相続手続き【Q&A】

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営相
談 相続手続き【Q&A】
坂本和則
花野 稔
2016.10.17
相談部 東京相談室
相談部 大阪相談室
身近な人が亡くなった場合、遺族は通夜や葬儀の準備に始まり、市区町村などへの届
出、年金などの社会保険関係の届出、遺産分割手続き、相続税の申告などの税務手続
き、さらに各種資産の名義変更など、さまざまな手続きを行う必要があります。
今回は、相続が発生した後の各種手続きについて、手続きの種類と期限、手続きに必
要となる届出・書類などを示し、スムーズな手続きが行えるよう手続きの流れなどを
解説します。
※紙面の都合により、相続税の申告や準確定申告などの税務手続きや、相続放棄などを含む遺産分割に係
る手続きについては割愛しています。
1. 市区町村への届出関係の手続き
[1]家族が亡くなった直後、市区町村へはどのような届出が必要ですか。
まず、「死亡届」を提出します。「死亡届」には「死亡診断書」(死体検案書)の添付が必要となり
ますが、死亡届の用紙は死亡診断書とセット(用紙の左半分が死亡届、右半分が死亡診断書)となっ
ているので、医師から死亡診断書を受け取ったら、死亡届に必要事項を記入して提出します。提出期
限は、死亡を知った日から7日以内ですが、死亡届を提出しないと「火葬許可証」が交付されないの
で、できるだけ早く(死亡した当日または翌日)提出します。死亡届の届出人は、親族、親族以外の
同居者、いずれもいない場合は家主、家屋管理人などで、提出は届出人以外でも代行することができ
ます(葬儀社に依頼することも可)。また、提出先は、届出人の現住所もしくは死亡した人の本籍地、
死亡したところのいずれかの市区町村となります。
死亡届の手続きを終えたら、「火葬許可申請書」を提出し、火葬許可証の交付を受けます。火葬許
可証は、火葬の際に火葬場に提出します。火葬終了後に認印押されて返却され、これが「埋葬許可証」
となります。この埋葬許可証がないと、埋葬納骨ができないので、きちんと保管するようにします。
なお、市区町村によっては、火葬と埋葬の許可申請が一体となっている形式もあります。
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[2]そのほか、市区町村への届出が必要なものには、どのようなものがありますか。
亡くなった人が世帯主であった場合は、
「世帯主変更届」
(住民異動届)を提出しなければなりませ
ん。ただし、夫婦2人暮らしで、その一方が亡くなって世帯員が1人になった場合や、遺族が母と小
さな子といった組み合わせのように、新しく世帯主となる人が明らかな場合は、提出の必要はありま
せん。提出先は、亡くなった人の住所地の市区町村で、提出期限は、世帯主が亡くなった日から 14
日以内です。
このほか、必要に応じて行う届出、手続きとしては、ひとり親家庭となった場合の「児童扶養手当」
の申請手続きや、諸事情により姻族との関係を解消したい場合の「姻族関係終了届」、旧姓に戻る場
合の「復氏届」などがあります。
2. 社会保険関係の手続き
[1]社会保険のうち、健康保険についてはどのような手続きが必要ですか。
亡くなった人が国民健康保険の加入者だった場合は、「国民健康保険資格喪失届」(75 歳以上の場
合は「後期高齢者医療資格喪失届」)を提出し、健康保険証を返却します。届出先は、死亡した人の
住所地の市区町村で、届出期限は、死亡後 14 日以内です。なお、亡くなった人が世帯主で、その家
族も国民健康保険の加入者だった場合は、亡くなった人の保険証の返却と同時に、家族は世帯主など
を書き換えた国民健康保険証を新たに発行してもらうことになります。
一方、亡くなった人が会社員で健康保険組合、政府管掌保険組合、共済組合の加入者だった場合は、
勤務先に保険証を返却し、資格喪失の手続きを行うことになりますが、基本的には退職手続きと一緒
に会社側で行います。この場合、被保険者だった遺族は、一般的には国民健康保険に加入することに
なります。国民健康保険の加入期限は、資格喪失から 14 日以内です。資格喪失から時間をおいて申
請した場合は、さかのぼって保険料の支払いを求められることがあります。なお、扶養家族が亡くな
った場合は、勤務先に被扶養者の異動手続きをしてもらうことになります。
[2]年金についてはどのような手続きが必要ですか。
亡くなった人が国民年金や厚生年金を受給していた場合は、死亡に伴い「年金受給権者死亡届」
(報
告書)を提出し、速やかに受給を停止する手続きを行わなければなりません。なお、日本年金機構に
住民票コードが収録されている場合は、原則として死亡届の提出を省略できます。提出の要否など、
詳しくは年金事務所へ確認してください。
一方、亡くなった人の未支給の年金を遺族が受け取る場合は申請が必要です。申請は、居住地の市
区町村や所轄の年金事務所に年金証書と死亡届(提出が必要な人のみ)、「未支給(年金・保険給付)
請求書」を提出します。なお、死亡届と請求書はセットとなっており、受け取っていない老齢年金が
ある場合は、同時に請求できます。
また、残された遺族のための制度である「遺族年金」については、亡くなった人が加入していた年
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金制度によって受給要件が異なります。遺族は、その要件をしっかり確認し、受給漏れがないように
手続きを行うことが大切です。
[3]そのほか、社会保険関係で行う必要がある手続はありますか。
国民健康保険や健康保険を利用して療養中に、医療費の自己負担額が高額となり、一定の金額(自
己負担限度額)を超えた分は、あとで払い戻されます。この制度を「高額療養費」といいます。高額
療養費は死亡後に請求することもできます。請求先は、国民健康保険の場合は住所地の市区町村、そ
れ以外の健康保健などの場合は協会けんぽ、または健康保険組合です。請求期限は、診療月の翌月1
日から2年です。請求を失念する場合も見受けられるので、早めに請求することが大切です。
そのほか、亡くなった人が国民健康保険もしくは後期高齢者医療制度に加入していた場合は「葬祭
費」が、会社員で健康保険などに加入していた場合は「埋葬料」(埋葬費)が、葬儀を行った人(喪
主など)に支給される場合があります、申請書の提出先は、葬祭費については亡くなった人が住んで
いた市区町村、葬祭料については協会けんぽ、または健康保険組合です。
3. その他の手続き
[1]市区町村関係、社会保険関係の届出や手続き以外に、どのような手続きを行う必要がありま
すか。
亡くなった人によって異なりますが、以下のような届出・手続きが必要になると考えられます。
① 公共料金(電気、ガス、水道など)の契約者の変更
とくに期限などはありませんが、速やかに手続きを行います。
② 賃貸借契約の住居の解約もしくは名義人の変更
亡くなった人が契約していた賃貸住宅について、民間の場合は家主に連絡をし、相続人が契約
を引き継ぐのか、または解約するのかなど、今後の対応を協議します。公営の場合は、権利承継
などに許可基準などがあるので、まずは契約窓口などに問い合わせます。借地の場合も、地主に
連絡し、名義変更などの手続きを行います。
③ 預貯金や株式、不動産などの名義変更
預貯金や株式、債券、不動産、自動車、電話加入権、ゴルフ会員権、リゾート会員権などの名
義変更は、遺産分割が正式に決まってからでないと手続きが行えません。変更手続きには、戸籍
謄本などさまざまな書類を用意する必要があるので、早めに手続き窓口に確認し準備するように
します。
④ 住宅ローンの手続き
住宅ローンを借りる際には、基本的に団体信用生命保険(借主が住宅ローンの返済途中に死亡
した場合や高度障害状態になった場合に、生命保険会社がローン残高を支払う制度)に加入する
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ことになっています。早めに関係金融機関に連絡し、請求手続き(ローンの返済手続き)を行い
ます。
⑤ 生命保険金(死亡保険金)の請求
亡くなった人が生命保険に加入(被保険者)していたら、受取人に指定された人は保険金を受
け取ることができます。死亡保険金の請求の期限は、法律上は死後2年以内に請求しないと受け
取る権利を失ってしまいます。保険会社によっては、死後3年以内としている場合もありますが、
速やかに請求手続きを行います。
⑥ クレジットカードの退会
亡くなった人名義のクレジットカードの会費などが、自動的に引き落とされてしまうことがあ
ります。できるだけ早く、亡くなった人名義のカード類をチェックし、退会の手続きを行います。
このほか、運転免許証や士業などの公的資格の返却、生命保険や火災保険などの契約者の変更手続
きなど、亡くなった人の状況に応じてさまざまな手続きが必要となります。
4. 主な手続き一覧
手続きの種類
手続きの窓口
死亡届
(死亡を知った日から7日以内)
原則、死亡者住所地の市区町村
死亡届のほか、死亡診断書
または死体検案書
火葬許可書(7日以内)
死亡届を提出した市区町村
火葬許可申請書
世帯主変更届(14日以内)
死亡者住所地の市区町村
住民異動届
姻族関係終了届
届出人の本籍地または住所地の
市区町村
配偶者の除籍謄本など
復氏届
届出人の本籍地または住所地の
市区町村
婚姻前の戸籍謄本など
年金の停止、および未支給年金
の請求
【国民年金加入者】
死亡者住所地の市区町村
※生計を共にしていた遺族であれば 【厚生年金加入者】
未受給分の受給資格あり
死亡者住所地の年金事務所
主な提出書類など
年金手帳、死亡を証する書類、
死亡者との身分関係を明らかに
する書類(戸籍抄本など)
遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一
請求者の住所地の市区町村
時金の受取請求
申請書のほか、受給資格を証す
る書類など
遺族厚生年金の請求
請求者の最寄りの年金事務所
申請書のほか、受給資格を証す
る書類など
協会けんぽなどへの埋葬料の請求
(死亡日から2年以内)
死亡者の勤務先管轄の協会けん
ぽ、健康保険組合など
勤務先証明書(証明書が提出でき
ない場合は死亡診断書など)、健
康保険証、住民票
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国民健康保険への葬儀費の請求
(死亡日から2年以内)
死亡者の住所地の市区町村
公共料金の契約者の変更
契約中の電力会社、ガス会社など 変更届など
賃貸借契約の解約または変更
家主、不動産管理会社など
変更契約書など
土地・建物などの不動産所有権
移転登記
不動産所在地の管轄法務局
相続登記申請書、被相続人の戸
籍・除籍謄本・改製原戸籍謄本、
相続人全員の印鑑証明書・戸籍
謄本・住民票、固定資産税評価証
明書、遺産分割協議書(分割協
議後の場合)
預貯金、株式、公共債などの
名義変更
金融機関
所定の依頼書、戸籍謄本、遺産
分割協議書など
死亡保険金の請求手続き
契約保険会社
保険証、死亡保険請求書、死亡
診断書など
生命保険・損害保険の契約者の変更 契約保険会社
保険証、所定の届出書、除籍謄
本など
自動車の名義変更
死亡者の戸籍・除籍謄本・改製
原戸籍謄本、相続人の戸籍謄
本・印鑑証明書、車検証、自賠
責保険証など
死亡者の住所地の管轄陸運局
年金手帳
健康保険証
死亡者の住所地の市区町村
(健康保険・厚生年金は勤務先) 年金手帳(年金の停止を同時に実施)
運転免許証
死亡者の住所地の管轄警察署
健康保険証
返却
死亡者の国民健康保険証、葬祭費
の領収証
そのほかの免許など
都道府県・市区町村などの
公共交通機関の無料カード 発行元窓口
運転免許証
発行済み免許証
発行済みカード
内容は2016年3月28日時点の情報に基づいて作成されたものです。
本情報は、法律、会計、税務などの一般的な説明です。個別具体的な法律上、会計上、税務上等の判断や対策などについては専門家
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