【ジャパン・ホテル・リート投資法人】格上げ:A - 日本格付研究所

16-D-0590
2016 年 10 月 17 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
ジャパン・ホテル・リート投資法人
【変更】
長期発行体格付
格付の見通し
債券格付
(証券コード:8985)
A
ポジティブ
A
→
→
→
A+
安定的
A+
■格付事由
(1) 05 年 11 月に設立され、06 年 6 月に東京証券取引所(不動産投資信託証券市場)へ上場したホテル特化
型の J-REIT。資産運用会社(AM)はジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズ。AM の株主である本
投資法人のスポンサーは、SC CAPITAL PARTNERS グループ(旧 RECAP グループ)の Rockrise Sdn Bhd
(ロックライズ社、出資比率 87.6%)をメインに、共立メンテナンス(同 10.3%)、オリックス(同
2.1%)の計 3 社で構成されている。現行ポートフォリオは全 41 物件、総客室数 10,138 室、取得価格ベ
ースで 2,868 億円の資産規模となっている。
(2) 本投資法人は、戦略的投資対象地域(北海道エリア、東京及びベイエリア、大阪・京都エリア、福岡エリ
ア、沖縄エリア)を中心に、国内外のレジャー需要が強いエリアに存するホテルへの積極投資を続けてい
る。15 年 12 月以降、公募増資も絡め LTV をコントロールしつつ、「ホテルビスタグランデ大阪」など
計 6 物件を 784 億円で新規取得した。このポートフォリオの拡大に伴い、物件やテナント(オペレータ
ー)
、ブランド等の分散が進むとともに収益基盤が強化され、16/12 期において取得価格ベースで 6.6%と
相対的に高い NOI 利回りが維持される見込みである。また、メインスポンサーが株式を保有しているホ
テルマネージメントジャパン(HMJ)が運営する主要 5 ホテルをはじめ、保有ホテルに関する客室稼働
率、ADR 等の運営指標についても概ね堅調な推移がみられる。一方で、アクティブ・アセット・マネジ
メント(本投資法人の定義では「力強い内部成長を実現し、収益の向上、ひいては資産価値の向上を図る
積極的なアセットマネジメント」)に基づき、アップサイドの取り込みが可能な、運営委託方式や変動賃
料を採用する賃料形態への変更などもあり、賃料種別に占める変動賃料等の割合は 16/12 期(年換算ベー
ス)で 44%程度を占めている。変動賃料等スキームの増加により、中期的にみて施設所有者である本投
資法人にとってのホテル収益に連動する変動賃料等、ひいてはそれをベースとして、需要増によるキャッ
シュフローの上昇予測を前提に算出される、多くのホテルの鑑定評価額のボラティリティが相対的に高ま
るリスクについては、引き続き留意を要する。だが、保有ホテルの堅調なトラックレコードや、賃料種別
において 56%程度を占める固定賃料による下支えなどからみて、ポートフォリオ全体の収益へのネガテ
ィブな影響が短期的に顕在化する懸念は少ないものと JCR では考えている。財務面では、資産総額ベー
スの簿価 LTV が 15/12 期末の 42.8%から足元では 40.1%へと緩やかに低下しているほか、鑑定評価額の
上昇に伴い、ポートフォリオの含み益について増加傾向が続いている。加えて有利子負債のコスト低減や
固定化、平均残存年数の長期化等の取り組みから、AM による安定した財務運営に関する一定の実績を確
認できる。以上を踏まえ、格付を 1 ノッチ引き上げ、見通しを安定的とした。
(3) 本投資法人では HMJ との強い協働体制も背景に、外部成長に関しては戦略的投資対象地域に重点を置き、
相対取引を含め多様なスキームを活用しつつ、資産規模の継続的拡大を目指す方針である。内部成長につ
いては、ホテルの競争力向上を目的とした客室、宴会場や婚礼施設への改装投資(「戦略的 CAPEX」)の
実施、リブランドを含めた固定賃料へのアップサイドシェアリングの追加など、アクティブ・アセット・
マネジメントの実践強化が想定される。今後については、上位 3 物件への集中度が 15 年 12 月末時点の
28.7%から、足元では 25.4%(「ホテルビスタグランデ大阪」9.4%、
「ヒルトン東京ベイ」9.1%、
「オリエ
1/3
http://www.jcr.co.jp/
ンタルホテル東京ベイ」6.9%)へと緩やかに低下しているものの、外部成長を通じた物件分散の進展、
ポートフォリオの安定性の動向に引き続き注目している。また、増加基調が続いてはいるものの、足元で
伸び率に鈍化がみられる訪日客数、新規開発されるホテルの増加等、中長期的な競争環境の変化に注意を
払いつつ、経年物件(築後 20 年超が 16 物件)への戦略的 CAPEX の実施など、アクティブ・アセッ
ト・マネジメントの継続状況やその成果を確認していく。
(4) デット・ファイナンスでは、主力行を中心に 14 の取引先とのレンダーフォーメーションが維持されてい
る。今後についても、増資を含めた適切なレバレッジコントロールの継続や、有利子負債の一段のコスト
削減、返済期限の分散化などが、財務の柔軟性・安定性の向上にむけたポイントになると考えている。引
き続き、財務運営に関する各種施策の実施状況及びその実効性をフォローしていく。
【主な新規取得物件の概要】
ホテルビスタグランデ大阪
・08 年 8 月に竣工した、鉄骨造陸屋根 12 階建のリミテッドサービスホテル。グレードはミッドプライ
スに分類される。客室数は 314 室で、1 階には店舗を併設している。ホテル賃借人は HMJ グループのオ
ーダブリュー・ホテル・オペレーションズ。なお、今後インターナショナルブランドである IHG の「ホ
リデイ・イン」へリブランドが予定されている。
・本物件は大阪を代表する繁華街の「なんば」地区に存し、大阪市営地下鉄御堂筋線ほか「なんば」駅か
ら徒歩 6 分程度、大阪市営地下鉄堺筋線ほか「日本橋」駅から徒歩 5 分程度の位置にあって、立地条件・
交通利便性に優れるほか、同駅から梅田等大阪市内の主要エリアへのアクセスも良好である。近隣は飲食
店等が集積し、やや雑多な雰囲気が醸成されているが、物販、飲食等各種利便施設が徒歩圏内にあり、繁
華性が高く、観光客等にとっての利便性は優れている。
・本物件の外観は、土色の壁面に格子模様が施されたデザインとなっており、ロビー周りにもシックな内
装、大理石貼りの床などが施されている。13 年から 14 年にかけて、1∼4・12 階の客室等の改修工事が実
施された。客室については全室 20 ㎡以上のダブル・ツインが主体で、2 名以上での利用が可能な構成と
なっている。レジャー目的の顧客ニーズを概ね満たす設備・仕様等が備えており、競合ホテルとの比較に
おいて一定の競争力・訴求力を有しているとみられる。
・新築後約 8 年を経過しているが、維持管理の状態は概ね良好である。16 年 8 月度の客室稼働率:
97.2%、ADR:20,154 円、RevPAR:19,597 円となっている。
取得日:16 年 8 月 1 日
取得価格:27,000 百万円
鑑定評価額:28,500 百万円(16 年 6 月 1 日時点)
(担当)杉山 成夫・松田
■格付対象
発行体:ジャパン・ホテル・リート投資法人
【変更】
対象
長期発行体格付
対象
第 2 回無担保投資法人債(特定投資
法人債間限定同順位特約付)
第 3 回無担保投資法人債(特定投資
法人債間限定同順位特約付)
第 4 回無担保投資法人債(特定投資
法人債間限定同順位特約付)
格付
見通し
A+
安定的
発行額
発行日
償還期日
利率
格付
25 億円 2013 年 11 月 26 日 2016 年 11 月 25 日
0.89%
A+
20 億円 2014 年 3 月 19 日
2019 年 3 月 19 日
0.92%
A+
15 億円 2014 年 12 月 19 日 2021 年 12 月 17 日
0.86%
A+
2/3
http://www.jcr.co.jp/
信康
対象
発行額
第 5 回無担保投資法人債(投資法人
債間限定同順位特約付)
第 6 回無担保投資法人債(特定投資
法人債間限定同順位特約付)
発行日
償還期日
60 億円 2015 年 10 月 23 日 2022 年 10 月 21 日
30 億円 2016 年 3 月 22 日
2026 年 3 月 19 日
利率
格付
0.82%
A+
0.935%
A+
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2016 年 10 月 14 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:杉山
主任格付アナリスト:杉山 成夫
成夫
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp/)の「格付関連情報」に「信用格付の
種類と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法(格付方法)の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp/)の「格付
関連情報」に、
「J-REIT」
(2014 年 6 月 2 日)の信用格付の方法として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
ジャパン・ホテル・リート投資法人
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表
・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
独立監査人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、
当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。米国証券取引委員会規則 17g7(a)項に基づく開示の対象となる場合、当該開示は JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp/en/)に掲載されるニュースリリースに添付していま
す。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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http://www.jcr.co.jp/