(2016年9月) (PDF/307KB)

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
10/11
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
12月利上げに向けて一歩前進
~米国・雇用統計(2016年9月)
 9月の非農業部門雇用者数は前月比+15.6万人となり、市場予想を下回った。ただ、7月~9
月までの3ヵ月間の平均では+19.2万人と堅調なペースを維持している。
 9月の失業率は5.0%と8月から上昇した。雇用は堅調なペースで増加しているものの、労働参
加率が上昇してきたことで、失業率の改善はここ最近足踏みしている。ただ、今後も雇用の
増加が続けば、次第に労働需給は引き締まっていく可能性が高い。このため、賃金上昇率は
引き続き緩やかなペースであるものの、今後は徐々に高まっていくとみられる。
 今回の雇用統計は11月の利上げを迫るほど強くはない一方、12月の利上げの可能性は残
す結果といえる。みずほ証券投資情報部では、労働市場の改善が続き、金融市場が不安定
化しないという条件はつくものの、現時点では12月に利上げが決定されるとみている。
雇用者の増加数は
8月から鈍化したもの
の、基調としては堅
調なペースを維持
9月の非農業部門雇用者数は前月比+15.6万人となり、市場予想(ブルームバー
グの集計では+17.2万人)を下回る結果となった。また、過去2ヵ月分の雇用者数は
合計0.7万人の下方修正となった(7月分は前月比+27.5万人から同+25.2万人に下
方修正の一方、7月分は同+15.1万人から同+16.7万人に上方修正)。この結果、7月
~9月までの3ヵ月間平均の雇用者の増加数は+19.2万人となり、基調としては堅調
なペースで雇用は増加している。
内訳では、雇用者数のうち、財生産部門は前月比+1.0万人、民間サービス部門は
同+15.7万人、政府部門は同▲1.1万人となった。業種別では製造業や運輸・倉庫
で雇用が減少し、鉱業で横ばいとなった一方、専門・企業向けサービス、教育・ヘ
ルスケア、建設、小売、レジャー・接客等で増加した。なお、民間部門262業種にお
ける前月比ベースでのディフュージョン・インデックス([雇用が増加した業種の割合
+前月比横ばいの業種の割合]/2)は57.8%と8月の59.0%から低下した。
9月の失業率は5.0%と8月の4.9%から上昇し、市場予想(4.9%)に比べて悪化した。
もっとも、失業率の変化の内訳をみると、労働参加率(16歳以上人口に占める労働
力人口の割合)が62.9%と8月の62.8%から上昇し、就業者数(家計調査ベース)は前
月比+35.4万人の増加となっている。9月の失業率の上昇は、これまで何らかの理由
で求職活動を断念していた人々が職探しを再開した結果であり、就業者数は増加
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マクロ・トピックス
したため、内容としては労働市場の改善を示すものといえる。また、広義の失業率
(失業者に加え、経済的理由によるパートタイマーや職探しを断念した人等を加味)
は9.7%と8月と同水準を維持し、経済的理由によるパートタイマーが前月比▲15.9万
人となる等、雇用の質の改善では改善もみられた。
雇用の増加は続いているものの、労働参加率が上昇してきたことで、失業率の改
善は足踏みしている。イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が9月の米連邦公開
市場委員会(FOMC)後の記者会見で述べたように、労働市場にはなお需給の緩
みが残っているといえよう。ただ、今後も雇用の増加が続いていけば、次第にこうし
た緩みも解消していくとみられる。
米雇用関連指標
(月次:2005/1~2016/9)
(1,000人)
600
(%)
11
400
10
200
9
0
8
▲ 200
7
▲ 400
6
▲ 600
5
非農業部門雇用者数・前月差(左目盛)
▲ 800
4
失業率(右目盛)
▲ 1,000
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
3
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
米産業別雇用者数の推移
(万人)
雇用者数
16/07
16/08
16/09
前月差
非農業部門
民間
財生産
鉱業
建設業
製造業
民間サービス
卸売
小売
運輸・倉庫
公益
情報通信
金融・不動産・リース
専門・企業向けサービス
教育・ヘルスケア
レジャー・接客
その他サービス
政府部門
14,442
12,226
1,963
69
665
1,229
10,263
592
1,595
490
57
278
830
2,027
2,271
1,554
569
2,217
14,459
12,240
1,960
68
665
1,228
10,280
593
1,598
491
56
277
831
2,030
2,277
1,556
570
2,219
14,475
12,257
1,961
68
667
1,226
10,295
594
1,600
491
56
277
832
2,036
2,280
1,557
572
2,218
15.6
16.7
1.0
0.0
2.3
▲ 1.3
15.7
1.0
2.2
▲ 0.9
0.0
0.1
0.6
6.7
2.9
1.5
1.5
▲ 1.1
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マクロ・トピックス
米労働参加率の推移
(月次:2005/1~2016/9)
(%)
67
66
65
64
63
62
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
16
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
賃金上昇率は 伸び
悩み
9月の時間当たり賃金(平均時給)は前月比+0.2%と市場予想(同+0.3%)を下回っ
た。一方、前年同月比では+2.6%となり、8月(同+2.4%)から上昇率が高まった。
賃金上昇率は金融危機以前に比べて低い伸びにとどまっている。主に小売やレ
ジャー・接客等、低賃金の業種や職種において雇用が増加する傾向にあることに加
えて、労働生産性上昇率の低下、グローバル化やIT化等の影響もあり、構造的に
賃金が上昇しづらくなっている面はある。また、前述のように、現時点では労働市場
の需給の緩みに解消余地が残っているとみられるため、賃金上昇率が加速していく
には今しばらく時間を要する可能性がある。
ただ、労働参加率が上昇するなかで、雇用の増加が続いていけば、労働需給の
緩みも着実に解消に向かっていくため、緩やかながら賃金上昇率も徐々に高まって
いくとみている。なお、週平均労働時間は34.4時間と8月の34.3時間から増加した。
米失業率と賃金の推移
( 月次:2008/1~2016/9)
(%)
4.5
(%)
3
平均時給・前年同月比(左目盛)
4.0
4
失業率(右逆目盛)
3.5
5
3.0
6
2.5
7
2.0
8
1.5
9
1.0
10
0.5
11
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
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グローバル・マクロ・トピックス
個人消費の増加と労
働市場の改善を軸と
する米国経済の好循
環は続く見通し
以上のように、9月の雇用統計は失業率が上昇したものの、労働参加率の上昇に
よるものであり、賃金上昇率は上向く等、総じて労働市場の改善が続いていることを
示す結果となった。9月の雇用者数は市場予想を下回ったとはいえ、今年1月~9月
の雇用者の増加数は月平均+17.8万人と昨年1年間の+22.9万人から鈍化している
ものの、失業率を安定的に保つペースとしては十分といえる*。米国の労働市場は
完全雇用(FOMC参加者が想定する長期的な失業率の均衡水準は中央値で4.8%)
の状態に近づいている状況に変わりはない。
*たとえば、フィッシャー米連邦準備理事会(FRB)副議長は「失業率を安定的に保つのに必要な雇用
の増加ペースは7.5万人~15万人程度」、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁は「月間5万人~10万人の
雇用増があれば失業率は安定する」と述べている。
今後については、労働市場が完全雇用の状態に近づいているということは、労働
参加率の持続的な上昇、もしくは潜在成長率を上回る成長が続かない限り、雇用の
増加ペースは低下していく。一方、労働需給のひっ迫にともなって、賃金上昇率は
高まってくると考えられる。このため、雇用の増加ペースが低下していくとしても、賃
金の伸びが補う形で所得の増加が続くとみられる。こうした所得の増加が個人消費
を中心とする米国経済の緩やかな成長を支えるとともに、それがさらなる労働市場
の改善につながっていくという、米国経済の好循環は今後も続くとみている。
12月利上げに向けて
一歩前進
9月のFOMCでは利上げが見送られたものの、声明文では年内の利上げへの意
欲が示された。イエレン議長は記者会見で、労働市場の改善が今の状態のまま続
き、新たなリスクの芽が出ないのであれば、年内1回の利上げが適切と述べている。
年内のFOMCは11/1~2と12/13~14に2回残されているが、今回の雇用統計は、
労働市場の改善が続いていることを確認できたことで、12月利上げの可能性を残す
結果といえよう。実際、雇用統計が発表された10/7時点で、フェデラルファンド(FF)
金利先物からブルームバーグが算出する利上げ確率は、11月のFOMCでは17.1%
と雇用統計発表前の10/6時点から低下する一方、12月のFOMCについては64.3%
に上昇した。
11月のFOMCについては、大統領選の直前での利上げは難しいという見方が金
融市場で支配的であるようであれば、あえて無理をして利上げに踏み切る可能性は
低く、今回の雇用統計も11月の利上げを迫るほど強い内容ではなかった。
一方、みずほ証券投資情報部では、①12月のFOMCまであと2回発表される雇用
統計が引き続き労働市場の改善を示し、②米大統領選の結果等、金融市場が不安
定化する動きが生じないという条件は付くものの、現時点では12月に利上げが決定
される可能性が高いと考えている。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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金融商品取引法に係る重要事項
グローバル・マクロ・トピックス
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む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込
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