地域医療連携システム「あじさいネット」への 参画と地域連携のあり方

地域医療連携
地域医療連携システム「あじさいネット」への
参画と地域連携のあり方について
大村東彼薬剤師会 きらら薬局 河村綾子 先生
地域も長崎県央地区から県下全体に広がっており、地域
「あじさいネット」の概要
医療連携システムの成功例として注目を集めています。
長 崎 地 域 医 療 連 携システム、通 称「あじさいネット」
システム開始当初は病診連携が中心で運用が始まっ
は、長崎県大村市において643床の基幹病院である国
たため、情報開示が入院患者に限られていました。薬剤
立病院機構長崎医療センター(長崎医療センター)
を核
師会の参画のために、外来患者の情報開示を要望し、
とした地域医療ネットワークシステムで、同医療センター
運用から1年後、外来患者の情報開示の試行期間を経
のカルテ電子化に伴い構築され、2004年から開始され
て、当薬局を含む5薬局でシステムを導入・運用を開始
ました(図1)。
し、現在7薬局が参画しています。薬局が参加している
システム開始当初は、長崎医療センターと大村市内
地域医療ネットワークシステムは、全国的にも珍しいとい
の診療所をつなぐシステムとして運用されていましたが、
われています(図2)。
現 在では長 崎 大 学 病 院をはじめ、長 崎 市 内の基 幹 病
院を含めて情報提供をする側(11施設)
と、その情報を
「あじさいネット」利用の実際(図3)
利用する側(会員約170施設)
を結んでいます。情報提
保 険 薬局において処 方 箋から読みとることのできる
供施設が増えるに伴い飛躍的に会員数が増え、
また、
情報と、患者さんから口頭で聞ける少ない情報に頼らざ
図1.
「あじさいネット」のシステム概略
診療所・病院
長崎医療センター
Internet
WEBブラウザ
VPN
ルータ
光ファイバー
ADSL
CATV
VPN通信
保険薬局
VPN
ルータ
電子カルテ・参照サーバ
院内LAN
ファイア
ウォール
電子カルテ
VPN通信
VPN
ルータ
WEBブラウザ
VPNサーバ
VPN通信
医用画像
大村市立病院
VPNルータ
VPNサーバ
ハードウェアVPN
NTTデータ
On Demand VPNルータ
WEBブラウザ
参照サーバ
非常に高いセキュリティレベルを確保
(資料提供:独立行政法人国立病院機構長崎医療センター情報管理運営部長 木村博典先生)
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図2.「あじさいネット」の診療情報連携(イメージ)
診療所
保険薬局
図3.「あじさいネット」利用の実際
保険薬局におけるカルテ閲覧までの流れ
患者さんより同意書をいただく
カルテ共有同意
紹介
同意書FAX
カルテ共有同意
照会
カルテ内容
参照
患者さんおよび
その家族の自署
地域医療連携室へFAX送信
同意書FAX
約15分程度
受診
基幹病院
カルテ閲覧
同意取得した
患者カルテのみ
閲覧可
閲覧できる画面
(資料提供:独立行政法人国立病院機構長崎医療センター情報管理運営部長 木村博典先生)
るを得ない現状の服薬指導の中、
「あじさいネット」の利
用はカルテから得られる診断名はもちろんのこと、検査
データや看護サマリーなどたくさんの正確な情報をもと
・患者プロフィール
・生理学的検査結果
・診断名
・各種レポート
・診療記録
(2号用紙)
・熱型表
・処方
(内服・注射・外用剤等) ・手術記録
・検体検査結果
・入院サマリー
(例)
閲覧画面
に、的確な服薬指導が可能となり、患者さんとの信頼関
係をより強くすることにつながっています。
たとえば当薬局でも、抗てんかん薬を長期継続服用
している高齢患者さんが受診するたびに、
「あじさいネッ
ト」で検査結果を閲覧し、肝機能や腎機能のチェックを
することによって、服薬管理に活かせています。
また、病
気に不安の大きい患者さんは、薬局で検査値やカルテ
の内容などを再確認することができ、それが安心につな
画像および
レポートの
参照可能
がり、治療に前向きになる人もいます。
さらに、
「あじさいネット」の医療連携メールの利用に
より、主治医との連携が容易になりました。小児患者さん
の抗てんかん薬の処方変更時に、家族から体調の変化
や生活の様子を聞き、主治医に連絡することで、次回診
(資料提供:独立行政法人国立病院機構長崎医療センター情報管理運営部長 木村博典先生)
察までの薬の飲み方などの指示も受けています。身近
な存在の薬局だからこそ聞ける患者さんの不安や質問
す。
また、
システム拡張の可能性を有しており、患者さん
などを主治医に連絡し、
よりきめ細やかな対応が可能に
の情報を医療・介護・福祉で一元化することも期待され
なっています。
ています。
このシステムの素晴らしさは、患者さんを中心
一方で、
カルテから患者さんの病態などを読みとるス
として基幹病院と診療所、そして薬局とが人と人との関
キルの未熟さにも気付き、今後の研鑽の必要性を強く感
係として結びつき、情報を共有することで相互に理解し
じています。
あい、良質な医療を提供できることにあると思います。
地域連携の一翼を担う
今後、薬局の「あじさいネット」へのさらなる参画によ
り、地域に根付く薬局であるからこそ聞ける患者さんの
「あじさいネット」の成功の鍵は、利用する側の視点で
声をフィードバックすることでアドヒアランスを向上させ、
システムが構築され、安価で誰でもが使いやすいシステ
信頼される地域連携の一翼を担っていきたいと考えて
ムでありながら、セキュリティが高いことといわれていま
います。
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