特別展 描 か れ た 花 々 ─ 小磯良平の植物画を中心に ─ 2016年10月15日(土)~12月11日(日) 小磯良平(1903~1988)は、1956年から13年にわたり武 田薬品工業株式会社の機関誌『武田薬報』の表紙として薬用植 物を描き続けました。本展では、彼の水彩画の魅力が詰まった 薬用植物画を中心に、小磯良平や神戸にゆかりのある画家、ま た植物学者たちの花や植物にまつわる絵画作品約90点を展示 いたします。 芸 神戸市立小磯記念美術館 学芸員 高橋 佳苗 術 だ よ り 《ヒガンバナ》 1961年 武田薬品工業株式会社蔵 小磯良平の薬用植物画制作は、当初「簡単なスケッチ」 として始められたものでした。しかし彼はスケッチにとど まらず、台に置かれた際にできる植物の影や、植物が入っ ていたガラスの器、水槽までも描き入れました。薬用植物 画には、学問的な見方を考慮しながらも植物の個性や生き 生きとした姿を描き出そうとした小磯良平独自の視点があ らわれています。一方で、植物学の父・牧野富太郎は、植 物画において観察や記録という目的のために、描く対象の みにその視線を注いでいます。花びらや葉のひとつひとつ を精密にとらえた学者の植物画には、植物と向き合う学者 のひたむきなまなざしを垣間見ることができます。 花や植物の造形表現や描かれる意味は、描かれる目的や 立場、また場面によって多種多様です。本展では、画家や 学者たちの花や植物に対する“視点”をキーワードに、そ 《牡丹桜》 1973年 生田神社蔵 の描き方の違いについてご紹介します。とらえられ方に よって姿を変える花々の、さまざまに描かれた絵画世界を お楽しみください。 ※この特別展はみなと銀行文化振興財団が助成しています。 43
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