Warm up が位置覚に与える影響および経時的な変化に ついて

P2-C13
九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
Warm up が位置覚に与える影響および経時的な変化に
ついて
湯田 涼太(PT)
社会医療法人緑泉会 米盛病院
Key Words
Warm up・位置覚・経時的変化
【目的】
【考察】 Warm up( 以下 W-up) は,スポーツ活動前に行うこと
今回,自動運動では W-up 直後に位置覚の低下がみら
で体温・筋温の上昇を促し,外傷予防やパフォーマンス
れ,10 分後に位置覚の回復がみられた。また,他動運
の向上などに効果的であるといわれている。また,空間
動では位置覚の低下がみられなかった。関節位置覚には
内での四肢および身体部位の位置関係や関節の動きの感
固有感覚が関与しており,この受容器には,関節受容器
知に関与する関節固有感覚にも影響を及ぼすとされてい
と筋受容器がある。今回の結果から自動運動における位
る。先行研究では,W-up 直後に位置覚が低下するとの
置覚の低下は,筋受容器の影響によるものと考えられる。
報告がみられるが,その後の位置覚の回復過程について
筋疲労は筋紡錘の感度を低下させ,筋出力だけでなく固
は明確ではない。そこで本研究では,W-up 直後の位置
有感覚の精度までも低下させると報告がみられる。今回
覚の経時的変化を調査し,W-up から競技までの休息時
運動強度に設定した最大心拍数の 60% は乳酸性作業閾
間の間隔について検討した。
値 ( 以下 LT) 以上であるため,血中乳酸濃度が上昇し,
【方法】
対象は健常若年者男性 42 名 ( 年齢:21.27±0.90
歳 ) とした。測定部位は右膝関節とし,右膝関節に整形
疾患の既往のある者は対象から除外した。W-up はトレッ
筋疲労が生じたと考えられる。そのため,筋受容器から
の情報入力が低下し,W-up 直後に位置覚が低下したと
考えられる。
【まとめ】
ドミル ( オートランナー AR200) 上を 10 分間走行した。
W-up による体温・筋温の上昇継続時間は W-up 直後
運動強度は最大心拍数の 60% とし,ハートレートモニタ
より 45 分程度である。これらの事から,W-up10 分後
(POLAR S810i) から心拍数を計測し走行速度を決定し
から45 分の間に競技を開始することで,
より高いパフォー
た。また,W-up 直後,10 分後,20 分後,30 分後に
マンスが発揮できると考えられる。
おける心拍数を記録した。位置覚測定は自動運動と他動
運動の 2 条件とし,BIODEX(BDX-3 酒井医療株式会社 )
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は所属していた大学の倫理委員会の承認 ( 承認
を用いて,W-up 前,直後,10 分後,20 分後,30
番号 :15-Ifh-30) を得た後,対象者には事前に研究内容
分後の膝関節伸展角度を計測した。測定角度は 20°
から
を説明し,書面にて同意を得たうえで実施した。なお,
40°
区間内の 5°
刻みとし,ランダムに 5 回測定した。得
本研究発表を行うにあたり,ご本人に書面にて確認をし,
られた再現角度から設定角度を除した値を誤差角度とし平
本研究発表以外では使用しないこと,それにより不利益
均値を算出した。統計処理は統計ソフト JSTAT を用い,
を被ることはないことを説明し,回答をもって同意を得た
5 群間の比較を一元配置分散分析反復法で行い,多重比
こととした。
較検定 (Bonferroni 法 ) を行った。なお,有意水準は
5%未満とした。
【結果】 誤差角度では,自動運動で W-up 前と直後に有意な差
がみられた (p<0.01)。他動運動では有意な差はみられ
なかった。また,心拍数では W-up 前と直後,W-up 直
後と 10 分後に有意な差がみられた (p<0.01)。