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地域医療連携
薬物治療における患者安全のための薬薬連携
―薬薬連携アンケート調査結果を踏まえた取り組み
神奈川県薬剤師会医療保険委員 高橋良二 先生
医薬品の採用基準について・その他」の項目を設定し、
はじめに
病院薬剤師、薬局薬剤師がそれぞれ相手側に対して感
分業率が50%を超え本格的な医薬分業の時代を迎え
じていることを自由に記載できる記述形式にしました。ア
つつある中、病院薬剤師と保険薬局薬剤師(以下、薬局
ンケート用紙は可能な限り病院薬剤師、薬局薬剤師に配
薬剤師)が十分な意思の疎通を図ることが必要であると
布し、郵送・FAXなどの方法で回収しました。
考えます。薬薬連携をしっかり遂行することは、患者さん
病院薬剤師および薬局薬剤師への
アンケート結果
に安全で適切な薬物治療を提供するうえで大変重要な
テーマです。
回収したアンケート用紙の総数は361枚(病院薬剤師
アンケート調査の目的
179枚、薬局薬剤師182枚 )で、
その内容は共通の認識
神奈川県薬剤師会医療保険委員会は、
かねてより神
に基づいたものや、相互の業務内容の理解不足により意
奈川県病院薬剤師会業務検討委員会と協力して薬薬
識に温度差のあるものなど様々な回答が寄せられました。
連携のあり方について検討を重ねてきました。今回、我々
(1)処方内容照会
は薬薬連携における問題点を抽出するために、両薬剤
処方内容照会についての病院薬剤師側の回答は、
師会の会員にアンケート調査を行いました。そのアンケー
「照会の前に患者さんから情報を得てほしい」が35%、
ト調査により抽出された問題点を解決するため、
シンポジ
「照会は内容を把握し整理してから」が19%、
「外用剤
ウム形式を取り入れた合同研修会を開催することで、相
の使用部位までの照会が必要か」が9%、
「細かいことで
互に緊密な関係を構築し、患者安全の確保を図ることを
も照会してほしい」が8%、
「院内採用医薬品で調剤して
目的としました。
ほしい」、
「照会のルールは守ってほしい」がそれぞれ6%、
「医師も診察中」が5%などでした(図1左)。
調査項目
一方、薬局薬剤師側の回答は、
「照会方法がFAXだ
薬薬連携に関するアンケート調査は、
「処方内容照会
けでは困る」が39%、
「処方内容の変更を次回の処方箋
について・業務内容について・患者情報について・後発
に反映してほしい」が13%、
「院内採用医薬品以外も認
図1. 処方内容照会
〈病院薬剤師(n=179)〉
照会の前に患者さんから
情報を得てほしい
12%
35%
6%
外用剤の使用部位までの
照会が必要か
細かいことでも照会してほしい
6%
院内採用医薬品で調剤してほしい
8%
照会のルールは守ってほしい
5
19%
医師も診察中
照会方法がFAXだけでは困る
処方内容の変更を
次回の処方箋に反映してほしい
照会は内容を把握し
整理してから
5%
9%
〈薬局薬剤師(n=182)〉
14%
院内採用医薬品以外も
認めてほしい
5%
39%
5%
処方医に直接回答してほしい
医師の指示どおりはやめてほしい
5%
処方内容に読みにくいものがある
9%
10%
13%
処方内容照会が
大分スムーズになってきている
その他
その他
・事後承諾はやめてほしい
・医師に照会してほしい
・急ぎでないものは教えてほしい
・時間外の対応で困ることがある
・各病院の内規が違うことを理解してほしい
・用法・用量の照会で迷惑がられることがある
図2. 患者情報
〈病院薬剤師(n=179)〉
患者情報の共有化が必要
〈薬局薬剤師(n=182)〉
患者情報の共有化が必要
お薬手帳の有効利用
12%
6%
10%
個人情報問題の解決
29%
退院時の情報がほしい
5%
知り得た情報の
フィードバックをしてほしい
9%
薬剤情報に用法・用量を
記載してほしい
11%
お薬手帳の有効利用
26%
個人情報問題の解決
病名・検査値を知りたい
16%
16%
21%
20%
19%
その他
癌などの告知についての
情報が知りたい
その他
・提供している情報は役立っているか
・投薬時の指導は他の患者に
聞かれないように配慮してほしい
・情報の取得がさらに必要
・収集し送った情報が活かされていない
・薬剤師の紹介状がほしい
・退院時のカンファレンスに参加したい
めてほしい」が10%、
「処方医に直接回答してほしい」が
一方、薬局薬剤師側の回答は、
「後発医薬品への変
9%、
「医師の指示どおりはやめてほしい」、
「処方内容に
更不可はやめてほしい」が28% 、
「同一成分の後発医
読みにくいものがある」、
「処方内容照会が大分スムーズ
薬品が増えて困る」が16%、
「採用基準について知りたい」
になってきている」がそれぞれ5%などでした(図1右)。
が13% 、
「流通・包装単位・返品・薬価差」が8%などで
(2)業務内容
した。
業務内容については、病院薬剤師、薬局薬剤師ともに
( 後発医薬品の採用基準については、相手側・こちら側
それぞれ3分の1以上が「相手の業務内容を知りたい」と
双方の立場に立った回答がありましたが、
そのまま集計
回答していました。また、病院薬剤師側の回答は、
「時間
しました。)
外の対応をしてほしい」が18%、
「個々の薬局の質の向
(5)その他の項目
上を」が15%、
「患者指導をきちんとしてほしい」が13%、
「TPNの調製、混注業務をしている薬局を知りたい」が
その他の項目での病院薬剤師側の回答は、
「お互い
の交流の場がほしい」、
「お薬手帳に処方薬を記載して
6%などでした。
ほしい」、
「保険の勉強をしたい」などでした。
一方、薬局薬剤師側の回答は、
「処方箋の鑑査をして
一方、薬局薬剤師側の回答は、
「患者さんのためにとも
ほしい」が30%、
「特殊な薬剤処方はその旨患者さんに
に協力したい」、
「FAX番号を処方箋に記載してほしい」、
伝えてほしい」、
「院内製剤などの情報を教えてほしい」
「病院での処方薬の重複チェックをしてほしい」などでした。
がそれぞれ9%などでした。
(3)患者情報
合同研修会の開催
患者情報についての病院薬剤師側の回答は、
「患者
今回のアンケート調査により抽出された問題点を相互
情報の共有化が必要」が29%、
「お薬手帳の有効利用」
に理解するために、県内各地において薬薬連携推進の
が21%、
「個人情報問題の解決」、
「知り得た情報のフィ
ための合同研修会を順次開催しています。昨年度は小
ードバックをしてほしい」がそれぞれ16%、
「薬剤情報に
田原、川崎地区の2地域で開催し、
それぞれ91名、160名
用法・用量を記載してほしい」が6%などでした(図2左)。
の参加があり、
今年度も2地域での開催を計画しています。
一方、薬局薬剤師側の回答は、
「退院時の情報がほし
合同研修会では、
お互いの業務内容の紹介後、処方
い」が26%、
「患者情報の共有化が必要」が20%、
「お薬
内容照会の方法など双方の薬剤師の認識に差があった
手帳の有効利用」が19%、
「個人情報問題の解決」が11%、
点、服薬情報における共通ツールとしてのお薬手帳のさ
「病名・検査値を知りたい」が9%などでした(図2右)。
(4)後発医薬品の採用基準
らなる有効利用などについて活発な討論がなされ、相互
理解のために有意義な研修会であったとの評価をいた
後発医薬品の採用基準についての病院薬剤師側の
だいています。この研修会をとおして薬薬連携がさらに
回答は、
「採用基準について知りたい」が29%、
「安定供
推進され、
お互いにより緊密な情報交換を行うことで、薬
給」が17%、
「情報量の多いメーカー」が12%、
「病院の
物治療を受ける患者さんの安全確保につながっていくこ
採用後発医薬品を採用してほしい」が9%、
「信頼性の
とを期待しています。
高いメーカー」が8%などでした。
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