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JP 5160149 B2 2013.3.13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柿タンニンから得られ、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキン−3−O−ガレー
ト(ECg)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)を含み得る柿ポリフェ
ノールオリゴマーであって、
B環のピロガロール率が70∼90%、ガロイル化率が40∼70%であってエピガロ
カテキン−3−O−ガレート三量体を含有し、
B環のピロガロール率は、
エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)のカ
テキン単量体と、
10
エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)から
のカテキン−メルカプトエタノール誘導体(EGC−ME、EGCg−ME)と、
全カテキン単量体量 及び、全カテキン-メルカプトエタノール(ME)誘導体量とを
用い、
B環ピロガロール率=100×{(EGC)+(EGCg)+(EGC−ME)+(E
GCg−ME)}/{(全カテキン単量体量)+(全カテキン-メルカプトエタノール(
ME)誘導体量)}の計算式から算出され、
ガロイル化率は、
エピカテキン−3−O−ガレート(ECg)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(
EGCg)のカテキン単量体と、
20
(2)
JP 5160149 B2 2013.3.13
エピカテキン−3−O−ガレート(ECg)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(
EGCg)からのカテキン−メルカプトエタノール誘導体(ECg−ME、EGCg−M
E)と、
全カテキン単量体量 及び、全カテキン-メルカプトエタノール(ME)誘導体量とを
用い、
ガロイル化率=100×{(ECg)+(EGCg)+(ECg−ME)+(EGCg
−ME)}/{(全カテキン単量体量)+(全カテキン-メルカプトエタノール(ME)
誘導体量)}の計算式から算出され、
エピガロカテキン−3−O−ガレート三量体は、
10
20
30
の化学構造を持つことを特徴とする柿ポリフェノールオリゴマー。
【請求項2】
抗酸化活性と、転写因子NF−κBの活性化阻害活性とが高められることを特徴とする
請求項1記載の柿ポリフェノールオリゴマー。
【請求項3】
α―グルコシダーゼ及び/又はα―アミラーゼに対してエピガロカテキン−3−O−ガ
レートよりも強い阻害活性を有することを特徴とする請求項1記載の柿ポリフェノールオ
リゴマー。
【請求項4】
40
疾患を改善し得る作用は、抗がん作用、抗炎症作用、動脈硬化抑制作用、抗歯周病作用、
抗う蝕作用であることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の柿ポリフェノールオ
リゴマー。
【請求項5】
疾患を改善し得る作用は、抗糖尿病作用、抗肥満作用であることを特徴とする請求項1、
3のいずれかに記載の柿ポリフェノールオリゴマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柿タンニンから得られる柿ポリフェノールオリゴマーに関するものである。
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(3)
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【背景技術】
【0002】
近年、少子高齢化社会の進展に伴って国民の健康指向が高まり、加齢によって加速する
疾病や生活習慣病への予防を図るべく、お茶から得られたお茶カテキンのカテキン類や、
リンゴ果実から得られたポリフェノール類が抗酸化食品として利用されている(例えば、
特許文献1参照)
【0003】
ここで、お茶カテキンのカテキン類は、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(E
GC)、エピカテキン−3−O−ガレート(ECg)、エピガロカテキン−3−O−ガレ
ート(EGCg)等であり、抗酸化活性、抗アレルギー作用や抗菌作用を有することから
10
、お茶の原料粉より抽出してカテキン類を取得し、更に他の材料に加えて錠剤、顆粒剤や
液剤等の状態の食品としてお茶のカテキン類を摂取可能にしている。
【0004】
又、ブドウ種子やリンゴ未熟果実から得られたポリフェノール類は、主としてエピカテ
キン(EC)が重合したプロアントシアニジンであり、お茶カテキンと同様に抗酸化活性
を有すると共に、抗動脈硬化作用や発癌予防作用等の薬理活性を有するので、原料粉より
抽出して、プロアントシアニジン等を含む種々のポリフェノール類を取得し、更に他の材
料を加えて錠剤、顆粒剤や液剤等の状態の食品として当該ポリフェノールを摂取可能にし
ている。
【0005】
20
一方、他の例としては、柿タンニンから得られた縮合型ポリフェノール化合物を利用し
て動脈硬化の予防改善を為し得るものが考えられている(例えば、特許文献2参照)。又
、植物中のプロアントシアニジンポリマーを生体の腸管から容易に吸収できる程度までに
低分子化したプロシアニジンオリゴマーの製造方法が示されている(例えば、特許文献3
参照)。
【特許文献1】特開平10−75740号公報
【特許文献2】特開2003−231684号公報
【特許文献3】国際公開第2006/090830号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
30
【0006】
しかしながら、お茶カテキンのカテキン類は大部分がモノマーであるため、カテキンが
2∼数個重合したオリゴマーに比べて薬理活性が低く、経口摂取した場合に薬理活性を充
分に得ることができないという問題があった。又、ブドウ種子のポリフェノール類は、平
均重合度が7∼9とやや高いため、吸収性に劣り、経口摂取した場合に薬理活性を充分に
得ることができないという問題があった。又、柿タンニンから得られた縮合型ポリフェノ
ール化合物は、高分子のポリマーであるため、ブドウ種子等のポリフェノール類と同様に
吸収性に劣り、経口摂取した場合に薬理活性を充分に利用することができないという問題
があった。更に、生体吸収し易いプロアントシアニジンオリゴマーであっても、それを構
成するカテキン組成によって薬理活性が大幅に変動するので、そのカテキン組成によって
40
は期待される程度までオリゴマーの薬理活性を高めることができないという問題があった
。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、経口摂取した場合に良好な吸収性を維持し
つつ薬理活性を飛躍的に高める柿ポリフェノールオリゴマーを提供することを目的として
いる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、B環のピロガロール率が70%
以上、ガロイル化率が40%以上となるように低分子化した柿ポリフェノールオリゴマー
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は吸収性を高めると共に薬理活性を向上させることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、柿タンニンから得られ、エピガロカテキン(EGC)、エピカテ
キン−3−O−ガレート(ECg)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)
を含み得る柿ポリフェノールオリゴマーであって、
B環のピロガロール率が70∼90%、ガロイル化率が40∼70%であってエピガロ
カテキン−3−O−ガレート三量体を含有し、
B環のピロガロール率は、
エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)のカ
テキン単量体と、
10
エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)から
のカテキン−メルカプトエタノール誘導体(EGC−ME、EGCg−ME)と、
全カテキン単量体量 及び、全カテキン-メルカプトエタノール(ME)誘導体量とを
用い、
B環ピロガロール率=100×{(EGC)+(EGCg)+(EGC−ME)+(E
GCg−ME)}/{(全カテキン単量体量)+(全カテキン-メルカプトエタノール(
ME)誘導体量)}の計算式から算出され、
ガロイル化率は、
エピカテキン−3−O−ガレート(ECg)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(
EGCg)のカテキン単量体と、
20
エピカテキン−3−O−ガレート(ECg)、エピガロカテキン−3−O−ガレート(
EGCg)からのカテキン−メルカプトエタノール誘導体(ECg−ME、EGCg−M
E)と、
全カテキン単量体量 及び、全カテキン-メルカプトエタノール(ME)誘導体量とを
用い、
ガロイル化率=100×{(ECg)+(EGCg)+(ECg−ME)+(EGCg
−ME)}/{(全カテキン単量体量)+(全カテキン-メルカプトエタノール(ME)
誘導体量)}の計算式から算出されることを特徴とする柿ポリフェノールオリゴマーに係
るものである。
【0010】
本発明のエピガロカテキン−3−O−ガレート三量体の構造は、式 30
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【化1】
10
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により表される新規プロデルフィニジントリガレート(1)である。
【0012】
このように、本発明によれば、柿ポリフェノールオリゴマーは、エピガロカテキン、エ
ピガロカテキン−3−O−ガレート、エピカテキン、エピカテキン−3−O−ガレートの
カテキン類を主要構成成分とし、B環のピロガロール率が70∼90%、ガロイル化率が
30
40∼70%となるような割合でカテキンが重合した構造であり、且つ二量体から五量体
までのオリゴマーが主要成分であるので、高分子のポリマーと異なり、経口摂取した場合
に吸収性の低下をきたすことなく、又、ピロガロール率やガロイル化率の低いオリゴマー
や、モノマーよりも高い薬理活性を示し、結果的に疾患を改善する機能を増強することが
できる。
【0013】
又、本発明者らは、柿由来の柿ポリフェノールオリゴマーが転写因子NF−κBに対す
る強力な活性化阻害作用を有することを初めて明らかにした。すなわち、遺伝子発現制御
に関与する転写因子の一つのであるNF−κBは、活性化されることによって、がん細胞
が増殖したり、エイズウイルスが複製したり、リウマチが発症したり、或いは糖尿病や動
40
脈硬化症へ関与したりすることが明らかになっているので、柿由来のポリフェノールオリ
ゴマーが有するNF-κB活性化阻害機能により、抗がん作用、抗炎症作用、動脈硬化抑
制作用、抗糖尿病作用を付与できる。更にプロアントシアニジンを単に断片化し、オリゴ
マー化するだけでなく、そのカテキン組成につきエピガロカテキン−3−O−ガレート(
EGCg)の比率を高めることによって、すなわちB環のピロガロール率が70%以上、
ガロイル化率40%以上とすることによって、α―グルコシダーゼ及び/又はα―アミラ
ーゼの消化酵素に対する阻害活性の高い柿ポリフェノールオリゴマーが得られることを初
めて明らかにした。この消化酵素阻害活性により、優れた抗肥満作用や抗糖尿病作用を付
与できる。
【0014】
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又、お茶カテキンによる研究から、ピロガロール型のエピガロカテキン(EGC)やエ
ピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)は、エピカテキン(EC)に比べて水酸
基の数が多く、抗酸化活性やラジカル消去活性が高いため、前者を構成カテキンとするポ
リフェノールオリゴマーは、後者を構成カテキンとするポリフェノールオリゴマーよりも
より強力な抗がん作用、抗炎症作用、動脈硬化抑制作用及び血圧上昇抑制作用を示すと考
えられ、ガン、関節炎、動脈硬化症、高血圧症、慢性腎不全等の疾患の予防や症状の改善
により有用である。
【0015】
一方、ガロイルエステル型のエピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)は、エ
ピカテキン(EC)に比べて糖分解酵素阻害活性、抗菌活性、抗ウイルス活性が高いため、
10
前者を構成カテキンとするポリフェノールオリゴマーは、後者を構成カテキンとするポリ
フェノールオリゴマーよりもより強力な抗糖尿病作用、抗肥満作用、抗う蝕作用、抗歯周
病作用を示すと考えられ、糖尿病、虫歯、歯周病等の疾患の予防や症状の改善により有用
である。
【0016】
柿ポリフェノールオリゴマーは、カテキン類のうちエピガロカテキン−3−O−ガレー
ト(EGCg)を多く含むように調整される。エピガロカテキン−3−O−ガレートは、
ブドウ種子やリンゴ果実由来のポリフェノールの構成成分であるエピカテキン(EC)に
比べて高い薬理活性、すなわち強力な抗酸化活性、抗アレルギー活性、抗菌活性や糖分解
酵素阻害活性を有しており、夫々の活性機能を介して、すなわち抗肥満作用、血圧上昇抑
20
制作用、抗歯周病作用、抗う蝕作用等を介して疾患の予防や症状の改善に寄与することが
できる。
【0017】
又、柿ポリフェノールオリゴマーは、適度に重合した二量体から五量体までのオリゴマ
ーを主要成分としており、且つカテキン組成中のエピガロカテキン−3−O−ガレートの
比率を高めることによって、経口摂取した場合に良好な吸収性を維持しつつ高い薬理活性
を発揮し、結果的に疾患の予防や改善作用が飛躍的に向上する。
【発明の効果】
【0018】
上記した本発明の柿ポリフェノールオリゴマーによれば、経口摂取した場合に良好な吸
30
収性を維持しつつ薬理活性を飛躍的に高めることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明の実施の形態の柿ポリフェノールオリゴマーは、渋柿の未熟果実や生皮中に含ま
れる柿タンニンを、低分子化反応剤としてのエピガロカテキン−3−O−ガレート含量4
0%以上のお茶カテキン又はエピガロカテキン−3−O−ガレートの存在下で酸性下で断
片化した後、吸着樹脂に吸着させ、充分水洗してからエタノール水溶液で溶出し、ついで
減圧濃縮した濃縮液を凍結乾燥又は噴霧乾燥することにより粉末として得られる。得られ
40
た柿ポリフェノールオリゴマーは、二量体から五量体までのオリゴマーを主要成分として
おり、組成的には、ピロガロール率が70%以上90%以下、ガロイル化率が40%以上
70%以下となるようにエピガロカテキン−3−O−ガレート、エピガロカテキン、エピ
カテキン、エピカテキン−3−O−ガレートのカテキン類が重合したものである。
【実施例1】
【0021】
ここで、本発明の柿ポリフェノールオリゴマーの優れた機能性を説明するため、ポリフ
ェノールオリゴマーの原料であるプロアントシアニジンとして渋柿未熟果由来のポリフェ
ノールとブドウ種子由来ポリフェノール末を用い、それらのポリフェノールのそれぞれに
低分子化反応剤としてエピガロカテキン−3−O−ガレート(サンフェノンEGCg、太陽
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化学(株)製、EGCg含量 92.8%)、お茶カテキン(サンフェノンBG-3、太陽化学(株
)製、ポリフェノール含量 89.8%、総カテキン含量 78.9%、EGCg含量 44
.2%)又はアセンヤクの3種をそれぞれ反応させることによってカテキン組成の異なる
、すなわちB環のピロガロール率とガロイル化率の異なるオリゴマーを調製した。
【0022】
渋柿未熟果を用いて、低分子化反応と精製は以下のように行った。渋柿未熟果500g
を水1000mlとともにワーリングブレンダーで粉砕し、サンフェノンBG-3 20gと
クエン酸40gを加え、全量2000mlとし、90∼95℃で3時間煮沸した。水冷後
、セライト層を用いて反応液を濾過し、その濾液をスチレンージビニルベンゼン樹脂(三
菱化学社製セパビーズSP825)のカラム(内径10×13cm、約1000ml)に負
10
荷し、500mlの水で洗浄した。ついで10%エタノール500ml、20%エタノー
ル500ml、60%エタノール600mlで溶出し、ポリフェノール画分を減圧濃縮、
凍結乾燥してポリフェノールオリゴマー粗製粉末(P−1と略す)27.2gを得た。こ
の粉末(P−1)8.0gを30mlの95%エタノールに溶解し、この溶液をセファデ
ックスLH20ゲルを180ml充填したカラム(内径3.8×16cm)に負荷し、つい
で1000mlのエタノールを流し、ポリフェノール単量体画分を除いた。さらに同カラ
ムに含水アセトン(アセトン:水=3:2)600mlを通液して得たポリフェノールオ
リゴマーの溶出画分を減圧濃縮、凍結乾燥して精製粉末(P−1Fと略す)5.8gを得
た。
サンフェノンBG-3の代わりにサンフェノンEGCg20gを用いて同様に低分子化反応、
20
吸着樹脂精製、セファデックス精製を行って、粗製粉末(P−2と略す)26.6g、精
製粉末(P−2Fと略す)5.7gを得た。
サンフェノンBG-3の代わりにアセンヤク30g用いて同様に低分子化反応、吸着樹脂精
製、セファデックス精製を行って、粗製粉末(P−3と略す)25.4g、精製粉末(P
−3Fと略す)5.3gを得た。
【0023】
ブドウ種子由来ポリフェノール末(グラヴィノール、キッコーマン(株)製、プロントシ
アニジン含量46%)を用いた例を以下に記す。低分子化反応と精製は次のように行った
。グラヴィノール40g、サンフェノンBG-3 20gを水1Lに加え、次いでクエン酸2
0gを加えて90∼95℃で3時間煮沸した。以下先の渋柿未熟果由来ポリフェノールの
30
場合と同様に操作して粗製粉末(G−1と略す)32.0g、精製粉末(G−1Fと略す
)4.5gを得た。
サンフェノンBG-3の代わりにサンフェノンEGCg20gを用いて同様に低分子化反応、
吸着樹脂精製、セファデックス精製を行って、粗製粉末(G−2と略す)31.2g、精
製粉末(G−2Fと略す)4.3gを得た。
サンフェノンBG-3の代わりにアセンヤク30g用いて同様に低分子化反応、吸着樹脂精
製、セファデックス精製を行って、粗製粉末(G−3と略す)30.4g、精製粉末(G
−3Fと略す)5.0gを得た。
【0024】
以上のようにして得たPとPFシリーズの6品目、GとGFシリーズの6品目、合計1
40
2品目のポリフェノールオリゴマーにつき、総ポリフェノール含量、ピロガロール率、ガ
ロイル化率、平均重合度を[表1]に一覧した。
【0025】
総ポリフェノール含量は、フォリン−シオカルト法により求めた。
【0026】
フラバン−3−オールB環ピロガロール率、ガロイル化率、平均重合度は、ポリフェノ
ールオリゴマーをメルカプトエタノール共存下で酸分解し、高速液体クロマトグラフィに
より構成カテキンを分析し求めた。
【0027】
(1)各試料の平均重合度の算出
50
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試料濃度25mg/mlに調製した検体300μlをチオール試薬(2−メルカプトエ
タノール(5%)と塩酸(0.1%)を含む60%エタノール)1.2mlと混合し,7
0℃で7時間加熱後、室温5時間放置した。反応液をそのまま高速液体クロマトグラフィ
ー(HPLC)で分析した。条件は以下の通りである。カラム:Cosmosil 5C18-AR II (
ナカライテスク(株)) (250 × 4.6 mm i.d.)、 溶媒:4→30%(39分)−
30→75%(15分) アセトニトリル−50mMリン酸、 流速:0.8ml/min
、検出:JASCOフォトダイオードアレイMD−910検出器。試料中のカテキン構成
ユニットの量はカテキン単量体(C、EC、EGC、ECg、EGCg)及びカテキン−
メルカプトエタノール(ME)誘導体(C−ME、EC−ME、EGC−ME、ECg−
ME、EGCg−ME)の274nmにおけるピーク面積から定量した。検量線は茶カテ
10
キン標準品を用いて作成した。平均重合度は下記の計算式より算出した。
【0028】
[数1]
平均重合度=(全カテキン-ME誘導体量/全カテキン単量体量)+1
上記式において、全カテキン-ME誘導体量及び全カテキン単量体量はnmol/gを表
す。
【0029】
(2)各試料のフラバン−3−オールB環ピロガロール率(B環ピロガロール率)の算出
ピロガロール率は、(1)で得られたカテキン単量体(C、EC、EGC、ECg、EG
Cg)及びカテキン−ME誘導体(C−ME、EC−ME、EGC−ME、ECg−ME
20
、EGCg−ME)量を用いて下記の計算式より算出した。
【0030】
[数2]
B環ピロガロール率=100×{(EGC)+(EGCg)+(EGC−ME)+(E
GCg−ME)}/{(全カテキン単量体量)+(全カテキン-ME誘導体量)}
上記式において、全カテキン-ME誘導体量及び全カテキン単量体量はnmol/gを表
す。
【0031】
(3)各試料のガロイル化率の算出
ガロイル化率は、(1)で得られたカテキン単量体(C、EC、EGC、ECg、EG
Cg)及びカテキン−ME誘導体(C−ME、EC−ME、EGC−ME、ECg−ME
、EGCg−ME)量を用いて下記の計算式より算出した。
【0032】
[数3]
ガロイル化率=100×{(ECg)+(EGCg)+(ECg−ME)+(EGCg−
ME)}/{(全カテキン単量体量)+(全カテキン-ME誘導体量)}
上記式において、全カテキン-ME誘導体量及び全カテキン単量体量はnmol/gを表
す。
【0033】
30
(9)
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【表1】
10
【0034】
ブドウ種子由来ポリフェノールとアセンヤクより調製したオリゴマーのG−3Fのピロ
ガロール率が0%であることは、ブドウ種子由来ポリフェノール中には、エピガロカテキ
ンやエピガロカテキン−3−O−ガレートが殆ど含まれていないこと示している。一方渋
20
柿由来ポリフェノールとアセンヤクより調製したP−3Fのピロガロール率が36.1%
であることは、渋柿由来ポリフェノールが主としてエピガロカテキンやエピガロカテキン
−3−O−ガレートから構成されていることを示している。
【実施例2】
【0035】
本実施例では、実施例1で得た柿ポリフェノールオリゴマーとそれをタンナーゼ処理し
たものをMALDI-TOF質量分析した。
【0036】
柿ポリフェノールオリゴマー20mgを水2mlに溶かし,Aspergilus由来タンナーゼ
2mgを加えて25℃で12時間攪拌し、反応液はそのままセファデックスLH−20(
30
内径1cm×10cm)に付して水で洗浄し、ポリフェノールは40%及び60%MeO
H,50%アセトンを順次流してgallic acid(4mg)とプロアントシアニ
ジン混合物(16mg)を得た。柿ポリフェノールオリゴマーとそれをタンナーゼ処理し
たものをMALDI-TOF質量分析した。測定はアプライドバイオシステム社製Voyager-DE Pro
spectrometerで,試料濃度4mg/ml 50%アセトン,マトリックス2,5−ジヒド
ロキシ安息香酸で行った。その結果柿ポリフェノールオリゴマーには二量体∼七量体の存
在が確認された。
【実施例3】
【0037】
これまでその存在が同定、確認されていないエピガロカテキン−3−O−ガレート三量
40
体を本発明の柿ポリフェノールオリゴマー中に確認した。すなわち、柿ポリフェノールオ
リゴマー5.0gを、Sephadex LH-20カラム(3cm×22cm)にエタノールを溶出溶
媒として付し、ついで溶出溶媒をエタノール−水−アセトン(8:1:1→70:15:
15→60:20:20)に順次変更して三量体フラクションを得た。三量体フラクショ
ンはさらに、MCI-gel CHP20Pカラムクロマト(20−50%メタノール),Chromatorex
ODSカラムクロマト(10−40%メタノール),Toyopearl HW40F(50−80%メタノ
ール)で順次分離精製して三量体T1を10mg得た。柿ポリフェノールオリゴマーの逆
相HPLC分析において三量体T1は24.1分に検出された。HPLCの条件はカラム:Co
smosil 5C18 ARII (4.6×250mm)、カラム温度:35℃、移動相:A; 50mM
リン酸、B; CH3CN、B 4%から30%(39分間)、30%から75%(15分間)、流速
50
(10)
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:0.8ml / min、検出:フォトダイオードアレイ検出(Max absorbance)である
。
【0038】
三量体T1は褐色無晶形粉末で、塩化鉄(III)試薬で暗紫色,バニリン−塩酸試薬で
橙赤色を呈し、プロアントシアニジンであることが確認された。1H-NMRスペクトルには7
ppm付近に3つのガロイル基に由来するシグナル、6.4∼6.7ppmに3個のピロ
ガロール型B環水素のシグナル、6.0ppmにはA環6,8位の水素シグナル、4.8
5∼5.55ppmにはガロイル基が結合したカテキンC環2,3,4位のシグナル、3
.0ppm付近には末端カテキン4位のメチレンシグナルが観察された。
【0039】
10
13C-NMRスペクトルではC環のシグナルとして26ppmに下端ユニットのC-4"メチ
レン炭素,34ppmにC-4及びC-4'炭素,69及び73ppmにC-3,3',3"炭素,76
,76.5,78ppmにC-2, 2',2"炭素が認められた。A環は、96∼98ppmにC6,8,6',6",99∼120ppmにC-4a,4a',4a",102ppmにC-8',8",154
−158ppmにC-5,7,8a,2',7',8a',5",7",8a"由来のシグナルが観察された。
【0040】
3個のピロガロール型B環由来のシグナルは、107ppmにC-2, 6が、130.5p
pmにC-1が、132.5ppmにC-4が認められ、3個のガロイル基のシグナルは、11
0ppmにC-2,6,121.5ppmにC-1,139ppmにC-4,168ppmにエステ
ルカルボニル炭素が認められた。B環の3,5位とガロイル基の3,5位のシグナルは重
20
なって145.5ppmに観察された。これらの水素及び炭素シグナルは非常にブロード
であり、これはプロアントシアニジンの各カテキンユニット間の結合に回転障害がある場
合に一般的に観察される特徴であった。
【0041】
MALDI-TOF-質量分析ではm/z 1393にM+Na擬似分子イオンピークが観察され、このこ
とはT1がEGCgの三量体であることを示していた。T1をタンナーゼで加水分解する
とgallic acidとT1-tanが得られた。T1-tanの1H-NMRスペクトルはエピカテキン三量体で
既知プロシアニジンであるプロシアニジンC-1のものと非常によく類似しており、B環の
シグナルがすべてシングレットでピロガロール型であることを示す点が異なる他は、C環
のシグナルのケミカルシフトとカップリングパターンは良く類似していた。このことはT
30
1が、EGCg3分子がC-4とC-8の間で結合したプロデルフィニジントリガレートである
ことを示していた。
【実施例4】
【0042】
本実施例では、実施例1で得たPとPFシリーズの6品目、GとGFシリーズの6品目
、合計12品目のポリフェノールオリゴマー及びEGCg、5種のポリフェノールにつき
α―グルコシダーゼ、及びα―アミラーゼの消化酵素に対する阻害活性を測定した。
【0043】
(1)α−グルコシダーゼ阻害活性の測定法
上記物質のα−グルコシダーゼ阻害活性を以下の方法で測定した。
40
【0044】
1)試料溶液
乾燥した各試料50mgに水20mlを加え、超音波処理と振盪を行い、一定量を分取
し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈し、180μg/mlの試料溶液とした
。
2)α−グルコシダーゼ阻害活性の測定法
50mMスクロース溶液(pH7.0の0.1Mリン酸緩衝液)400μl、0.1M
リン酸緩衝液(pH7.4)で希釈した試料溶液100μlを混合し、3分間37℃でプ
レインキュベートを行った。これに緩衝液で希釈したα−グルコシダーゼ溶液(東洋紡製
α−グルコシダーゼ(II)100μl を加え、37℃で30分間反応後、氷冷下1Mト
50
(11)
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リス緩衝液600μlを添加し、反応を停止した。反応液40μlを分取し、生成したグ
ルコース量はグルコースCII-テストワコー(和光純薬製)を用いて505nmの吸光度を
測定した(検体)。対照として、試料溶液に換えて、0.1Mリン酸緩衝液を同量加えた
場合の吸光度(対照A)、及び酵素溶液に換えて、0.1Mリン酸緩衝液を同量加えた場
合の吸光度(対照B)を同時に測定し、酵素阻害率を下記の計算式から算出した。
【0045】
[数4]
酵素阻害率(%)=100−100×(検体−対照2)/(対照1−対照2)
【0046】
(2)α−アミラーゼ活性の測定
10
(1)と同様各試料物質のα−アミラーゼ阻害活性を以下の方法で測定した。
【0047】
1)試料溶液
乾燥した各試料50mgに水20mlを加え、超音波処理と振盪を行い、一定量を分取
し、50mM酢酸緩衝液(pH6.5)で希釈し、50μg/ml及び15μg/mlの
試料溶液とした。
2)α−アミラーゼ阻害活性の測定法
0.5重量%可溶性デンプン200μl、20mMCaCl2、100mMNaClを
含む50mM酢酸緩衝液(pH6.5)で希釈した試料溶液100μl及び緩衝液100
μlを混合し、3分間37℃でプレインキュベートを行った。これに緩衝液で希釈したα
20
−アミラーゼ溶液(ブタ膵臓由来のα−アミラーゼ(Sigma社製のSigma A6
255))100μl(約0.6U/ml)を加え、37℃で15分間反応後、氷冷下0
.1M塩酸500μlを添加し、反応を停止した。反応液250μlを分取し、0.2m
Mヨウ素液3mlを加え、660nm波長での吸光度を測定した。対照として、酵素を入
れないもの(対照1)、及び酵素を入れたもの(対照2)を同時に測定し、酵素阻害率は
下記の計算式から算出した。
【0048】
[数5]
酵素阻害率(%)=(検体−対照2)÷(対照1−対照2)×100
【0049】
30
市販のポリフェノール類やエピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)との比較
も含め、各消化酵素に対するポリフェノールオリゴマーの阻害活性を測定した結果を図1
∼図4に示す。
【0050】
図1において、それぞれの低分子化反応剤ごとに柿とブドウ種子由来のポリフェノール
オリゴマーのα−グルコシダーゼ阻害活性を比較対比すると、明らかに柿由来ポリフェノ
ールオリゴマーの阻害活性が高かった。
【0051】
図2において、市販のポリフェノール類、エピガロカテキン−3−O−ガレート(EG
Cg)、ライチ果実由来ポリフェノールオリゴマー及びブドウ種子由来のポリフェノール
40
オリゴマーのα−グルコシダーゼ阻害活性を比較した結果、柿ポリフェノールオリゴマー
の阻害活性が最も高かった。
【0052】
図3において、それぞれの低分子化反応剤ごとに、柿とブドウ種子由来のポリフェノー
ルオリゴマーのα−アミラーゼ阻害活性を比較対比すると、柿由来ポリフェノールオリゴ
マーの阻害活性がやや高かった。
【0053】
図4において、市販のポリフェノール類、エピガロカテキン−3−O−ガレート(EG
Cg)、ライチ果実由来ポリフェノールオリゴマー及びブドウ種子由来のポリフェノール
オリゴマーのα−アミラーゼ阻害活性を比較した結果、柿ポリフェノールオリゴマーの阻
50
(12)
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害活性が最も高かった。
【0054】
柿及びブドウ種子由来のモノマーフリーのポリフェノールオリゴマー(P−1F、P−
2F、P−3F、G−1F、G−2F、G−3F)につき、それらのB環ピロガロール率
、ガロイル化率及び重合度と各消化酵素に対する阻害活性との間に相関性があるかどうか
調べた。その結果、図5から明らかなように、α−アミラーゼ活性は柿ポリフェノールオ
リゴマーの重合度が大きいほど強く抑制され、阻害率と平均重合度との相関係数は0.8
6であった。α−グルコシダーゼ活性は図6及び図7のように柿ポリフェノールオリゴマ
ーのガロイル化率、ピロガロール率が高い程強く抑制され、阻害率とピロガロール率との
相関係数は0.85、ガロイル化率との相関係数は0.94であり、非常に高い相関性を
10
有していた。
【0055】
以下に、柿ポリフェノールオリゴマーの作用を説明しえるよう、柿ポリフェノールオリ
ゴマーの実施例について抗酸化活性と転写因子NF−κB活性化阻害活性を中心に説明す
る。
【実施例5】
【0056】
実施例1で得た本発明の柿ポリフェノールオリゴマー(P−2)の抗酸化活性を細胞生
存率で調べた。以下の実施例においても特に指定しない限りP−2の柿ポリフェノールオ
リゴマーを使用した。本発明の柿ポリフェノールオリゴマー(柿ポリフェノール(L))
20
の抗酸化力と、低分子化処理前の高分子の柿ポリフェノール(柿ポリフェノール(H))
の抗酸化力とを細胞生存率で比較したものである。具体的には、ブタ腎上皮細胞(LLC‐P
K1)を2×104細胞/mlの濃度に懸濁した細胞懸濁液(DMEM/F‐12培養液)200
μLを96穴プレートに播種し、24時間予備培養した。その後、ブタ腎上皮細胞(LLC
‐PK1)の培養液に5mMグルコースを添加し、更に24時間培養した。次いで、5mMグ
ルコース又は30mMグルコースと、5μg/ml又は10μg/mlの高分子あるいは
低分子の柿ポリフェノールを添加して24時間培養し、細胞生存率をMTT法で測定した
。
【0057】
その結果、図8に示す如く、高濃度の30mMグルコース処理では、5mMグルコース処
30
理群に比べて細胞生存率が17%減少するという細胞毒性を示したが、低分子及び高分子
の柿ポリフェノール処理群では夫々細胞生存率が回復した。又、10μg/mlの柿ポリ
フェノール(L)では、5mMグルコース処理群に近いレベルまで細胞生存率が回復した
。
【実施例6】
【0058】
実施例6では、ブタ腎上皮細胞(LLC-PK1)の形態学的検討を行ったもので、具体的には
2×104細胞/mlの濃度に懸濁した細胞懸濁液を6穴プレートに2ml播種し、以下
実施例5と同様の方法で培養し、顕微鏡下で撮影した。
【0059】
40
その結果、高濃度の30mMグルコース処理によって細胞は形態学的変化をきたすが、
10μg/mlの柿ポリフェノール(L)では、高濃度グルコースによる細胞の形態学的
変化を抑制した。
【実施例7】
【0060】
実施例7は、柿ポリフェノールオリゴマー(柿ポリフェノール(L))、高分子の柿ポ
リフェノール(柿ポリフェノール(H))、及び比較試料について、活性酸素種の一種で
ある一酸化窒素(NO)の生成に対する抑制効果を比較したものである。具体的には、ブ
タ腎上皮細胞(LLC‐PK1)を2×104細胞/mlの濃度に懸濁した細胞懸濁液200
μLを96穴プレートに播種し、24時間予備培養した。その後、LLC‐PK1細胞の培養
50
(13)
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液に5mMグルコースを添加し、更に24時間培養した。次いで、5mMグルコース又は3
0mMグルコースと、5μg/ml又は10μg/mlの高分子あるいは低分子の柿ポリ
フェノール並びに比較試料を添加して24時間培養後、グリース試薬(0.1% N(-1-na
phtyl)ethylendiamine, 1%
sulfanilamide,2.5% H3PO4)を加え、室温で5分間
インキュベーション後、マイクロプレートリーダーで540nmにおける吸光度を測定し
、一酸化窒素(NO)濃度に換算した。なお、比較試料1は、カロチノイドの中でもっと
も抗酸化が強いといわれるアスタキサンチン、比較試料2は、プロアントシアニジンを高
濃度含むブドウ種子の抽出物(Gravinol(登録商標))、比較試料3は、フランス沿海地
域で取れる松の樹皮から得られるポリフェノール類(Pycnogenol(登録商標))である。
10
【0061】
その結果、図9に示す如く、一酸化窒素(NO)の濃度は30mMグルコース処理によ
って、5mMグルコース処理群よりも2.6倍上昇し、低分子及び高分子の柿ポリフェノー
ル処理群は一酸化窒素(NO)の濃度を低下させた。ここで、柿ポリフェノール(L)は
、柿ポリフェノール(H)、比較試料1、比較試料2、比較試料3に比べて一酸化窒素(
NO)の濃度を一層低下させた。
【実施例8】
【0062】
実施例8は、柿ポリフェノールオリゴマー(柿ポリフェノール(L))、高分子の柿ポ
リフェノール(柿ポリフェノール(H))及び比較試料について、活性酸素種のスーパー
オキシド(O2−)の生成に対する抑制効果を比較したものである。具体的には、ブタ腎
20
4
上皮細胞(LLC‐PK1)を2×10
細胞/mlの濃度に懸濁した細胞懸濁液200μL
を96穴プレートに播種し、24時間予備培養した。その後、ブタ腎上皮細胞(LLC‐PK
1)の培養液に5mMグルコースを添加し、更に24時間培養した。次いで、5mMグルコ
ース又は30mMグルコースと、5μg/ml又は10μg/mlの高分子あるいは低分
子の柿ポリフェノール並びに比較試料とを添加して24時間培養し、反応液(0.125
mM EDTA,62μM NBT,98μM NADH含有50mMリン酸緩衝液)と33
μMのPMSを加えて5分間インキュベーション後、マイクロプレートリーダーで540
nmにおける吸光度を測定し、スーパーオキシド(O2−)濃度に換算した。なお、比較
試料1、比較試料2、比較試料3は、実施例7と同様である。
30
【0063】
その結果、図10に示す如く、30mMグルコース処理によるスーパーオキシド(O2
−
)の濃度は、5mMグルコース処理群に比べて1.4倍上昇し、低分子及び高分子の柿ポ
リフェノール処理群はスーパーオキシド(O2−)の濃度を低下させた。ここで、10μ
g/mlの低分子化柿ポリフェノール(L)は、柿ポリフェノール(H)、比較試料1、
比較試料2、比較試料3に比べてスーパーオキシド(O2−)の濃度を一層低下させ、そ
の濃度は5mMグルコース処理のレベルまで戻った。
【実施例9】
【0064】
実施例9は、柿ポリフェノールオリゴマー(柿ポリフェノール(L))と、高分子の柿
ポリフェノール(柿ポリフェノール(H))について、活性酸素種のペルオキシナイトラ
40
−
イト(ONOO
)の生成に対する抑制効果を比較したものである。具体的には、ブタ腎
上皮細胞(LLC‐PK1)を2×104細胞/mlの濃度で懸濁した細胞懸濁液200μL
を96穴プレートに播種し、24時間予備培養した。その後、ブタ腎上皮細胞(LLC‐PK
1)の培養液に5mMグルコースを添加し、更に24時間培養した。次いで、5mMグルコ
ース又は30mMグルコースと、5μg/ml又は10μg/mlの高分子あるいは低分
子の柿ポリフェノールとを添加して24時間培養し、ジヒドロローダミン123(dihydr
orhodamine 123)を含む緩衝液を加えて37℃で5分間インキュベーション後、マイクロ
プレートリーダーで500nmにおける吸光度で測定し、ペルオキシナイトライト(ON
OO−)濃度に換算した。
【0065】
50
(14)
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その結果、図11に示す如く、30mMグルコース処理によるペルオキシナイトライト
(ONOO−)の濃度は、5mMグルコース処理群よりも約75%上昇した。これに対し
、高分子の柿ポリフェノール(H)処理群では顕著な変化を認めなかったが、柿ポリフェ
ノール(L)処理群では、高濃度グルコースによって上昇したペルオキシナイトライト(
ONOO−)を濃度依存的に低下させた。
【実施例10】
【0066】
実施例10は、柿ポリフェノールオリゴマー(柿ポリフェノール(L))と、高分子の
柿ポリフェノール(柿ポリフェノール(H))及び比較試料について、WangとJosephの方
法に従い、細胞内の活性酸素量を定量して酸化ストレス状態を比較したものである。具体
10
的には、ブタ腎上皮細胞(LLC‐PK1)を2×104細胞/mlの濃度で懸濁した液20
0μLを96穴プレートに播種し、5mMグルコース含有培養液で24時間予備培養した
。次いで、5mMグルコース又は30mMグルコースと、5μg/ml又は10μg/ml
の高分子あるいは低分子の柿ポリフェノール並びに比較試料とを添加して24時間培養後
、リン酸緩衝液で洗浄し、100μMの非蛍光物質DCFH−DA(2',7'-dichlorofluo
rescein diacetate)を100μL加えて15分間培養した。その後、96穴プレートか
ら培養液を取り除いてDMEM/F-12培養液を加え、1時間培養した。この96穴プ
レートをマイクロプレートリーダ−(励起波長:485nm、蛍光波長:535nm)で
蛍光物質DCF(2',7'-dichlorofluorescein)の蛍光強度を測定した。なお、この測定
は、非蛍光物質DCFH−DAが活性酸素存在下で強い蛍光を示す蛍光物質DCFに変換
20
されるという原理を応用している。ここで、なお、比較試料1は、カロチノイドの中でも
っとも抗酸化が強いといわれるアスタキサンチン、比較試料2は、プロアントシアニジン
を高濃度含むブドウ種子の抽出物(Gravinol(登録商標))、比較試料3は、フランス沿
海地域で取れる松の樹皮から得られるポリフェノール類(Pycnogenol(登録商標))であ
る。
【0067】
その結果、図12に示す如く、30mMグルコース処理細胞における細胞内活性酸素量
は、5mMグルコース処理細胞と比較して約1.6倍に増加していたが、柿ポリフェノー
ル処理細胞では濃度依存的に低下していた。特に柿ポリフェノール(L)を10μg/m
l添加した群において、細胞内活性酸素量の低下が顕著であった。
30
【実施例11】
【0068】
本実施例は、高濃度グルコースにより高血糖状態に曝されたブタ腎上皮細胞(LLC‐PK
1)におけるiNOSとCOX-2の発現に及ぼす柿ポリフェノールオリゴマー(柿ポリ
フェノール(L))及び高分子の柿ポリフェノール(柿ポリフェノール(H))の影響を
ウェスタンブロッティング解析した。具体的には、ブタ腎上皮細胞(LLC‐PK1)を懸濁
した細胞懸濁液を10mlカルチャーディッシュに播種し、5mMグルコース含有培養液
で24時間予備培養した。次いで、5mMグルコース又は30mMグルコースと、5μg
/ml又は10μg/mlの高分子あるいは低分子の柿ポリフェノールを添加して24時
間培養した。次に、ブタ腎上皮細胞(LLC‐PK1)を10mlカルチャーディッシュの底
40
面から剥離して回収後、抽出緩衝液[25mM Tris-HCl (pH7.5)、250mM NaC
l、5mM EDTA、1% nonidet P-40、1mM phenylmethylsulfonyl fluoride(P
MSF)、1mM DTT、50μLプロテアーゼインヒビターカクテル]を加え、細胞
内の蛋白質を抽出した。抽出した蛋白質量はBio-Rad protein assay kitで測定した。次
いで30μgの蛋白質を電気泳動用緩衝液に溶解させ、常法にてSDS−PAGEを行っ
た後、ニトロセルロース膜にトランスファーし、当該ニトロセルロース膜について免疫ブ
ロット解析(immunoblot analysis)を行った。免疫ブロット解析では、anti−NO
S2(iNOS)モノクローナ抗体、anti−COX-2モノクローナル抗体、蛋白質
発現量の標準マーカーとしてのanti−COX-1モノクローナル抗体、及びペルオキ
シダーゼ標準化2次抗体(peroxidase-labeled secondary antibody)を用いた。なお、
50
(15)
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上記免疫ブロット解析は、ニトロセルロース膜をECL(enhanced chemiluminescence)
法にて撮影することにより実施した。
【0069】
iNOSによるNO産生はマクロファージ、肝細胞、好中球、上皮細胞等の種々の細胞
で見られるが、腎上皮細胞においても図13に示す如く、高濃度グルコース処理によって
iNOSとCOX-2が多量に発現していた。iNOSは30mMグルコース処理群で過
剰発現していたが、柿ポリフェノール(L)で処理した群では、発現量が著しく低下した
。一方高分子の柿ポリフェノール(H)で処理した群では柿ポリフェノール(L)処理群
よりもその作用は弱かった。NOとプロスタグランジンは、いずれも多くの慢性疾患の病
因であることが知られているが、プロスタグランジンの合成過程を触媒するCOXはアラ
10
キドン酸をプロスタグランジンに変換する酵素である。COX-2は炎症に関わるプロス
タグランジンの生成に関与しており、COX-1はほとんど全ての臓器に恒常的に発現し
ている蛋白質であって、本実験では蛋白質発現量の標準マーカーとして用いた。図13で
は、COX-2がiNOSと同様に、高濃度グルコース処理によって過剰発現していたが
、低分子と高分子の柿ポリフェノール処理群では、いずれもCOX−2の発現量を著しく
低下させていた。
【実施例12】
【0070】
本実施例は、1型糖尿病モデルとしてSTZ(ストレプトゾトシン)誘発糖尿病ラット
による柿ポリフェノールオリゴマーの効果を測定したものである。供試材料として、柿ポ
20
リフェノールオリゴマー、柿ポリフェノールポリマーを用いて比較した。
Wistar系ラット(雄)に対し、ストレプトゾトシン(STZ)を体重kg当たり
50mgとなるように腹腔内投与して作製された。実験開始時に血糖値をもとに群分けし
、糖尿病ラットの各群には、以下に示す試料物質を投与した。
【0071】
1.正常群(以下、Normal群)(n=5):通常飼料、水を与えた。
2.糖尿病対照群(以下、Control群)(n=7):通常飼料、水を与えた。
3.柿ポリフェノールポリマー群(以下、Polymer群)(n=7):柿ポリフェノールポ
リマーを10mg/kg/dayで連日経口投与
4.柿ポリフェノールオリゴマー群(以下、Oligomer群)(n=7):柿ポリフェノール
30
オリゴマーを10mg/kg/dayで連日経口投与
【0072】
実験期間中、体重、摂餌量、摂水量、尿量、尿タンパク量を測定し、試料物質投与20
日後に屠殺し、血液採取及び臓器摘出を行い、血清中のグルコース(血糖値)、糖化タン
パク、TBA反応物質、総タンパク、アルブミン、及び尿素窒素(UN)量を測定した。
又、腎重量、腎臓中のROS生成、AGEs、TBA反応物質量及び腎臓における各種タ
ンパク質(NF−κB、IκB−α、iNOS、COX−2、Bcl−2,Bax)の発
現量を測定した。結果を図14∼図16に示した。
【0073】
その結果、糖尿病で上昇した血糖値と血清糖化タンパク、脂質過酸化レベル(TBA反
40
応物質)はOligomer、Polymer両群で低下していた。血清総蛋白、アルブミン、尿素窒素
レベルも改善していたが、このような作用は、Oligomer群の方が強かった。一方、糖尿病
で認められた腎組織中のROS、AGEs及び脂質過酸化の増加は、Oligomer群、Polyme
r群で低下し、特に、脂質過酸化はOligomer群で正常群レベルにまで低下していた。次に
、腎組織中のタンパク発現量を解析した結果、糖尿病モデル(Control群)で著しく発現
したNF-κBは、両投与群で有意に低下し、Polymer群よりもOligomer群で顕著に抑制して
いた。炎症反応に関与するタンパク質のiNOS、COX−2は糖尿病で発現が上昇して
いたが、Polymer群よりもOligomer群で顕著に低下していた。以上の結果から、柿ポリフ
ェノールは1型糖尿病を改善することが明らかとなり、Oligomer群がPolymer群より強い作
用を示すことが示された。
50
(16)
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【実施例13】
【0074】
本実施例は、レプチン受容体を欠損した2型糖尿病モデル動物である雄性db/dbマウス
(C57BL/Ksj-db/db)を使用し、評価したものである。糖尿病マウスの各群には、以下に
示す試料物質を投与した。
【0075】
1.非糖尿病マウス群(以下、+/+群)(n=8):通常飼料、水を与えた。
2.糖尿病対照群(以下、Control群)(n=13):通常飼料、水を与えた。
3.柿ポリフェノールポリマー群(以下、Polymer群)(n=13):柿ポリフェノール
ポリマーを10mg/kg/dayで連日経口投与
10
4.柿ポリフェノールオリゴマー群(以下、Polymer群)(n=13):柿ポリフェノー
ルオリゴマーを10mg/kg/dayで連日経口投与
【0076】
実験期間中、体重、摂餌量、摂水量の推移を測定し、8週齡、10週齡及び12週齡の
時点で採血を行い、血清中のグルコース、総コレステロール量を測定した。試料物質を6
週間投与後、14週齡の時点に屠殺し、血液採取及び臓器摘出を行い、血清中のグルコー
ス、糖化タンパク、TBA反応物質、尿素窒素(UN)、トリグリセリド、総コレステロ
ール、及び遊離脂肪酸量を測定した。又、肝臓中のトリグリセリド、総コレステロール量
、TBA反応物質量の測定及び、肝臓核内転写因子(SREBP-1、SREBP-2、P
PARα、NF-κB)の発現量の測定結果を図17∼図20に示した。
20
【0077】
その結果、db/dbマウスの6週目の血糖値(Control群)は正常群より著しく上昇してい
たが、Oligomer群、Polymer群で低下傾向を示した。糖化タンパクもdb/dbマウスで正常マ
ウスより著しく上昇していたが、Oligomer群、Polymer群では低下傾向にあった。又、血
清トリグリセリド、総コレステロール、遊離脂肪酸はOligomer群、Polymer群では有意に
低下していた 。
肝組織中のトリグリセリド、総コレステロール、脂質過酸化はdb/dbマウスで著しく上
昇していたが、Oligomer群でいずれの脂質も有意に低下し、脂質過酸化はほぼ正常群レベ
ルにまで低下した。肝臓核内転写因子の発現量を解析した結果、糖尿病状態で発現量が増
加したSREBP-1、SREBP-2、NF-κBはPolymer群で低下傾向にあるが、Olig
30
omer群では有意に低下し、特にNF-κBについては正常群レベルにまで低下した。糖尿
病状態で発現量が減少したPPARαはOligomer群で増加傾向を示した。
【0078】
従って実施例5から実施例13までの結果により次のことが云える。すなわち、腎上皮
細胞に高濃度グルコースによる酸化ストレスを与えたところ、一酸化窒素(NO)、スー
パーオキシド(O2−)、ペルオキシナイトライト(ONOO−)等の活性酸素種(RO
S)が増加して、転写因子NF−κBの核への移行を引き起こし、iNOS、COX-2
の発現量が著しく増加していた。又、細胞生存率の低下や形態学的変化を引き起こし、細
胞毒性を呈していた。これに対し、柿ポリフェノールは、活性酸素の生成を抑制し、転写
因子NF−κBの核内への移行(活性化)を抑えてiNOS、COX-2の発現を抑制す
40
ることによって、結果的に高血糖状態から派生する酸化ストレスシグナルを抑制していた
。更に、柿ポリフェノールオリゴマーは、高分子の柿ポリフェノールよりその作用が強い
ことを明らかにした。
【0079】
又、1型糖尿病モデルに対して柿ポリフェノールオリゴマーは、高分子柿ポリフェノー
ルよりも血糖値、血清糖化蛋白、脂質過酸化レベルを強く低下させ、腎組織中のタンパク
の発現量(NF-κB、iNOS、COX−2)を顕著に抑制した。インスリン抵抗性を
示す2型糖尿病モデルに対しても肝組織中のトリグリセリド、総コレステロール及び脂質
過酸化を低下させ、糖尿病に起因する疾患を改善することが示された。
【0080】
50
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以上のことから、本発明の実施例によれば、柿タンニンから得られた柿ポリフェノール
オリゴマーは、エピガロカテキン、エピガロカテキン−3−O−ガレート、エピカテキン
、エピカテキン−3−O−ガレートのカテキン類を主要構成成分とし、B環のピロガロー
ル率が70%以上90%以下、ガロイル化率が40%以上70%以下となるような割合で
カテキンが重合した構造であり、且つ二量体から五量体までのオリゴマーが主要成分であ
るので、高分子のポリマーと異なり、経口摂取した場合に吸収性の低下をきたすことなく
、又、ピロガロール率やガロイル化率の低いオリゴマーや、モノマーよりも高い薬理活性
を示し、結果的に疾患の改善作用が飛躍的に向上する。当然のことながらモノマーである
お茶カテキンと比較して、オリゴマーである本発明の柿ポリフェノールオリゴマーの薬理
活性は飛躍的に向上する。
10
【0081】
ここで、B環のピロガロール率が70%より低い場合には、図6に示す如くα―グルコ
シダーゼ活性阻害率が約60%未満になって活性がやや低くなるので好ましくなく、一方
B環のピロガロール率が90%以上にするには、高価なエピガロカテキン−3−O−ガレ
ート(EGCg)を大過剰に使用しなければならないためコストが上昇すると共に、オリ
ゴマーの重合度がやや低下することにより薬理活性が低下するという問題がある。又、ガ
ロイル化率が40%より低い場合には、図7に示す如くα―グルコシダーゼ活性阻害率が
約50%未満になり、B環ピロガロール率と同様に活性が低下する。一方、ガロイル化率
が70%に高める場合には、先と同様高価なエピガロカテキン−3−O−ガレート(EG
Cg)を大過剰に使用しなければならないためコストが上昇すると共に、オリゴマーの重
20
合度がやや低下することにより薬理活性が低下するという問題がある。
【0082】
又、柿ポリフェノールオリゴマーは、プロアントシアニジンを単に断片化し、オリゴマ
ー化するだけでなく、そのカテキン組成につきエピガロカテキン−3−O−ガレート(E
GCg)の比率を高めることにより、α―グルコシダーゼ及び/又はα―アミラーゼに対
してエピガロカテキン−3−O−ガレートのみの場合よりも強い阻害活性を有することが
できる。
【0083】
更に、柿ポリフェノールとリンゴ未熟果実ポリフェノールの夫々のオリゴマーを比較し
た場合にも、柿ポリフェノールが、エピカテキンに比較してエピガロカテキン−3−O−
30
ガレートやエピガロカテキンを多く含む重合体であるのに対し、リンゴ未熟果実ポリフェ
ノールのオリゴマーは、薬理活性の低いエピカテキンを主体とする重合体であるため、必
然的にリンゴ未熟果実ポリフェノールのオリゴマーに比べると柿ポリフェノールオリゴマ
ーの薬理活性は高く、各種の疾患の症状改善作用も高い。
【0084】
なお、お茶カテキンのカテキン類を化学的に重合させた場合、プロアントシアニジン以
外の複雑な構造の重合体が同時に生成するので、望ましい薬理活性をもったオリゴマーを
得ることは極めて困難であり、又、製造コストも極めて高いものとなるので、実用的でな
い。
【0085】
40
又、渋柿の摘果した未熟果実や生皮等の廃棄物から柿タンニンは得られるので、廃棄物
の利用によって環境への影響を改善することができる。
【0086】
柿ポリフェノールオリゴマーは、カテキン類のうちエピガロカテキン−3−O−ガレー
トやエピガロカテキンを多く含むが、これらのカテキンは、ブドウ種子やリンゴ未熟果実
由来のポリフェノールの主成分であるエピカテキンに比べて高い薬理活性、すなわち強力
な抗酸化活性と転写因子NF−κBの活性化阻害活性、及び高い糖分解酵素阻害作用を有
しており、それらの機能を介して各種の疾患を改善することができる。
【0087】
柿ポリフェノールオリゴマーは、モノマーでなく且つ高分子のポリマーでもなく、適度
50
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に重合した二量体から五量体までのオリゴマーが主要成分であるため、経口摂取した場合
に良好な吸収性を維持しつつ高い薬理活性を発揮し、各種の疾患の改善作用が飛躍的に向
上する。ここで、七量体以上の構造にすると、高分子のポリマーと同様に吸収性が悪化す
る。又、モノマーの場合は、薬理活性が低下する。
【0088】
又、柿ポリフェノールオリゴマーによる疾患を改善し得る作用は、抗がん作用、抗炎症
作用、動脈硬化抑制作用、抗糖尿病作用、抗肥満作用、血圧上昇抑制作用、抗う蝕作用及
び抗歯周病作用であるので、各種の疾患に対して良好な改善作用を示すことができる。
【0089】
尚、本発明の柿ポリフェノールオリゴマーは、上述の形態例にのみ限定されるものでは
10
なく、どのような食品、飲料、錠剤、顆粒形状で摂取しても良いこと、本発明の要旨を逸
脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施例4において、柿及びブドウ種子由来ポリフェノールオリゴマーのα―グル
コシダーゼ阻害活性を比較したグラフである。
【図2】実施例4において、各種ポリフェノール類のα―グルコシダーゼ阻害活性を比較
したグラフである。
【図3】実施例4において、柿及びブドウ種子由来ポリフェノールオリゴマーのα―アミ
ラーゼ阻害活性を比較したグラフである。
20
【図4】実施例4において、各種ポリフェノール類のα―アミラーゼ阻害活性を比較した
グラフである。
【図5】実施例4において、ポリフェノールオリゴマーの重合度とα―アミラーゼ阻害活
性との相関性を示したグラフである。
【図6】実施例4において、ポリフェノールオリゴマーのB環ピロガロール率とα―グル
コシダーゼ阻害活性との相関性を示したグラフである。
【図7】実施例4において、ポリフェノールオリゴマーのガロイル化率とα―グルコシダ
ーゼ阻害活性との相関性を示したグラフである。
【図8】実施例5において柿ポリフェノールオリゴマーと高分子の柿ポリフェノールの抗
酸化力を細胞生存率で比較したグラフである。
30
【図9】実施例7において、柿ポリフェノールオリゴマーと高分子の柿ポリフェノールに
ついて、一酸化窒素(NO)の生成に対する抑制効果で比較したグラフである。
【図10】実施例8において、柿ポリフェノールオリゴマーと高分子の柿ポリフェノール
について、スーパーオキシド(O2−)の生成に対する抑制効果で比較したグラフである
。
【図11】実施例9において、柿ポリフェノールオリゴマーと高分子の柿ポリフェノール
について、ペルオキシナイトライト(ONOO−)の生成に対する抑制効果で比較したグ
ラフである。
【図12】実施例10において、柿ポリフェノールオリゴマー、高分子の柿ポリフェノー
ル及び比較試料について、細胞内の活性酸素量を定量して酸化ストレス状態を比較したグ
40
ラフである。
【図13】実施例11において、柿ポリフェノールオリゴマーと高分子の柿ポリフェノー
ルについて、細胞内のiNOS、COX−2発現量に対する抑制効果を比較した図である
。
【図14】実施例12において、STZで誘導された糖尿病モデルラットの血清パラメータ
ーに対する柿ポリフェノールオリゴマーの投与試験結果を示す。
【図15】実施例12において、STZで誘導された糖尿病モデルラットの腎臓に対する柿
ポリフェノールオリゴマーの投与試験結果を示す。
【図16】実施例12において、STZで誘導された糖尿病モデルラットの腎臓中のタンパ
ク発現量に対する柿ポリフェノールオリゴマーの投与試験結果を示す。
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【図17】実施例13において、2型糖尿病モデル動物である雄性db/dbマウスに対する
柿ポリフェノールオリゴマーの投与期間中の血糖値とコレステロール値の試験結果を示す
。
【図18】実施例14において、2型糖尿病モデル動物である雄性db/dbマウスの血清パ
ラメーターに対する柿ポリフェノールオリゴマーの投与試験結果を示す。
【図19】実施例14において、2型糖尿病モデル動物である雄性db/dbマウスの肝臓に
対する柿ポリフェノールオリゴマーの投与試験結果を示す。
【図20】実施例15において、2型糖尿病モデル動物である雄性db/dbマウスの肝臓核
内転写因子に対する柿ポリフェノールオリゴマーの投与試験結果を示す。
【図1】
【図2】
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【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
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105 A23L
B
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(72)発明者 布沢 哲二
富山県富山市三郷6番地 明治薬品株式会社内
審査官 三木 寛
(56)参考文献 国際公開第2006/090830(WO,A1) 特開平02−187433(JP,A) 20
米国特許第04797421(US,A) 特開昭58−032875(JP,A) 特開2005−336117(JP,A) 米国特許第06420572(US,B1) 特開昭64−025726(JP,A) 特開昭61−016982(JP,A) 特開2003−231684(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
C07D 311/62 CA/REGISTRY(STN)
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