【サイトトップ】【その他】 平成 28 年 10 月 01 日 ホームページを作成したら実施したいこと 柳川 行雄 内容 最初に ......................................................................................................... 2 Webalizer によるアクセス解析 ................................................................... 2 (1)基本的な解析 ....................................................................................... 3 (2)当サイト(実務家のための産業保健のサイト)の分析 ....................... 5 ア 全体的な概要 ....................................................................................... 5 イ 時間ごとの統計 .................................................................................... 7 ウ 閲覧されているページ ......................................................................... 7 ウ 閲覧者ごとの分析 ................................................................................ 8 3 VECTOR からのメール .............................................................................. 9 4 Google での分析 ........................................................................................ 10 (1)検索される用語や順位など ................................................................ 10 (2)サイトへのリンク .............................................................................. 13 (3)サイトマップの登録 ........................................................................... 13 5 最後に ....................................................................................................... 14 (1)法違反とならないために .................................................................... 14 ア 著作権法違反 ..................................................................................... 15 イ 名誉に対する罪と信用に対する罪 ..................................................... 15 ウ 秘密漏洩罪と守秘義務違反 ................................................................ 16 エ 広く、犯罪の幇助及び教唆の罪 ......................................................... 16 オ その他 ................................................................................................ 17 (2)炎上をさけるために ........................................................................... 17 1 2 1 1 最初に ホームページを作成すれば、それを必要としている方に読んで頂いて、できれ ば活用して頂きたいと思うことは当然だと思う。しかし、何もしなければ、読ん で頂いている方の数は分からない。最高裁判所の判事の判決言い渡しのような もので、何もない空間に向かって話しているような気がするものである。もちろ ん、個人的な知己に感想を聞くことはあるだろうが、それでは、一般の方に活用 されているかどうかまでは分からないのである。 もちろん、何もしなくても、検索サイトで何かを調べようとして、自分のサイ トがヒットするのを見かけることはよくある。しかし、それとて誰かがクリック してサイトを訪問しているかどうかまでは、やはり分からないのである。 そこで、ホームページを立ち上げたらやってみたいことについて、私のサイト を例に挙げながら解説してみた。もちろん、閲覧して頂いている方の IP アドレ スなどを公開するようなことはしていない。 【サイトの解析について】 ・ 閲覧している方の IP アドレスまでは、サイトの作成者である私には分か ります。 ・ IP アドレスから、閲覧者している方の氏名、住所、電話番号等を特定す ることはできません。 ・ どの IP アドレスを持つ方が、どのページ(URL)を閲覧したかを特定す ることはできません。 ・ 本文にも書きましたが、当サイトを訪問して頂いた方の IP アドレスを公 開又は第三者に提供することはしません。 Webalizer によるアクセス解析 2 現在、WEB サイトのアクセス解析をするには、Webalizer(現在のバージョ ンは 2.23)が最もよく利用されている。有償のレンタルサーバであれば、これ を用いたアクセス解析が簡単にできるようになっていると思う。無償のサーバ ーや、インターネット接続サービス会社が提供するサーバーでも、同様なのでは ないかと思うが、できないとしても Webalizer そのものは無償で使用すること ができる。 私が利用しているさくらインターネットでも、Webalizer の設定が簡単にでき 2 るようになっている。しかし、私自身は、分析を始めたのはサイトを公開してか ら 10 日ほど経過してからである。そのため、最初 10 日ほどは、アクセスに関 するデータがないのだが、これは最初から解析しておいた方がよかったと後に なってから後悔した。 (1)基本的な解析 Webalizer で解析すると、時系列的なアクセス結果が、月別に図2-1のよう に出力される。 図2-1:Webalizer の月別解析結果(グラフ) これらの数値の意味については後述するが、簡単に説明すれば、左側の Hits、 Files、Page の欄は閲覧された数を表しており、右上の Visits、Sites は訪問者 の数を表し、右下の KByte は文字通り、ダウンロードされた量を KByte で表し たものということができる。 ホームページを開設した5月から、Hits と Pages を除けば、一貫して右肩上 がりに上昇していることがお分かりいただけると思う。ただし、5月は月の半ば から解析しているので、単純に他の月と比較することはできない。 なお、Pages も9月は過去最高を記録している。Hits 数は上下動を繰り返し ているが、あまり意味のある数字ではない。 これらは図2-2のように、グラフのみならず数値でも表される。 3 図2-2:Webalizer の月別解析結果(表) 図2-1及びず2-2に示された各項目の意味は、表2-1の通りである。 表2-1:Webalizer の各項目の意味 項目 意 味 Hits 【サイト内のすべてのファイルに対するアクセス数】 ・ 「サイト内のすべてのファイル」には、各ページ(URL)に掲 載されている図なども含まれる。 ・ そのため、あまり意味のある数値ではない。例えば、サイト内 のあるページに空白の小さな図を 100 個表示しておくと、その ページが閲覧されれば、ヒット数も 100 増えることになるから である。 ・ また、Hits には、Not Found と表示されたものや閲覧者側の キャッシュへのアクセス数を含んでいる。 Files 【サイト内のすべてのファイルに対する有効なアクセス数】 ・ hits のうち、実在するファイルに対してのアクセス数を表し ている(すなわち、hits の数から Not Found と表示されたもの や、閲覧者側のキャッシュへのアクセス数を除いたものと考え ればよい) ・ この数値は hits よりは意味があるが、やはりページ内の図な どを数えてしまうため、あまり意味のないことは hits と同様で ある。 Pages 【サイト内のページ(URL)へのアクセス数】 4 ・ ページそのものの閲覧数である。ページ内の画像やリンクなど を数えることはない。 ・ Visits に比して、この数が多ければ、閲覧者がサイト内をあち こち移動したことを示しているので、関心を持たれたものと考 えられる。 ・ ただし、必要なコンテンツがどこにあるのか分かりにくいサイ トでも Pages は増えるので、必ずしもこの数値が増えることは よいことばかりではない。 Visits 【実際の閲覧者の延べ人数】 ・ Pages から 30 分以内の同一 IP アドレスやリモートホストか らのアクセスを除いたもの。 ・ 不正多重アクセスなどはカウントされない。 ・ 閲覧者が 30 分以内で退出すると仮定すれば、サイトへの訪問 者の延べ人数となる。 Sites 【IP アドレスやリモートホストアクセス数】 ・ 訪問した IP アドレスやリモートホストアクセス数のうち、過 去1年間の同一の IP アドレスやリモートホストアクセスを除い たもの。 ・ ただし、プロバイダなどが、固定 IP ではなく自動割当の場合 は、ユーザが複数いても同一 IP アドレスとなり、カウントされ ない。 ・ 1年以内に何度も訪問しても最初に1とカウントされるだけ である。このため、実質的に、新規にサイトを訪問してきた数と 考えることができる。 KBytes 【データ転送量】 ・ サイトから閲覧者へのデータ転送量である。 (2)当サイト(実務家のための産業保健のサイト)の分析 ア 全体的な概要 Webalizer は月ごとの詳細な解析結果も提供してくれる。当サイトの 2016 年 9月の1カ月間での統計は、図2-3のようになっている。合計 Visits(訪問者 数)は 769 名となっており、ダウンロード量の総量は 2.9GB である。 企業の安全衛生の関係者という、やや狭い分野を対象とした固い内容のサイ 5 トとしては、かなり健闘しているのではないかと考えている。 これによると1日あたりの平均訪問者数は 25 人で1日あたりのページ数が 99 ページなので、訪問者1人当たりでは、平均して約4ページを見て頂いてい ることになる。 また、Visits1人当たりのダウンロード量は、3.75MB となっている。当サイ トのコンテンツ(PDF ファイル)は、最も大きいものでも2MB 程度で、小さ なものになると数百 KB 程度なので、閲覧者の方は複数の PDF ファイルを見て 頂いていることがここからも分かる。 図2-3:9月の統計 6 イ 時間ごとの統計 サイトが1日のうちどのような時間帯に閲覧されているかを示したものが図 2-4である。時間ごとに Hits、Files、Pages の数が表示されている。これを みれば、サイトがビジネスで利用されているのか、プライベートで利用されてい るのかが分かる。 私のサイトは、通常の企業の勤務時間に閲覧されていることが多いようだ。午 前8時から午後5時頃までの閲覧が多く、昼休みの 12 時台には閲覧数が減少す る傾向がある。このことから、当サイトは企業での利用が多いということが分か る。内容が産業保健に関するものであるから、当然のことといえようが。 図2-4:時間ごとの統計(2016 年9月) ウ 閲覧されているページ Webalizer は図2-5に示すように、サイト内のページ(URL)ごとに、Hits と KBytes(ダウンロード量)が表示されるようになっている。ただし、これは 閲覧者の記録に関わる事項なので図のページ(URL)の欄にはぼかしをかけて ある。 これをみると、上位4つのコンテンツで 68.8%を占めている。これは、これ らのコンテンツのサイズが大きいということもあるが、ダウンロードされる回 7 数もかなり多いからである。また、ダウンロード数が多いと、私としてもやはり 頻繁に改訂するようになる。このため、さらにダウンロード数が増加するという 相乗効果もあるようだ。 一般論で言えば、ハウ・ツー的なもののダウンロード量が多い傾向があるよう である。 なお、Webalizer では、すべての URL について、ダウンロードされた量が分 かるようになっている。そしてダウンロードされた量をそれぞれの PDF ファイ ルの大きさで除することによって、ダウンロードされた回数が分かるので、各コ ンテンツごとの人気度が分かることになる。 図2-5:表示されるページ(2016 年9月) ウ 閲覧者ごとの分析 Webalizer では、閲覧者ごとの利用状況は、図2-6の情報までが分かるよう になっている。ただし、冒頭でも述べたが、どの IP アドレスの閲覧者が、どの ページ(URL)を閲覧したのかまでは分からない。なお、図中のぼかしをかけて ある“ホスト名”の欄には、閲覧者の IP アドレスが記されている。 くどいようだが、IP アドレスから個人を特定できることはない。従って、個 別に教えて頂いた方以外が、どの程度このサイトを閲覧しているかは私には分 からない。 なお、このことは、すべてのサイトについていえることである。従って、住所 8 や氏名を登録していないサイトから「利用料金」などの請求書が送付されてきた 場合は、詐欺の可能性が高いので支払う必要はない。心配なら警察に相談すると 良い。 これをみると単独の IP アドレスで Visits が複数おられるサイトがあるが、こ れは単独の IP アドレスを用いている企業などで、内部で複数の方がご覧になっ ているのであろう。どのようにご利用頂いているのかまでは分からないが、こと によると企業内でリスクアセスメントを実施するにあたって、当サイトの資料 を用いているのかもしれない。 図2-6:表示されるページ(2016 年9月) 3 VECTOR からのメール また、私は、VECTOR で、ボックスモデルのリスクアセスメントツールなど を公開している。これについては、VECTOR から毎月のダウンロード数の連絡 が来るので、こちらの利用数も知ることができる。 図3-1は VECTOR からのメールをコピーしたものである(一部画面をぼか した)。 9 図3-1:VECTOR からのメール(2016 年9月) これによると、VECTOR からの「職場の化学物質管理のための、気中濃度の 単位変換ツール」の9月中のダウンロード数は 34 回で、「ボックスモデルによ るリスクアセスメントツール」のダウンロード数は 22 回であったとのことであ る。これらのツールは、私のサイトからもダウンロードできるので、実際の利用 者はこれよりもかなり多いことになる。 4 Google での分析 (1)検索される用語や順位など また、サイトを Google Search Console に登録することにより、Google での 検索の状況を知ることができる。私が、これに登録したのはサイトを公開してか らかなりたってからである。 なお、Google に登録することにより、新たにページを公開してから検索サイ トにヒットするようになるまでの時間が短縮されるようだ。 また、登録することにより、様々な Google による分析結果を知ることができ るようになる。図4-1は、Google によって当サイトが何回表示されて、その うち何回クリックされたかを示している。 10 図4-1:Google での分析結果①(過去 28 日) これをみると、私のサイトは過去 28 日間で Google の検索サイトで 7,212 回 表示され、そのうち 431 回は実際にクリック(閲覧)されている。また、そのと きの掲載順位の平均は 15.1 位だったということである。 なお、このグラフを見ると表示の回数などが7日間の周期で動いているよう にみえるが、これは当サイトが、企業向けのものなので、週末には利用数が減る からであろう。今月は祝日が2日あったが、その影響もうけているようだ。 図4-2は図4-1を下方にスクロールしたところである。個々のページご とに表示回数やクリック数が示されている(ぼかしを加えた)。 このそれぞれのページが表示されているところをクリックすると、そのペー ジについての過去 28 日間の表示回数やクリック数などの記録もグラフ化されて 出力される。また、その状態で表示をクエリ(検索された言葉)に切り替えると、 そのページがどのような言葉で検索され、何回表示されて、何回クリックされた かまで分かるようになっている。 これにより、サイトの閲覧者の関心がどこにあるかが分かるので、企業でサイ トを運営している場合は、貴重な情報を得ることができることになる。 11 図4-2:Google での分析結果②(過去 28 日) 図4-3は図4-2の状態から、表示をクエリに切り替えたものである。各ク エリごとに表示回数やクリック数が示されている。この図では、サイトはどのよ うな言葉で検索されて表示されたかが分かるわけである。 図4-3:Google での分析結果②(過去 28 日) 12 この図では一番上のクエリは、順位が 1.0 位、2番目は 8.4 位だが、表示され た回数は、2番目の方が多い。閲覧者の関心は2番目の方が高いということであ ろう。 なお、ここでも各クエリをクリックすると、そのクエリの過去 28 日間の記録 もグラフ化されて出力され、またそのクエリによってどのページが表示された かを知ることもできる。 (2)サイトへのリンク また、Google Search Console では、登録したサイト(ここでは私のサイト) にリンクを張ってあるサイトを知ることもできる。なお、Google は、検索結果 の順位を決めるにあたって、内容だけではなく、そのサイトへのリンクの数を重 視している。 なお、リンク元の情報も、それらのサイトの個別情報であるのでここで公開す ることは避ける。 (3)サイトマップの登録 Google での検索に早めにヒットされるようにするためには、サイトマップ作 成して Google に登録するとよいようである。私は、サイトマップは「サイトマ ップを作成-自動生成ツール」のページで作成した。 このページは図4-4にようになっている。このページで必要事項を記入し て、 「サイトマップ作製」ボタンをクリックするだけで簡単に作成できる。作成 したら、作成したサイトマップを、自分のサイトのホームにアップして、Google に登録するだけでよい。簡単にできる。 13 図4-4:サイトマップを作成-自動生成ツール 5 最後に (1)法違反とならないために WEB サイトを運営していて注意しなければならないことは、法令に計違反し たり、他人の権利を侵害する不法行為などの問題を起こしたりしないことであ る。ホームページは、基本的に言論・表現の場であるが、言論・表現も無制限に 許されるわけではない。ときには、犯罪を構成することもあるので注意しなけれ ばならない。 言論・表現による法違反としては、以下のようなものが考えられる。 【言論による犯罪の例】 Ⅰ 著作権法違反 Ⅱ 刑法違反 ① 名誉棄損罪(刑法 230 条)、侮辱罪(刑法 231 条) ② 信用棄損及び業務妨害(刑法 232 条) ③ 秘密漏示(刑法 134 条) ④ わいせつ物頒布等(刑法 175 条) 14 脅迫(刑法 222 条) 広く、すべての犯罪についての教唆・ほう助 ⑤ Ⅲ ただし、Ⅱの④のわいせつ物頒布、⑤の脅迫については、通常の WEB サイト を運営しているのであれば、 “己の欲する所に従えども則を超える”ようなこと はないだろうから、これらは無視してよい。 なお、著作権法違反、名誉に対する罪、信用に対する罪は、そのまま被害者へ の民法上の不法行為となるであろう。また、公務員であれば、退職後も守秘義務 に反するようなことをしてはならないことは当然である。 ア 著作権法違反 上記の犯罪の例のうち、最も気を付けなければならないのは著作権法違反で ある。基本的には、書籍・雑誌のコピーや他のサイトの図表は使用しないことで ある。公的な機関が公表したものや、学者の論文であれば、引用元を明確にした 上で、引用した部分とその他の部分が明確に分かるようにしておけば、問題とな るようなことはめったにない。 個人のサイトや企業のサイトのものは、明確に許可されている場合を除いて 使用しない方が無難である。自ら撮影した写真であっても、他人が写っているも のや、他人の物(著作物)が写っている場合は注意した方がよい。仮に法律上は 問題とならない行為だったとしても、抗議を受けるだけでもエネルギーのロス になるからである。 他人の書いたものを参考にするときは、できる限り参考文献を記した方がよ い。また、自分のオリジナルの文書であっても、偶然に他人の書いたものに似て しまうということはあり得よう。人間であるから、考えることは皆同じとまでは 言わないにせよ、同じようなことを考える者はいると考えた方がよい。デザイン などについてはそのようなことについても十分な注意はすべきである。 イ 名誉に対する罪と信用に対する罪 名誉棄損や侮辱罪などの名誉に対する罪は、自然人のみならず法人相手でも 成立する(大判大正 15 年 3 月 24 日)。ここで誤解してはならないことは、真実 であれば名誉棄損にはならないというわけではないということだ。むしろ、真実 の方が被害者にとっての被害は大きいとさえいえるのだから、名誉棄損になり 15 得ることは当然である。この点、十分な注意が必要である。 他人について書くときは(企業などの法人であっても)原則として実名は書か ないようにした方がよい。ただし、そうしてさえも、他の公開されている情報と 照らし合わせれば個人や企業が特定できる場合もあるので注意を要する。 ウ 秘密漏洩罪と守秘義務違反 また、秘密を侵す罪については、刑法上の秘密漏洩罪は身分犯なので、これが 問題となるケースは多くはないだろう。むしろ問題となるのは、特別法による秘 密漏洩罪である。これについては、公務員の場合は現職時代に知り得たことにつ いての守秘義務に十分な注意が必要である。 基本的に、業務上で知ったことは書かない方が無難である。私も、災害事例な どは、判例から引いたり、公開された報告書などから引用したりするようにして いる。オープンになっている情報以外は、使わないという原則を確立しておくこ とが重要である。 エ 広く、犯罪の幇助及び教唆の罪 教唆とは罪を犯す意思のない者に罪を犯す意思を持たせることである。ただ し、罪を犯す意思を持たせる側の方が、持つ側を強く支配しているケースなどで は正犯になることもあり得る。一方、幇助とは、罪を犯す意図のある者の、実行 行為を助けることである。 教唆は、普通は言葉によって行われるが行動によることもできないわけでは ない。一方、幇助は言葉でも、行動によっても行うことができる。 インターネットで問題になるのは、言葉や表現によって行われる、犯罪の幇助 であろう。例えば、犯罪の方法を教示したり、犯罪に用いられるプログラムを公 開したりする場合である。ほかにも、誰かに危害を加えようとしている者に対し て、被害者の所在を伝えるようなことも幇助になり得る。 これは、特定の誰かを助けるという意図でなくても、犯意のある誰かを助けよ うとする意図でも成立する。また、 「犯意のある誰かに利用されるかもしれない が、それでも構わない」と思った場合でも犯罪として成立し得る。 不注意で他人の個人情報を提供して、それが結果的に犯罪行為を幇助するよ うな結果になることがないよう注意しなければならない。 16 また、犯罪の煽り・唆しをするようなことも、一定の具体性を持っていれば犯 罪となり得る。 「○○について○○社に対して抗議活動をしよう」と呼びかける ような行為は、場合によっては威力業務妨害の幇助となり得る。もっとも、この ような行為はたいていの場合“確信犯”ではあろうが・・・。 通常のホームページでの運営では問題になることはないと思われるが、少な くとも最近の法令は複雑になっているため、その内容をよく知らずに誤った知 識で、違反となる行為を勧奨したりすることのないように気を付ける必要があ る。 また、掲示板などの運営をするのであれば、常に監視しておき、おかしな書き 込みがあればただちに削除する必要がある。 オ その他 この他、よくある「炎上」事件などで、あまりにも問題のある表現をして、対 象となる者が精神疾患をきたすようなことでもあれば、理論上は傷害罪になる ことも考えられよう。 これも普通のサイトで問題になるようなことはないと思うが、一般論を書い たつもりの記述が、何かの事件に火を点けてしまい、結果的に炎上を煽るような ことにならないように注意しなければならない。捜査当局に誤解をされれば、傷 害罪の幇助として捜査を受ける可能性もなくはないのである。 (2)炎上をさけるために WEB サイトを運営するのみならず、SNS を利用する場合でも、避けては通れ ないのが“炎上”の問題である。 ア 最近の“炎上”事例から (ア)貧困女子高生問題 最近でも、ある女子高生があるテレビ局のインタヴューで自らの貧困につい て話したところ、その女子高生の SNS の過去の発言が問題となってネットで炎 17 上したケースがある。この事件の異常なところは、市会議員や国会議員までがこ の未成年者を対象とする炎上に関わっているところである。 問題となったテレビ局のニュース(本稿執筆時点では You Tube で見ることが できた)をみると、この女子高生は、しっかりした女性という印象を受ける。し かし、一般論だが、未成年者であれば、炎上の対象になれば精神的な疾病を発症 することも考えられるだろう。国会議員や市会議員が、未成年者相手の炎上を防 止するというなら分かるが、率先してこれに関わるのであるから、やはり異常と いうよりほかはない。 ホームページを運営する以上は、このようなことに巻き込まれるリスクがあ ることを、常に念頭におくことは必要だと思っておいた方がよい。 (イ)過労自殺問題 また、某大手広告企業において、新入社員が自殺したケース1)で、某大学の教 授が“月当たり残業時間が100時間を超えたくらいで過労死するのは情けな い”と SNS で発言して2)ネットで批判を浴びたケースがある。本人は、ビジネ スマンとしての心がけを訴えたかったのかもしれないが、場合が場合だけに不 適切と言われてもやむを得ないのではなかろうか。 この新入社員のために注記しておくが、そもそも認定されたのが 100 時間だ からといって、実際に 100 時間しか仕事をしていなかったとは限らないのであ る。すなわち、認定する側としては、労災かどうかや不法行為などかどうかさえ 判ればよいのである。そのため、迅速な救済のために、確実に認定できる労働時 間だけでも労災だと判断できるのであれば、その労働時間だけで判断してしま うことがあるのだ。 これは一般論だが、長時間労働を行っている企業の多くは、不払い残業も行っ ており、36協定を超える部分については、賃金も払わず働いた証拠を残さない ようにしているケースが多いのである。そのため、実際の労働時間を正確に知る ことはきわめて困難なのである。裁判で超過勤務が 100 時間と認定されたケー スても、実際は 200 時間以上だったというケースも多いのではないかという印 象を私は持っている。 この新入社員の Twitter は現在も閉鎖されていないが、22 時前に帰れるのは 奇跡だ、今から退社する(午前3時 55 分)、1日に 20 時間会社にいるなどの趣 1 2 労災として認定されている。 この発言は現在では閲覧できない。おそらく削除されたようだ。 18 旨の発言がある。個人の Twitter とはいえ、本名と顔を出してのものなのであ る。事実の可能性が高いと思えるし、裁判になれば証拠に使えるだろう。100 時 間程度の残業時間ではなかったと考える方が自然ではなかろうか。 この大学教授の発言が、どこまで事情を調べたうえでのものなのかは分から ないが、一般論としての発言であればともかく、具体的な事件についてのものと しては如何なものであろうか。 イ “炎上”への対応 炎上の問題に対応するためには2つの処し方があろうと思う。ひとつは、議論 になりそうなことは一切書かないことである。そしてもうひとつの処し方とし ては、炎上するようなら、したで、自分も多少有名になったくらいに考えて気に しないということもあり得よう。 また、自らの個人情報については、どこまで出し、どこからは出さないかはき ちんと決めておいた方がよい。要はその原則から外れないことである。気を付け なければならないのは、WEB サイトの他にブログや SNS を利用している場合 である。ここにも個人情報が分かるようなことは書かないように注意する必要 がある。 なお、繰り返しになるが、掲示板などの運営をするのであれば、常に監視し、 おかしな書き込みがあればただちに削除する必要がある。 19
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