清流高津川流域・津和野高校の取り組み

2616 年 8 月 27 日
森と里と海のつながり最新ニュース6
清流高津川流域の森里海のつながりを学ぶ津和野高校サマーキャンプ
田中 克
山陰の小京都津和野を流れる“日本一の清流”高津川
島根県西部の津和野を流れる高津川は本流にダムがひとつもなく、国土交通省により水
質日本一に認定された清流として知られています。標高 1260m を超える安蔵寺山の稜線近
くにはブナ林が発達し、豊かな水を育んで来ました。日本に健全な森をつくる委員会(養
老猛委員長)が支援し、津和野町は「美しい森造り条例」を制定し、森里海連環に基づく
地域創生が進められています。地元の津和野高校では、県内外から積極的に高校生を受け
入れ、豊かな自然と共に生きる人材の育成に力を入れています。
清流日本一の川を揺るがす大洪水
2012 年に中国地方を襲った集中豪雨は高津川の支流に壊滅的な打撃を与え、護岸が
広域にわたり崩壊し、その修復作業が続けられています。そのため、雨のたびに濁水が
本流に流れ込み、近年では水質が悪化し、アユの不漁が続くなど、清流高津川の名が崩
れ行く事態に地元では危機感が広がっています。アユの不漁は、河川環境の悪化と共に
海に下った仔魚の生き残りが、高水温の影響などにより、年々低下し、森と海をつなぐ
代表的な生き物であるアユにとって厳しい状況に至りつつあります。
津和野高校が進める森里海連環サマーキャンプ
津和野は文豪森鴎外が生まれた土地として知られています。鴎外は東京都文京区で一生
を終えたことより、両地は姉妹都市の提携を結び交流を図っています。津和野高校は、少
子高齢化の中で高校への進学生が年々減少して高校の存立基盤が揺るぎ始める中、県内外
からの高校生を受け入れる方針を進めています。特に、都会の環境にはない類稀な
自然の中での高校生活を送れることを大きな利点に変えて、街を元気付ける道を模索して
います。その一環として高津川の源流域に広がるブナ林から河口域のチョウセンハマグリ
が生息する海までのつながりを体感するサマーキャンプを立ち上げました。
安蔵寺山のブナ林が日本海のチョウセンハマグリを育む
多くの川では、最初の一滴が湧き出る源流を特定することは不可能ですが、この高津
川では源流点がはっきりしています。それには、かつて水源を巡る山口県の錦川水系と
の争いに敗れ、源流域を失った歴史的背景があるからです。失った源流域から伏流した
水が湧き出る池が水源地とされ、そこには樹齢数百年の大杉が保存されています。サマ
ーキャンプでは、安蔵寺山の頂上から山を下り、源流地、川の上流、中流、下流と人々
の営みの拡大と共に、川の水質や水中生物が変化する様子の観察を通じて、人と自然の
かかわりを体感する実習が行われました。そして、高津川河口近くに広がる海は、日本
海では唯一のチョウセンハマグリの生息地であり、汀線近くにも生息する多くの稚貝の
採集と観察を通じて、森と川と海のつながりを実感するプログラムが実施されました。