新理科3年第4版01_pe6.pdf 1 2016/02/05 15:45:25 みるみるわかる 新 中学理科 3 年 〔第4版〕 はじめに 理科の学習は,身のまわりの様子や出来事に疑問を持ち,そのしくみを理解することから 始まります。 この本は,重要であると思われることは,教科書に載っていないことでも積極的に取り上 げています。それらは,高校での学習や社会に出ても役立つことばかりなので,興味のある 人は,この本のすみずみまで目を通し,多くの知識を獲得して下さい。またもし,理科の勉 強にあまり時間のとれない人は, 「さらに学ぼう!」などはとばして学習してもかまいません。 さらに,この本は学んでいくうちに,科学的なものの見方や筋道だった考え方が習得でき るよう工夫されています。いろいろなことを考えながら,じっくり学習を進めていけば,大 きな力を身につけることができるでしょう。 学習の進め方 1.この本では,新しく学ぶ単元は, 「考えよう!」から始めています。これを真剣に考えることで,大 きな力が身につきますので,今までのあなたの体験などをもとに,じっくり取り組んで下さい。 2.次に解説を読み,ポイントを理解しましょう。図や太字の部分にも注意を払って読み進めて下さい。 次に「まとめの問題」をすれば知識の整理に役立ちます。 3. 「例題」は答えを見ないで解き,その後,解説を読んで自分の考えと比べましょう。しっかり理解が できてから「類題」を解けば,その知識が完全にあなたのものになります。 4. 「チェックシート」は,図表を中心にして,これまでの学習の全体像をとらえ,総整理するためのも のです。何度も見直しましょう。 5.以上ができたら「練習問題」で演習しましょう。定期テストや公立校の入試レベルの良問を厳選して います。 6.単元によっては, 「特訓コーナー」があります。このコーナーをマスターすると,よく出題される計 算問題などに強くなれます。ぜひ挑戦してみてください。 7. 「さらに学ぼう !」 は, 高校内容のことまで学びたい人のためのものです。興味のある人は, 「 発展問題」 も含め,ぜひこれらのページに挑戦して下さい。 以上のことを参考にしながら,学習を進めて下さい。あなたが楽しく理科を学び,たくさんの有益な 知識を身につけることを願っています。 新理科3年第4版01_pe6.pdf 2 2016/02/05 15:45:25 みるみるわかる 新 中学理科 第1章 3 年〔第4版〕 目 次 運動とエネルギー ごうせい ぶんかい 第1ハードル 力のつり合いと合成・分解 4 1 力のつり合い 4 2 力の合成 6 3 力の分解 8 ・チェックシート 52 ・練習問題 53 55 章末問題 第2章 化学変化とイオン でん かい しつ 10 第1ハードル イオンと電解質 58 11 1 原子の構造とイオンの関係 58 ・練習問題 12 2 電解質と電離 ・発展問題レベル 14 4 3力のつり合い ・チェックシート でん り ・チェックシート 62 ・練習問題 62 第2ハードル 物体の運動と速さ 15 1 「速さ」に強くなろう 15 第2ハードル 電気分解と電池 64 ・特訓コーナー 18 1 塩酸の電気分解 64 ・チェックシート 19 2 塩化銅水溶液の電気分解 65 ・練習問題 20 3 電池 66 ・チェックシート 69 ・練習問題 70 第3ハードル 力がはたらく運動 21 1 速さが増加する運動(等加速度運動) 21 2 速さが減少する運動 24 第3ハードル 酸・アルカリ 72 ・チェックシート 25 1 酸性やアルカリ性の水溶液の性質 72 ・練習問題 26 2 酸・アルカリの正体 73 ・チェックシート 75 ・練習問題 76 さん 第4ハードル 力がはたらかない運動, 27 作用・反作用 ちゅう わ 27 第4ハードル 中和反応 77 2 慣性の法則 30 1 中和反応 77 3 作用・反作用の法則 31 2 中和に関するいろいろな問題 79 ・チェックシート 32 ・特訓コーナー 81 ・練習問題 33 ・チェックシート 82 さらに学ぼう! 34 ・練習問題 83 ・さらに学ぼう!練習問題 35 ・発展問題レベル 83 さらに学ぼう! 84 ・さらに学ぼう!練習問題 85 1 力がはたらかない運動 かんせい 2 61 第5ハードル 仕事 36 1 仕事について知ろう 36 2 道具の利用と仕事の原理 38 3 いろいろな道具の利用 38 4 仕事率とは 41 章末問題 ・発展問題レベル 第3章 86 88 科学技術と人間 ・特訓コーナー 43 ・チェックシート 44 1 エネルギーの種類とその移り変わり ・練習問題 45 2 日本におけるエネルギー資源とその利用 92 ・発展問題レベル 46 3 放射線とその利用 93 4 新しいエネルギー資源とその有効利用 94 5 科学技術と人間のくらし 95 90 第6ハードル 力学的エネルギー 47 1 エネルギー 47 ・チェックシート 51 96 2 力学的エネルギー ・練習問題 97 新理科3年第4版01_pe6.pdf 3 2016/02/05 15:45:25 第4章 い でん 生物のふえ方と遺伝 2 太陽系と宇宙 せいしょく 第1ハードル 生物の成長と生殖 98 ・チェックシート 147 1 生物の成長 98 ・練習問題 148 2 生殖とは 100 第4ハードル 月と惑星の見え方 149 3 有性生殖のしくみ 101 1 月について知ろう 4 細胞分裂と染色体 102 149 2 日食と月食 ・チェックシート 103 152 3 金星の見え方 ・練習問題 104 153 4 太陽系のまとめと資料問題 155 第2ハードル 遺伝の規則性 106 1 メンデルの実験 106 2 メンデルの実験を遺伝子で考える 108 3 遺伝子の本体とその活用 110 ・チェックシート 111 ・練習問題 112 113 章末問題 115 ・発展問題レベル ・特訓コーナー 156 ・チェックシート 157 ・練習問題 158 ・発展問題レベル 160 章末問題 ・発展問題レベル 第6章 地球と宇宙 第1ハードル 地球の自転と太陽, にっしゅう 星の日周運動 116 1 地球の自転と基本知識 116 2 太陽の日周運動 118 3 星の日周運動 120 ・チェックシート 123 ・練習問題 124 ・発展問題レベル 126 さらに学ぼう! 127 こうてん 第2ハードル 地球の公転と季節の変化, ねんしゅう 星の年周運動 129 1 緯度による気温の差と季節の変化 129 2 地球の公転と季節による太陽の動き 130 161 163 自然と人間 第1ハードル 生物どうしのつながり しょくもつれん さ 第5章 143 164 1 食物連鎖 164 2 分解者の役割 167 3 物質とエネルギーの流れ 169 ・チェックシート 172 ・練習問題 173 さらに学ぼう! 175 ・さらに学ぼう!練習問題 176 第2ハードル 人間と環境 177 1 地球の誕生と現在の地球 177 2 オゾン層 177 3 地球上の諸問題 178 4 自然がもたらす災害と恩恵 180 ・練習問題 章末問題 181 182 3 季節によって見える星座が変わる理由 132 4 星の年周運動 132 5 地球の公転と太陽の見かけ上の動き 134 ・チェックシート 135 ・練習問題 136 さらに学ぼう! 138 ・さらに学ぼう!発展問題 140 第3ハードル 太陽と太陽系 141 1 太陽について知ろう 141 3 新理科3年第4版01_pe6.pdf 4 2016/02/05 15:45:25 第1章 運動とエネルギー ごう せい ぶん かい 第1ハードル 力のつり合いと合成・分解 ミシミシ 考えよう! リカちゃんは,いまにも割れそうな氷の上に立っている。これは こわいよう∼ 「やっとのことでつり合っている状態」といえる。ではこのとき, 「つ り合いがくずれる」とはどういうことをいうのか,あなたの考えを述べなさい。 〈 → 答えはp.10〉 氷 力のつり合い 〈図1〉 (1)いつでもどこでもはたらく重力 図1でわかるように,地球上にあるすべての物体には,空中,地上にか かわらず,「地球の中心に向かって地球が引く力」がはたらいている。こ の力を重力という。 これから力について学習するにあたり,真っ先に「物体には,いつでも 地球の中心 どこでも重力がはたらいている」ということを考えよう。 (2)力の表し方と単位 は重力を示す 図2のように,力には「作用点」 「力の大きさ」 「力の向き」の3つの要素 〈図2〉 力の表し方 があり,1本の矢印を使って表す。力の大きさの単位は ニュートン(記 作用点 力の向き 号N)を使う。1 N は,質量100 g の物体にはたらく重力の大きさにほ ぼ等しい。(本書では今後も「1 N は,質量100 g の物体にはたらく重力」 とする) 力の大きさ (3)「つり合い」の例 図3は,ボール紙の上に物体がのって,かろうじて静止している状態を 〈図3〉 B がはたらいている。 表している。このとき,物体には次の 2つの力 A , 物体 垂直抗力 B ボール紙 大きさが 等しい A 地球からの重力…「地球が見えない糸をたぐり寄せて,物体を地面 台 まで引っ張り落とそうとしている」と考えるとよい。(図4) すいちょくこうりょく A 台 重力 B ボール紙からの垂直抗力…「ボール紙は物体の重さでたわみつつも, 〈図4〉 何とか物体を支えようとしている」と考えるとよい。 ① 「 A の力は下向きで, B の力は上向きである。このとき, A の力の大きさ = B の力の大きさ」の場合には物体が静止する。これが「つり合っている」 状態である。 A の力 ② もしボール紙が弱いなどの原因で,物体の重さを支えきれず, 「 地球の中心 の大きさ >B の力の大きさ」になった場合には物体は落下する。これが「つり合っていない」状態である。 〈図5〉 (4)「つり合う」とは(図5) 2力のつり合い ・リングを2つのばねばかりで引き,静止させる。 以上のことなどをまとめると,「つり合う」とは 次のようなことである。 1つの物体に2つの力がはたらいても,その物 体が静止しているとき,その2つの力は「つり合 っている」といえる。 (5)2力がつり合う条件 2力がつり合ってい るときは,右の条件が 満たされている。 ばねばかり リング 力の矢印で示すと 作用線が 一致する 大きさが等しく,向きが反対 ① 2力は同一直線上にある※(作用線が一致する)。 ② 2力の大きさは等しい。 ※ つり合う力は必ず一直線上にあるが,図にか ③ 2力の向きは反対である。 くときは見やすさを考えて,ずらしてかくこ ともある。 4 新理科3年第4版01_pe6.pdf 5 2016/02/05 15:45:25 第1ハードル 力のつり合いと合成・分解 (6)いろいろなつり合う力 〈図1〉 垂直抗力 〈図2〉 摩擦力 ムムム,重い ① 垂直抗力(図1) 垂直抗力 物体を置いた面が,物体を垂直に押す力。重力と大きさ が等しく,向きが反対なので上向きに矢印をかく。 ま さつ ② 摩擦力(図2) 重力 摩擦力 物体に水平方向へ力を加えたとき,物体と,物体を置い た面との間にはたらく,動きをさまたげようとする力。 〈図3〉 浮力 物体に加えた力と反対向きにはたらく。 〈図4〉 張力 浮力 ふ ③ 浮力(図3) 張力 物体が水中にあるとき,物体を上に押し出そうとするかのように,上向 きにはたらく力。 水 ちょう ④ 張力(図4) 重力 重力 弾性力(もとに戻ろうとする力)の一種で,糸などが物体を支える力。 まとめ の問題 1.次の( )に適当な語句や記号を入れるか,または選びなさい。 1つの物体に2つの力がはたらいても,その物体が静止しているとき,2つの力は ① ( ) といえる。このとき,2つの力は同一 ② ( )上にあり,大きさは ③ (等しく・異なり) ,向きは ④ (同じ・反対)である。 2.次の①∼③において,2つの力がつり合っているものには ○を,つり合っていないもの には × を〔 〕に書きなさい。また,つり合っていないものには,つり合いの条件のう ち何が満たされていないか,ア∼ウより選び に記号を書きなさい。 ① ② ③ ○か × か 満たされていない つり合いの条件 ① ② ③ つり合いの条件 ア 2力は同一直線上にある イ 2力の大きさは等しい ウ 2力の向きは反対である 3.右の図で,物体にはたらいている2つの力はつり合って いる。①∼③に適当な力の名称を書きなさい。 ①( ) ②( ) ③( ) 4.次の(1)∼(4)の物体は,すべて静止している。1目盛りを1N として, 点から,もう1つの力の矢印をかきな さい。また,その力の名称を〔 〕に書きなさい。ただし,質量100 g の物体にはたらく重力を1Nとする。 (1)机に300g の物体 がのっていて,そ れを机が支えてい る。 (3)水に 300g の物体 が浮かんでいる。 ①〔 〕力 ③〔 〕力 (2)天井から200g の 物体がつり下がっ ていて,それを糸 が支えている。 ②〔 〕力 (4)鉄のかたまりを5N の力で押すが,動 かない。 水 ④〔 〕力 5 新理科3年第4版01_pe6.pdf 6 2016/02/05 15:45:26 第1章 運動とエネルギー 〈図1〉 力の合成 1つの物体に2つの力がはたらいているとき,2つの力と同 Aさん Bさん じはたらきをする1つの力に置きかえることを力の合成という。 ごうりょく また,合成してできた1つの力を合力という。 (1)一直線上にある2力の合力 ① 同じ向きの2力の合力 200N A 図1で,Aさんは200 N,Bさんは300 N の力で木を B 20kg の物体にはたらく重力と同じ大きさの力 300N 引いている。この場合,木には,200 N +300 N = 500 N の力がはたらく。 ▼ F1 この場合は次のことが成り立つ。 〔力の合成〕 AとBの合力 500N F2 〈図2〉 Aさん 〔力の合成〕 F = F1+ F2 Bさん F ② 反対向きの2力の合力 図2で,AさんとBさんは台車を引き合っている。こ の場合,台車にはたらく力は,300 N −200 N =100 A B 200N 300N N となり,台車はBさんの方に動き出す。 〔力の合成〕 F2 ▼ この場合は次のことが成り立つ。 F1 AとBの合力 100N F = F2− F1 Aさん F 〈図3〉 (2)一直線上にない2力の合力 合力を求めたら,もとの 2力は考えなくてもよい。 よって,× をつけておくと わかりやすい。 図3で,AさんとBさんはそれぞれ別の方向にそりを引 いている。この場合, そりにはたらく力は500 N より小さく, その向きはAさんとBさんの間となる。 ▼ F1 この場合は次のことが成り立つ。 F1 参考 200N F F1 と F2 の合力 F は,2 F F2 新しくできた力 F の 大きさと向きを示す つの力の矢印を2辺とす F2 る平行四辺形の対角線と なる。これを力の平行四 辺形の法則という。 そりにはたら く力の大きさ と向きを示す F1と F2が合体 して F になった 300N Bさん (3)角度による合力のちがい 図 4,図 5 は,2 匹 の犬が引く力 A,B の 間の角度 x,y によっ て,合力の大きさが変 わることを示してい 〈図4〉 〈図5〉 A1 A2 y x B2 B1 る。 これを見ると,力 A と力 B の間の角度が A1 A2 F 小さいほど,合力 F は 大きくなることがわか る。 6 F B2 B1 図5での合力 F 図4での合力 F 新理科3年第4版01_pe6.pdf 7 2016/02/05 15:45:26 第1ハードル 力のつり合いと合成・分解 問題 ア イ A ウ A エ A 右 の 図 の よ う に,力 A,B がそれぞれO点に は た ら い て い る と き, その合力が大きい順に ア∼エを並べなさい。 O A B B O O B O 力 A と力 B の間の角度が小さ いほど,合力は大きくなる。 B 〔 〕→〔 〕→〔 〕→〔 〕 まとめ の問題 1.( )に適当な語句を入れるか,または選びなさい。 (1)1つの物体に2つの力がはたらいているとき,2つの力と同じはたらきをする1つの力に置きかえる ことを力の ①( )という。また,①によってできた1つの力を ②( )という。 (2)一直線上にない2力の合力は,2つの力の矢印を2辺とする平行四辺形の( )となる。 A (3)右の図のように,力 A,B がそれぞれO点にはたらいているとき,∠ x の大きさが大きい O ほど,その合力は(大きく・小さく)なる。 x B 2.次の2つの力 F1,F2の合力を作図によって求めなさい。なお,作図後は,もとの力に×をつけておきなさい。 ① ② F1 F2 F1 F2 ③ F1=F2,力 F1と力 F2の 間の角度が120° ④ F1 F2 F1 120° ⑤ F2 ⑥ F2 F1 F2 F1 7 新理科3年第4版01_pe6.pdf 8 2016/02/05 15:45:26 第1章 運動とエネルギー 力の分解 〈図1〉 Aさん ぶんりょく (1)力の分解,分力とは Bさん 1つの力を,同じはたらきをする2つの力に分け ることを力の分解という。また,分解してできた2つ F の力を,もとの力の分力という。 図1で,Aさんはそりに乗っているBさんを引っ張 っている。このとき,Bさんは前に引かれると同時に, 上にも少し持ち上げられるように感じるだろう。 それをわかりやすく示したのが図2である。力 F1, F2は,力 F を水平方向と垂直方向に分けた力である。 〈図2〉 y こうすると,それぞれの方向の力の大きさがよくわか る。 F F2 (2)力の分解の方法(図3) 力の分解は次のようにして行う。1つの力の分力は F1 何通りもあり,平行四辺形の作図によって求められる。 x ① 力 F を分解する方向に直線 〈図3〉 x ,y を引く。 y ① ② y ② 力 F が平行四辺形の対角線 となるように,F の先のP点 P を通り,直線 x,y に平行な 線を引く。 P F ③ ②で引いた平行線が直線 x , y と交わる点を見つけ,点О F x O x O から矢印を引くと,力 A, B 参考 y ③ が,力 F の分力となる。 力 F は力 A,B に移り変 わ っ た と 考 え る の で,も との力 F には × をつけて おくとわかりやすい。 B F O できた2つの分力を合成すると, また,もとの力にもどる。 x A 問題 次の①,②の力を,点線( )で示した方向に分解しなさい。なお,作図後は,もとの力に×をつ けておきなさい。 ① ② F O F 8 O 新理科3年第4版01_pe6.pdf 9 2016/02/05 15:45:26 第1ハードル 力のつり合いと合成・分解 (3)斜面上での力の分解 〈図1〉 〈図2〉 Cさん 図1,2は,Cさんが斜面上を歩いている様子である。 Cさん すべ このとき,どちらの方が滑り落ちやすいだろうか。 もちろん,それは図1の方である。これを理解するに は,図3,4のように,Cさんにはたらく重力 W を斜面 に平行な分力 A と,斜面に垂直な分力 B に分けて考え るとよい。 ① Cさんにはたらく重力 W は,どちらも同じ大きさで 〈図3〉 ある。 〈図4〉 ② 斜面に平行な分力 A1 と A2 を比べると,A1 > A2 で ある。 A1 B1 A2 ③ よって,図1の方が,斜面に平行な分力が大きいから, B2 「滑り落ちやすい」とわかる。 W W (4)斜面上でのつり合い 図1,2で,Cさんは,斜面が急でも滑り落ちずに, 斜面に立っている。これは,つり合いの状態にあるとい 〈図5〉 える。このときにはたらいている力を示したのが,図5, 〈図6〉 Y1 X1 Y2 6である。 「滑り落ちよう」としている斜面に平行な分力 A1,A2 に対しては,摩擦力 X1,X2 で支えている。また,斜面 X2 B1 A1 A2 に垂直な分力 B1,B2に対しては,斜面からの垂直抗力 B2 Y1,Y2 で支えている。よって,斜面上でつり合う(落 ちずに静止する)には,斜面が急になるほど,大きな摩 擦力が必要になることがわかる。 まとめ の問題 1.( )に適当な語句を入れるか,または選びなさい。 (1)1つの力を,同じはたらきをする2つの力に分けることを力の ①( )という。また, ①によっ てできた2つの力を ②( )という。 (2)斜面上では,急な斜面ほど斜面に平行な分力は(大きく・小さく)なる。 2. 次の①∼④の力を,点線( )で示した方向に分解しなさい。なお,作図後は,もとの力に×をつけておきなさい。 ① O ② F F O ③ ④ W W 9 新理科3年第4版01_pe6.pdf 10 2016/02/05 15:45:26 第1章 運動とエネルギー 〈図1〉 3力のつり合い 〈図2〉 お母さん Mさん (1)3力のつり合いの例 F Mさん 図1のように,Mさんとお母さんの2人が荷物を持っ お母さん B A ている。このとき,荷物は静止しているので,つり合っ ているといえる。このことから,W と向きが反対で大きさ A の等しい力 F が存在しているはずである。 F Mさんが 支える力 お母さんが 支える力 O B この力 F を,Mさんの左手の向きと,お母さんの右手 の向きに分解する。そのときの分力 A,B が,それぞれM W W さんとお母さんが荷物を支える力となる。 (図2) 〈図3〉 逆にいうと,力 A,B の合力 F が力 W とつり合うとき, 3力はつり合いの関係にあるといえる。 P Q F (2)3力のつり合いの求め方 B A ① 2本の糸でおもりを支える場合 O 図3では,天井からつるした2本の糸が1つのおもりを支え,つり 合っている。このときの分力の求め方は次の通りである。 1)おもりの重力 W と大きさが等しい力 F をOから上向きに引く。 2)OP,OQ上に,力 F の分力 A,B を求める。 ② 摩擦のない斜面で,物体を糸で支える場合 W 〈図4〉 〈図5〉 F y 図4のように,斜面上の物体を力 B で支え ているときの分力の求め方は次の通りである。 B 1) ①の1)と同様に力 F を引く。 A B 垂直抗力 O O 2) x ,y 方向に分力A,Bを求める。力Aは物 x 体が床から受ける垂直抗力で,力Bは手で 糸を引いて物体を支える力となる。 (図5) W W 下の図は,すべてつり合いの状態にある。支えるためにはたらいている力を ○ 点から作図して求めなさい。 (1)糸で物体を支える。 (2)糸で物体を支える。 120° (4)水中の物体を糸で支える。 (3)ロープウェーが静止している。 120° (5)台ばかりの上の物体をばねで (6)斜面上の物体を糸で支える。 支える。 摩擦は考え ない。 台ばかり リカちゃんは氷の上に立っているので,リカちゃんの重さと氷からの垂直抗力が「つり合っている」といえる。 「つり合いがく ずれる」とは,氷からの垂直抗力がリカちゃんにはたらく重力を支えきれず,氷が割れて水の中に落ちてしまうことをいう。 10 新理科3年第4版01_pe6.pdf 11 2016/02/05 15:45:26 第1ハードル 力のつり合いと合成・分解 ク チェッ ト シ ー 力のつり合いと合成・分解 1.力のつり合い ( )に適当な語句を入れなさい。 1 2力のつり合いの条件 2 いろいろなつり合う力(物体はすべて図の状態で静止している) 1) 1)2力は同一 ① ( )上にある。 2) ①( )力 ③( )力 2)2力の大きさは ② ( )。 3)2力の向きは ③ ( )である。 水 ②( )力 3) 4) ⑤( )力 ④( )力 ⑥( )力 3 つり合う力の作図(次の図は,すべてつり合いの状態にある。 点からもう1つの力の矢印を書きなさい。) ① ② ③ 水 2.力の合成・分解 ( )に適当な語句を入れなさい。 1 ・2つの力を,1つの力に置きかえること → 力の ①( )。①によってできた1つの力 → ②( )。 ・1つの力を同じはたらきをする2つの力に分けること → 力の ③ ( )。③によってできた力 → ④( )。 2 作図によって,次の①∼④は合力を,⑤∼⑧は分力を求めなさい。 ① ② ③ ④ O O ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ W W 11 新理科3年第4版01_pe6.pdf 12 2016/02/05 15:45:26 第1章 運動とエネルギー 練習問題 1. 次のa∼cは,それぞれ点Oにはたらく2つの力 F1と F2を矢印で示したもの 1. である。方眼の1目盛りが1N を示すものとして,後の問いに答えなさい。 (1) 左の図に作図しなさい。 a b c F1 F1 F1 O (2) b N c N O O F2 F2 F2 (1)a∼cについて,F1 と F2 の合力を作図によって求めなさい。なお,作図 に用いた線は消さないで残しておくこと。 (2)bとcにおいて, (1)で求めた合力の大きさはそれぞれ何 N か。 2. 次のa∼eは,それぞれO点にはたらく同じ大きさの2つの力 F1と F2を示し (1) たものである。これについて,後の問いに記号で答えなさい。 a 2. b c d e O O O O 60° 45° (2) 180° O F1 120° F2 F1 90° F2 F1 F2 F1 F2 F1 (3) F2 (1)F1と F2の合力が最も大きくなるものは,a∼eのうちどれか。 (2)F1と F2の合力が,F1,F2のそれぞれの大きさと同じになるものは, a∼e のうちどれか。 (3)F1と F2がつり合いの状態にあるものは,a∼eのうちどれか。 3. 次のa∼cは,それぞれ点Oにはたらく力 F を表している。方眼の1目盛りが 1N を示すものとして,後の問いに答えなさい。 a 左の図に作図しなさい。 b y c O x F O F O y y (1)a∼cについて,力 F を,x ,y 方向にそれぞれ分解しなさい。 (2)a∼cについて,(1)で求めた x 方向の分力の大きさはそれぞれ何Nか。 12 (2) aの x 方向 N bの x 方向 N cの x 方向 N x F x 3. (1)
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