特集 / 2016年心療内科クリニック経営最新レポート 特別インタビュー <インタビュアー㈱船井総合研究所 田熊 孝治> 医療法人きょう 理事長 新六本木クリニック 院長 姜 昌勲氏 来田 誠氏 2005年奈良市にてきょうこころのクリニックを開設。2010年 には大和西大寺きょうこころのクリニックを開院。2015年に 2クリニックを統合。現在では11名の医師を抱え、児童・思 春期患者を中心に、日々診療を行っている。 京都大学医学部卒業。大阪赤十字病院での初期研修を 経て、医療法人養心会 国分病院に勤務。 2010年より大和西大寺きょうこころのクリニック院長を経て、 2016年1月に新六本木クリニックを開設。 増える児童・思春期患者に 医院はどう対応すればいいのか? 田熊━ 本日は「心療内科クリニックにおける 来田氏━ 児童・思春期患者の対応」についてお 二方にお話をお伺いできればとおも います。まずは簡単に医院のご紹介 をお願いできますでしょうか? 姜氏━ 私は姜先生の法人で分院の院長を経 験させていただいた後、現在は六本 木でクリニックを開業しております。 新六本木クリニック開業後の現在も、 週に1度きょうこころのクリニックで非 常勤として勤務させてもらっています。 はい。当法人は奈良市西大寺にて きょうこころのクリニックの診療を行っ ています。成人中心に診療する一般 外来とともに児童思春期外来を行っ ており、現在院長である私を除いて、 10名の先生にご勤務をいただいてい ます。 Copyright 2016 Funai Consulting Incorporated All rights reserved きょうこころのクリニックの外観。診察室は5つあり、 常時複数医師による診療体制が築かれている。 -1- 特集 / 2016年心療内科クリニック経営最新レポート 田熊━ 姜氏━ さて、本題の「児童思春期患者の対 応」についてなのですが、姜先生の医 はなく、状況によっては専門資格を 院では1日どれくらいの児童・思春期 持ったスタッフと連携して、学校の先 患者の診療を行われていますか? 生や幼稚園の先生から問題点などの 当院では多い日には1日120人の児 情報提供をお願いする場合もありま 童・思春期患者さんが来院されます。 す。 医師1人当たりでいうと、平均するとだ 田熊━ 来田氏━ 患者さんご本人や保護者の方だけで 田熊━ 診察の場だけに限らず情報収集を行 いたい1日80人ぐらい診察をしている うことで、診察自体は効率的に、しか ことになるでしょうか。 し診察内容の質は高く維持することが できるのですね。 一般的に児童・思春期患者の診察は 診察中に何か意識していることはある 非常に時間がかかるというイメージが でしょうか? あると思うのですが、そのあたり効率 的に診療を行うために、どのような取 来田氏━ 診察は診療時間を明確に伝えること、 り組みをされていますか? 姜氏━ 診療で一番時間がかかるのは、患者 さんの情報収集の部分です。 そして今日の診察のゴールを明確に することの2点が重要だと思っていま す。 特に成育歴の聞き取りは非常に時間 具体的には、診察が始まる時点で がかかるため、患者本人の診察とは 「今日の診察時間は20分程度になり 別に保護者の方のみの診察の時間を ます。ですので、先日まとめて下さい 作り、成育歴を中心に聞き取りを行っ とお願いしたことについて教えてくださ ています。また、母子手帳を中心とし い。」「今日の診察時間は10分程度で た資料も患者さんの状態を正確に把 すので、相談したいことの中から重要 握するためにはとても重要になってき なことを2つ選んで質問してください。」 ます。それらの資料は診察前にそろ という形で、診察時間と具体的に何を えていただくことは徹底してお願いし するのか?を伝えています。 ています。 Copyright 2016 Funai Consulting Incorporated All rights reserved -2- 特集 / 2016年心療内科クリニック経営最新レポート 田熊━ なるほど。医師側がしっかりと主導権を 来田氏━ 遠隔診療の患者への認知度はまだま 持って診察を行うことが重要なのですね。 だ低いですが、今後は加速度的に普及 していくのではないかと思います。 来田氏━ その通りです。患者さんの話をじっくり 心療内科・精神科とは非常にマッチす 聞いて。。。というのも確かに大切だと る制度だと思いますね。 思います。しかし、児童・思春期に対す る精神科医療が充分に普及していると は言えない状況を考えると、効率的に 診療を行うということも非常に重要な視 点だと思います。そうすれば受け入れら れる患者さんの数も増え、初診までお 待ちいただく期間も短縮することができ 2医院とも遠隔診療(ビデオチャットでの診療)を取り入れ、 患者の利便性向上を図っている。 ます。ひいてはそれが地域の精神科医 療に貢献することになるのではないか 田熊━ なと。 田熊━ なるほど。患者の利便性向上だけでは なく、キャンセル率や予約時間に遅れる 患者の減少など、効率的に診療すると 本当におっしゃる通りですね。 いう観点で見ても導入するメリットはあ お二人の医院では昨年末に実質解禁と りそうですね。 なった遠隔診療も取り入れられていると いうことなのですが、その狙いはどのあ 話は少し変わりますが、患者数が多い たりにありますか? ので受け入れ枠を増やしたいという医 姜氏━ 本人が受診を嫌がっているようなケー 院でも、代診のドクターやスタッフの確 ス、または自閉症など待合で待つこと 保に苦労していて実現できていないと が難しいケースなど、医院に患者を連 いう先生の声をよく伺います。 れてくることが難しい場合にテレビ電話 お二人の医院は非常勤医師を雇用して なら面接可能な場合も多いと考えてい の複数診体制を築いていらっしゃいま ます。 すが、医師をはじめとした職員の確保 はどのようにされていますか? 来田氏━ 精神科の診療は処置などの物理的な 診察や検査はごく一部です。 初診時や採血が必要な場合は来院が 姜氏━ 必要になりますが、それ以外ではビデ オチャットを介した診察でもさして問題 は無い、というのが現在の感触です。 Copyright 2016 Funai Consulting Incorporated All rights reserved 児童・思春期を専門的に診察する医療 機関の数はまだまだ少ないです。病院 を除いて診療所に限定するとその数は さらにぐっと少なくなります。 -3- 特集 / 2016年心療内科クリニック経営最新レポート 来田氏━ 児童・思春期の診察に携わりたいという 来田氏━ 先生は多いのですが、実際に学ぶ場は そういった意味では、現在児童・思春 期に携わっている先生が受け入れ枠 それほど多くないというのが私の印象で を拡大すること、そして新たに児童・ す。私の知り合いの児童・思春期に興 思春期に取り組まれる先生が増える 味のある医師にきょうこころのクリニック ことが必要だと思います。 を紹介して働いてもらっているケースも あるぐらいですので。 田熊━ 田熊━ そのような先生は学びたいという意欲が かかり、生産性があまり良くないとい 強く、勉強熱心な方が多い印象ですね。 うイメージが強いと思うのですが、そこ は仕組みでカバーできる領域なので 専門性が明確なことは人材確保の上で しょうか? も有利に働くということですね。ありがと うございます。では、最後に現在児童・ 姜氏━ 一般的に児童・思春期外来は時間が 来田氏━ 可能だと思います。先ほどお話しした 思春期外来に携わっている先生、またこ ような方法をはじめ、工夫の余地はま れから児童・思春期外来を強化しようと だまだあると思います。 思われている先生に向けてメッセージを 児童・思春期に熱心に取り組まれて お願いできますでしょうか? いる先生が経営的に成功されること は、その後に続く先生を産み出すこと はい。児童・思春期に対する精神科 につながると思います。 医療はとてもやりがいのあるものだと 思います。心理士などの専門職ととも 北垣━ にともに成長できる点も非常にいいな 本日は大変貴重なお話しを聞かせて いただき、ありがとうございました。 と思います。 来田氏━ 私もそう思います。しかしまだまだ需 要と供給のバランスがいびつだという 姜氏━ ありがとうございました。 来田氏━ ありがとうございました。 のが現状だと思います。 Copyright 2016 Funai Consulting Incorporated All rights reserved -4- 特集 / 2016年心療内科クリニック経営最新レポート 特別 解説 地域の精神科医療のために児童・思春期外来に 取り組む精神科院長先生へ (株)船井総合研究所 医療・介護・福祉・教育支援部 チームリーダー 田熊 孝治 船井総合研究所入社以来、診 療所・病院を中心に医療業界の コンサルティングに従事。 「一過 性でない、永続する強い病医院 作り」をテーマとしたコンサルティ ングを実施している。 収集を行い、医師へフィードバックすることで医師 は診察業務に集中することができます。 効率化の為には患者の協力が必須 診察自体を効率化するためには、患者さんの協 力は必須です。そのためにはそれぞれの回の診 治療の質を落とさずに効率的に診察。 児童・思春期外来3つの成功ポイント 察ではどのようなことを行うかを明確に患者に伝 現在のわが国における児童・思春期患者に対す 握って診察をしないと、保護者はわが子を思うが る精神科医療の普及状況は十分とは言えず、“児 あまり、“あれもこれも”と前回の診察からの出来 童・思春期専門外来を受診しようと思うと数か月 事をすべて伝えようとします。 待ち”という状況が続いています。 前頁までのインタビューの中でも触れられていた えることが重要です。医師がしっかりと主導権を そうではなく、「今一番困っていることをはじめと した、中心となるポイントに着目して1つずつ問題 ように、現在児童・思春期外来に取り組む医院の を解決していく。」という診察の構造を理解してもら 果たす役割は非常に重要であると言えます。 い、協力を得なければいけません。そのためには そのような医院が診療体制を強化し、1人でも多く 初診時に“どのように診察を行っていくか”というマ の患者さんとそのご家族を受け入れるためには何 インドセットを患者と保護者に行う必要があります。 がポイントとなるのか?このページでは3つのポイ 組織力強化による受入枠拡大 ントに絞って解説します。 多職種連携による情報収集効率化 効率的な診察を行う体制が整ったら、採用を始 めとした組織力を強化し、患者の受入枠を拡大し 提供する医療の質を落とさずに診療を効率化す ます。多職種による連携、また多数のスタッフを抱 るための1つめのポイントは、患者の現状把握の えるとなると、それらのベクトルを統一するための ための情報収集を効率化することです。 医院理念、価値観を打ち出す必要があります。 児童・思春期患者はその特性上、保護者をはじめ また、それらを教育制度・評価制度などの仕組み とした、周囲の関係者からの情報収集が必要とな に落とし混み、医院に浸透させることも必要となっ ります。 てきます。 本人の診察前に、精神保健福祉士や心理士が チームとして役割分担を明確にしたうえで、情報 Copyright 2016 Funai Consulting Incorporated All rights reserved -5- 特集 / 2016年整形外科クリニック経営最新レポート 「2016年心療内科医院経営レポート」を お読み頂いた熱心な院長先生へセミナーのお知らせです。 まずはお忙しい中、レポートをお読みいただきましてありがとうございました。 地域の精神科医療のために、児童思春期対応を真剣に考える、先生のような意 欲のある院長先生のために、特別にセミナーをご用意しました。 セミナーでは今回のレポートにも登場してくださった、新六本木クリニック院長の 来田誠先生にゲスト講師としてご登壇いただきます。来田先生にはレポートでは 書ききれなかった児童・思春期患者の実際の診療についてお話しいただく予定で す。当日お話しする内容は、机上の空論ではない実際の現場事例、そこから導 き出されたルールばかりです。本やネットに書いてある内容とは違います。 セミナー当日にお話しする内容のほんの一部をご紹介すると・・・ ■児童・思春期外来の現状とこれから ■“効率”と“医療の質”を両立させるための診療フローと3つのポイント ■情報収集を効率化するための多職種連携ミーティング ■保護者に診察の構造を理解してもらうプレゼンテーションツール ■再診問診の徹底が診療効率を高める!再診用問診票の使いかた ■治療内容や処方薬に納得してもらうための説明ツール ■書類作成業務をスタッフに分担するためのコツ ■自院の認知度を高めるためのWEB徹底活用法 ■医院が持続的に発展するための人材戦略の考え方 ■PPC広告?Indeed?スマホの普及で様変わりした採用事情 ■入職後が本当の勝負。職員が成長するための教育・評価手法 ■ドクターのモチベーションを高めるインセンティブ型給与制度 ■本当に有用なのか?先駆者が語る遠隔診療の実際 Copyright 2016 Funai Consulting Incorporated All rights reserved -6- いかがでしょうか?「えっ!?そんなことをしてるんだ!」「こんなとき他院はどう しているんだろう?」と思うものがあったのではないでしょうか? ちなみに今回のセミナーでは、講義内容をCDやDVDで販売する予定はございま せん。なぜなら、一般にはオープンにしづらい情報もお伝えする予定だからです。 ですから、たっぷり4時間これだけの豊富な最新事例を手にしていただくことがで きるのは、当日セミナーにご参加いただいた方だけの特権ということになります。ま た、会場の都合上、ご用意できる席は30席だけとなっております。 正直私たちは、すべての心療内科・精神科医院のお役に立てるとは思っていま せん。しかし、「通院してくれている患者さんのために、貴院で働くスタッフのため に医院をもっと良くしたい!」と考える院長先生にとっては必ずお役に立てると 思っております。ぜひこの機会に、院長先生がご参加頂き、少しでも早く成果につ なげていただきたい。そう願っています。 すでに児童・思春期患者を中心に診療をされている先生はもちろん、地域の精 神科医療のために児童・思春期対応を強化されようとお考えである、熱心な先 生のご参加を心からお待ちしております。 株式会社船井総合研究所 医療・介護・福祉・教育支援部 医療チーム チームリーダー 田熊 孝治 Copyright 2016 Funai Consulting Incorporated All rights reserved -7- 検
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