第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 1 問題 正答 「宇宙が膨張している」という観測事実と相容れない主張はどれ か。 ①宇宙には始まりがあった ②宇宙には中心がない ③宇宙は無限の広がりをもつかもしれない ④観測できる宇宙の大きさは138億光年である 2 次の文のA、Bにあてはまる組み合わせとして正しいものはどれ か。 太陽表面に現れる黒点は周囲の光球より温度が【 A 】、磁場が 【 B 】領域である。 解説 章 ④ 宇宙が膨張していなければ、138億年かかって光が届く距 離は138億光年である。逆にいえば、宇宙が膨張している 場合、138億年かかって光が届く距離は138億光年ではあ りえない。たとえば観測可能な最も古い(138億年前の)事 象である宇宙マイクロ波背景放射(「宇宙の晴れ上がり」) は、距離に換算すると約450億光年先である。つまり観測 可能な宇宙の広がりは400億光年を超えている! ただ し、その宇宙マイクロ波背景放射を放った場所は、138億 年前には5000万光年ほどのところにあった。すぐ目の前 から出た光が、138億年かかって、ようやく今、観測されて いる。そしてその場所は、今ははるか450億光年先にあ る。「138億光年」という距離は、膨張宇宙においては特段 意味のある場所ではない。 1 ③ 太陽表面に現れる黒点は周囲の光球より温度が低く、磁 場が強い領域である。太陽の自転に伴って表面を動いて いき、縁へ近づくと黒点の暗部が見えにくくなり、半暗部 が目立つようになる。この現象をウィルソン効果と呼ぶ。 2 ① はやぶさ2を含む宇宙探査機は強烈な太陽光(熱)から本 体を守るため、ポリイミドという物質とアルミニウムを何層 にも重ねた金色のシートを貼っている(金箔ではない)。ち なみに、太陽電池パネルは基本的に太陽の方を向いて いるので、うらには、このシートを貼る必要はない。 3 ①A:高く B:強い ②A:高く B:弱い ③A:低く B:強い ④A:低く B:弱い 3 小惑星探査機「はやぶさ2」の模型を作ることにした。金色に塗るべ き場所はどこか。 ①本体 ②アンテナ ③太陽電池パネルの表 ④太陽電池パネルの裏 ©大阪市立科学館 4 次の天体のうち、見かけの等級の数値が最も小さくなる天体はど れか。 ① 金星は最大で約-5~-4等、火星は約-3等、ベテルギ ウスは約0等、北極星は約2等。等級は明るいほど小さい 数値で表す。 ①金星 ②火星 ③ベテルギウス ④北極星 1 4 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 問題 正答 解説 章 5 次の4つのスペクトル図のうち、ベガのスペクトルはどれか。 ② ②はベガのスペクトル。①はレグルス、③はアンタレス、 ④はカペラ。 5 6 星間ガスの温度の高い順として、正しいものはどれか。 ② 暗黒星雲が10~50K、冷たいHⅠ雲が100K、暖かいHⅠ 雲が5000K、惑星状星雲が1万K以上、超新星残骸が100 万K以上ある。残骸といえども超新星残骸は非常に高温 で、X線も観測されるほどである。 6 ② 宇宙初期、ダークマターがわずかに濃い場所があり、そこ に水素ガスが集まって、初代の恒星が生まれ、銀河の赤 ちゃんができたと考えられている。宇宙初期においてダー クエネルギーは物質(ダークマター)に比べてはるかにエ ネルギー密度が低く、またその性質上、構造形成には役 割を果たさなかった。 7 ④ Aは『日本紀略』後編六で皆既日食を、Bは橘南谿の『望 遠鏡観諸曜記』で望遠鏡で見た天の川を、Cは『宋会要輯 稿』で1054年の超新星爆発を表している。 8 ①惑星状星雲>超新星残骸>暗黒星雲>HⅠ雲 ②超新星残骸>惑星状星雲>HⅠ雲>暗黒星雲 ③HⅠ雲>惑星状星雲>暗黒星雲>超新星残骸 ④暗黒星雲>超新星残骸>HⅠ雲>惑星状星雲 7 あなたは宇宙初期に銀河をつくることにした。必要な材料の組み合 わせで正しいものはどれか。 ①ダークエネルギー、ゆらぎ(分布の濃淡)、水素ガス ②ダークマター、ゆらぎ(分布の濃淡)、水素ガス ③ダークマター、ダークエネルギー、ゆらぎ(分布の濃淡) ④ダークマター、ダークエネルギー、水素ガス 8 それぞれの天体観測の記録は何を表しているか。組み合わせで正 しいものを選べ。 A:「墨色のごとくにて光なし。群鳥飛乱し、衆星ことごとく現る。」 あつまり さ のう B:「細小の星数十百千聚て、紗嚢に蛍を盛ごとし。」 C:「昼もあらわれて太白の如し。芒角四出し、色赤白。」 ①A:皆既日食 B:超新星 C:天の川 ②A:超新星 B:天の川 C:皆既日食 ③A:天の川 B:皆既日食 C:超新星 ④A:皆既日食 B:天の川 C:超新星 2 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 9 問題 正答 第三宇宙速度が、地球公転軌道付近での太陽重力からの脱出に 必要な速度(秒速42 km)より小さいのはなぜか。 ①宇宙に出れば無重力(微小重力)になるから ②すでに地球の重力を振り切っているから ③地球の公転速度を加算できるから ④ロケットを噴射できるから 10 次の用語のうち、系外惑星と関係がないものはどれか。 解説 ③ 第三宇宙速度(約16.7km/s)は、地球表面から打ち出さ れた物体が太陽系を脱出するために必要な最小の初速 度のことである。 地球公転軌道付近での太陽重力からの脱出に必要な速 度は約42km/sだが、地球表面から打ち出された場合に は、地球の公転速度(約30km/s)を加算できるため、脱出 に必要な速度は約12km/sになる。しかし、地球重力を振 り切るための速度(第二宇宙速度;約11.2km/s)が必要な ので、第三宇宙速度は12km/sよりも大きな値(約 16.7km/s)となる。 なお、実際には、ロケットの噴射もできるし、惑星重力(ス イングバイ)も利用できるので、第三宇宙速度より小さくて も太陽系を脱出できる。 章 9 ② スーパーアースは地球より大きな(そしておそらく岩石質 10 の)系外惑星、ホットジュピター、ホットネプチューンはそ れぞれ木星サイズ、海王星サイズの(おそらくガス質の) 系外惑星で親星のすぐ近くを公転しているものを指す。今 年話題になった「スーパーマーズ」は、火星が地球に接近 して明るく、大きく見えるということでマスコミが使った言葉 で、学術用語ではない。 ①スーパーアース ②スーパーマーズ ③ホットジュピター ④ホットネプチューン 11 宇宙の階層構造において、サイズの大きい順に並んでいるものは どれか。 ③ サイズの順は、宇宙の大規模構造、銀河団、銀河、星団 で、大きさはそれぞれ1億光年、100万光年、10万光年、 10光年の程度である。 1 ④ 太陽面全体を写した画像を見ると、中心領域は明るい が、周縁部では暗くなる現象を周縁減光効果といい、太 陽が球状のガス体であることの証拠である。もし、太陽が 固体であれば、周縁部まで同じように明るくなる。 2 ①銀河団>星団>銀河>大規模構造 ②銀河団>大規模構造>星団>銀河 ③大規模構造>銀河団>銀河>星団 ④星団>銀河団>大規模構造>銀河 12 太陽が球状のガス体であることを表す現象はどれか。 ①黒点 ②白点 ③粒状斑 ④周縁減光 13 東方最大離角について正しく描いている模式図は次のうちどれか。 ① ②は西方最大離角、③は東矩、④は西矩である。 3 14 こと座のベガ(0等級)は、おとめ座のスピカ(1等級)よりおよそ何倍 明るいか。 4 ①0.25倍 ②2.5倍 ③25倍 ④250倍 3 ② 1等星と6等星を比べると5等級差で明るさが100倍違うの で、1等級差であれば、100倍の5乗根のおよそ2.5倍明る さが違う。 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 問題 正答 15 質量が太陽の1/2倍の主系列星がある。この主系列星の光度は太 陽の光度のおよそ何倍になるか。 ①1/100倍 ②1/10倍 ③10倍 ④100倍 16 惑星状星雲と超新星残骸の共通点はどれか。 ①赤色巨星が爆発してできる ②中心に白色矮星がある ③ガスの密度が1cm3あたり109個くらいである ④星の生涯の最期にできる 17 写真の銀河、M87のハッブルの分類はどれか。 ①E0 ②S0 ③SAa ④SBb 18 ルベリエの予想に基づき、ドイツの天文学者ガルレによって1846年 に発見された天体は何か。 ①海王星 ②冥王星 ③小惑星ケレス ④ハレー彗星 19 第二宇宙速度の説明で正しいのはどれか。 ①地球を周回する軌道に乗るために必要な速度で、およそ 7.9km/s ②地球の引力圏を脱出する速度で、およそ11.2km/s ③地球の重力を振り切り月に到達できる速度で、およそ14.5km/s ④太陽の重力を振り切り太陽系から脱出する速度で、およそ 16.7km/s 20 次の図は、地球の植生の反射率を示している。反射率が急激に増 加しているところ(破線で囲った部分)を何というか。 ①レッドエッジ ②オレンジエッジ ③グリーンエッジ ④ブルーエッジ 解説 ② 主系列星の質量光度関係より、光度は質量の3~4乗に 比例する。したがって、質量が太陽の1/2倍の主系列星 は、太陽の1/23~1/24倍=1/8~1/16倍の光度となる。こ の中にあてはまる選択肢は、②1/10倍である。 5 ④ 惑星状星雲も、超新星残骸も星の生涯の最期に形づくら れるが、性質はまったく異なる。惑星状星雲は、中心星か ら比較的穏やかにガスが放出されてできたと考えられる。 超新星残骸は、太陽質量の8倍以上の星が赤色巨星を 経て爆発してできたものであり、惑星状星雲と比べて非 常に高温である。 6 ① M87は、おとめ座にある楕円銀河で、中心から長さ7000 ~8000光年のジェットが放出されている。(M87の直径は 約12万光年)。ハッブルの分類では、楕円銀河はE0~ E7、レンズ状銀河はS0、渦巻銀河はSAa~SAc、棒渦巻 銀河はSBa~SBc(a~cの他に、d、mの添字が使われる こともある)という記号が当てられている。 7 ① この発見以前にも、海王星はガリレイやラランドも観測し ていたが、当時は恒星だと考えられた。また、イギリスで はアダムスの予測に基づき、チャリスが海王星を探索し たが、2度も観測していながら見逃している。現在では、ア ダムスとルベリエとガルレの3人が発見者とされている。 8 ② ①は第一宇宙速度、④は第三宇宙速度。月に到達する には第二宇宙速度で地球を離れた後、月の重力を利用し てその周回軌道に入ればよい。 9 ① 地球植物の葉緑体は、赤色領域の光を最もよく吸収する 10 (補色の緑色をよく反射する)。したがって、地球の植生の 反射率は、赤色で小さく、赤色の端付近で大きく増加す る。これをレッドエッジという。もし太陽のようなG型星に系 外惑星があって、スペクトルにレッドエッジが見つかれ ば、植物の存在が期待される。 ③ ビッグバンから今日までの時間を宇宙の年齢としている。 宇宙年齢は、宇宙背景放射の観測と宇宙膨張の測定か ら得られ、最近の観測(欧州宇宙機関が打ち上げた人工 衛星「プランク」の観測)によると (137.99 ± 0.21) 億年 (約138億年)であるとされる。 21 現在考えられている宇宙の年齢はおよそいくらか。 ①138万年 ②1億3800万年 ③138億年 ④1兆3800億年 4 章 1 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 問題 正答 22 太陽の構造について、内側から外側へと正しく並んでいるものはど れか。 解説 章 ② 選択肢にある用語をすべて内側から並べると、中心核→ 放射層→対流層→光球→彩層→プロミネンス→コロナと なる。 2 23 次の図は0を中心、FとF́ を焦点とする惑星の公転軌道を示してい る。ケプラーの第1法則によると、太陽はどこにあるか。 ③ 惑星の公転軌道は楕円を描く。太陽はその楕円軌道の1 つの焦点に位置する。もう1つの焦点には特に何もない。 3 24 次のHR図中のA、B、Cに属する恒星の説明として、間違っているも のはどれか。 ③ 恒星Aは白色矮星と呼ばれ、高温で半径が非常に小さい (地球程度)ために暗く見える。恒星Bは主系列星と呼ば れ、左上に行くほど高温になり明るくなる。星はその一生 のうち9割以上を主系列星として過ごすため、Bに属する 恒星の数が最も多い。恒星Cは赤色巨星と呼ばれ、低温 で半径が大きい(太陽の数百倍)ため明るく見える。赤色 巨星は、主系列星が膨張して半径が大きくなっているた め、密度は小さい。褐色矮星は、主系列星の右下(右端 続き)に位置する。 4 ① 主系列星の寿命は、質量の2~3乗に反比例する。した がって質量が太陽の2倍の主系列星の寿命は、太陽の寿 命の1/22~1/23倍=1/4~1/8倍となる。太陽の主系列星 としての寿命が100億年であるから、この恒星の寿命は 100/8~100/4億年=12.5~25億年となる。この中であて はまる選択肢は、①20億年である。 5 ③ 散開星団と比べて、球状星団の方が古い天体で、星の数 が多く、重元素が少ない。散開星団、球状星団ともにサイ ズは1~10pcくらいである。 6 ①中心核→彩層→光球→プロミネンス ②放射層→対流層→彩層→コロナ ③対流層→コロナ→プロミネンス→光球 ④光球→彩層→コロナ→プロミネンス ①恒星Aは恒星Cよりも半径が小さい ②恒星Bは恒星Cよりも数が多い ③恒星Cは最も密度が大きい ④褐色矮星は、HR図上で恒星Bの右下に位置する 25 質量が太陽の2倍の主系列星がある。この主系列星の寿命はどれ くらいか。なお、太陽の主系列星としての寿命はおよそ100億年で ある。 ①20億年 ②50億年 ③120億年 ④150億年 26 銀河系内の散開星団と球状星団を比較したとき、正しいものはど れか。 ①散開星団の方がサイズが大きい ②散開星団の方が星の数が多い ③散開星団の方が若い ④散開星団の方が重元素が少ない 5 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 問題 正答 27 構成銀河数が数百個~数千個で、約1000万光年の広がりをもって いる銀河の集まりはどれか。 ①銀河群 ②銀河団 ③超銀河団 ④銀河連峰 28 『平家物語』や『源平盛衰記』に記されている水島の戦いのさなか に起こった現象は何か。 ①金環日食 ②流星群 ③超新星爆発 ④隕石の落下 29 次の図は宇宙環境の人体への経年影響を表したものである。図中 のA、B、C、Dの線は何を表しているか。正しい組み合わせを選べ。 解説 章 ② 代表例として、おとめ座銀河団、かみのけ座銀河団が挙 げられる。約1億光年の広がりをもち、複数の銀河群、銀 河団を含む構造を超銀河団といい、超銀河団や銀河団・ 銀河群による網の目状の銀河の空間分布を宇宙の大規 模構造という。 7 ① 水島の戦いのときには、食分0.93の金環日食が起こって いる。平家は、朝廷から暦の情報を入手でき、この日に日 食が起こることを知っており、欠けていく太陽に恐れ混乱 する源氏に対して有利に戦いを進めたとされる。 8 ④ 無重力は心循環器、骨、筋肉、免疫系等に影響を及ぼ す。顔のむくみ(体液シフト)は数週間でおさまるが、骨・カ ルシウム代謝と放射線の影響は宇宙滞在期間とともに増 加する。ただし、累積被爆の影響は症状の出る十分手前 で終わらせるため、ISSの長期滞在は6カ月に制約されて いる。 9 ② 地球生命において、片方のタイプのアミノ酸が使われて いる理由はまだ解明されていない。最近の研究で、偏光 がD型とL型の合成に非対称性をもたらすことがわかって きたので、これが理由につながるかもしれない。 10 ④ ブラックホールは、強い重力のために光さえも逃れること はできない。しかし、ブラックホールの影響で周りの星や ガスを引きつけて、ガス円盤やジェットを形成するので、 ブラックホールがどこにあるのか観測することができる。 1 ② プラージュは、太陽の彩層の明るい領域で、黒点の周囲 によく見られる。活動領域で複雑に交錯する磁場によっ て、Hα線などの光が発せられて明るくなっている。 2 ①A:赤血球量 B:体液シフト C:放射線影響 D:骨・カルシウム 代謝 ②A:体液シフト B:骨・カルシウム代謝 C:赤血球量 D:放射線 影響 ③A:赤血球量 B:放射線影響 C:体液シフト D:骨・カルシウム 代謝 ④A:体液シフト B:赤血球量 C:骨・カルシウム代謝 D:放射線 影響 30 生物の材料であるアミノ酸にはD型とL型がある。生体内部でのタ ンパク質合成では、アミノ酸の型をどのように使っているか。 ①すべての生物が、D型だけを使っている ②すべての生物が、L型だけを使っている ③すべての生物が、D型もL型も使っている ④生物によって、D型だけを使ったり、L型だけを使ったりしている 31 ブラックホールの説明として、間違っているものはどれか。 ①ブラックホールは周りに重力を及ぼすので、原理的にはそれを 利用して観測できる ②ブラックホールは周囲にガスを集めて、円盤をつくる場合があ り、それが高温度になり電磁波を放出するので、それを観測できる ③ブラックホールに落ちると、外に出てくることはできない ④ブラックホールは光も吸い込むので、真っ黒だからどこにあるか は絶対にわからない 32 プラージュとは、太陽のどこの活動領域か。 ①対流層 ②彩層 ③コロナ ④放射層 6 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 問題 正答 33 地球の公転速度が最も速くなるのは、公転軌道上のどこか。 ①近日点 ②遠日点 ③春分点 ④秋分点 34 太陽が放射する光のうち、放射強度が最も大きい光の波長は何で 決まるか。 ①大気組成 ②表面温度 ③半径 ④地球との距離 35 次の1等星のうち、赤色巨星はどれか。 ①おおいぬ座のシリウス ②こと座のベガ ③わし座のアルタイル ④さそり座のアンタレス 36 銀河系の場合、銀河の中心付近に恒星が集中しているため、太陽 系と同様、中心から離れている場所では回転速度が遅くなると思 われるが、実際には推定される速度より速くなっている。それはな ぜか。 解説 章 ① ケプラーの第2法則によると、太陽と惑星を結ぶ線分が単 位時間に一定の面積を描くように、惑星が公転する。つま り、惑星が(この場合、地球が)太陽に最も近い点、つまり 近日点で公転速度がもっとも速くなる。 3 ② 太陽をはじめ、恒星の放射エネルギーは温度の関数で表 わされる黒体放射で近似でき、最も強い波長も表面温度 で決まり、半径や地球との距離には依存しない。なお、大 気組成により太陽(恒星)のスペクトルには吸収線(暗線) が現れるが、電磁波強度のピークに変化をもたらすほど の影響はない。 4 ④ さそり座の心臓にあたるアンタレスが赤い色をしているの は、よく知っているのではないだろうか。半径は太陽のお よそ700倍もある赤色巨星である。 5 ④ 銀河系にかぎらず、光や電波では見えないが重力を及ぼ す物質(ダークマター/暗黒物質)が銀河にあれば、銀河 中心から離れた天体も、より大きな重力を受けて回転速 度が速くなることを説明できる。しかし、このダークマター が何なのかは、まだわかっていない。 6 ④ 宇宙の始まりは、何らかの確率的なゆらぎから時間と空 間をもつものとして生まれ、急激に膨張し(インフレーショ ン)、そこからわずかな時間で火の玉状態(ビッグバン)と なり、水素などの通常物質やダークマターがつくられた。 その後、初代の星が輝くまでは宇宙に光を放つ天体は1 つもなく(宇宙の暗黒時代)、水素は電離されていなかっ たが、星が輝き始めると強い紫外線によってまわりの水 素ガスを電離させていった(宇宙の再電離)と考えられ る。 7 ④ 宣明暦は、平安時代から江戸時代までの823年間一度も 改暦されずに使われていた。そのため、天象とのずれが2 日に及んでいた。当の中国では71年間使われたのに対 し、日本の暦学では独自の暦をつくるに至らず、長い間改 暦されなかった。 8 ①系外銀河の重力の影響を受けているから ②銀河系の外から高速で恒星が突入しているから ③銀河系の中心に巨大なブラックホールがあるから ④銀河系内部の未知の物質が回転速度に影響を与えるから 37 宇宙の始まりの出来事として、正しい順に並んでいるものはどれ か。 ①ビッグバン→宇宙の暗黒時代→インフレーション→宇宙の再電 離 ②宇宙の暗黒時代→宇宙の再電離→ビッグバン→インフレーショ ン ③宇宙の再電離→インフレーション→宇宙の暗黒時代→ビッグバ ン ④インフレーション→ビッグバン→宇宙の暗黒時代→宇宙の再電 離 38 せんみょうれき 宣明暦は、日本で最も長く使われた暦である。宣明暦が長く使われ ていたのはなぜか。 ①中国では改暦のたびに、戦乱が起こっていたから ②宣明暦はグレゴリオ暦の一種で、世界で広く使われていたから ③宣明暦は、朝廷や幕府などで使われ、一般に普及しなかったか ら ④当時の日本は、独自に暦をつくる技術がなかったから 7 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 問題 正答 39 固体ロケットと比べたときの、液体ロケットの利点は何か。 解説 ③ 以下の表のように、固体ロケットと液体ロケットの双方に 利点と欠点がある。例えば、H-ⅡAロケットは液体水素と 液体酸素を推進剤とした液体ロケットであるが、搭載重量 に応じて固体補助ロケットを追加するなど、双方の利点を 活用している。 ①開発コストが小さい ②大きな推力が得られる ③燃焼の中断、再着火ができる ④燃料を充填したまま長期保管ができる 40 主系列星の周りに初めて見つかった系外惑星の観測手法はどれ か。 ①ドップラー(視線速度)法 ②トランジット法 ③直接撮像法 ④ハッブル法 章 9 ① ドップラー法は惑星の重力によって親星がわずかにふら 10 つく動きを検出する観測方法。トランジット法は惑星が親 星の前を通過するときにわずかに暗くなる食減光を検出 する観測方法。直接撮像法は親星のごく近傍にいる暗い 惑星を画像で直接捉える方法。その他に惑星の重力に よって親星がわずかにふらつく位置ずれを検出するアスト ロメトリ法がある。最初に発見された51Pegbは、ドップラー 法によって発見された。ハッブル法は存在しない。 41 ドレークの式で、宇宙文明の見積もり数が近年増加した大きな要因 ③ 系外惑星の発見の他にも、ドレークの式で示されている は何か。 各要素の値が少しずつアップしていると考えられている。 なお、①、②、④はドレークの式の各要素とは直接関係し ない。 ①宇宙の年齢が正確にわかってきたこと ②宇宙における暗黒物質やダークエネルギーの割合がわかってき たこと ③太陽系外の惑星がたくさん見つかるようになったこと ④人間の平均寿命が延びてきたこと 1 42 皆既日食の観測の際に発見され、当時太陽にしかないと考えられ ていた元素はどれか。 ① 1868年の皆既日食の観測で、彩層にヘリウムによる輝線 が発見された。当時は、ヘリウムが太陽にしかないと考え られていたために、太陽神ヘリオスにちなんで「ヘリウム」 と命名された。 2 ① 現在考えられている太陽系形成の基本的なシナリオは、 1980年頃に京都大学の林忠四郎が提唱した京都モデル が標準となっている。②は京都モデルに対抗する別のモ デルによる考え方だが、現在では大まかなシナリオとして は京都モデルの方が有力だと考えられている。 3 ④ HR図を最初に提唱したのは、ヘルツシュプルングとラッセ ルである。 4 ② ある程度質量をもった原始星は主系列星に進化するが、 太陽質量の0.08倍に満たないものは、やがて褐色矮星に なる。太陽質量程度のものは、赤色巨星となった後、白色 矮星になる。 5 ①ヘリウム ②アルゴン ③ネオン ④キセノン 43 京都モデルによると、惑星はどのように誕生したと考えられている か。 ①原始太陽系円盤の中の塵が集まって微惑星となり、それらが衝 突合体して惑星ができた ②原始太陽系円盤の中のガスと塵が集まって原始ガス惑星とな り、その中で塵が中心部に沈殿して核をもつ惑星ができた ③原始太陽が爆発した際に飛び散った物質が集まってできた ④巨大な太陽フレアの衝撃波によってガスと塵が圧縮されてでき た 44 HR図の「HR」は何の略か。 ①ハッブルとライマン ②ハッブルとラッセル ③ヘルツシュプルングとライマン ④ヘルツシュプルングとラッセル 45 星の進化の道すじとして、間違っているのはどれか。 ①原始星→褐色矮星 ②白色矮星→原始星 ③主系列星→白色矮星 ④主系列星→赤色巨星 8 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 問題 正答 46 次の文のA、Bにあてはまる組み合わせとして正しいものはどれ か。 反射星雲は、通常、輝線星雲に比べると、温度の【 A 】星の周囲に 見られる。これらの温度の【 A 】星は、ガスを電離するほどの【 B 】 を出していないのである。 ①A:低い B:赤外線 ②A:低い B:紫外線 ③A:高い B:赤外線 ④A:高い B:紫外線 47 局部銀河群は、銀河系とアンドロメダ銀河(M31)を含む約40個の 銀河からなる。以下の銀河の中で、局部銀河群に含まれていない 銀河はどれか。 ①りょうけん座のM51銀河(子持ち銀河) ②かじき座の大マゼラン雲 ③さんかく座の渦巻銀河M33 ④アンドロメダ座の矮小楕円銀河M32 48 小惑星探査機「はやぶさ」に搭載された非化学ロケットはどれか。 ①イオンロケット ②光子ロケット ③ラムロケット ④レーザーロケット 49 次の図は、主系列星のハビタブルゾーンを示している。この図の縦 軸は何を表すか。単位は太陽を1とする。 ①親星の半径 ②親星の年齢 ③親星の光度 ④親星の質量 50 太陽表面に現れる黒点数は、平均して何年周期で増減するか。 解説 ② 高温星は、多くの紫外線を放射する。紫外線はガスを電 離するため、高温星の周りにガスが多く存在すると輝線 星雲となる。また、赤外線はガスを電離するほどのエネル ギーをもたない。そのため、反射星雲は温度の低い星の 周囲に存在する。反射星雲が光るのは、ガス中のダスト が星からの光を散乱するためである。そのとき、波長の短 い光が散乱を受けやすいため、反射星雲は一般に青く見 える。したがって②が正答となる。 6 ① ②の大マゼラン雲は銀河系の伴銀河、④のM32はアンド ロメダ銀河の伴銀河で、局部銀河郡の銀河であることが 明らか。さんかく座の渦巻銀河M33は、局部銀河郡内で、 アンドロメダ銀河、銀河系に次ぐ3番目の大きな銀河であ る。①のM51の距離は2100万光年で、局部銀河群の外に ある。したがって正解は①となる。 7 ① 小惑星探査機「はやぶさ」に搭載されたイオンロケットは、 イオン化した推進剤を電気や磁気の力で噴出するもの で、推力は小さいが継続的に長期間の加速が可能であ る。光子ロケット、ラムロケット、レーザーロケットは実用 化されていない。 9 ④ ハビタブルゾーンは、水が液体で存在できる軌道領域を 10 意味し、親星の光度(質量や温度に依存)と親星からの距 離で決まる。親星が主系列星の場合には、質量が大きい ほど光度が大きく(質量光度関係:光度は質量のおよそ3 ~4乗に比例する)、ハビタブルゾーンは親星から離れた 位置に存在する。図の横軸を見ると、グリーゼ581cと地 球は距離がおよそ10倍違う。惑星に届く親星からのエネ ルギーは、親星の光度に比例し、距離の2乗に反比例す る。したがってグリーゼ581cに届くエネルギーが地球に届 く太陽のエネルギーとほぼ等しいとすると、グリーゼ581c の親星の光度は、太陽の光度の100分の1くらいでなけれ ばならない。このことから、縦軸の数値は光度ではないこ とが判断できる。また、グリーゼ581cの親星の縦軸の数 値は太陽の1/3であるから、これを質量とすれば、親星の 光度は太陽の(1/3)3~(1/3)4=1/30~1/100となり、地球 に届くエネルギーとほぼ等しくなる。したがって縦軸は親 星の質量であると判断できる。なお、主系列星の半径は 質量によってほとんど変わらないし、主系列段階では、年 齢によって光度もあまり変わらない。 ① 黒点は、太陽表面へ磁力線が現れた場所である。そのた め、黒点数が多いときは、太陽の磁場活動も盛んであ る。この太陽の活動周期は11年とされる。 ①11年 ②13年 ③110年 ④130年 9 章 2 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 問題 正答 51 地球と水星の軌道を、それぞれ半径1 auと0.4 auの円軌道とする。 地球から水星まで、図に示すような楕円軌道で人工衛星を飛行さ せるとき、人工衛星の軌道長半径はいくらになるか。 解説 章 ② 図より、軌道の長半径の2倍は、1+0.4=1.4 au となる。 軌道長半径はこの半分なので、②が正解となる。 3 ② 光度L は半径の2乗と表面温度の4乗に比例する。半径の 大きな恒星の光度をL 1、小さな恒星の光度をL 2とすると、 表面温度が等しいので、L 1=L 2×102=100L 2となり、半 径の大きな恒星の方が、小さな恒星より100倍明るい。明 るさが100倍明るければ、等級は5等明るくなり、明るいと 等級の数値は小さくなるので、②が正答となる。 4 ④ ①、③はⅡ型超新星爆発についての記述で正しい。②の かに星雲の中心部にはパルサー(高速自転する中性子 星)が存在するので、Ⅱ型超新星爆発の残骸である。④ はⅠ型超新星爆発の記述であり、したがって④が正答と なる。なお、Ⅰ型超新星爆発の中心部には何も残らな い。 5 ④ 星団の星を調べるとき、星をつくるガスの元素組成が同じ であるかどうかは、星の進化に影響をあたえるため、① の「同じガスから生まれた」ということは重要な情報であ る。また、②「年齢が等しい」ということは、同じ進化時間 で、他の要素(例えば質量など)が進化にどのように影響 を与えるかをその星団内だけで調べることができるし、他 の星団と比較することより、様々な年齢の星のサンプルを 得ることができるので、重要な情報である。③「距離が等 しい」という情報は、星団の距離を知る手がかりを与え、 星本来の明るさ(絶対等級、または光度)を知ることがで き、星の進化と星本来の明るさとの関係を知る重要な情 報となる。④の「散開星団と球状星団の2種類がある」と いうことも正しい記述であり、一般に散開星団は若く、球 状星団は古い星団ということが知られているが、2種類存 在するということが、星の進化の情報を直接与えるもので はないので、④が正答となる。 6 ④ ①~③は、宇宙膨張に関する正しい記述である。④が誤 りであることは、次の理由による。銀河間の距離は、拡大 コピーで宇宙膨張を正しく表現できているが、問題は銀河 の大きさである。拡大コピーの場合、銀河の大きさも銀河 間距離と同じ割合で拡大されていくが、実際の宇宙膨張 では、銀河間の距離は大きくなっていくが、銀河そのもの は大きくなっていかないからである。銀河は星の重力で引 き合っており、宇宙膨張によって空間が拡大しても、重力 のため銀河そのものは拡大されないためである。 7 ①0.4 au ②0.7 au ③1 au ④1.4 au 52 表面温度が等しく、半径が10倍違う2つの恒星がある。これらの恒 星の絶対等級を比較した場合、半径の大きな恒星の絶対等級M 1 は、半径が小さな恒星の絶対等級M 2と、おおよそどのような関係 にあるか。 ①M 1=M 2-10 ②M 1=M 2-5 ③M 1=M 2+5 ④M 1=M 2+10 53 Ⅱ型超新星爆発に関する記述として、間違っているものはどれか。 ①中心部に中性子星やブラックホールが形成される ②おうし座のかに星雲はⅡ型超新星爆発の残骸である ③恒星内部で合成された重元素を宇宙空間にまき散らす働きをも つ ④白色矮星が、その限界質量(およそ太陽質量の1.4倍)を超えた ときに起こる 54 星団は星の進化の実験室と呼ばれることがある。その理由と直接 関係ないものはどれか。 ①同じガスから生まれた星の集団である ②同じ時期に生まれた(年齢がほぼ等しい)星の集団である ③星団を構成する星までの地球からの距離がほぼ等しい ④星団には散開星団と球状星団の2種類がある 55 宇宙膨張について、間違っているものはどれか。 ①ハッブルによって発見された ②銀河の後退速度は、距離に比例して大きくなっていく ③現在の宇宙膨張の速度は、加速していると考えられている ④宇宙膨張は多くの銀河を描いた図を、拡大コピーで拡大していく ことと同じと考えられる 10 第6回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 問題 正答 56 気象衛星「ひまわり」の軌道はどれか。 解説 章 ③ 気象衛星「ひまわり」は、東経140度の赤道上空約3万 6000kmに位置する静止軌道をとる。静止軌道、太陽同期 軌道、準天頂軌道はいずれも地球のまわりを周回する が、太陽周回軌道は地球の引力圏を脱出してしまう(例: 小惑星探査機「はやぶさ」)。 9 ④ 黒点の暗い部分を暗部、それを取り囲む少し暗い部分を 半暗部という。 2 58 次の画像の中で、惑星状星雲でないものはどれか。 ② 惑星状星雲は赤色巨星の外層が静かに宇宙空間に放出 され、中心部には白色矮星が残る。①Hen1357、 ③Shapley 1、④キャッツアイ星雲の画像の中央には白い 点(白色矮星)が見える。中心部に白色矮星が存在する ことで、これらが惑星状星雲であることがわかる。 ②かに星雲は、おうし座にある超新星残骸で、中心部に は「かにパルサー」と呼ばれるパルサーが存在する。超 新星爆発は激しい爆発なので、シェル状のガスが複雑に 絡み合って見える。 5 59 太陽の自転について、間違っているものはどれか。 ③ ①、②、④は正しい記述。太陽の自転は、赤道付近の方 が極付近より自転周期が短い差動回転になっているの で、③が間違った記述となり、正答となる。 2 ③ 太陽質量程度の星が原始星から主系列になるときの経 路は、主系列よりもかなり温度の低い(色指数の大きい) 方から主系列になる。したがって、①②は間違い。また、 原始星の時代は赤外線で明るく輝いている(絶対等級が 大きい)ため、初期の段階では図中をほぼ垂直に光度を 下げる。したがって。③が正答で、④は間違いとなる。 5 ①太陽同期軌道 ②準天頂軌道 ③静止軌道 ④太陽周回軌道 57 次の文のA、Bにあてはまる組み合わせとして正しいものはどれ か。 黒点には暗い【 A 】と、【 A 】を取り囲む【 B 】という部分がある。 ①A:本影 B:半影 ②A:本影 B:半暗部 ③A:暗部 B:半影 ④A:暗部 B:半暗部 ①地球の自転方向と同じ方向に自転している ②自転周期は、日ごとの黒点の位置の観測によって求めることが できる ③1周する距離が短いため、赤道付近よりも極付近の方が自転周 期は短い ④太陽の赤道付近の自転周期はおよそ25日である 60 太陽と同じ質量の星が原始星から主系列星になるときの経路はど れか。なお、グレーの太い実線は主系列星を表す。 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