利上げ期待は高まらず~米国・雇用統計(2016年6月

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
7/11
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
米国経済の底堅さを示すも、利上げ期待は高まらず
~米国・雇用統計(2016年6月)
 6月の非農業部門雇用者数は前月比+28.7万人となり、市場予想を大幅に上回る結果となっ
た。5月の下振れが一時的な動きであったことが確認される結果といえる。
 6月の失業率は4.9%に上昇したものの、労働参加率が上昇する等、労働需給の緩みは解消
に向かっている。このため、平均時給は前年同月比+2.6%と、緩やかに伸びを高めている。
 今回の雇用統計は強い結果となったものの、金融市場での利上げ観測は高まっていない。
英国の欧州連合(EU)離脱問題による世界経済の先行き不透明感に加え、米国経済にも懸
念される部分があるため、米連邦準備理事会(FRB)は当面、慎重に今後の展開を見極めて
いくとみられる。みずほ証券投資情報部では次回の利上げは早くても12月とみている。
雇用の増加ペースは
5月の下振れから大
幅に持ち直し
6月の非農業部門雇用者数は前月比+28.7万人となり、市場予想(ブルームバー
グの集計では同+18.0万人)を大幅に上回る結果となった。一方、過去2ヵ月分の雇
用者数は合計0.6万人の下方修正となった(4月分は前月比+12.3万人から同+14.4
万人に上方修正される一方、5月分は同+3.8万人から同+1.1万人に下方修正)。こ
の結果、4月~6月までの3ヵ月間平均の雇用者の増加数は+14.7万人となった。
内訳をみると、雇用者数のうち、財生産部門は前月比+0.9万人、民間サービス部
門は同+25.6万人、政府部門は同+2.2万人となった。業種別では教育・ヘルスケア、
レジャー・接客、情報通信、専門・企業向けサービス、小売、金融・不動産・リース、
製造業等で雇用が増加した一方、鉱業や運輸・倉庫では減少した。大手通信会社
のストライキの影響(5月に▲3.5万人程度)分を除いても、幅広い業種で雇用の増
加ペースが持ち直した。なお、民間部門262業種における前月比ベースでのディ
フュージョン・インデックス([雇用が増加した業種の割合+前月比横ばいの業種の割
合]/2)は62.4%と5月の48.1%から上昇した。
6月の失業率は4.9%となり、5月の4.7%から上昇、市場予想(4.8%)に比べても悪化
した。もっとも、失業率の変化の内訳をみると、労働参加率(16歳以上人口に占める
労働力人口の割合)が62.7%と5月の62.6%から上昇したなかで、就業者数(家計調
査ベース)が前月比+6.7万人となっている。6月の失業率の上昇は何らかの理由で
求職活動を断念していた人々が職探しを再開したことを反映した面が考えられるた
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マクロ・トピックス
め、内容としては前向きの動きといえる。また、広義の失業率(失業者に加え、経済
的理由によるパートタイマーや職探しを断念した人等を加味)は9.6%と5月から低下
したほか、経済的理由によるパートタイマーが前月比▲58.7万人となる等、雇用の
質の面でも改善がみられている。
米国の労働市場は完全雇用(FOMC参加者が想定する長期的な失業率の均衡
水準は中央値で4.8%)の状態に近づいている。ただ、今後、労働市場の改善を受け
て、職探しを再開する動きが広がってくるとみられることから、労働参加率には上昇
の余地がある。このため、労働市場の需給の緩みにも若干の解消の余地が残って
いるといえよう。
米雇用関連指標
(月次:2005/1~2016/6)
(1,000人)
600
(%)
11
400
10
200
9
0
8
▲ 200
7
▲ 400
6
▲ 600
5
非農業部門雇用者数・前月差(左目盛)
▲ 800
4
失業率(右目盛)
▲ 1,000
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
3
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
米産業別雇用者数の推移
(万人)
雇用者数
16/04
16/05
16/06
前月差
非農業部門
民間
財生産
鉱業
建設業
製造業
民間サービス
卸売
小売
運輸・倉庫
公益
情報通信
金融・不動産・リース
専門・企業向けサービス
教育・ヘルスケア
レジャー・接客
その他サービス
政府部門
14,388
12,180
1,966
71
666
1,230
10,213
593
1,592
489
56
278
825
2,010
2,257
1,545
568
2,208
14,389
12,179
1,962
70
664
1,228
10,217
592
1,592
489
56
274
826
2,012
2,263
1,544
568
2,210
14,418
12,206
1,963
69
664
1,230
10,243
592
1,595
488
57
279
828
2,016
2,269
1,550
569
2,212
28.7
26.5
0.9
▲ 0.5
0.0
1.4
25.6
0.4
3.0
▲ 0.9
0.3
4.4
1.6
3.8
5.9
5.9
1.3
2.2
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マクロ・トピックス
米労働参加率の推移
(月次:2005/1~2016/6)
(%)
67
66
65
64
63
62
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
緩やかながら、賃金
上昇率は徐々に高ま
る方向へ
6月の時間当たり賃金(平均時給)は前年同月比+2.6%と緩やかに伸びを高めてい
る。もっとも、前月比では+0.1%と、市場予想(同+0.2%)を下回る伸びにとどまった。
賃金上昇率は金融危機以前に比べて低い伸びにとどまっている。主に小売やレ
ジャー・接客等、低賃金の業種や職種において雇用が増加する傾向にあることに加
えて、労働生産性上昇率の低下、グローバル化やIT化等の影響もあり、構造的に
賃金が上昇しづらくなっている面はある。また、前述のように、現時点では労働市場
の需給の緩みに解消余地が残っているとみられるため、賃金上昇率が加速していく
には今しばらく時間を要する可能性がある。
ただ、労働参加率が上昇するなかで、雇用の増加が続いていけば、労働需給の
緩みも着実に解消に向かっていくため、緩やかながら賃金上昇率は徐々に高まっ
ていくとみている。なお、週平均労働時間は34.4時間と5月と同水準となった。
米失業率と賃金の推移
(月次:2008/1~2016/6)
(%)
4.5
(%)
3
平均時給・前年同月比(左目盛)
4.0
4
失業率(右逆目盛)
3.5
5
3.0
6
2.5
7
2.0
8
1.5
9
1.0
10
0.5
11
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
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2016/7/11
グローバル・マクロ・トピックス
個人消費の増加と労
働市場の改善を軸と
する米国経済の好循
環は続く見通し
以上のように、6月の雇用統計は、①雇用者数の増加ペースは5月の下振れから
大きく持ち直した、②失業率は上昇したものの、労働参加率が上昇する等、労働需
給は引き締まってきており、米国の労働市場は完全雇用の状態に近づいている、
③賃金上昇率は緩やかに高まってきている、等を示す結果となった。5月の雇用の
増加ペースの下振れは一時的なものであり、米国経済の底堅さを示したといえよう。
今後について考えると、労働市場が完全雇用の状態に近づいているということは、
労働参加率の持続的な上昇、労働生産性上昇率の低下、もしくは潜在成長率を上
回る経済成長が続かない限り、雇用の増加ペースは低下する一方、労働需給の
ひっ迫にともなって、賃金上昇率は高まってくると考えられる。実際、4月~6月平均
の雇用者の増加ペースは14.7万人と1月~3月平均の19.6万人や2015年の月平均
増加ペースである22.9万人を下回る一方、賃金上昇率は緩やかに高まっている。
このように、雇用の増加と賃金の上昇とで中身は徐々に変化していくものの、個人
消費をはじめとする国内需要を中心に、米国経済が緩やかな成長を続けるもとで、
サービス業を中心とする労働市場の改善傾向が続き、それがさらなる個人消費の増
加を促すという、米国経済の好循環は今後も続くとみている。
利上げ観測は大きく
高まらず
このように雇用統計は総じて強い結果となったものの、金融市場では米連邦準備
理事会(FRB)による利上げを織り込む動きは高まっていない。フェデラルファンド
(FF)金利先物からブルームバーグが算出する利上げ確率は、9月の米連邦公開市
場委員会(FOMC)では9.8%、12月のFOMCでも20.6%にとどまっている(雇用統計発
表前の7/7時点ではそれぞれ2.0%、11.8%)。長期金利(10年債利回り)も低下し、為
替市場でも明確なドル高の動きとはならなかった。一方、7/8の米株式市場は当面
利上げが見送られるとの見方が強いなかで、米国経済の減速懸念が後退したことを
素直に好感したとみられ、大幅に上昇した。
雇用に関する懸念は和らいだとみられるものの、英国の国民投票で欧州連合
(EU)離脱派が勝利したことで、世界経済の先行きに対する不透明感が高まったほ
か、米国でも設備投資や労働生産性上昇率の低迷等、懸念される動きもある。この
ため、当面、FRBは利上げを見送り、慎重に今後の展開を見極めていく可能性が高
い。みずほ証券投資情報部では、労働市場が完全雇用に近づき、インフレ率が上
向いているという米国のファンダメンタルズを考えれば、利上げの方向性に変化は
ないと考えているが、次回の利上げは早くても12月までは見送られる可能性が高い
と考えている。
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2016/7/11
金融商品取引法に係る重要事項
グローバル・マクロ・トピックス
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