資料3 第1回利用促進策WG 2016 年 10 月 12 日 弁護士会の取り組みと今後の方向性 1 利用促進へ向けた課題(なぜ利用が少ないのか) ① 制度が分かりづらく,身近に相談できるところが少ない。 ② 利用すると多くの欠格条項があり,また本人の行為能力が制限されるため,マ イナスイメージがある。 ③ 利用する本人にとっては,自己の権利を制限されるだけというイメージがあり, 自ら利用したいと思わない場合も多い。 ④ 特に親族後見人は,選任後に,身近に相談できるところがない。 ⑤ 本人の保護を重視するあまり,保佐・補助類型ではなく,なるべく成年後見類 型を選択してしまうという傾向がある。 ⑥ 本人の財産状況によって,利用のための費用が支払えないなど経済的事情で, 申立に至らない場合がある。 ⑦ 後見制度支援信託の利用対象ケースでは,その利用を望まないために申し立て に至らないケースがある。 2 利用促進のための具体的施策 ① 全国的に,成年後見について,申立から後見等開始後まで,本人や親族が相談 し,かつ支援できる成年後見推進センター(仮称)が必要。 ②各ケースで,本人の生活状況・精神状況に沿って,必要な支援を,必要な時に, 必要な範囲で行うものとし,不要な干渉・権利制限は行わない。欠格条項は廃止 すべき。 特に現行の成年後見は,過干渉(後見人の権限が大きすぎる)。 ③ 本人の意思・意向を尊重し,本人を支援する,という原則に立った本人支援グ ループを作り,申立段階から,後見開始後も本人を支援する。後見人は,選任さ れた後,グループに参加し,本人の意思・意向を確認しながら後見事務を行う。 ④ ①のような機関を作り,後見人も支援していく。また,家庭裁判所の人的・物 的体制の強化も必要。 ⑤ 本人のために必要な支援をすることを原則とし,そのためには3類型に当ては めるのではなく,3類型は廃止して,本人のニーズに合わせた制度とする。 - 1 - ⑥ 成年後見制度が,現代の契約社会に必須な制度であり,また利用者が契約によ る福祉サービスの利用が必要な人たちであることから,制度利用のための助成制 度を大幅に拡充する。 ⑦ 後見制度支援信託は,不正防止に有用な制度ではあるものの,本人が形成した 財産の形から離れていく面があるので,代替手段を検討したり,成年後見制度自 体を変えることも必要である。 3 社会的ネットワーク(成年後見推進センター(仮称))の具体的内容と弁護士 の関与 ・自己決定権の尊重という成年後見制度の理念にあらためて立ち返って,本人を 中心とした支援が行えることが必要(我が国が批准した障害者権利条約の意思 決定支援という理念にも近づく) ・判断能力に困難を抱える本人の種々の情報を取り扱い,本人の権利にも重大な 影響があるので,行政の責任の下に設置されるべき。 ・行政の単位としては,原則として,利用者にとって身近である市町村を基本単 位とすべき。但し,その地域の実状に配慮する。 ・これまで,成年後見制度利用の推進に注力してきた各地域の社会福祉協議会な どの団体及び専門職団体(弁護士・司法書士・社会福祉士)の関与も不可欠。 4 日弁連のこれまでの主要な取り組みについて (1)1998年(平成10年)4月17日 成年後見法大綱 抜粋(資料1) 制度の骨格として一元的構成,必要性の原則,補充性の原則 欠格条項を抜本的に再検討すべき (2)2005年5月6日「成年後見制度に関する改善提言」(資料2) 申立や後見事務遂行上の問題点とともに,補 助 制 度 の 活 用 、 成 年 後 見 人 等 の担い手の拡充等を含めて改善すべき点を指摘 。 市民後見人の推進や、裁判所の人的・物的体制の拡張と その予算措置 や関係行政機関による親族後見人の指導助言のネットワークの構築等を 求めた。 (3)2014年10月3日 障害者権利条約の完全実施を求める宣言(資料3) 完全実施のための国内法整備及び必要な施策として,障がいの有無のみを理由 - 2 - として資格や免許の付与を制限・禁止する欠格条項を廃止すべきであるとの指摘と 共に,成年後見制度については,以下の指摘をしている。 「精神上の障がいによる判断能力の低下に対する行為能力制限について、 現行の画一的かつ包括的な制限を、個々人に応じた必要最小限の制限に とどめ、当事者が可能な限り自己決定 しうる支援と環境整備を原則とす る制度に改めるべきである。」 (4)総合的な意思決定支援に関する制度整備を求める宣言 2015年10月2日付け 障 害 者 権 利 条 約 の 理 念 を 踏 ま え , 成 年 後 見 制 度 が , 法律行為や財産管 理について,高齢者・障がい者の権利擁護のために役割を果たしているが,意 思決定の支援という点からは改革すべき課題があることを指摘している。 (5)2016年4月22日 促進法についての会長声明 (資料5) 促進法第11条が、「高齢者、障害者等の福祉に関する施策との有 機的な連携」を図ることを明記した上で市町村長申立ての積極的活用 (7号)、成年後見人報酬の公的援助(8号)に必要な措置を講ずる ことを基本方針として規定したことは、当連合会の上記改善提言の指 摘とも軌を一にするものである。法が成年後見制度の果たすべき福祉 的役割に着目したものであり、制度の利用が必要な人については資産 の有無にかかわらず成年後見制度を利用できるよう、十分な財政上の 措置が講じられるべきである。 また、法は、「成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われる とともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと」を基 本理念(法第3条)とし、さらに成年後見制度利用促進に関する施策 の推進に当たり、「成年後見制度の利用者の権利利益の保護に関する 国際的動向を踏まえる」との基本方針(法第11条柱書)を規定した。 これらは,日弁連のこれまでの検討,提言と多くの点で軌を一にす るものであり,一層の具体化が強く求められている。 - 3 -
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