—産婦人科医師減少に転じるー 産婦人科医師の動向 日本産婦人科医会施設情報調査(2006年−2016年) 日本産科婦人科学会会員の勤務実態調査(2014年)より 日本産婦人科医会 勤務医部会 日本医科大学 中井章人 医師数 総数,分娩施設 専攻医数 昨年比 −22名 14000 1200 2006年比 数値不安定 12000 10303 10083 10654 11029 10934 10079 11483 11461 1000 昨年比 −20名 9458 10000 11119 11377 総数 +1,378(114%) 800 8000 7420 6905 7351 7290 7651 7862 7982 436 438 450 8125 8253 8264 8244 分娩施設 +824(111%) 600 6000 345 405 374 399 362 364 400 専攻医数* 平均約388名 302 4000 200 選択科目以降の専攻医 2000 66 *専攻医数は前年4月の数 平均は2006年を除き算出 2009年医学部定員8486名(700名増員) 0 0 2006 2007 2004年研修医制度開始 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 産婦人科が必修から選択科目に(2009年) 総数 分娩施設 専攻医数 2009年以降,産婦人科医師数は増加傾向であったが,近年横ば いで,本年1月には,昨年比で減少に転じている. 1 分娩取扱い施設数と医師数の推移 施設数 医師数 2000 3500 3204 1818 1800 1644 1690 3000 1567 1586 1561 1538 1600 ー773(76%) 3000 ー436(76%) 2937 2973 2848 2732 2673 2716 1478 1463 1451 ー233(90%) 1382 2500 1400 2322 2305 2140 1200 ー396(61%) 883 810 804 800 752 736 +27(135%) +1,121(207%) 716 714 682 200 199 198 78 67 234 237 235 77 75 74 279 276 1377 1000 1973 291 281 290 100 91 89 104 1455 2060 2056 1427 1148 1149 1046 1030 848 298 500 89 1826 1913 1273 +99(150%) 400 2089 1500 607 600 2431 2167 1003 882 2527 2254 2215 2204 2176 2178 2179 2166 2000 1000 2588 836 969 869 735 +678(180%) 105 0 1502 1526 1244 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 総合 地域 一般病院 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 診療所 総合 地域 一般病院 診療所 施設数,医師数とも,周産期センターが増加し,一般病院が減少している. 施設当たりの医師数 取扱分娩数 16.0 600000 14.3 14.4 14.5 48% 13.7 14.0 12.6 12.0 10.9 11.0 11.3 12.9 12.9 11.6 +3.6(134%) 400000 27% 10.0 +2(138%) 8.0 6.6 6.0 4.0 5.3 3.2 5.2 3.4 5.4 3.3 5.9 6.9 7.0 3.7 3.8 7.1 7.1 ー84,864(76%) 7.3 300000 6.1 +0.8(125%) 3.5 ー27,253(95%) 500000 3.7 3.6 3.6 3.7 200000 4.0 +0.2(118%) 17% +67,700(170%) 8% +32,739(167%) 100000 2.0 1.3 1.3 1.4 1.4 1.4 1.4 1.4 1.5 1.5 1.5 1.5 0.0 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 総合 地域 一般病院 診療所 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 総合 地域 一般病院 診療所 全ての施設で,施設あたりの医師数は増加している. 一般病院の取扱い分娩数は減少しているが,周産期センターでは毎年約7%程 度増加し,診療所と周産期センターへの二極化が進んでいる. 2 年間推定入退職者数(10年間の平均) 388名(専攻医) −22名 総 合 周 産 期 地 域 周 産 期 27名 一 般 病 院 49名定年 産科診療所 284名* 離職 250名 退職 102名 婦人科施設 155名 +104名 +55名 *284名中84名は定年 100名定年 +388 ー250 = +138 138名増加 (分娩施設からの離職・退職者:102+155+49 = 306名) 2016年:22名減少 364の専攻医に対し,386名退職(退職者が136名増加) 要因:研修施設からの離職者が311名に増加し, そのうち213名が退職している. 自治体ごとの医師数とその増減(1) 専攻医数* 北海道 12.7 青森 3.9 岩手 3.5 宮城 7.1 秋田 2.8 山形 3.1 福島 3.1 茨城 3.5 栃木 6.1 群馬 4.4 埼玉 11.2 千葉 12.9 東京 85.6 神奈川 24.4 山梨 2.3 長野 5.6 静岡 10.2 新潟 4.4 富山 2.8 石川 2.4 福井 2.3 岐阜 3.5 愛知 25.8 三重 4.4 *10年間の平均 退職者数* 6.7 1.4 1.9 4.2 1.6 4.2 4.2 2.2 3.9 4.3 15.3 13.1 18.9 17.7 1.9 3.9 7.1 4.9 1.9 3.9 1.5 4.7 12.2 4.2 産科医/千分娩 (2006年) 産科医/千分娩 (2016年) 産科医/千分娩 (10年間平均) 過去10年間の 分娩数変化(%) 7.5 6.4 6.8 8.0 7.6 7.7 6.8 6.0 8.7 5.5 6.0 6.7 10.8 7.3 8.8 5.7 6.0 6.8 8.3 7.5 7.8 6.7 7.2 6.1 8.2 9.0 11.8 9.6 10.4 14.7 8.9 9.4 14.3 7.4 5.5 6.2 8.8 7.3 11.0 8.8 8.5 10.3 8.9 8.6 10.4 7.7 7.4 9.0 7.6 7.6 9.1 7.7 10.1 9.5 6.7 6.8 9.8 7.1 5.5 6.4 8.9 6.6 8.5 7.3 6.8 7.6 8.2 8.0 8.9 7.7 7.0 6.9 -11.4 -18.1 -16.4 -6.9 -23.9 -16.3 -19.1 -10.5 -11.8 -16.8 -6.1 -7.1 17.2 -3.6 -16.3 -15.5 -11.1 -11.7 -15.7 -9.7 -12.8 -12.7 -2.2 -9.1 3 自治体ごとの医師数とその増減(2) 滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山 鳥取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄 全国 専攻医数* 3.7 13.2 34.5 12.4 3.8 2.2 1.3 1.5 8.0 4.6 2.9 3.0 1.0 2.4 1.5 19.9 2.2 3.8 3.1 2.3 2.4 3.5 6.3 387.5 退職者* 2.1 7.8 19.6 11.2 2.8 3.3 1.4 2.9 4.4 6.3 2.9 2.5 1.6 3.5 1.5 10.9 1.2 3.6 4.1 1.9 2.8 3.4 2.5 250.0 過去10年間の 産科医/千分娩 (2006年) 産科医/千分娩 (2016年) 産科医/千分娩 (10年間平均) 分娩数変化(%) 6.6 8.7 7.3 6.6 7.6 6.7 8.7 8.9 9.1 7.1 6.9 9.4 7.7 7.6 10.1 7.2 8.0 9.0 7.3 8.1 8.6 7.5 6.3 7.5 8.5 10.6 8.3 6.7 8.5 8.4 10.4 10.1 7.6 6.8 8.6 9.7 8.6 8.5 7.3 8.6 6.1 9.7 7.7 7.0 8.1 7.4 6.7 8.2 6.8 8.8 7.2 6.4 7.5 7.7 10.3 9.8 8.0 6.8 7.9 9.9 8.1 8.1 8.8 7.4 8.0 9.2 7.5 7.9 7.9 7.1 6.2 7.5 -2.1 -8.9 -7.2 -6.9 -12.1 -10.3 -7.7 -2.6 -6.5 -4.3 -10.0 -5.5 -11.1 -12.0 -14.6 4.2 -5.9 -9.3 -0.4 -6.8 -5.3 -4.8 5.1 -5.4 過去10年間,15自治体(32%)で医師は減少している. 2.6倍の格差 自治体ごとの産科医師数(千分娩対) 2016年1月現在 16.0 全国平均 8.2名/千分娩 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神山長静新富石福岐愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖全 海 奈 歌 児 国 道森手城田形島城木馬玉葉京川梨野岡潟山川井阜知重賀都阪庫良山取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎島縄 千分娩あたりの産科医師の増減(2006年比) 過去10年間で 0.7名増加 8 6 4 2 0 -2 -4 北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神山長静新富石福岐愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖全 海 奈 歌 児 国 道森手城田形島城木馬玉葉京川梨野岡潟山川井阜知重賀都阪庫良山取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎島縄 10自治体で医師は減少している. 4 周産期母子医療センターにおける 千分娩対医師数とその増減(過去5年間) 40.0 4.8倍の格差 全国平均 15名/千分娩 過去5年間で 1.5名増加 30.0 20.0 10.0 0.0 -10.0 医師数/千分娩 医師増減(2011年比) -20.0 北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神山長静新富石福岐愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖全 海 奈 歌 児 国 道森手城田形島城木馬玉葉京川梨野岡潟山川井阜知重賀都阪庫良山取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎島縄 自治体間で分娩数あたりの周産期センター医師数をは大きく異なり, 12自治体で医師は減少している. 周産期母子医療センターの勤務環境からみた必要医師数 周産期母子医療センターの男女別年齢構成 総合周産期 地域周産期 男性 女性 男性 女性 施設当たりの医師数 7.6 6.7 4.0 3.1 当直・日直回数* 当直 日直 当直 日直 全員 3.1 1.0 5.1 1.7 高齢者、女性免除** 4.2 1.4 7.0 2.3 * 総合は2名当直、地域は1.5名で算出 **55歳以上、女性35-44歳は日当直免除 (平成26年日本産科婦人科学会会員勤務実態調査) 地域周産期センターの当直・日直回数を総合なみにするには 施設数を60%に削減(291施設→175施設) 医師数を1.4倍に増加させる (2100名,7.1名/施設→3000名,9.9名/施設) 5 年間180名増 医師数の推移 3500 年間50名減 3000 2500 2000 不変 1500 1000 年間50名増 500 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 総合 2012 2013 地域 2014 2015 一般病院 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 診療所 地域周産期センターで年間平均180名増加すれば, 医師数を5年間で1.4倍にできる.→年間470名程度必要 100.0 各自治体ごとの2007年以降の 専攻医数(年間平均)と分娩数比率による分配 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神山長静新富石福岐愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖 海森手城田形島城木馬玉葉京奈梨野岡潟山川井阜知重賀都阪庫良歌取根山島口島川媛知岡賀崎本分崎児縄 道 川 山 島 実際の専攻医数 分娩数で分配 自治体ごとの分娩数と実際の専攻医数には乖離がある. 6 地域医療供給体制からみた必要医師数 算定条件 ・年間全国で300名の医師が分娩取扱いをやめている. ・分娩数の比率で各自治体に医師を配分すると仮定する. ・分娩比率の低い自治体でも最低1名は増加する. 例:青森県 分娩数: 9,633件(10年間平均), 全国の分娩数に対する割合: 0.91% 専攻医390名の場合(300名が分娩をやめているため) 分娩施設の実際の増加は90名 90 × 0.0091 = 0.8名 1名確実に増員するためには 1 ÷ 0.0091 = 110名 → 110 + 300 = 410名 分娩数5000件前後の自治体(分娩比率0.5%)で1名以 上増員するには500名程度必要になる. 自治体ごとの必要医師数 実際の 専攻医数 北海道 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島 茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川 山梨 長野 静岡 新潟 富山 石川 福井 岐阜 愛知 三重 13 4 4 7 3 3 3 4 6 4 11 13 86 24 2 6 10 4 3 2 2 4 26 4 退職者に 分娩数に 実際の 退職者に 分娩数に 応じた必要数 14 3 4 8 3 8 8 5 8 9 31 26 38 36 4 8 14 10 4 8 3 10 25 8 応じた必要数 専攻医数 応じた必要数 応じた必要数 4 13 35 12 4 2 1 2 8 5 3 3 1 2 2 20 2 4 3 2 2 4 6 388 4 16 40 23 6 7 3 6 9 13 6 5 3 7 3 22 2 7 8 4 6 7 5 500 6 10 35 22 5 4 2 3 8 12 5 3 4 5 3 22 4 6 8 5 5 7 8 500 19 5 5 9 3 4 7 11 8 8 28 24 50 36 3 8 15 8 4 5 3 8 32 7 滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山 鳥取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄 全国 7 産婦人科医師の動向と必要医師数 動向 ・過去10年間出生数は,毎年平均0.5%減少している. ・2009年以降,産婦人科医師数は増加傾向であったが,近年横ばいで,本年1 月には,昨年比で減少に転じている. ・過去10年間,15自治体(約32%)で医師は減少している. ・施設数,医師数,分娩数とも,周産期センターが増加し,一般病院が減少し, 診療所と周産期センターへの二極化が進んでいる. 必要医師数 ・ 産婦人科を専攻する後期研修医は年間平均388名で,自治体ごとの分娩数 と実際の専攻医数には乖離がある. ・ 周産期センターの就労環境と地域医療供給体制を改善するため,年間470 名から500名程度の産婦人科医師が必要になる. 今後の課題 ・ 二極化が進む中,地域医療を支える診療所の確保と周産期センターの人材 確保が急務である. ・ 他職種(助産師,看護師,MSW,臨床心理士など)との恊働により,診療所 のバースセンター的役割を強化,周産期センターの機能確保に努める. ・ リスクに応じた施設の選択を啓発する. 参考資料1 施設ごとの医師年齢 平均年齢 全分娩施設 total 男性 女性 総合周産期母子医療センター total 男性 女性 地域周産期母子医療センター total 男性 女性 一般病院 total 男性 女性 診療所 total 男性 女性 婦人科施設 total 男性 女性 46.0 50.8 37.5 38.6 41.9 34.9 40.4 44.4 35.2 47.0 51.8 38.8 57.6 59.4 47.9 60.1 63.1 50.9 中央値 50%tile 43 49 34 35 39 32 37 42 32 44 51 36 54 57 43 59 62 47 90%tile 64 67 48 52 56 43 56 61 44 64 66 50 76 76 63 80 81 71 日本産科婦人科学会会員の勤務実態調査2014 8 参考資料2 過去10年間の出生数の推移 厚生労働省 人口動態・保健統計課「人口動態調査」 1100000 1092674 1089818 1.5 1091156 1.46 1070035 1071304 1.43 1062530 1.41 1060000 1050806 1.39 1.37 1.37 1.39 1040000 1.4 1037231 1029816 1.34 出生数 1.45 1.42 1.35 1.32 1020000 1003539 1000000 1005656 1.3 合計特殊出生率 1080000 1.26 1.25 980000 1.2 960000 940000 1.15 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 出生数 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 合計特殊出生率 全国の分娩数は毎年0.5%低下している. 参考資料3 施設ごとの助産師数の推移 10000 日本産婦人科医会施設情報調査(2006年−2016年) 9000 9117 8841 8721 8387 8000 8521 7650 7732 7901 8111 7905 7966 7000 6373 5798 6000 4982 5230 5992 5484 5000 5339 3898 4000 3000 3036 3104 3313 3175 3997 4049 4032 3638 4733 4226 2045 1922 2006 2007 4463 3636 3312 2725 2000 4371 2214 2183 2303 2008 2009 2010 2853 4935 3516 3771 3038 合計 17,511名(2006年) 23,449名(2016年)34%増 1000 0 総合 地域 2011 一般病院 2012 2013 2014 2015 2016 診療所 9
© Copyright 2024 ExpyDoc