(水道BCP)(PDF:362KB)

平成 28 年 9 月 策定
札幌市水道業務継続計画(地震編)
a 第 1 章 総則 a
(1) 計画の目的
水道局では、東日本大震災の教訓や
想定される大規模地震を踏まえた場合
には、水道事業の継続に必要な業務資
源(人、物、情報)も地震による被害
で制約を受け、十分な対応ができない
ことが想定される。このため、地震に
よる業務資源の制約を予め想定し、地
震発生時においても水道水の供給を継
続しながら、水道機能の回復を図るな
ど災害対応を速やかに実施することを
目的とした「札幌市水道業務継続計画
(地震編)
」
(以下、
「水道 BCP(Business
図-1 業務継続計画(BCP)の効果に係るイメージ
Continuity Plan)
」という。
)を策定する。
出典:
「地震発災時における地方公共団体の業務継続の手引きとその解説」
平成 22 年 4 月内閣府(防災)
なお、札幌市業務継続計画(地震災
害対策編)では、詳細な業務継続計画を各局が必要に応じて策定することとしており、さらに札幌
水道ビジョンにおいても水道 BCP を策定することとしている。
(2) 計画の位置づけ
水道 BCP では、水道
局災害対策要綱で定め
られた予防対策業務の
札幌市地域防災計画
予防業務
札幌市地域防災計画
通常業務
災害応急対策業務
・災害時に
優先度が
高い業務
一部と応急対策業務の
・その他の
業務
中から、発災後 28 日以
災害復旧・復興業務
内(冬季 42 日以内)に
非常時
優先業務
地震災害対策編
・その他の
業務
・災害時に
優先度が
高い業務
市BCP
・災害時に
優先度が
高い業務
・その他の業務
実施すべき応急対策業
務を取り出し、これに災
害時にも継続すべき通
常業務を加えたものを
「非常時優先業務」とし
て選定する(図-2)
。
「非
常時優先業務」のうち応
水道局災害対策要綱
予防対策業務
・その他の
業務
・配備体制
・応急体制の組織
・情報連絡
整合
・水道施設耐震化
基本計画
・応急対策基本計画
その他の業務
恒久復旧対策
画(応急対策基本計画)
と整合を図っている。
水道BCP
継続すべき
通常業務
水道局地震対策
基本計画
応急対策業務
急対策業務については、
水道局地震対策基本計
非常時
優先業務
通常業務
水道局地震災害対策マニュアル
図-2 防災関連の計画と水道BCPの関係
1
(3) 業務継続における基本方針
【方針 1】水道水の供給を継続しながら、水道機能を早期に回復させるため、非常時優先業務の遂
行に全力を挙げる。
【方針 2】非常時優先業務の遂行目標を設定するとともに、必要な業務資源の確保と適切な配分を
行う。
【方針 3】想定する大規模地震災害に備え、平常時から取組みを推進し、業務継続力を維持すると
ともに、確実に向上させる。
a 第 2 章 対象地震と被害の想定 a
(1) 対象地震
札幌市地域防災計画において、管路被害の最も多い
「月寒背斜に関連する断層(月寒断層)
」を震源とす
るM7.3 の地震(図-3)
(2) 主な被害想定
・ 発災直後から広範囲の断水が発生
(断水率 67%、
断水人口 125 万人)
震度
震度 4
震度 5 弱
震度 5 強
震度 6 弱
震度 6 強
震度 7
・ 配水管、送水管 2,305 か所(幹線 57 か所、枝線
2,248 か所)が破損
・ 白川浄水場の 2/3 の施設が破損し、浄水機能
が停止
図-3 震度予測図(月寒断層)
a 第 3 章 非常時優先業務 a
(1) 非常時優先業務の選定基準
地震発生時においても浄水場の運転継続や応急給水の実施などにより、水道水の供給を継続しな
がら、被害を受けた水道施設に対して応急復旧を実施し、水道機能の早期回復を図ることに加え、
市民からの問い合わせに対する体制を確立したうえで、市民や報道機関へ的確な広報を行う。
(2) 非常時優先業務の選定結果
各課で非常時優先業務を選定した結果、410 件の応急対策業務と、182 件の通常業務を選定した
(表-1)
。
表-1 非常時優先業務の選定結果
業務種別
業務
数
単位:件
時間経過
1 時間
3 時間
24 時間
3日
10 日
14 日
28 日
以内
以内
以内
以内
以内
以内
以内
応急対策業務(応急給水活動等)
410
177
246
196
159
134
134
129
通常業務(浄水場の運転等)
182
74
75
104
121
135
178
178
592
251
321
300
280
269
312
307
計
2
a 第 4 章 業務継続の課題と今後の取組み a
水道局における業務継続上の現状、課題及び今後の取組みを整理する。
(1) 執行体制の確立
内容
項目
①人員体制
課題
 家族等の安否確認方法の未
(執務時間内)
②人員体制
今後の取組み
 家族等の安否確認方法の取り決め、
確立
関係機関・企業との連携の強化
 発災から 3 日目に至るまで
(執務時間外)
 職員配備計画の見直し(参集先、参集方法)
、
の職員が大きく不足(特に
非常時優先業務の優先順位の検討、
冬季)
(図-4、5)
職員参集訓練の実施、
参集体制の強化、
再配置の検討、
安全確保に向けた取組み、
関係機関・企業との連携の強化
③指揮命令系統
 同時に一部の職員が不在と
 指揮命令系統の代行順序に係る実効性の向上、
なり、職務代理順序が混乱
④安否確認
非常時優先業務の実施スキルの向上
 職員の安否確認方法の未確
 安否確認システムの導入検討、
立
安否確認訓練の実施
図-4 執務時間外の参集予測結果(夏季)
図-5 執務時間外の参集予測結果(冬季)
(2) 給水機能の維持
項目
①浄水施設
②配水施設
内容
課題
今後の取組み
 施設耐震化事業の継続実施
 施設被害による減断水被害
の発生
 施設の早期復旧体制の未確
立
 非常用発電機の燃料備蓄量
の不足
 具体的な被害想定とその復旧方法の検討、
工事復旧業者等との早期復旧に係る連携強化
 電気事業者及び電気工事事業者等との早期復
旧に係る連携強化、
燃料供給事業者との優先調達に係る連携強化
 薬品会社等との連携強化
 薬品の調達体制の未確立
3
③管路
 管路耐震化事業の継続実施
 管路被害による減断水被害
の発生
 管路復旧人員の不足
 他都市・他機関等協定締結団体との受援体制の
強化
 管路材料メーカーとの優先調達に係る連携強
化、
備蓄拠点の分散化の検討
 他都市・他機関等協定締結団体との受援体制の
強化、
防災関係機関等との応急給水に係る連携強化、
災害時支援協力員の活動見込みの把握、
市民との応急給水に係る連携強化、
家庭での飲料水の備蓄の促進
 応急給水施設の場所に関する広報活動の強化
 管路復旧資材の不足
④応急給水
 応急給水活動に係る人員及
び資器材の不足
 応急給水施設の設置場所の
PR不足
(3) 執務環境の確保
項目
①庁舎
②什器
③エレベーター
④電力
⑤通信
内容
課題
今後の取組み
 庁舎耐震化の実施、
非構造部材の耐震対策の強化
 代替施設の検討、
保守事業者との連携強化
 除雪用資機材の保管場所の周知
 庁舎被害による利用困難代
替施設の未指定
 代替施設の未指定
 庁舎敷地の委託業務による
除雪困難
 負傷者(来庁者、職員)の
救助に必要な機材の備蓄不
足
 書棚等の転倒による利用困
難
 負傷者への救助対策の充実
 書棚等の転倒防止対策の実施、
パソコン、プリンタ等の転倒防止対策の実施、
分析機器等の転倒防止対策の実施、
確実な施設点検の実施
 転倒した書棚等の復旧対策の充実
 執務環境復旧に必要な資機
材の備蓄不足
 エレベーター停止による移
動支障
 非常用発電機の未整備によ
る停電の発生
 電力の早期復旧体制の未確
立
 停電及び機器故障による固
定電話及び水道事業用無線
の利用支障
 輻輳に伴う通信支障
 エレベーター停止対策の検討
 非常用発電機の整備・強化の検討、
手作業による業務継続方法の検討
 電気事業者及び電気工事事業者等との早期復
旧に係る連携強化
 電話交換機の転倒防止対策の実施、
非常用発電機の整備・強化の検討
 通信手段確保に関する通信事業者との連携強
化、
水道事業用無線に係る訓練
 通信機器の効果的な活用方法の検討
 災害時優先電話の利用方法
の不備
4
⑥情報システム
 情報システムの早期復旧体
制の未確立
⑦トイレ
 耐震性の不足や停電等に伴
うトイレ利用支障
 災害用トイレの備蓄不足
 食料の備蓄不足
 毛布等の備蓄不足
 消耗品の備蓄不足
⑧食料、毛布等
⑨消耗品(コピー
 情報システム保守業者との連携強化、
書類やデータのバックアップや定期的な更新
等に係る周知、
情報システムの代替策の検討、
システム専用端末の導入の検討
 受水槽内の水の活用方法の検討、
受水槽及び配管の耐震化の検討
 災害用トイレの備蓄の検討
 食料備蓄の充実の検討
 毛布等の備蓄の検討
 備蓄量の検討、
コピー用紙やトナー等の代替策の検討、
局内の消耗品融通に関する情報共有
用紙、トナー等)
a 第 5 章 業務継続力の維持・向上
水道 BCP の効果を十分に発揮させるために、大規模地震の発生に伴う様々なリスクを想定し、
平常時から取組みを推進し、業務継続力を維持するとともに確実に向上させていく。
(1) 継続的改善
①水道業務継続マネジメント体制の構築
水道業務継続マネジメント(以下、
「水道
BCM(Business Continuity Management)
」と
水道 BCP 推進会議
・ 計画の承認
・ 基本方針の検討
・ 対策目標の実効性確認
事務局
いう。)体制を構築し、この体制のもと、進
・ 計画の改訂
行管理を行い、計画を推進する(図-6)
。
・ 訓練の企画
②PDCA サイクルによる進行管理
・ 各課の進捗状況把握
PDCA サイクルに基づき、毎年度、計画
の実効性を確認し、課題に対し改善するこ
各担当課
とにより計画の継続的改善を図る(図-7)。
・ 業務資源の確保に向けた取組み実施
③水道 BCP の改訂
・ 訓練の実施
水道 BCP は定期的に見直しを実施する
・ 進捗状況の報告
こととし、必要に応じて改訂する。
図-6 水道業務継続マネジメント体制
(2) 訓練
水道 BCP に基づいた被害想定や人員などのリソース不足を条
件とした訓練を実施し、職員の対応力向上を図るとともに、計画
の実効性を高めていく。
(3) 業務資源の確保に係る今後の取組み
第 4 章で抽出した業務資源の確保に係る今後の取組みについて、
担当課及び目標期間を設定し、水道 BCM 体制のもと、実施する。
図-7
PDCA サイクルのイメージ
以
5
上