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JP 5380440 B2 2014.1.8
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびケイ酸
カルシウムから選択される賦形剤との乾燥共粉砕により安定化された非結晶メシル酸イマ
チニブを、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項2】
カプセル剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
錠剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
10
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4
−(ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−ベンズアミドのメ
タンスルホン酸付加塩の安定化非結晶形態、その形態を含む医薬組成物、温血動物、特に
ヒトの診断方法におけるまたは、好ましくは、治療的処置のためのかかる形態の使用、お
よび医薬組成物の製造のための中間体としてメシル酸イマチニブの非結晶形態を安定化す
る製剤手段の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
20
(2)
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発明の背景
分子が異なる結晶多形を形成するように操作できることは既知である。多形は同じ元素
組成を有するが、例えば安定性または溶解性のような異なる固体状態特性を示す。
【0003】
イマチニブとしても既知の4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−
メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−
ベンズアミドの製造、およびその、特に抗腫瘍剤としての使用は、US5,521,184
の実施例21に記載されている。本化合物はこの刊行物で遊離形としてのみ例示されてい
る(塩としてではない)。
【0004】
10
メシル酸イマチニブまたはSTI571としても既知の4−(4−メチルピペラジン−
1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)−ピリミジン−2
−イルアミノ)−フェニル]−ベンズアミドメシレート、ならびにそのアルファおよびベー
タ結晶形態はUS6,894,051に記載されている。メシル酸イマチニブは、慢性骨髄
性白血病(CML)および消化器間質腫瘍(GIST)ならびに多くの稀有増殖性障害の処置
に承認された薬物である、Gleevec(登録商標)(Glivec(登録商標))の活性成分である。
【0005】
US6,894,051において、メシル酸イマチニブのベータ結晶修飾は、アルファ形
態よりも、140℃より低い温度で熱力学的に安定であると報告されている。さらに、両
形態とも、メシル酸イマチニブの非結晶形態より熱力学的に安定である。異なる安定性は
20
、メシル酸イマチニブの準安定(meta-stable)非結晶形態が、アルファまたはベータ結晶
形態のようなより安定な修飾に変わるリスクを有するとの影響を有する。
【発明の概要】
【0006】
メシル酸イマチニブの非結晶形態を、種々の製剤手段により安定化できることが、本発
明により驚くべきことに判明した。故に、第一の局面において、本発明は、メシル酸イマ
チニブの非結晶形態を安定化する製剤手段に関する。より具体的に、本発明は、固体分散
体、シクロデキストリン複合体、および賦形剤との共製粉を含む、メシル酸イマチニブの
非結晶形態を安定化できる、種々の製剤手段を説明する。
【0007】
30
ここで使用する用語“非結晶形態のメシル酸イマチニブを安定化する”は、特にメシル
酸イマチニブが、40℃で75%相対湿度で1ヶ月貯蔵後非結晶形態で維持されることを
意味する。用語“非結晶形態のメシル酸イマチニブ”は、X線図においてメシル酸イマチ
ニブの結晶修飾、特にメシル酸イマチニブのアルファまたはベータ結晶形態について観察
される反射に対応する反射を何も示さないメシル酸イマチニブの修飾を意味する。
【0008】
メシル酸イマチニブの結晶形態と比較して、メシル酸イマチニブの安定化非結晶形態は
、経済学的利点および高い溶解率を含む多くの利点を提供する。
【0009】
結晶性物質は、一般に結晶化工程を介して得られ、それは付加的な製造工程を構成する
40
。特に、母液からの完全な結晶化はしばしば時間がかかり、それ故、製造能を限定する工
程段階である。それ故に、メシル酸イマチニブの安定化非結晶形態は、経済的局面下で、
結晶形の魅力ある代替物である。
【0010】
一般に、ある物質の非結晶形態は、その物質の結晶形態より高い溶解率を示す。さらに
、高い溶解率は過飽和溶液をもたらし得る。高い溶解率ならびに得られる可能性のある過
飽和溶液はまた、ある物質の非結晶形態の、その結晶形態と比較してより良いバイオアベ
イラビリティももたらし得る。それ故に、同量の薬剤が、低用量の投与薬剤を得ている患
者により吸収される。これは、患者における吸収されていない物質が原因の局所副作用の
リスクを減らし、また、経費削減効果も有する。
50
(3)
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【0011】
発明の詳細な記載
本発明は、特にメシル酸イマチニブの非結晶形態を安定化する製剤手段に関する。本発
明の製剤手段は、特に固体分散体、シクロデキストリン複合体、および選択した賦形剤と
の共粉砕から選択される。ここに記載の製剤手段は、非結晶メシル酸イマチニブを含む、
錠剤、懸濁液、散剤、サシェット剤、カプセルまたは坐薬のような医薬組成物の製造のた
めの出発物質として使用できる。使用する具体的組成物によって、これらの組成物は、例
えば、経口、経直腸、膣内にまたは吸入により適用できる。
【0012】
1. 固体分散体
10
本発明の固体分散体は、非結晶メシル酸イマチニブおよびセルロース誘導体、ポリビニ
ルピロリドン、種々の分子量のポリエチレングリコール類、ポリエチレン−/ポリプロピ
レン−/ポリエチレン−オキシドブロックコポリマー類およびポリメタクリレート類から
選択される少なくとも1種のさらなる賦形剤を含む。セルロース誘導体の代表例は、ヒド
ロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、
メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチル
セルロースフタレート(HPMC−P)、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースアセテー
トスクシネート(HPMC−AS)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)を含む
。固体分散体製剤における他の適当な賦形剤は、ポリビニルアルコール(PVA)およびP
VPまたは他のポリマーとのそのコポリマー類、ポリアクリレート類、ウレア、キトサン
20
およびキトサングルタメート、ソルビトールまたはマンニトールのような他のポリオール
類を含み、これに限定されない。
【0013】
所望により、本固体分散体は、さらに、少なくとも1種の界面活性剤、例えばドデシル
硫酸ナトリウム(SDS)、Tween(登録商標)80のようなポリオキシエチレンソルビタン脂
肪酸エステル類、デオキシコール酸ナトリウムのような胆汁酸塩類、Solutol(登録商標)H
S 15のような飽和脂肪酸のポリオキシエチレンモノエステル類、Vitamin E TPGSのような
水可溶性トコフェリルポリエチレングリコールコハク酸エステル類を含む。
【0014】
本固体分散体は、非結晶メシル酸イマチニブを、組成物の約0.01∼約80重量%の
30
量で;例えば、約0.01∼約80重量%、0.1∼約70重量%、例えば1∼60重量%
、例えば2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50
重量%、または60重量%の量で含み得る。重合体賦形剤は、組成物の約0.1∼99.9
9重量%の量で存在し得る。界面活性剤が存在するとき、それは、一般に、組成物の約0
.01∼約30重量%、例えば約1∼約20重量%、例えば1∼15重量%、例えば5∼
15重量%の量で存在し得る。
【0015】
本発明の一つの態様において、セルロース誘導体はヒドロキシプロピルセルロース(H
PC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびヒドロキシプロピルメチ
ルセルロースアセテートスクシネート(HPMC−AS)から選択される。かかる場合の本
40
固体分散体は、好ましくは50∼90重量%のセルロース誘導体および10∼50重量%
の非結晶メシル酸イマチニブを含む。
【0016】
ポリビニルピロリドンを固体分散体におけるさらなる賦形剤として使用するならば、本
固体分散体は、好ましくは50∼90重量%のポリビニルピロリドンおよび10∼50重
量%の非結晶メシル酸イマチニブを含む。
【0017】
適当なポリエチレングリコール類は特にポリエチレングリコール8000およびポリエ
チレングリコール6000である。本固体分散体は、好ましくは50∼90重量%のポリ
エチレングリコールおよび10∼50重量%の非結晶メシル酸イマチニブを含む。
50
(4)
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【0018】
適当なポリエチレン−/ポリプロピレン−/ポリエチレン−オキシドブロックコポリマ
ーは、特にPluronic F68である。本固体分散体は、好ましくは50∼90重量%のポリエ
チレン−/ポリプロピレン−/ポリエチレン−オキシドブロックコポリマーおよび10∼
50重量%の非結晶メシル酸イマチニブを含む。
【0019】
Eudragit(登録商標)L-100-55およびEudragit(登録商標)E-100は、本発明に適切なポリ
メタクリレート類である。本固体分散体は、好ましくは50∼90重量%のポリメタクリ
レート類および10∼50重量%の非結晶メシル酸イマチニブを含む。
【0020】
10
所望により、界面活性剤を固体分散体に添加してよい。かかる場合、典型的に1∼10
重量%、好ましくは2∼4重量%の上記賦形剤が界面活性剤に置き換えられる。
【0021】
本発明の一つの好ましい態様において、本固体分散体組成物は、溶融押出により製造す
る。
【0022】
2. シクロデキストリン複合体
本発明に従う製剤手段として有用なシクロデキストリンメシル酸イマチニブ複合体は、
非結晶メシル酸イマチニブ、少なくとも1種の例えばβ−シクロデキストリンまたはα−
シクロデキストリンのようなシクロデキストリン、および所望により少なくとも1種のさ
20
らなる賦形剤を含む。適当なβ−シクロデキストリン類の例は、メチル−β−シクロデキ
ストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキス
トリン、グリコシル−β−シクロデキストリン(cyclodexterin)、マルトシル−β−シク
ロデキストリン、スルホ−β−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンのスルホ−
アルキルエーテル類、例えばスルホ−C[1−4]−アルキルエーテル類を含む。α−シク
ロデキストリン類の例は、グルコシル−α−シクロデキストリンおよびマルトシル−α−
シクロデキストリンを含む。
【0023】
本シクロデキストリンメシル酸イマチニブ複合体は、好ましくは10∼30重量%の非
結晶メシル酸イマチニブを含む。
30
【0024】
さらなる賦形剤を添加しないならば、本シクロデキストリンメシル酸イマチニブ複合体
は、好ましくは70∼90重量%のシクロデキストリンを含む。
【0025】
本発明の一つの好ましい態様において、本シクロデキストリンはβ−シクロデキストリ
ンおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンから選択される。
【0026】
少なくとも1種のさらなる賦形剤は、好ましくはポリビニルピロリドン、例えばPVPK30
、セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロース(HPMC)またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートス
40
クシネート(HPMC−AS)、および界面活性剤、例えばSolutol HS 15またはvitamin E
TPGSから選択される。
【0027】
3. 賦形剤との共粉砕
本発明の一つの態様において、非結晶メシル酸イマチニブの安定化のための製剤手段は
選択した賦形剤との共粉砕である。かかる態様において、非結晶メシル酸イマチニブを、
添加する賦形剤と乾式共製粉または湿式共製粉できる。
【0028】
乾式共製粉について、添加する賦形剤は、ポリビニルピロリドン、例えばPVPK30、セル
ロース誘導体、例えば、限定されないが、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒド
50
(5)
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ロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセ
テートスクシネート(HPMC−AS)、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート(HP
MC−P)、メチルセルロース(MC)、ポリエチレングリコール類、およびアルカリ土類
金属シリカ類およびケイ酸塩類、例えばヒュームド・シリカ類、沈降シリカ類、ケイ酸カ
ルシウム、例えばZeopharm(登録商標)600、またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム類
、例えばNeusilin US2から選択できる。
【0029】
乾式共製粉により得られる製剤原料(principle)は、好ましくは10∼50重量%、よ
り好ましくは30∼50重量%の非結晶メシル酸イマチニブを含む。
【0030】
10
湿式共製粉したメシル酸イマチニブ−賦形剤組成物は、非結晶メシル酸イマチニブと他
の賦形剤を、適当な溶媒中、好ましくは、商品名Acomed(登録商標)、Myritol(登録商標)
、Captex(登録商標)、Neobee(登録商標)M 5 F、Miglyol(登録商標)812、Mazol(登録商標)
、Sefsol(登録商標)860として既知であり、その名の下に市販されているような中鎖脂肪
酸トリグリセライド類中で共粉砕することにより得られる。分画したココナッツ油である
Miglyol(登録商標)812が特に最も好ましい。他の賦形剤は、特にはポリエチレン−/ポリ
プロピレン−/ポリエチレン−オキシドブロックコポリマー類、特にPluronic F68および
、所望により、少量の界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。
【0031】
湿式共製粉したメシル酸イマチニブ−賦形剤組成物は、非結晶メシル酸イマチニブと他
20
の賦形剤を適当な溶媒中で共製粉することにより得られる。適当な溶媒の代表例は、好ま
しくは植物油のような不飽和成分を有する、薬学的に許容される油類;中鎖脂肪酸のモノ
グリセライド類、例えばImwitor(登録商標)308またはCapmul MCM C8;中鎖脂肪酸トリグ
リセライド類、例えば、既知であり、商品名Acomed(登録商標)、Myritol(登録商標)、Cap
tex(登録商標)、Neobee(登録商標)M 5 F、Miglyol(登録商標)812、Mazol(登録商標)、Sef
sol(登録商標)860の下に市販されているもの;混合モノ−ジ−トリ−グリセライド類、例
えばMaisine(登録商標);トランスエステル化エトキシル化植物油、例えばLabrafil(登録
商標)M 2125 CS;グリセロールトリアセテート;ポリグリセロール脂肪酸エステル類、例
えばPlurol Oleique CC497を含み、これに限定されない。他の賦形剤は、セルロース誘導
体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレ
30
ングリコール類、ポリエチレン−/ポリプロピレン−/ポリエチレン−オキシドブロック
コポリマー類、例えばPluronic F68、ポリメタクリレート類、ドデシル硫酸ナトリウム、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、例えばTween(登録商標)80、胆汁酸塩
類、例えばデオキシコール酸ナトリウム、飽和脂肪酸のポリオキシエチレンモノエステル
類、例えばSolutol(登録商標)HS 15、水可溶性トコフェリルポリエチレングリコールコハ
ク酸エステル類、例えばVitamin E TPGSから選択できる。特に、Pluronic F68および所望
により、少量の界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムが、湿式共製粉におよりメシ
ル酸イマチニブの非結晶形態を安定化する賦形剤の例である。
【0032】
4. メシル酸イマチニブの安定化非結晶形態の使用方法
40
メシル酸イマチニブの安定化非結晶形態は価値ある薬理学的特性を有し、例えば、抗腫
瘍剤としてまたは再狭窄を処置する薬剤として使用し得る。
【0033】
本発明は、特にここに記載の該疾患の処置における、または、その処置用薬剤の製造に
おける、メシル酸イマチニブの安定化非結晶形態に関する。
【0034】
式Iの化合物のメタンスルホン酸付加塩のインビボでの抗増殖性、特に抗腫瘍活性は、
例えば、abl依存性腫瘍の処置に関して、Nature Med. 2, 561-6 (1996)に記載されて
いる。
【0035】
50
(6)
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本発明は、該疾患、特に白血病を有する温血動物の処置方法であって、意図する疾患に
有効な一定量の、特に、抗増殖効果を有する量のメシル酸イマチニブの安定化非結晶形態
を、かかる処置を必要とする温血動物に投与する、方法にも関する。本発明は、さらに、
ヒトまたは動物身体の処置に使用するための、特に、腫瘍、例えば神経膠腫または前立腺
腫瘍の処置用医薬組成物の製造のための、メシル酸イマチニブの安定化非結晶形態の使用
に関する。
【0036】
好ましい態様において、本発明は、次に挙げる障害の一つの処置におけるメシル酸イマ
チニブの安定化非結晶形態の使用に関する:
1. GIST、
10
2. 進行慢性骨髄性白血病、
3. 新たに診断された慢性骨髄性白血病、
4. 小児フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病、
5. フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(ALL)、
6. 多形神経膠芽腫、好ましくはヒドロキシウレアと組み合わせて、
7. 隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、
8. 好酸球増加症候群(HES)、
9. 慢性骨髄単球性白血病(CMML)、および
10. 特発性肺線維症。
【0037】
20
種、年齢、個々の状態、投与の方式、および問題の臨床像によって、メシル酸イマチニ
ブの安定化非結晶形態の有効投与量、例えば約100−2000mg、好ましくは200−
1000mg、特に250−800mgのメシル酸イマチニブに対応する1日投与量を、体重
約70kgの温血動物に投与する。好ましくは、約400mgまたは600mgのメシル酸イマ
チニブに対応するメシル酸イマチニブの安定化非結晶形態の1日量を、1日1回経口で、
好ましくは食事とおよび大き目のコップ1杯の水(約200mL)と共に投与する。約800
mgのメシル酸イマチニブに対応するメシル酸イマチニブの安定化非結晶形態の1日量を、
好ましくは400mg投与量の形態で、1日2回、食事と共に投与する。
【0038】
一つの態様において、本製剤手段は、乾燥粉末混合物を含む硬ゼラチンカプセル剤であ
30
る、カプセル剤の形態において提供される。本カプセル殻は、好ましくはゼラチンおよび
二酸化チタンならびに赤色酸化鉄を含む。カプセル充填物対カプセル殻の重量比は、好ま
しくは約100:25∼100:50、より好ましくは100:30∼100:40であ
る。
【0039】
他の態様において、本製剤手段は、非結晶メシル酸イマチニブと少なくとも1種の薬学
的に許容される賦形剤を適当な溶媒中で共粉砕することにより得た安定化非結晶メシル酸
イマチニブ製剤を含む懸濁液の形において提供される。
【0040】
従って、本発明は、次のものを提供する:
40
(a) メシル酸イマチニブの安定化非結晶形態、
(b) メシル酸イマチニブの非結晶形態および非結晶メシル酸イマチニブを安定化する製
剤手段を、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物
であって、特に該製剤手段が固体分散体、シクロデキストリン複合体、および選択した賦
形剤との共粉砕から選択される医薬組成物;
(c) メシル酸イマチニブの非結晶形態および非結晶メシル酸イマチニブを安定化する製
剤手段を、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含むカプセル剤
であって、50mg∼200mgのメシル酸イマチニブに対応する量の安定化非結晶メシル酸
イマチニブを含み、所望により該殻がゼラチンを含みおよび/または、該殻が二酸化チタ
ンを含みおよび/または該殻が赤色酸化鉄を含む、カプセル剤。かかるカプセル剤におい
50
(7)
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て、カプセル充填物対カプセル殻の重量比は約100:25∼100:50、特に100
:30∼100:40である;
【0041】
(d) メシル酸イマチニブの非結晶形態および非結晶メシル酸イマチニブを安定化する製
剤手段を、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に含む、特に10
0mg、400mgまたは800mgのメシル酸イマチニブに対応する量の安定化非結晶メシル
酸イマチニブを含む錠剤;
(e) 適当な溶媒中にメシル酸イマチニブの非結晶形態および非結晶メシル酸イマチニブ
を安定化する湿式共製粉製剤を、所望により少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤
と共に含む、特に100mg、400mgまたは800mgのメシル酸イマチニブに対応する量
10
の安定化非結晶メシル酸イマチニブを含む懸濁液;
(f) 転移、手術不能なGIST、進行慢性骨髄性白血病、新たに診断された慢性骨髄性
白血病、小児フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病、フィラデルフィア染色体陽
性急性リンパ性白血病(ALL)、多形神経膠芽腫、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、好酸
球増加症候群(HES)、および慢性骨髄単球性白血病(CMML)から選択される疾患の処
置用医薬の製造のための、メシル酸イマチニブの安定化非結晶形態の使用;
【0042】
(g) 処置を必要とする温血動物における転移、手術不能なGIST、進行慢性骨髄性白
血病、新たに診断された慢性骨髄性白血病、小児フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性
白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(ALL)、多形神経膠芽腫、隆
20
起性皮膚線維肉腫(DFSP)、好酸球増加症候群(HES)、および慢性骨髄単球性白血病
(CMML)から選択される疾患の処置方法であって、動物に、各疾患に対して治療的に有
効である一定量のメシル酸イマチニブの安定化非結晶形態を投与することを含む、方法;
および
(h) メシル酸イマチニブの非結晶形態を含む医薬組成物の製造用中間体としてメシル酸
イマチニブの非結晶形態を安定化する、製剤手段の使用。
【0043】
次の実施例は、範囲を限定することなく本発明を説明する。次の実施例は、1ヶ月間、
40℃/75%RHで貯蔵後、結晶薬剤が検出されない、製剤を記載する。
【実施例】
30
【0044】
実施例1
この実施例は、非結晶メシル酸イマチニブの代表的固体分散体組成物を挙げ(表1)、そ
して本発明の固体分散体の製造を説明する。メシル酸イマチニブ(結晶形態ベータ)を、下
記のハイスループット・スクリーニング技術(HTS)を使用して固体分散体として製剤す
る。一定量のメシル酸イマチニブを最初に適当な溶媒(95%エタノールまたはアセトン
:エタノール:水(50:40:10))に溶解して、貯蔵溶液(25mg/mL)を製造する。
次いで、適当量のこの溶液(40∼200μL)を96ウェルプレートHTS Crissy Platform
の各ウェルに分配して、所望量のメシル酸イマチニブ(1∼5mg)を各ウェルに送達させる
。次いで溶媒を蒸発乾固する。一定量の各賦形剤を適当な溶媒(95%エタノールまたは
アセトン:エタノール:水(50:40:10))に溶解または懸濁させて、貯蔵溶液(25
mg/mL)を製造する。次いで、適当量の賦形剤貯蔵溶液(40∼360μL)を一定量のメシ
ル酸イマチニブを含むウェルに添加する。各ウェルの内容物を混合し、溶媒を蒸発乾固す
る。96ウェルプレートを、貯蔵前および1ヶ月間、40℃/75%RHで貯蔵後の両方
にX線粉末回折(XRPD)を使用して走査し、結晶メシル酸イマチニブの存在をモニター
する。
【0045】
40
(8)
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【表1】
10
20
30
(9)
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【表2】
10
20
【0046】
実施例2
この実施例は、シクロデキストリン−メシル酸イマチニブ複合体の代表的組成物を挙げ
(表2)、そして、本発明の組成物の製造を説明する。シクロデキストリン−メシル酸イマ
チニブ複合体は、実施例1に記載した指示に従うHTS技術に従い、下記の通り僅かに改
変して製造する。一定量のメシル酸イマチニブ、各シクロデキストリン、および各さらな
る賦形剤をエタノール95%に溶解して、各成分の個々の貯蔵溶液を製造する。次いで、
適当量のメシル酸イマチニブの貯蔵溶液を各ウェルに添加し、続いて蒸発乾固し、所望量
のメシル酸イマチニブを各ウェル中に得る。適当量のシクロデキストリン貯蔵溶液(β−
シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)およびさらな
る賦形剤の貯蔵溶液(本製剤に存在するならば)を各ウェルに添加し、続いて蒸発乾固する
。96ウェルプレートを、貯蔵前および1ヶ月間、40℃/75%RHで貯蔵後の両方に
XRPDを使用して走査して、結晶メシル酸イマチニブの存在をモニターする。
【0047】
30
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【表3】
10
【0048】
20
実施例3
この実施例は、代表的乾式共製粉メシル酸イマチニブ−賦形剤組成物を挙げ(表3)、そ
して、本発明の組成物の製造を説明する。メシル酸イマチニブ(非結晶形態)を賦形剤と乾
燥状態で次の通り製粉する。メシル酸イマチニブおよび賦形剤の混合物(総量2.5g)を
、ジルコニアビーズ(5g、直径3mm)と、10分間、卓上攪拌機(bench-top turbula)中
で混合し、その後製粉実験を開始する。次いで、適当量のメシル酸イマチニブ/賦形剤/
ジルコニアビーズ混合物(3.75g)を、振動ミルの製粉容器に移し、2時間、環境温度
および1000rpmで製粉する。最終粉末を、貯蔵前および1ヶ月間、40℃/75%R
Hで貯蔵後の両方にXRPDで分析する。
【0049】
30
【表4】
40
【0050】
実施例4
この実施例は、湿式共製粉メシル酸イマチニブ−賦形剤組成物を説明し、そして、本発
明の組成物の製造を説明する。
メシル酸イマチニブ(非結晶形態)を、分画したココナッツ油(Miglyoil 812(登録商標))
中、賦形剤と次の通り共製粉する。次の賦形剤を、80gのMiglyoil 812(登録商標)を含
むガラス容器に添加する:
1.92gのPluronic F-68
0.08gのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
得られた混合物を環境温度で、慣用のプロペラミキサーで、賦形剤の均一懸濁液が得ら
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(11)
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れるまで撹拌する。続いて、2gのメシル酸イマチニブを懸濁液に添加し、続いて、均一
な分散体が得られるまで撹拌する。得られた懸濁液をDYNO-MILLのガラス容器に移し、1
70gのガラスビーズ(0.75−1mm)を加える。製粉を、次の操作条件下で6時間行う
:撹拌速度3200rpm、水でジャケットを冷却。
最終共製粉産物を、貯蔵前および1ヶ月間、40℃/75%RHで貯蔵後の両方にXR
PDで分析する。
【0051】
実施例5
この実施例は、溶融押出により製造した非結晶メシル酸イマチニブの代表的固体分散体
組成物を挙げ(表4)、そして、本発明の組成物の製造を説明する。
10
メシル酸イマチニブ(非結晶形態)を、次の通り賦形剤と混合する。50wt%のメシル
酸イマチニブおよび50wt%の賦形剤(表4に列記)を含む混合物を杵と臼で製造し、そ
の後を溶融実験を開始する。次いで、この混合物をHaake mini lab押出機の押出容器に移
し、Eudragit L100-55およびPVPK30について各々165℃および170℃でx時間処理す
る。最終押出物を杵と臼を使用して粉砕し、貯蔵前および1ヶ月間および4ヶ月間、40
℃/75%RHで貯蔵後にXRPDおよびDSCで分析する。
【0052】
【表5】
20
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.
A61K
FI
9/20
(2006.01)
A61K
9/20
A61P 35/02
(2006.01)
A61P 35/02
(72)発明者 エリザベーテ・ゴンカルベス
スイス、ツェーハー−4055バーゼル、フリードリッヒシュトラーセ13番
(72)発明者 オスカル・カルブ
スイス、ツェーハー−4054バーゼル、オーバーヴィラーシュトラーセ88番
10
(72)発明者 ミヒャエル・ムッツ
ドイツ連邦共和国デー−79104フライブルク、モーツァルトシュトラーセ33番
(72)発明者 ヴォルフガング・ヴィルト
スイス、ツェーハー−4422アリスドルフ、ブラウエンラインシュトラーセ3ベー番
(72)発明者 ジェイ・パーシバン・ラクシュマン
アメリカ合衆国08807ニュージャージー州ブリッジウォーター、キャンドルウィック・レイン
169番
審査官 関 景輔
20
(56)参考文献 国際公開第2006/121941(WO,A1) 国際公開第2006/021657(WO,A1) 特開2000−229887(JP,A) 国際公開第2005/123076(WO,A1) 特表2010−521477(JP,A) BENI,S. et al,EUROPEAN JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES,2007年,Vol.30,p.167174
(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/506 A61K 9/20 A61K 9/48 A61K 47/02 A61K 47/22 A61K 47/38 A61P 35/02 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
30