性
ソーダ)
口蹄疫用の消毒液を製造するた
め、水に苛性ソーダを混ぜて撹
拌していたところ、ミストが発
生し、急性薬物中毒になった。
今回の作業を初
めて行うに当た
り、有害性につ
いて認識がな
かった。
出典:第76回労働政策審議会安全衛生分科会
資料4 16
化学物質による
事故や病気は
どれくらい
起こっているのか?
17
化学物質による事故や病気
• 2015年9月現在、約1億種類の化学物質の登録
(CAS番号)
• 行政的に管理されている化学物質は数千種類
• 世界で毎年110万人が労働災害で死亡し、この
うち四分の一は化学物質によるものと推定(ILO)
• 日本では化学物質により毎年600~700人が被災
(休業4日以上)
• 家庭での化学物質による不慮の事故死は毎年
約700人
• 日常的な化学物質による皮膚炎等も考慮すると
化学物質による外傷,疾病の数はさらに膨大
18
化学物質による労働災害発生状況(休業4日以上)
化学物質による労働災
害は毎年約500件
800
699
700 653 653 639
640
563
600
500 515
500
483474 480
419
456
爆発・火災の災害では
莫大な被害を被る災害
となることが多い。
400
慢性中毒や職業がんで
は、大きな社会不安の
原因ともなる
300
200
100
0
有害物
H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27
307 300 341 380 320 272 214 264 294 242 258 230 278
可燃性のガス 108 133
引火性の物
88
93
94
106
59
63
95
85
61
79
49
190 189 166 197 199 163 127 152 111 139 124 153 112
爆発性の物等 48
31
44
爆発性の物等
29
27
22
引火性の物
19
21
15
17
可燃性のガス
資料:厚生労働省:労働者死傷病報告調べ
31
18
有害物
17
数から見れば、約12万
件の労働災害の0.5%
にも満たないかもしれ
ないが、数の問題では
19
ない重要性がある。
危険性・有害性情報の必要性(1)
労働者の安全と健康を
軽視する事業者の下で働く
労働者をどのように守るか?
労働者に直接、危険性・有害性を伝えること
ラベル表示(危険性・有害性)の徹底
20
危険性・有害性情報の必要性(2)
危険性・有害性に関する
情報が無ければ、
予防措置はできない
自分の身を守れない
21
3.日本の化学物質管理強化の取組
1)過去の化学物質管理制度の特徴
2)管理強化の取組(その1)
3)管理強化の取組(その2)
4)管理強化の取組(その3)
22
過去の化学物質管理制度の特徴
●災害や疾病の事後対策として策定された
●物質や作業列挙によるリスク管理の法規
であった
●危険性・有害性の情報伝達がリスク管理
の一部として位置づけられていた
⇒ 包括的な情報伝達システムが無い
●分類および表示の対象となる物質数が
限定され、その危険性・有害性情報も
十分ではなかった
23
日本のラベルの特徴(GHS導入前)
●ラベルを貼付すべき対象物質数が非常に
少なかった。(労働安全衛生法:104物質)
●混合物としての表示に関する規定がなかった。
●危険有害性は「漢字」で知らせている。
●絵表示は業界等が自主的に対応していた。
●製造物責任法(1995)以降、注意書きが増え
た。
24
日本のラベルの特徴(続)
●日本では危険有害性情報は少なく、専門家向け
の管理対策や注意書きの記述が主であった。
- 火気厳禁、危険物第四類、医薬用外毒物
- 眼に入った時は流水で洗う など
など
★危険有害性情報:物質が本来持っている性質
例えば、「熱すると爆発のおそれ」、
「飲込むと有毒」、「発がんのおそれ」、
「皮膚刺激」
などで
労働者が理解しておくべき重要な情報
25
日本の制度で欠けていたもの
化学物質の危険性・有害性
に関する情報伝達
26
管理強化の取組(その1)
GHS導入における日本の課題
日本にはGHSをそのまま導入できる
法規制が無かった
GHSへの対応(表示制度の充実)
● 労働安全衛生法の改正
● 日本工業規格(JIS)の策定
27
日本のGHSへの対応
(法規)
●労働安全衛生法の一部を改正
危険・有害な化学物質について、容器・包装
の表示や、譲渡・提供の際の文書交付に関す
る制度を改善する
(施行期日 平成18年12月1日)
●危険有害性分類、ラベル内容をGHSに一致
させた。
28
H18年(2006年)改正労働安全衛生法における
表示対象物質
法第57条において、安衛令で定める104物
質及びその混合物に対する表示(ラベル)
の義務
-製造許可の対象物質
-労働安全衛生法施行令で定める表示対象物質
-上記物質を含有する混合物
(表示対象物質ごとに裾切値が定められている)
29
労働安全衛生法による表示制度に
違反した場合の罰則
●表示(ラベル)制度の罰則は、
労働安全衛生法第119条(3)で規定
「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に
処する」
30
管理強化の取組(その2)
●労働安全衛生規則の改正
●JISの改訂
31
労働安全衛生規則の改正
厚生労働省令第9号(H24.1.27 官報 第5726号)
●第24条の14(ラベル)
●第24条の15(文書交付SDS)
●第24条の16(法第28条の2第1項を実施する
ための指針の公表)
<平成24年4月1日施行>
全ての危険・有害な化学物質等は
ラベルの対象となる (努力義務)
32
労働安全衛生規則の改正(続)
第24条の14(ラベル)
-厚生労働大臣が定めるもの:危険有害化学物質等
(令第18条各号及び令別表第3第1号に掲げる
もの(法第57条で定めているもの)を除く)
-本項で定める化学物質等はJISZ7253附属書Aに
定める物理化学的危険性又は健康有害性を一つ
でも有するものとする
-厚生労働大臣が定める標章:JISZ7253に定める
絵表示(GHS)とする
33
労働安全衛生規則の改正(続)
第24条の16(法第28条の2第1項を実施するため
の指針の公表 平成24年3月)
-化学物質等の危険有害性等の表示に関する
指針(平成4年労働省告示第60号)は廃止
-化学物質の危険性又は有害性等の表示又は
通知等の促進に関する指針の公表
-譲渡提供者による表示について、
一般消費者の生活の用に供するための
容器又は包装については適用しない
34
管理強化の取組(その3)
●労働安全衛生法の一部改正
平成26年6月25日
平成28年6月 1日
➣
➣
改正
施行
ラベル表示義務対象物質の拡大
104物質 → 640物質に
(注:平成29年3月1日 27物質追加)
リスクアセスメントの義務化
35
ラベルに関する労働安全衛生法・規則
ラベル
労働安全衛生法
[根拠条文等](改正日)
640物質( H28~)-義務
【法第57条の1】 (H17.11.2)
(H26.6.25)
労働安全衛生規
則
危険有害化学物質等-努力義務
【労働安全衛生規則第24条の14】
(H24.1.27)
注記:ラベルの作成は JIS Z 7253 に従って行えば、
法規で定める記載要件を概ね満たすとしている
36
表示対象とならないもの
■一般消費者の生活の用に供される製品
●医薬品医療機器等法(旧薬事法)に定められて
いる医薬品・医薬部外品および化粧品
●農薬取締法に定められている農薬
●労働者による取扱いの過程において固体以外の
状態にならず、かつ、粉状又は粒状にならない
製品
●対象物が密封された状態で取り扱われる製品
37
ラベルとSDSを規定している関連法規とその対象物質
ラベル
【根拠条文等】(改正日)
労働安全 640物質(2016~)-義務
【法第57条の1】 (H17.11.2)
衛生法
(H26.6.25)
SDS
【根拠条文等】(改正日)
640物質-義務
【法第57条の2】 (H17.11.2)
労働安全 危険有害化学物質等-努力義務
【労働安全衛生規則第24条の14】
衛生規則
(H24.1.27)
特定危険有害化学物質等-努力義務
【労働安全衛生規則第24条の15】
(H24.1.27)
●指定化学物質(第1種462、第2種100)-
化学物質 ●指定化学物質(第1種462、第2種100)-
義務
努力義務
排出把握
【指定化学物質等の性状及び取扱いに関
【指定化学物質等の性状及び取扱いに関
管理促進
する情報の提供の方法等を定める省令】
する情報の提供の方法等を定める省令】
法(化管
(H24.4.20)
(H24.4.20)
法)
●指定化学物質以外-努力義務
●指定化学物質以外-努力義務
【指定化学物質等取扱事業者が講ずべき
【指定化学物質等取扱事業者が講ずべき
第1種指定化学物質等及び第2種指定化
第1種指定化学物質等及び第2種指定化
学物質等の管理に係る措置に関する指
学物質等の管理に係る措置に関する指
針】(H24.4.20))
針】(H24.4.20)
注記:ラベル及びSDSの作成は JIS Z 7253 に従って行えば、
法規で定める記載要件を概ね満たすとしている。 38
日本のGHSへのJISの対応
GHSの標準化(JIS)
– JIS Z 7252
法が引用
2014
(GHSに基づく化学品の分類方法)
– JIS Z 7253
2012
(GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法
ラベル、作業場内の表示及び安全データシート
(SDS))
H24年以降 全ての化学物質が分類・表示
の対象になった
39
4.国際標準(GHS)によるラベル表示
GHSとは
40
GHSとは
化学品の分類および表示に関する世界調和システム
(Globally Harmonized System of Classification and
Labelling of Chemicals)
●目的及びメリット
-健康の維持と環境の保護を促進する
-世界中に国際的な枠組みを提供する
-貿易が容易になる
-化学品の試験及び評価の必要性が減少する
●規定する内容
-危険有害性(危険性、健康有害性、環境有害性)に
関する分類基準
-安全データシート(SDS)の内容および記述様式
41
-ラベルに記載すべき項目
ラベルに記載すべき項目(省略不可)
◆絵表示
◆注意喚起語(危険、警告)
◆危険有害性情報
◆注意書き(安全対策、応急措置、貯蔵、
廃棄など)
◆化学物質名、CASなどの化学品特定名
◆供給者名および連絡先
◆関連事項
42
GHSのラベル例
43
絵表示
●労働者・消費者対象で、用いるシン
ボルは白地に黒、枠は赤色倒立正方形
●輸送関連では国連危険物輸送勧告を使用
(日本では海上輸送、航空輸送で適用)
44
爆発物
⾃⼰反応性
有機過酸化物
⾼圧ガス
急性毒性(⾼毒性)
絵表示
可燃性/引⽕性
⾃⼰反応性
⾃然発⽕性
⾃⼰発熱性
有機過酸化物
⾦属腐⾷性
⽪膚腐⾷性
眼に対する重篤な損傷性
変異原性
発がん性
⽣殖毒性
呼吸器感作性
特定標的臓器毒性
吸引性呼吸器有害性
⽀燃性/酸化性
⽔⽣環境有害性
急性毒性 (低毒性)
⽪膚刺激性
眼刺激性
⽪膚感作性
特定標的臓器毒性
オゾン層有害性
45
GHSのモデルとなった国連危険物輸送勧告の絵表示
(航空法施行規則、危険物船舶運送及び貯蔵規則関連で導入)
46
注意喚起語
●「危険」
または
「警告」
危険性・有害性の強調および
その程度を表す
例:急性毒性 区分1、2、3 ⇒「危険」
区分 4
⇒「警告」
47
危険有害性情報
●物質または混合物の固有な危険性、有害性
に着目して分類した結果に関する情報をいう
●決められた危険性・有害性の区分に対しては
共通の表記を用いる
例: 引火性液体
区分 1 「極めて引火性の強い液体および蒸気」
区分 2 「引火性の高い液体および蒸気」
区分 3 「引火性液体および蒸気」
区分 4 「可燃性液体および蒸気」
48
危険有害性情報(続)
例 :急性毒性(経口)
区分1 「飲み込むと生命に危険」
区分2 「飲み込むと生命に危険」
区分3 「飲み込むと有毒」
区分4 「飲み込むと有害」
49
GHSの分類区分とラベルの項目例
• 例 : 急性毒性(経口)
50
注意書き(安全対策、応急措置、保管、廃棄)
例
【急性毒性(経口)】
危険有害性区分
1、2
3
注意喚起語
危険有害性情報
危険
飲み込むと生命に危険
危険
飲み込むと有害
51
注意を促すための絵表示 例
各国、独自で良い(下記は欧州の例)
52
「危険有害性情報」 と「注意書き」の違い
注意書きでは危険有害性は伝わらない
対応が異なる場合もある
• 皮膚についたときは水で十分に洗い流す
書き
注意書き
危険有害性情報
注意書き
•
皮膚についたときは水で十分に洗い流す
・皮膚に接触すると有害
• 皮膚についたとき
・重篤な皮膚の薬傷
は水で十分に洗い
・アレルギー性皮膚反応
• 皮膚についたときは水で十分に洗い流す
流す
を起こすおそれ
53
化学物質特定名・番号
●ラベルには製品名や番号を記す
●業界あるいは国などで用いられている
特殊な名前も可能とする
●国連危険物輸送勧告に従う輸送の場合
は梱包表面に国連輸送番号を記す
54
製品の組成・成分情報
●化学物質
-化学物質の特定 (IUPAC、ISO、CAS などで定め
られている名前)
●混合物
-急性毒性、皮膚刺激性/腐食性、眼に対する重篤
な損傷性/刺激性、変異原性、がん原性、生殖毒
性、皮膚・呼吸器感作性、標的臓器毒性などを
もつ成分は全て記載するとよい。
-労働安全衛生法、規則ではラベルには成分名を
省略してよい。SDSには記載が必要。
55
5.ラベル表示を活用した
労働者の安全と健康の確保
●危険性・有害性情報の伝達
●情報伝達を確実にするための事業
1)ラベルを活用した現場教育の推進
2)ラベルでアクション運動
3)ラベル・SDS活用促進事業
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ラベル表示・SDS提供制度の目的
危険性・有害性に関する
情報が無ければ、
予防措置はできない!
自主対応のための前提
(危険性・有害性の理解)
(リスクアセスメント)
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情報伝達の手段は?
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情報伝達の手段
●ラベル
容器包装に貼付
●安全データシート(SDS)
供給者が販売先に提供
(SDSについてはこの講習会では省略)
★ラベル、SDSは事業者(供給者)が作成する
★供給者に作成と提供の義務がある
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化学物質を取り扱う前に!
●取り扱い物質のラベルを読む
●取り扱い物質の危険性・有害性を
理解する
●危険性・有害性を考えて、自分達の
健康は自分達で守る
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新しいラベル制度で
常識が変わる?
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何が変わる?
●全ての化学物質が危険有害性に関する
分類、表示(ラベル、SDS)の対象になる
●分類・表示が世界的に(国内的にも)統一
される
危険有害性に関する意識改革が起きる
リスク評価の基礎ができる
労働者も化学物質管理に参加できる
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危険有害性情報は
安全への第一歩!
ラベルの活用を
進めましょう!
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ご清聴ありがとう
ございました!
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