CAP.C203 移動現象第三

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CAP.C203 移動現象第三
第2回 「定常拡散と非定常拡散」
物質理工学院 応用化学系 下山 裕介
2016.10.6
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「移動現象第三」
第1回9/29 「定常拡散: 拡散方程式」
第2回10/6 「定常拡散と非定常拡散」
第3回10/13 「対流を伴う物質移動」
第4回 10/20 「反応を伴う物質移動」
第5回 10/27 「物質移動係数と境界層理論」
第6回11/3 「分離操作における物質移動①」
第7回11/10 「分離操作における物質移動②」
第8回11/17 確認試験
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講義の概要
「移動現象第三」では,物質移動の基礎と応用について学ぶ.
分離操作において
(CO2のガス吸収)
CO2
CH4
CO2
CH4
CO2
CO2
CH4
CO2
吸収液
CO2
薄膜材料の前駆体
CH4
CO2
CO2
CO2
材料合成において
(太陽電池薄膜)
基板表面への物質移動
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拡散とは
A
B
A A
(静止媒体)
A
A
A
B B
B B
静止媒体(流れのないボックス)の中で,分子AとBはどのように移動するか?
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拡散とは
A
A A
A
A
A
B
B B
B B
分子AとBは濃度が小さい(薄い)方向へ移動する.
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拡散とは
A
A A
A
A
CA
A
B
B B
B B
CB
各分子(AとB)の濃度勾配を駆動力(drivingforce)として移動する.
物質移動の数式化
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Ø 物質移動現象は,化学プロセスのあらゆる工程(分離,反応,前
処理)で理解する必要がある.
Ø 各工程(分離,反応,前処理)の操作条件を最適化するためには,
定量的な現象の理解が必要.
(CO2のガス吸収)
CO2
CO2
CO2
CH4 CH4
CH4
CO2
CO2
CH4
CO2
CO2
吸収液
CO2
CO2
<想定される操作条件>
ü  温度
ü  混合ガス(CO2,CH4)の流速
ü  混合ガス(CO2,CH4)の分圧
ü  吸収液の撹拌速度
物質移動の数式化
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演習2-1.
CO2のガス吸収において,「想定される操作条件」のうち,吸収液の
CO2の吸収速度(物質移動速度)に影響する条件を,理由をつけて
答えよ.
(CO2のガス吸収)
CO2
CO2
CO2
CH4 CH4
CH4
CO2
CO2
CH4
CO2
CO2
吸収液
CO2
CO2
<想定される操作条件>
ü  温度
ü  混合ガス(CO2,CH4)の流速
ü  混合ガス(CO2,CH4)の分圧
ü  吸収液の撹拌速度
物質移動の数式化
演習2-1.(解答)
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物質移動の数式化
演習2-1.(解答)
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物質移動の数式化
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Ø 物質移動現象は,化学プロセスのあらゆる工程(分離,反応,前
処理)で理解する必要がある.
Ø 各工程(分離,反応,前処理)の操作条件を最適化するためには,
定量的な現象の理解が必要.
Ø 実験的に「定量的な現象を“すべて”理解する」ことは不可能
Ø 理論モデルによる解析にて,定量的に現象を把握する.
<拡散方程式>
物質移動を支配する(決める)項と物質収支から構成される.
(蓄積項)+(対流項) = (拡散項) + (消失項)
静止媒体中の定常拡散(1次元)
Ø  拡散方程式(x,y直交座標)
(蓄積項)
(対流項)
(拡散項)
(反応による消失項)
2
⎛
∂cA
∂cA
∂ cA ⎞
+u
= DAB ⎜ 2 ⎟ + rA
∂t
∂x
⎝ ∂x ⎠
静止媒体中の定常拡散(反応を伴わない)では,
“定常”拡散のため,(蓄積項)=0
静止媒体中であるため,(対流項)=0
反応を伴わないため,(消失項)=0
静止媒体中の1次元定常拡散
⎛ ∂2 cA ⎞
0 = DAB ⎜ 2 ⎟
⎝ ∂x ⎠
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静止媒体中の定常拡散(1次元)
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Ø  拡散流束: 単位面積,単位時間当たりに移動する物質量(質量)
−2
−1
J A [mol m s ]
⎛ ∂2 cA ⎞
0 = DAB ⎜ 2 ⎟
⎝ ∂x ⎠
静止媒体中の1次元定常拡散
⎛ ∂2 cA ⎞ ∂ ⎛
∂cA ⎞
DAB ⎜ 2 ⎟ = ⎜ DAB
⎟=0
∂x ⎠
⎝ ∂x ⎠ ∂x ⎝
xにおける拡散流束を,濃度勾配
領域で積分する:
⎛ ∂cA ⎞
J A = −DAB ⎜
⎟
⎝ ∂x ⎠
濃度勾配がない
x
濃度勾配がある
気相
液相
負の符号は,物質移動の向きとx軸の向きが
異なることを表す.
静止媒体中の定常拡散(1次元)
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演習2-2.
CO2のガス吸収において,下図のように気相側の境膜における濃度
勾配が直線で表される場合,吸収における拡散流束を,DAB,cA1,
cA2,x1で求めよ.
c1
x
気相
液相
濃度勾配がない
濃度勾配がある
x1
c2
静止媒体中の定常拡散(1次元)
演習2-2.(解答)
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非定常拡散(1次元)
Ø  拡散方程式(x,y直交座標)
(蓄積項)
(対流項)
(拡散項)
(反応による消失項)
2
⎛
∂cA
∂cA
∂ cA ⎞
+u
= DAB ⎜ 2 ⎟ + rA
∂t
∂x
⎝ ∂x ⎠
静止媒体中の非定常拡散(反応を伴わない)では,
静止媒体中であるため,(対流項)=0
反応を伴わないため,(消失項)=0
1次元非定常拡散
2
⎛
∂cA
∂ cA ⎞
= DAB ⎜ 2 ⎟
∂t
⎝ ∂x ⎠
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非定常拡散(1次元)
1次元非定常拡散
cA0
2
⎛
∂cA
∂ cA ⎞
= DAB ⎜ 2 ⎟
∂t
⎝ ∂x ⎠
濃度勾配がない
x
cAS
気相
液相
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濃度勾配がある
(気相境膜)
cAave
時間とともに,濃度勾配が変化する.
境膜の平均濃度cAaveについて時間変化(t)を解析的に解くことが可能.*
ave
A
c − cAS
c0 − cAS
2
⎡
DAB ( 2n +1) π 2 t ⎤
8
1
⎥
= 2∑
exp ⎢−
2
2
π n=1 ( 2n +1)
4L
⎢⎣
⎥⎦
L : 界面からの距離
∞
*Seader,J.D.,Henly,E.J.,Separa8onProcessPrinciples,2ndedt.”(2006)
非定常拡散(1次元)
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擬定常状態モデル:非定常拡散を定常状態として解く手法
cA0
気相
x
cAS
dL / dt
液相
L
L + dL
時間変化にともない,成分Aが拡散する位置が変化すると考える.
dL J A
=
dt cl
cl :
拡散位置での成分Aのモル密度
非定常拡散(1次元)
擬定常状態モデル:非定常拡散を定常状態として解く手法
定常拡散において,濃度勾配が直線の分布となる場合,
cA0 − cAS
J A = DAB
L
定常拡散において,濃度勾配が直線の分布となる場合,
dL
cA0 − cAS
= DAB
dt
cl L
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非定常拡散(1次元)
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演習2-3.
擬定常拡散モデルを用いた場合,拡散位置Lの時間変化(t)を表す
式を,図中の記号ならびに時間 t を用いて求めよ.
cA0
気相
液相
x
cl :
拡散位置での成分
Aのモル密度
DAB
cAS
L
非定常拡散(1次元)
演習2-3.(解答)
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非定常拡散(1次元)
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演習2-4.
半導体製造プロセスにおいては,下図に示すようなSi基板上にSiO2薄
膜を形成する過程がある.ここでは,SiO2層におけるO2の拡散距離を
把握する必要がある(SiO2の膜厚さを制御するため).
SiO2表面におけるO2濃度を,0.096molm-3,SiO2/Si界面におけるO2
濃度を0molm-3,O2拡散位置でのSiO2密度を3770molm-3とする.ま
た,SiO2層中のO2の拡散係数は,2.7×10-13m2s-1である.7時間後の
O2の拡散距離Lを求めよ.
O2
L
SiO2
Si
非定常拡散(1次元)
演習2-4.(解答)
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