刑法 次の【事例】を読み,下記の【設問】に答えなさい。解答用紙は,表面(30 行)の みを使用すること。 【事例】 X警察署X派出所勤務の警察官甲は,深夜,担当区域のパトロールに出たが,やが て,A道路舗装会社の工事用資材置き場がある道路に進入していく小型トラックを認 めた。当時,X警察署管内では,工事用資材置き場から資材が盗まれる窃盗事件が多 発していたことから,甲は,窃盗犯のトラックではないかと考え,後を追い掛けたと ころ,間もなく資材置き場の入口前で小型トラックが停止し,運転席から乙が下りて くるのを現認した。実は,乙は運送会社の勤務を終え,自宅に向かっているところで あったが,エンジンの調子が悪いのか,運転中異音がしたため,エンジンルームを点 検しようと思い立ち, 街路灯がある比較的明るい場所で車を停めたもので,それが偶々 A道路舗装会社の工事用資材置き場前だっただけのことであった。下車した乙は,エ ンジンルームを見ようと車の前に回ったが,甲にはこれがいかにも資材置き場の入口 から中をのぞき込んで,そこに置かれている資材を物色し始めているように見えた。 加えて,深夜という時間帯や乙の服装が黒ずくめだったこともあって,甲は,頭から 乙を多発している資材泥棒の犯人であると決め付け,現行犯逮捕の要件はまだないと いうことが一瞬頭をかすめたものの,功名心から,この際資材置き場に侵入する前に 捕まえてしまえという気になり,いきなり走り出して乙に駆け寄ると,その背後から 両手を広げて飛びつき,乙を組み伏せて逮捕しようとした。乙は,人が走ってくる音 に気付いて振り返り,警察官の制服を着た甲が自分の方に向かってくるのを認めたが, その直後甲に急に飛びかかられたため,驚くとともに,振り向きざま思わず右手で甲 を強く突き飛ばした。乙は空手を嗜んでおり,右手の突き出しは,いわゆる掌底突き (手のひらの手首に近い部分で相手を突く技)であったため,その強さは半端なもの ではなく,そのため,甲はもんどり打って後ろに倒れ,路面に頭をしたたかに打ち付 けて脳震盪を起こし,搬送先の救急病院で気がつくまで,約1時間にわたって気を失 ってしまった。 【設問】 甲及び乙の罪責について論じなさい。 (120点)
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