(2016 年 10 月号掲載) 企業におけるワークスタイル変革への取り組み 群馬経済研究所主任研究員 ― 要 約 伊勢和広 ― 1. 経済グローバル化の進展、15~64 歳の生産年齢人口の減少など、企業を取り巻く 環境が変化するなかで、ワークスタイル(働き方や働く環境)の変革を行う企業が 現れている。 2.ワークスタイル変革の主な目的は、情報通信技術(ICT)等を利用した「労働 生産性の向上」、「優秀な人材や多様な人材の獲得と活用」、「経費や廃棄物の削減」 などである。 3.ワークスタイル変革の具体例としては、情報通信技術等を利用した、①紙資料を 使用しない「ペーパーレス化」、②「決裁や会議の効率化」、③会社以外で仕事を行 う「テレワーク」、④社員個人の固定席を設けない「オフィスのフリーアドレス化」、 などがある。特に、多様な勤務形態を可能とする「テレワーク」の普及は、女性や 高齢者などの労働力活用にも繋がる。 4. ワークスタイル変革を行う際の大きな課題は、①社内全員の意識改革、②社内制 度の改革、③コスト負担、等であると考えられる。 5.ワークスタイル変革に成功した企業へヒアリングを行ったところ、①役員・管理 職が企業の将来ビジョンを実現するために社内改革に自ら積極的に参加している、 ②社内を横断した推進組織がしっかりとした推進スケジュールを組んで活動してい る、といった特徴があった。これらの成否がワークスタイル変革成功のカギとなる と思われる。 6.ワークスタイル変革の必要性を感じてはいるものの、コスト面や業務内容などか ら現実には導入に踏み切れない企業も多い。しかし、生産年齢人口の減少が進み、 業種を超えた人材獲得競争が激しくなるなか、優秀な人材や多様な人材を確保する うえで、 「仕事と生活の双方の調和」がとりやすい就労環境を整えることは大きな武 器となる。今後、企業規模に関わらず、ワークスタイル変革は進んでいくと思われ る。
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