トンガ (322KB、2016年4月)

トンガ医療情報
以下は、必ずしも最新の医療事情ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬
の服用方法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアド
バイスを受けるようにしてください。
最新更新履歴:2015 年 12 月更新
1.赴任前の準備
(1)予防接種
日本から入国する際、義務付けられているものはないが、A 型肝炎、B 型肝炎、破傷
風の予防接種をしてくることを勧める。狂犬病については、トンガを含め大洋州は流
行地域ではないため、予防接種は不要と言われている。腸チフスについては、現地で
は接種困難のため、接種する場合はなるべく日本で受けることを勧める。
小児については、日本で勧奨されている予防接種を終了してから随伴することが望ま
しい。ただし、終了できない場合現地で接種出来るが、接種時期・回数・種類が異な
るので、これまで受けた予防接種の記録(英訳)を持参することを勧める。また、予防
接種は現地クリニックなどで受けられるので、その場合、クリニックに相談する。
(2)その他の準備
現地での歯科治療は、簡単な充填等であれば可能であるが、日本と同レベルの治療
は期待できない。赴任前に必ず歯科検診し、必要があれば治療を完了しておく。眼鏡
やコンタクトレンズは現地で入手出来ないので、予備を複数持参する。また、コンタク
トレンズのみ使用している場合も、砂埃(サンゴ粉塵)等で使用出来ないことがあるの
で、必ず眼鏡を持参する。持病のある人は、病名・治療内容(薬名は一般名を記入)
等を記した英文の紹介状を、主治医に書いてもらい持参する。
2.医療事情
トンガの公立医療機関は、5 つの保健行政区に分かれ、そのうち 4 区に病院がある。
国内で唯一高度医療サービスの提供を行うバイオラ病院と、一般医と歯科医が勤務
する地方島病院のプリンス・ウエリントン・グー病院(ババウ島)、ニウウイ病院(ハー
パイ島)、ニウエイキ病院(エウア島)である。その他、ヘルスオフィサー(医師補)と助
産師、看護師が配置されるヘルスセンター、母子保健クリニックがある。診療費は、
基本的に入院費のみ有料である。
国内に 4 つの公立病院があるが、超音波検査や血液検査ができ、手術が可能な病
院は、首都ヌクアロファ(トンガタプ島)にあるバイオラ病院のみである。
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しかし、循環器、外科、脳外科、泌尿器科、皮膚科、眼科、整形外科の専門医はいな
い。また、MRI、ホルター心電図検査、心臓カテーテル検査及び透析治療はできな
い。
民間医療機関は、全てクリニックで首都のみ。クリニックの殆どは、公立病院の専門
医で勤務時間外に数時間開業するだけである。また、検査機器を揃えているところは
無く、レントゲン、超音波、血液検査等、また、入院が必要な場合、バイオラ病院等へ
紹介される。完全な医薬分業制になっておらず、簡単な薬であれば院内で処方して
貰える。
受診については、風邪等、日常みられる傷病であれば民間クリニックで対応可能であ
る。緊急に検査・処置や入院治療が必要とされる場合、公立病院を利用する。しかし、
入院については、医療スタッフ不足や衛生面において、外国人が安心して治療を受
けられる環境とは言い難く、緊急・重篤状態以外は、可能な限り避けることが望まし
い。
(1)医療機関
以下は、現地の日本人が利用する医療機関である。
<病院>(トンガタプ島)
バイオラ病院:Vaiola Hospital (公立病院)
所在地:Taufa’ahau Rd., Tofoa, Nuku’alofa
Ministry of Health, P.O.Box 59, Nuku’alofa
電話:(+676)23-200
FAX:(+676)24-291、24-210
診療時間:08:30~16:30(月~金)、救急外来 24 時間対応
診療科目:内科、外科、産婦人科、小児科、歯科、放射線科、精神科、麻酔科、糖尿
病外来、皮膚科、耳鼻咽喉科、理学療法。その他として年に 2-3 回、オ
ーストラリアやニュージーランドから胃腸科、神経科、整形外科、泌尿器科
医師の訪問診療がある。
備考:2012 年、日本政府の支援で外来、一部病棟が改築された。日本人医師はいな
い。専門医のみ要予約。入院費は 1~5 パアンガ(T$)/日。入院ベッド 300 床。
医師数は専門医を含めて約 10 名(トンガ全体で 63 名)。内科、外科病棟とも
に有料個室(ナースコール、洗面所、エアコン付き、1 泊 25-30T$)がある。手
術室、ICU(ベッド 3 床)には、人工呼吸器、モニター類も整備されている。内視
鏡は手術室で行われ、上部消化管検査のみ可能。超音波検査、レントゲン検
査はバイオラ病院のみ可能。歯科受診は可能だが、充填物補充程度で、抜歯
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や根幹治療は避けたほうがよい。歯科用パノラマ・レントゲン機器あり。
(ババウ島)
プリンス・ウェリントン・グー病院:Prince Wellington Ngu Hospital(公立病院)
電話:70-201
FAX:70-202、70-204
診療時間:08:30~16:30(月~日)、緊急時 24 時間対応
診療科目:内科、外科、放射線科、産婦人科、小児科、歯科
備考:予約不要。ベッド数 60 床。常勤は一般医 2 名だが、時折バイオラ病院に出向し
ている事がある。臨床検査室を有するが、検査可能な項目が限られている。
超音波検査不可。一般外来のほかに、糖尿病外来がある。救急外来はある
が設備は貧弱で重症の対応は困難と思われる。
(ハーパイ島)
ニウイ病院:Niy’ui Hospital(公立病院)
電話:60-790/60-203
FAX:なし
診療時間:08:30~16:30(月~日)、緊急時 24 時間対応
診療科目:内科、外科、産婦人科、小児科、歯科など
備考:予約不要。ベッド数 16 床。常勤は一般医 2 名だが、バイオラ病院に出向してい
る事が多い。レントゲン設備はあるが、稼動していない。血液検査は機器が無
く、顕微鏡でできる血算のみ可能。
(エウア島)
ニウエイキ病院:Niu’eiki Hospital(公立病院)
電話:50-111
FAX:50-110
診療時間:08:30~16:30(月~金)、
診療科目:内科、産婦人科、小児科、歯科
備考:予約不要。ベッド数 16 床。医師 1 名、ヘルスオフィサー(男性)1名が勤務して
いる。簡易な血液検査のみ可能。
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<クリニック>
(トンガタプ島)
① フレンドリ-・アイランド・メディカル・クリニック:Friendly Island Medical Clinic
所在地:Kepeta, Kapeta Longolongo, Nuku’alofa
電話:27-725/ 25-725
FAX: 25-288
診療時間:16:30〜19:30(月~金)、9:00〜12:00 (土)
診療科目:一般診療、産婦人科、小児科など
備考:医師は、バイオラ病院で放射線医として勤務し、夜間と土曜日のみに開業して
いる。地方島病院で一般医としての勤務経験を持ち、産婦人科、小児科など
全般を診察できる。予約不要。健康診断は実施可能。ワクチン持参の予防接
種実施可能。専門医受診や検査が必要な場合はバイオラ病院へ手配してい
る。一部血液検査は直接ニュージーランドへ血清送付。院内処方可。超音波
検査可。レントゲン検査は、国立病院で撮影する。
② タウン・クリニック:The Town Clinic
所在地:Salote Rd., Fasi-moe-‘Afi, Nuku’alofa
電話:25-656(クリニック)、15-860(予約)、26-695(自宅)
FAX:なし
診療時間:17:00~19:00(月~金)、9:00~12:00(土)
診療科目:耳鼻科
備考:トンガで唯一の耳鼻科医である。バイオラ病院で勤務し、夜間と土曜日のみ開
業している。手術件数が多く、経験豊富である。要予約。診察料は検査・処置
内容により異なる。時間外診療可能。
(2)緊急時の対応と措置
トンガタブ島の場合、バイオラ病院の救急外来を受診することになる。救急車を呼ぶ
ことが可能だが、一刻を争う場合、患者の状態にもよるが自家用車やタクシーなどを
利用する方が早い場合もある。
地方島で発生した場合、地方病院へ受診し、状況に応じて首都への上京を検討する。
特に日曜日は、飛行場も閉鎖されてしまうので、首都までの移動が困難になる。船の
移動は大型フェリー 「Otuanga ofa」 を除き、利用は勧めない。手術、輸血、MRI、
CT スキャンなどの検査が必要とされる場合、トンガでは対応できない。また、減圧症
(潜水病)の治療ができる高圧酸素室の設備は無い。
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3.医薬品、衛生用品
(1)携行することが望ましい医薬品
慢性疾患治療薬などは、日本と同じものを入手できないので持参する。常用している
家庭常備薬(虫刺されの薬や胃腸薬など)や持病(アトピー性皮膚炎、痔など)の薬、
湿布剤、腰痛用コルセットなどは持参するとよい。デジタル体温計(小児用、婦人体温
計)、デジタル血圧計、体脂肪測定付体重計などは必要であれば持参する。その他、
日差しが強いのでサングラスを持参することを勧める。眼鏡を作ることはできないの
で、予備も持参することが望ましい。
(2)現地で調達できる医薬品
ニュージーランド製などの医薬品を入手できる。胃腸薬、総合感冒薬、解熱剤(成分:
アセトアミノフェン)、目薬、酔止め薬などは、処方箋なしで購入できる。抗生物質や慢
性疾患治療薬などは、処方箋が必要である。
(3)現地で調達できる衛生用品
生理用品、虫除けスプレー、蚊取線香、殺虫剤、傷の消毒液(原液のため希釈して使
用)などは、スーパーマーケットや薬局で購入可能。避妊具(コンドーム)は、病院、ヘ
ルスセンターで配布。弾力包帯、滅菌済みガーゼ、絆創膏等は薬局で購入可能。蚊
帳は入手できるが、防虫効果のある蚊帳や大きいサイズ、目の粗いタイプは入手不
可。
(4)薬局
①ビレッジ・ミッション薬局:Village Mission Pharmacy
所在地:‘Unga Rd, Nuku’alofa
電話:(+676)27-522、 FAX:27-494
備考:薬局内にクリニックが併設され、欧米系医師(変更が多い)が、診療を行ってい
る(要予約)。
月~金 8:30~17:00 土 10:00~13:30
② ユニーバーサル薬局:UNIVERSAL CLINIC & PHARMACY
所在地:Fanga, Nuku’alofa
電話:(+676)28-595、26-994
備考:バイオラ病院医師と薬剤師で運営(要予約)。
月~金 8:30~19:00 土 8:30~15:00
併設のクリニックは土曜日の診療はなし。最近、店舗が増築され品揃えが増
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えた。松葉杖や車椅子など介護用品やワクチンや点滴セットなども置いてあ
る。
③ ニール薬局:Neeru’Pharmacy
所在地:Nuku’alofa
電話:(+676)26-200
備考:インド系フィジー人の薬局。化粧品や日焼け止めなどの日用品も販売している。
消毒薬、経口補水液、風邪薬、皮膚軟膏、点眼薬、胃薬など品揃えが多く、値
段も安い。
月~金 9:00~19:00、土 9:00~15:00
4.妊娠、出産、育児
(1)妊娠した場合の対応
妊婦検診は開業医で受けられる。しかし、流産への緊急処置、並びに緊急時の帝王
切開など、妊娠中や出産時にトラブルが生じた場合の対応に不安があること、また収
容可能な施設が無いことから、可能な限り日本での出産が望ましい。
(2)出産後の対応
公立医療機関(ヘルスセンター)で母子検診を行っているが、クリニックでも、検診や
予防接種が受けられる。予防接種は、BCG、B 型肝炎、三種混合、ポリオ、MR(麻疹
と風疹)で、生後 12 ヶ月で終了。
その後、生後 18 ヶ月に MR と三種混合(4 回目)、5 歳時に三種混合(5 回目)、15 歳
時に二種混合(Td:破傷風とジフテリア)の追加接種がある。
(3)育児
哺乳瓶、紙おむつ、ベビーパウダー、ベビー石鹸、衣類などは、種類は少ないが購入
可能。粉ミルクやベビーフードもあるが、賞味期限が切れていることがあるので、確認
して購入する。
5.手術
(1)現地で可能な手術
緊急を要する場合(急性虫垂炎、帝王切開、事故など)を除き、手術は医療先進国で
受けることが望ましい。
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(2)手術設備の状況
バイオラ病院に手術室と ICU がある。開腹術、帝王切開、眼科などの手術が出来る
医療機器は揃っている。専門医がいないため脳外科、心臓などの手術は対応できな
い。
(3)その他の留意点
輸血:輸血用血液は、B 型、C 型肝炎検査、HIV、梅毒検査が行われているが、献血
者の 10%前後が B 型肝炎キャリアと言われている。このような状況から、感染の危
険性を否定できないので、緊急時に輸血が必要になった場合など、輸血後の感染症
検査のフォローなどが必要である。
6.現地での傷病
(1)一般の疾病
急性上気道感染症(感冒、扁桃腺炎など)や虫刺跡が隆起し化膿する「膿瘍・廱(よ
う)・癤(せつ)」(俗名:トンガ語でパラ)、疥癬、真菌症等の皮膚疾患が多い。
下痢や腹痛などの胃腸疾患も起こりやすく、食中毒の他、地域により魚中毒(シガテ
ラ)がみられる。
マリンスポーツに因る、加圧性中耳炎、副鼻腔炎、減圧症(潜水病)熱中症、重度の
日焼けなどがみられる。また、毒魚(オニダルマオコゼなど)による刺傷事故などがあ
る。
(2)風土病、感染症
デング熱、チクングニア熱、インフルエンザ、性病、結核、HIV/AIDS 、B 型肝炎、A 型
肝炎(旅行者に多い)、消化管寄生虫症、細菌性/アメーバ赤痢、デング熱、腸チフス、
髄膜炎(髄膜炎菌など)、流行性結膜炎、水痘、破傷風などがある。マラリアはない。
(3)有害動物、病害虫
ムカデ、蚊、ハエ、ネズミ、赤アリ、南京虫、ダニ、ノミ、毛ジラミ、ハチ、毒魚(オニダル
マオコゼなど)、海ヘビ、クラゲ、ヒトデなど。
飼い犬が放し飼いになっているので、咬まれないように注意する。もし咬まれたら、石
鹸と流水で傷口を十分洗浄する。その後受診し、傷処置や破傷風トキソイドの追加接
種の要否を確認する。
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7.保健衛生
(1)飲料水
雨水や水道水を利用。一般に、現地の人は直接飲用しているが、雨水も水道水も、
必ず煮沸してから飲用する。あるいはボトルに入った水を飲用することを勧める。
(2)濾過器の入手
入手困難。
(3)その他の留意点
年間を通して、シガテラ中毒が発生する。珊瑚礁周辺に生息する魚が危険である。珍
しい魚は食べない、地元の人から、食(魚)中毒の流行状況を聞く等して注意する。シ
ガテラ毒は、乾燥、冷凍、加熱しても、毒が無くならず、重症の場合、死亡することが
ある。
以上
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