Fate/Grand Mahabharata 幕間 月瑠 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ Fate/Grand Mahabharataの番外編です。 本編の方に投稿していたんですが、未だに小説投稿に手間取ってし まうので分かりやすく分けることにしました。 目 次 IF まさかのフラグ ││││││││││││││││││ イベント ほぼ週間サンタオルタさん │││││││││││ た英雄 │││││││││││││││││││││ 1 チ ョ コ レ ー ト・レ デ ィ の 空 騒 ぎ 第 X 節 苦 い そ れ は な ん の 味 IF ××× 11 20 ネタ ジューンブライド │││││││││││││││││ EXTRA 守護の英霊ルート ││││││││││││││ カルデアサマーメモリー 第X節 水浴びにはご用心 ││││ 41 51 56 36 │ IF まさかのフラグ クル族主催の競技大会。 カルナへ向けられた矛先を自分へと向けるために、パーンダヴァ兄 弟へと侮蔑の言葉を投げかけ、それに乗せられた主にビーマと嫌味と 罵倒の応酬を繰り広げ、残りの兄弟と野次馬全員がドン引きしてい た。 止めるべきなのかおろおろしていたカルナはふと、アルジュナが 黙ったままじーーーっとスラクシャを見詰めていることに気が付い た。 ⋮⋮心なしか顔が赤いのは気のせいか 何 故 だ か 嫌 な 予 感 が ひ し ひ し と す る。カ ル ナ が い い 加 減 ス ラ ク シャに止めるよう声を掛けようとした。 が、その前にアルジュナはツカツカとスラクシャへと近づき。かな そんな奴に何を⋮⋮﹂ りの至近距離でまたも彼を見つめる。 ﹁お、おい。アルジュナ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ りしめた。 ﹁妻になって下さい﹂ 競技場がシン⋮⋮││と水を打ったように静まり返った。 誰もが、それこそユディシュティラやビーマですら言葉を発せない ﹂ 中、その視線はアルジュナは勿論、スラクシャにもその視線は集中す る。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮はい 識に零れ落ちた問いかけの声に、アルジュナは誰もが見惚れるような 突然の求婚︵しかも罵り合ってたやつの弟︶に呆然としながら無意 ? 1 ? 無言のまま、アルジュナはスラクシャの両手を取り、しっかりと握 ﹁⋮⋮⋮⋮あの、なにか﹂ ? 笑顔を浮かべる。 あと今のはどう聞いても了承じゃなく疑問形 ﹁ありがとうございます。では、行きましょう﹂ ﹂ ﹁待て待て待て待て だ らせる。 なんでしょうじゃないだろ !? ﹁なんでしょう、兄上﹂ ﹁なんでしょう ﹂ に、ユディシュティラもアルジュナの肩を掴んで自分の方へと向き直 正気を取り戻したカルナが妹をアルジュナから引きはがすと同時 !! ﹂ ﹂ !? ﹂ !? おつけち ﹂ きゅうこんってなんでしたっけ、植物 ﹁落ち着け﹂ ﹁お、おちつけ、おちけ、ん ﹁⋮⋮ダメだな﹂ ? こん ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮あの、いま、いきなりきゅうこうんされたような⋮⋮きゅう スラクシャ。 カルナに頬をペシペシと軽く叩かれてようやっと魂が戻ってきた ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮はっ ﹁起きろ、スラクシャ︵ペシペシ︶﹂ ﹁そうじゃない ﹁妻にしたいと思ったからです﹂ ﹁何を突然求婚なんてしてるんだ カオス。その一言に尽きる光景だった。 揺さぶるカルナ。 長兄と、口から魂が抜けかかってる妹を動揺しているのかガクガクと 不満そうな顔をする弟にほぼ悲鳴同然の声をあげるパーンダヴァ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁スラクシャ、スラクシャ。起きろ。大丈夫か﹂ !? !! ?? 勿論呆れている訳ではない。心配しているだけだ。 魂 は 戻 っ て き た が か な り 混 乱 し て い る ら し い 妹 に た め 息 を 吐 く。 ? ? 2 !! ﹂ ﹁スラクシャ﹂ ﹁ひいっ 背 後 か ら 掛 け ら れ た 声 に 思 わ ず 悲 鳴 を 上 げ て カ ル ナ の 後 ろ へ と 引っ込むスラクシャ。その様子はまるで小動物のようで、はからずも ﹂ 周囲の野次馬をほっこりさせた。 ﹁な、ななななななんでしょう ﹁なんのつもりだ ﹂ ﹁どいてください。私は彼女に用があります﹂ 絶句するスラクシャをカルナが庇うように体で隠す。 ﹁﹂ ﹁ふふふ⋮⋮おびえる姿も可愛らしい﹂ ? ﹁バカッッ ﹂ ﹁⋮⋮しまった﹂ ﹁やはり女性ですか﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮何故わかった﹂ ﹁女性ですよ。兄上こそ何を言っているのですか﹂ ﹁御者の子供に何を言う。大体、そいつは男だろう﹂ 見かねたビーマが声をかける。 ﹁待て。落ち着けアルジュナ﹂ がわかり、何といえばいいのか分からずに言葉に詰まる。 人の嘘を見抜くことに長けたカルナは、その言葉が本心であること ﹁そのままです。彼女を妻にしたい﹂ ? シャ。 そのスラクシャが女だと聞いて唖然とする兄弟たちをしり目にア ルジュナはもう一度彼││いや彼女の手を取る。 ﹂ ﹁もう一度、いえ、了承してくれるまで何度だって言います。私の妻に なって下さい﹂ ﹁いいいいいや、あのほら、あなた王子でしょう !? 3 ! う っ か り 口 を 滑 ら せ た カ ル ナ に つ い 後 ろ か ら 拳 を 決 め る ス ラ ク !!! ﹂﹂ ﹁どうとでもなります。なんなら、身分を捨ててもいい﹂ ﹁﹁アルジュナァアアアア た。 ﹁冗談ですよね ﹂ ﹁本気ですよ。この場で我が父に誓いますか ﹂ ? !? ﹂ !! ﹂ 愛に理屈は通用しないという﹂ ﹁だったら同じ顔のカルナでもいいでしょう ﹁やめろ﹂ シャの頭を軽く叩いた。 石に最後の言葉は聞き捨てならないらしく、珍しくカルナがスラク 頭をかかえて嘆くスラクシャには同情の念しか浮かばない。が、流 !! ﹁惚れたからじゃないのか ﹁なんでアルジュナにはバレたんでしょうか⋮⋮﹂ れないと分からんなあ﹂ ﹁ふむ。確かに良く見れば女だな。兄と同じ顔をしているから、言わ 弟が全力で止めた。 スラクシャはアルジュナが連れて行こうとしたがカルナと他の兄 あの後、ドゥリーヨダナに食事に招かれた。 ﹁なんというか、災難だったな﹂ ﹁すまん⋮⋮﹂ ﹁胃が痛い⋮⋮﹂ ﹁││お友達からでお願いします それに思い当り、スラクシャは全身全霊、ヤケクソ気味に叫んだ。 こそ逃げ場がなくなってしまう。 こんな公衆面前の前で父││神であるインドラに誓われたらそれ ﹁やめて ﹂ に睨み返し、騒ぎの中心であるスラクシャは一気に顔を青ざめさせ ラクシャを思いっきり睨みつけ、カルナがその視線から妹を庇うよう まさかの発言に周りが一気にざわつく。パーンダヴァの兄弟はス !? ? 4 !! ﹂ ドゥリーヨダナは思わず想像してしまい、顔を引き攣らせながら苦 笑した。 ﹁スラクシャ。﹁お友達から﹂と言っていたが、どうする気だ ﹁どうしましょう兄上﹂ ﹁オレに聞くな﹂ ﹁ですよね﹂ ﹁︵仲が良いな︶﹂ ﹂ いえ、そうですね﹂ 遊びに来ました﹂ ﹁⋮⋮なんでいるんですか﹂ に現れたアルジュナに声にならない悲鳴を上げた。 昼食を作り終え外に出て洗濯をしていたスラクシャは、護衛もなし ﹁﹂ ﹁おはようございます。いい朝ですね﹂ ついていきたかったが、家事が溜まっているので断念した。 今日、カルナはドゥリーヨダナの元に出向いていた。スラクシャも ﹁⋮⋮そうでしょうか う。来た時にだけ適当にあしらえばいい﹂ ﹁まあ、あっちも王子だ。流石にそうホイホイと出歩きはしないだろ がしてドゥリーヨダナは微笑ましくなった。 仲睦まじい兄妹、しかも片方が妹とわかると一気に場が華やいだ気 ? スラクシャは思わず顔を覆う。普通、王子様が護衛もなしに、曰く 御者の子供の家に来るか ﹂ はい、大体同じものしかないですね﹂ ? !? 5 ? ﹁お友達から、でしょう ﹁護衛は ? ﹁邪魔なのでいりません﹂ !? ﹁⋮⋮服はそれしかないのですか ﹁え ? ﹁そうですか。では、こちらを﹂ そう言ってアルジュナがどこからか取り出したのは、明らかに高級 ﹂ 品と分かる女性用の衣服だった。 ﹁⋮⋮⋮⋮え ﹁着てください﹂ ﹁いや﹂ ﹁着てください﹂ 有無を言わせない笑顔に気圧され、スラクシャは渋々服を受け取っ た。 アルジュナに渡された服は白と薄い青が基調のシンプルな服だっ た。髪が赤いので似合わないだろうとスラクシャは思ったが、案外 しっくりきた。鎧のことも考慮されているのか、割と布の面積は少な く、その代わりに布を巻くような形になっていた。 何故かサイズがピッタリだったが、スラクシャは聞かないことにし た。 ﹁思った通り良く似合いますね﹂ ﹁ははははは⋮⋮﹂ 蕩けるような笑みを浮かべるアルジュナは、百人の女性が見たら百 人がオチるだろう確信できるほどの美青年である。 だが、スラクシャとしては乾いた笑みしか浮かばない。前世は男の 上に、数日前の騒ぎがすっかりトラウマになっているようだった。 え、どこに ﹂ ﹁では、行きましょうか﹂ ﹁は ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮え﹂ ﹁ほう。みすぼらしいですが、そこそこ品は揃っていますね﹂ 6 ? ﹁そうですね⋮⋮街にでも行きましょう﹂ ? ﹁︵今絶対にお店の人を敵に回したぞ︶﹂ あちこち店を覗きながら上から目線の発言をするアルジュナに、ス ラクシャは冷や汗をかきっぱなしである。 店の人達はその言葉にムッとした顔になるが、アルジュナが明らか に高貴さを感じさせる出で立ちなので何も言わない。賢明な判断だ。 スラクシャにとっては幸運なことに、街の人々はアルジュナの隣に いるのがあのスラクシャとは気づいていない。 むしろ、しっかりと手をつないでいることから恋人か何かだと思わ れているくらいだが、これは彼女にとって知らないでよかった情報で ある。 因みに手はアルジュナが無理やりつないだ。彼女自体は離してほ ﹂ しいと頼んだが笑顔のまま無言で手を思いっきり握られたので諦め た。 ﹁︵折れるかと思ったな⋮⋮︶﹂ ﹁そういえば、貴女は髪を結わないのですか スラクシャの髪は調度肩甲骨の辺りまで伸びていた。本人は身だ しなみを整えはするものの、オシャレをしようとは思わないので伸 ﹂ ﹁はぁ⋮⋮﹂ 時間が経ち、陽も傾き始めた。 ﹁名残惜しいですが、そろそろ帰らねばなりませんね⋮⋮﹂ ﹁そ、そうですか︵助かった⋮⋮︶﹂ スラクシャは強張った体からホッと力を抜いた。 玄関まで送ってもらい︵一応断った︶、そのままさようならも失礼だ 7 ? びっぱなしである。精々、邪魔になったなと思ってから切るくらい だ。 ﹁ええ。特に必要ありませんので﹂ 何か ﹁そうですか、よかった﹂ ﹁ ? ﹁いえ、なんでもありません﹂ ? と見送り位はすることにした。 ﹁ありがとうございます。また来ますね﹂ ﹁え、あ、えーっと、はい⋮⋮﹂ ﹂ ﹁それと⋮⋮失礼﹂ ﹁ 突 然 背 後 に 回 り 髪 に 触 れ た ア ル ジ ュ ナ に ス ラ ク シ ャ は 硬 直 す る。 そんな彼女に構うことなく、アルジュナは髪をいじっていた。 ﹁あの、﹂ ﹁できました﹂ アルジュナが離れ、サッと触れられていた部分に手を伸ばすと何や ら固いものが手に当たる。 ﹁これは⋮⋮﹂ ﹁髪留めです。持っていらっしゃらないようなので﹂ 言われてみると確かに、適当に伸ばしていた髪の毛が一纏めにされ ているのがわかる。 ﹁⋮⋮⋮⋮ありがとうございます﹂ ﹁気にしないでください。それより⋮⋮﹂ アルジュナはふと手を伸ばし、顎に手をかけ唇に触れる。 やられている本人といえば、その行動の意味が分からずに疑問符を 浮かべるばかりである。 ﹁ふむ⋮⋮。どうせなら紅も持ってくるべきでしたね。次はお持ちし ます﹂ ﹁勘弁してください⋮⋮﹂ ﹂ これ以上どう着飾るきなのかと、スラクシャは考えただけでげんな りした。 ﹁⋮⋮これで友人になれましたか ら﹂ ﹁︵マジでそのために来たのか︶そうですね⋮⋮友人になりたいのな ? 8 !? ﹁隠し事はしないで欲しいですね﹂ ﹁何を悩んでいるかはわかりませんが、それを話してもいいと思える ようになったなら友人⋮⋮親友にはなれるでしょう﹂ アルジュナは大きく目を見開く。 一瞬、その黒い瞳が大きく揺れたが、それを誤魔化す様に微笑んだ。 ﹁⋮⋮ありがとうございます。それでは、また﹂ 因みに戻ってきたカルナに着飾った姿を見られ、問い詰められて全 て白状することになったうえに、何処に行くにしても連れまわされる ことになったのは別の話である。 ﹁⋮⋮⋮⋮余り奴と喋るなよ﹂ ﹂ あるから。ただ、その時の彼女はカルナの後について回り、それ以外 には関わろうともしない、無表情だった。 スラクシャが女だとわかったのは偶然だ。たまたま、カルナとの会 話を聞いてしまったのだ。 それでも自分には関係ないと思った。 9 ﹁善処します⋮⋮するから離して、背骨折れるぅうう⋮⋮ 閉じこもってカギをかける。 そして││ ﹁クッフッフ⋮⋮⋮⋮アッハッハッハッハ 誰もいない部屋で1人、笑った。 ﹁ああ⋮⋮やはり、欲しいな﹂ 妻に迎えたいと思ったのは本当だ。 ﹂ パーンダヴァに戻ったアルジュナは兄弟たちの追及を躱し、自室に ! 1目惚れではない。師の元で修業をしている時に何度も見た事が !! だが、あの競技大会でカルナを庇い、自ら矢面に立った姿に何故か 心が震えた。 アレが欲しいと思った。 そのために一番手っ取り早いのが、妻に迎えるという形だったの だ。 ﹁贈ったものの意味を、アレは知らないだろうな⋮⋮﹂ 髪飾りは綺麗な髪を乱してみたい 紅は唇を吸ってみたい 衣服はその服を着たあなたを脱がせてみたい それらすべてを送ると⋮⋮貴女のすべてが欲しい。 アルジュナは、彼女の手の、髪の、唇の感触を思い出し、それらに 触った右手を自分の口に当て、うっそりと笑った。 10 イベント ほぼ週間サンタオルタさん クリスマス。 本来はイエス・キリストの生誕祭だが、いまではそれに便乗したた だのお祭りだ。このカルデアで真剣に祈るのはおそらくジャンヌと 天草四朗くらいだろうか。 その幾日か前。 ﹁プレゼント⋮⋮プレゼント⋮⋮何を渡せば⋮⋮﹂ 食堂でうんうん悩んでいる私ははたから見たら異常だと思う。 だが勘弁してほしい。何も思いつかない。 せめて前々から準備しておけば何とかなったのだろうが、生憎クリ 私がクリスマスを祝うの何年ぶりだと スマスのことを思い出したのは今日だった。 なんで忘れてたかって 思ってるんだ。古代インドにクリスマスなんてイベントあるわけも 無し。 聖杯の知識があれば話は別だったんだろう。しかし聖杯知識のな い私は遠い前世の知識で現代のソレを補っている状態だ。 しかも座で数千年も経っている。忘れたって仕方ないだろう。 ﹁むう⋮⋮﹂ ﹂ ? ﹁何を悩んでいるのかね﹂ ﹁ああ⋮⋮実は、クリスマスのプレゼントが思いつかなくて⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮あの2人か﹂ そう、カルナとアルジュナ。 色んな意味で難しいあの2人の顔を思い浮かべたのか苦笑いを浮 かべるエミヤに、ため息を吐く。 ﹁⋮⋮何も物に限定せずとも、例えば手料理などを振る舞えば喜ぶの 11 ? そこにいるのはスラクシャか あ、エミヤ﹂ ﹁ん ﹁ ? 顔をあげると、そこには赤い外套に褐色肌の英霊エミヤ。 ? では ﹂ ﹁手料理⋮⋮因みに、クリスマス当日の夕飯の予定は ﹂ ﹁却下で﹂ ﹁何故だ ﹂ !! 最後に何か言いましたか ﹂ ? ﹂ ごにょごにょごにょ ﹂ ﹁︵モフモフ⋮⋮︶な、なるほど。それでは少々ベタだが⋮⋮﹂ し。アルジュナは腕出してますし﹂ ﹁いや、兄はホラ、最終再臨にもなってあのモフモフもなくなりました ﹁は ﹁寒そう﹂ あ。 そこからなにか思いつく事⋮⋮。 兄と弟、2人の様子を脳裏に思い浮かべる。 ﹁思いつく事⋮⋮﹂ ﹁そうだな⋮⋮普段の様子から、なにか思いつく事などはないのかね﹂ だ。 しかし本気で思いつかないのだ。正直、ネコの手も借りたいくらい 腕を組み、考え込むエミヤに申し訳ない気持ちになる。 少々無理があるか﹂ ﹁い や。⋮⋮ し か し、言 わ れ て み れ ば 御 馳 走 が 2 回 続 き と い う の は ﹁ ⋮⋮いや、むしろ狂喜乱舞するのでは︵特に弟の方が︶﹂ ﹁買い被ってくれるのは嬉しいのだが⋮⋮君が作った方が彼らは喜ぶ でください を持つご自分と、あくまで一般的な腕しか持たない私を一緒にしない ! !? ﹁そんなバカ高いハードル飛び越えられませんよ プロ並みの実力 だ。無論、他にもチキンは勿論、クリームシチューやケーキを﹂ ﹁緑茶やダビデ王とオケアノスの海に繰り出して魚を確保するつもり ? ? ? 12 ? ﹁なるほど⋮⋮でも重すぎやしませんか ﹂ ﹂ ! ﹂ ﹂ まり時間がないからな﹂ ﹁はい 出来た クリスマス当日。 ﹁⋮⋮っ 顔が輝くのが自分でもわかった。 ! ﹂ ﹂ !! 土煙の中、出てきたのは⋮⋮ ﹁⋮⋮え。せ、セイバーオルタ 何ですかそのカチューシャ ﹂ ! ? プレゼントを届けるサンタオルタだ ﹂ ﹁今の私はセイバーではない。ライダーだ。そして、子供たちに夢と る。 ないと判断し、何故かミニスカサンタ衣装のセイバーオルタに向き直 ロマンが泡吹きそうだなあ、と遠い目をするマスターには何の非も ﹁アハハハハ⋮⋮。ごめん、スラクシャ﹂ ター 何ですかその格好は。それに、マス しつつも体は反射で臨戦態勢を取る。 突如聞こえてきた宝具名と、崩れる、いや、ぶっ飛んだ壁に唖然と ﹁ ドォオオン⋮⋮ ﹁エクスカリバー、モルガーン ﹁あとは渡すだけですが⋮⋮あの2人はどこに﹂ スしてもらってからずーっと部屋にこもって作ったかいがあった。 なところで役に立つとはさすがに思わなかった。エミヤにアドバイ 間 に 合 っ て 本 当 に 良 か っ た ⋮⋮⋮⋮ 生 前 の 家 事 ス キ ル が こ ん ﹁いや、例には及ばんさ。だが急いだ方が良いぞ。クリスマスまであ ず ﹁そういうものですか⋮⋮ありがとうございます お礼はいつか必 ﹁いや。むしろそうすべきだ。その方が彼らも喜ぶだろう﹂ ? ! ! !! !? ! 13 ! !!?? ﹁あっ、はい﹂ 文句を言おうとしたが勢いに押されて何も言えなくなった。良く わからないは彼女はサンタクロースらしい。そういえば後ろにソリ がある。 ﹂ ﹁⋮⋮それで、私の部屋を破壊した理由は﹂ ﹁む、そうだったな。来てもらうぞ ちょ、力強っ⋮⋮﹂ したそれを掴むことができたのは僥倖だった。 ﹁⋮⋮マスターはトナカイとして連れまわされてると﹂ ﹁うん⋮⋮﹂ ﹂ ? ﹁トナカイがサンタと共にいるのは当然のことだろう﹂ ﹁はあ⋮⋮。それで、何で私は連れてこられたんでしょうか しかも部屋まで壊されたんですけど。 ﹂ ﹁プレゼントだ﹂ ﹁は ﹂ ﹂ 腕を掴まれ、簡単にソリの上に放り投げられる。咄嗟に先ほど完成 ﹁答えになってないです ! ﹁⋮⋮スラクシャがプレゼントって事 ﹁は どういうことなの ? 何してんのあの劇作家 ﹁⋮⋮⋮⋮がんばって﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ うるさい。執筆のジャマだ、なんとかしろ ﹄⋮⋮だそうだ﹂ ﹁お願いはこうだ。﹃どこぞの昼ドラ兄弟が妹︵姉︶の姿が見えないと ! ﹁それからウィリアム・シェイクスピア君﹂ 何してんのあの童話作家。 な。P.N 作家同盟会員、アンデルセン君からだ﹂ ﹁その通りだ。今回の﹁お願いサンタさん﹂レターは⋮⋮雪原からだ !? ! 14 ! ﹁プレゼントを届けるのがサンタの仕事だ﹂ ? !? 探してたしある意味丁度いいんだろうけど、なんでだろう、胃がす ﹂ ﹂ ﹂ ごく痛くなってきた⋮⋮。 ﹁ふっ ﹁せえっ ﹁さあ、到着だ ﹁⋮⋮なんかすでに凄いことになってるんだけど﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 顔を覆ったまま何も言えなかった。 ねえ、何やってんのあの2人。何でクリスマスまで喧嘩してるの ファー ス ト フォ リ オ まったく、危うく座に強制帰還させられ そろそろ私の胃は限界が来そうだよ ﹁ふむ、ようやくご登場か ﹂ ? ﹂ 私の勘があの2人に対して、この劇作家︵愉快犯︶の ! そして被害がすべて私に来るとも ﹂ 初めは関係ないだろうと放っておいたがもう インスピレーションを得ようとわざわざここまで来たと ﹂ ﹁インスピレーションを得るためにわざわざかまくらを作ったの 我慢ならん いうのにあの始末 ﹁そうだ ﹁⋮⋮ようは、あの2人を止めたらよいのですね﹂ !! やったら最後、今以上に拗れると言っている︵特にアルジュナが︶ 宝具を使わせたらダメだと言っている セェーーフ 発動させようと思ったのですが⋮⋮いやあ、実に残念です ﹁あと5分遅かったら﹃開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を﹄を るところだった ! ﹂ はストーブとこたつ︵線はない︶、さらにみかんまである。 何だこの快適空間。 ﹁これ、2人が作ったの ﹁酷いですなマスター 無論、あちらで争っている施しの英雄殿に ? ! 15 ! ?? ! !! マスターの目線の先にはそこそこの広さを持ったかまくら。中に ? !! ! ! !! ! ! ! やっていただきました﹂ じゃあ、何であの2人はあんなことに﹂ ﹁なに人の兄パシってんですかぶっ飛ばしますよ﹂ ﹁⋮⋮え 曰く。 ﹂と言って戦闘になったらしい。 ﹂ ! ちょ、がんばってね、スラクシャー !! な。では行くぞ、トナカイ ﹁ええ ﹂ ﹁む、そうか。プレゼントは届けたし、ここで私の役目は無いようだ じゃん。 飽きてターキー食べるなよ、チキンの匂いが届いてお腹すいてきた べているサンタクロースはもう行っても大丈夫です﹂ ﹁そうですね⋮⋮。あの2人は私がとめますので、そこでターキー食 ﹁ははは⋮⋮。まあ、とにかくあの2人を止めよう。﹂ ﹁なんか⋮⋮なんかすいません⋮⋮﹂ 結論:私のせい。 だ 兄が私の居場所を把握してないことがわかると﹁なんで知らないん とアルジュナが強襲してきた。⋮⋮⋮⋮私を探しに。 カルナに頼んでかまくらを作ってもらい、中で執筆作業をしている ? ﹂ ! ら﹂ アンデルセンが言うには、ケンカの原因は私らしいが⋮⋮たった数 いる兄弟のみだ。 作家 2が雪原から去り、後に残ったのは私と、いまだに喧嘩して ﹁気 を 付 け て く だ さ い ね。今 晩 は エ ミ ヤ が 御 馳 走 を 作 る そ う で す か まれて生きていられる自信がありません あ。なにより、インドが誇る最強の英霊3体のぶつかり合いに巻き込 ﹁あのまま放っておけば、この辺り一帯が更地となりかねないですな ておけ﹂ ﹁⋮⋮はぁ。オレはカルデアに戻るとするが、あの2人はなんとかし マスター、体が半分そりから出てたけど大丈夫かなアレ。 !? × 16 !! 日姿が見えないくらいで大げさな。別に仲良く喧嘩とか羨ましいっ ラー ド ヘー ヤ て思ってないからな。 ﹁さて⋮⋮﹃英雄の手綱﹄﹂ ﹂ 愛用の戦車を呼び出し、丁度あの2人にぶつからない真ん中あたり に狙いを定める。 ﹂﹂ ﹁喧嘩⋮⋮両成敗ィイイイ ﹁﹁ 辺りを更地にするつもりですか ﹂ 戦車で突っ込んでくるなど、何を考えている。危険だろう﹂ ﹁あね、っ、スラクシャ つい数秒前の自分たちを振り返ってから言えと。 ﹂ して。⋮⋮アルジュナは私を探していたようですが、何か用事でも ﹁カルナの施しは、まあ、いつものことですから後で言わせてもらうと ! ﹁ ないし、たぶん大丈夫だろう。 が一撥ねたとしても魔力放出はしてないしブラフマーストラもして 2人を引かないように注意しながら全力で間に割り込む。まあ、万 !! ﹁その台詞、そのままそっくりバットで打ち返しますよ﹂ ! ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮で﹂ ﹁ ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮数日前から、姿が、見当たらなかったので⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮えー、と。心配、してくれた、と ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 何だこの可愛い生きもの︵弟︶。 の可愛い生きもの︵2回目︶。 るのか恥ずかしがっているのか目元と耳を赤くさせて⋮⋮なんだこ え、ちょっと可愛すぎないですかねこの子。目を逸らして、拗ねて ? 17 !!?? ! ? ? チラチラこっちを見てくる子猫を撫で回したいような衝動に駆ら れたが、グッと我慢する。 ﹁ふぅ⋮⋮。折角のクリスマスですし説教はやめにしましょう。今度 からは私が見つからなくても暴れないでくださいね。ドクターの胃 が死にますから﹂ セプテムのSA☆MU☆RA☆I騒動は凄かった。そして酷かっ た。祭りで調子に乗って歴史に残るとか笑えない。 ﹂ ﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂ ﹁返事は 何不満そうな顔してるんだ ⋮⋮あ﹂ これ以外に思いつかなかったんだ のカーディガン︵赤&黒、青&白︶だ。 ベタとかいうな ﹁クリスマス⋮⋮ということは⋮⋮﹂ ! 近いですアルジュナ離れて 怖いんだけど ﹁近い近い ﹂ ﹁スラクシャ。それを誰にあげる気ですか今すぐに教えなさい﹂ !! カルナの視線の先には2人にプレゼントしようとした⋮⋮手作り ﹁え ﹁スラクシャ、それはなんだ﹂ なんなんだ。 思わず声を上げれば渋々と言った様子で2人は返事をした。 ! !? ! ﹁これはアルジュナに﹂ せて。 捨ててもらって∼の﹁捨て﹂の時点で奪われた。いや最後まで言わ ﹁貰う﹂ らないなら捨て﹂ ﹁はいはい。兄上の為に時間を使うことは全く無駄じゃないので、い ﹁⋮⋮無駄なことに時間を使うな﹂ ﹁はい﹂ ﹁⋮⋮作ったのか﹂ ﹁誰にって、2人にですよ。こっちが兄上です﹂ !? ! 18 ? ﹁ ⋮⋮いいのですか 大変満足である。 ﹂ 実は仲良し 喜んでるのかは分からないけど、ちゃんと受け取ってもらえたので ﹁⋮⋮ありがとうございます﹂ ﹁⋮⋮そうか﹂ る時とかにどうぞ﹂ ﹁まあ、レイシフトの時に着けていくわけにもいかないでしょうし、寝 だろお前ら 貰ってくれるのは嬉しいけど最後まで言わせろよ ﹁貰います﹂ ﹁はい。⋮⋮あ、やっぱり私からのなんていら﹂ ? 12秒後、自分たちは何も用意してないと落ち込む2人を宥めるの に時間がかかった。 19 !? ! ! IF た英雄 矢がもう、すぐそこまで迫っている。 覚悟を決め、アルジュナ達のいる方へ目を向けたその時││ ドシュッ ﹁⋮⋮⋮⋮え﹂ フッ、と割り込んできた白い影。矢が突き刺さる音。 そこにいたのは、いた、のは、い、た、のは、あ、あぁ、ああああ あああああああああああああああああああああああ。 違う、ちがうちがう違う違うちがう違う違うちがう違うちがうちが ういるわけない、こんなところにいるはずがない、いるわけがない ﹂ だってだって確かに眠らせたのになんでここに嘘だうそだうそうそ うそうそうそうそだ ﹁カ、⋮⋮ル、ナッ⋮⋮ ﹁っ、ぁ││﹂ アああ ﹂ ﹁││っ、ぁあ゛アああ゛あアあアァア゛アあ゛あああぁ゛ああア゛ ││力尽きた手が、そのまま地面へと落ちた。 小刻みに震える手を伸ばし、私、の頬に触れ、微笑む。 ナの口からはヒューヒューと細い息が漏れるばかり。 何か言いたげに、口を動かす。慌てて傍に膝をついた、でも、カル こちらに目を向ける。 俺に、私に、突き刺さるはずだった矢を首に受け、崩れ落ちた兄が、 ! 20 ××× !!!! アルジュナは茫然としながらその光景を見ていた。 ││どういうことだ、倒れているのがカルナだというなら、今まで そこにいたのは ﹁スラクシャ、か。入れ替わってたなんて、私ですら気が付かなかっ た﹂ クリシュナの言葉に、冷えた頭のどこか冷静な部分が納得する。確 かに、この2人はよく似ている。色さえ誤魔化せば、入れ替わること はわけないだろう。 そして、悲痛、という表現では生温い叫びをあげ、カルナを抱きし めるスラクシャの姿に、胸がひどく傷んだ。 ﹂ 普段の彼にここまでの力はない。カルナが死んだという事実が、彼 21 何を言おうとと思ったのかは分からない。ただ、衝動的に声を掛け ようとした。 ﹂ 次の瞬間だった。 ﹁││││ッ ﹁くっ⋮⋮ その目に普段の光はなく、ただただ絶望に満ちていた。 撃してくる。 そしてその姿をアルジュナが認めた途端、彼は地を蹴り、無言で追 だった。 涙を流し、殺気を放ちながら短剣を突き立てているスラクシャの姿 慌てて体制を整え、前に向き直るとそこには││ 凄まじい殺気にその場を飛び退く。 !! 咄嗟にガーンディーヴァで受け止める。余りの衝撃に手が痺れる。 ! ﹂ 女の箍を外したようだ。 ﹂ ﹁⋮⋮ろす、殺すッッ ﹁⋮⋮ !! ﹂ し動きを封じた。 ﹁離せ、離せ、離せぇええええええええ ﹂ ! はようやっと正気に戻る。 ﹂ ﹁っ、クリシュナ、彼を⋮⋮どうするつもりですか﹂ ﹁このまま連れて行くよ。この子なら捕虜としても十分⋮⋮うん ふと、クリシュナは腕の中のスラクシャを見つめる。 暫らく見つめ続け、それから ││とても、とても愉しそうに、わらった。 ﹂ ぐったりとしたスラクシャを抱えたクリシュナを見て、アルジュナ まった。 無防備な首筋に手刀を落とされ、スラクシャは気絶させられてし ﹁ぁ⋮⋮ ﹁うわあ。完全に理性がトんでるね⋮⋮ま、いいか﹂ !!!! いつの間に背後を取ったのか、クリシュナはスラクシャに手を伸ば ﹁ ﹁おっと、それ以上はいただけないな﹂ ││⋮⋮いっそ、このまま、 霊し、矢をつがえる事すらできない。 アルジュナは反撃しようとした。が、その度に先の悲鳴が脳裏に木 ! パーンダヴァでは盛大な宴が開かれた。カウラヴァの中で最も厄 た。ドゥリーヨダナも最後まで戦ったが、とうとう討たれた。 それから、パーンダヴァはクルクシェートラの戦いで勝利を収め ? 22 ! 介だったカルナ殺し、スラクシャを捕らえた英雄としてアルジュナも 参加していた。 表面上は普段通りの彼だったが、その内心は黒いもやが渦巻いてい た。 スラクシャはもう、目を覚ましただろうか││ 親友が連れて行った宿敵の弟の姿を思い浮かべると、あの悲鳴が聞 こえてくる。 アルジュナはそっと頭を振ってそれを追いやった。 そうして宴も終わり、夜も更けたころ、アルジュナを含む5人の兄 弟は母親であるクンティーに呼び出された。 ﹁母上、どうしましたかこんな夜更けに﹂ 長兄であるユディシュティラが代表して聞くが、クンティーは顔を 青くさせたまま中々口を開かない。 やがて意を決したのか、震える声で打ち明けた。 ﹁⋮⋮言わなければならないことがあります﹂ ﹂ ﹁カルナとスラクシャは⋮⋮あなたたちの兄弟です﹂ 頭が真っ白になった。 ﹁は、母上、何をおっしゃるのですか てた事を、戦いが始まる前にクリシュナの協力でカルナに会い、カル ナがアルジュナ以外の兄弟を殺さないと誓ったことを全て話した。 もっと早く言ってくれれば ﹂ ﹁⋮⋮スラクシャには、最期まで会うことは叶いませんでしたが⋮⋮﹂ ﹁何故、今更⋮⋮ !! サハディーが泣き崩れる。 23 ? クンティーは過去に自分が犯した過ちを、カルナとスラクシャを捨 ? ユディシュティラが母を責める。ビーマが呆然とする。ナクラと ! そして ﹁││││っ ﹂ アルジュナは走り出した。 アルジュナは息を切らし、クリシュナの部屋の前まで来ていた。ス クリシュナ ﹂ ラクシャのことを聞く為だった。スラクシャに、会うためだった。 ﹁はあ、はっ⋮⋮っ、クリシュナ、いますか 部屋の扉を激しく叩く。 が、返事はない。 ﹁⋮⋮くっ﹂ !? ﹁ ﹂ ガチャ もう寝てしまったのかと、明日にでも出直そうかと考えた。 ! どうしたんだい、こんな時間に﹂ スラクシャはどこですか るクリシュナの姿があった。 ﹁クリシュナ ﹂ !! ﹁静かに。⋮⋮疲れてるみたいだから、寝かせてあげよう﹂ てる。 そんなアルジュナに構うことなく、クリシュナは人差し指を唇に当 ││ぞわり。と、怖気が走った。 情をする。 目の前の親友はパチパチと目を瞬き、愉快でたまらないといった表 ! 24 !! ? ハッと顔をあげると運動でもしていたのか、髪を乱し汗をかいてい ﹁アルジュナ ! ﹁⋮⋮⋮⋮え﹂ 言っていることが良く分からず、聞き返そうとした。その時、見え た。 ﹂ クリシュナの部屋。寝台の上に、酷く乱れた赤い髪と、投げ出され なにを た白い手が。 ﹁││││ ﹂ 彼女はあくまで捕虜なんだしね﹂ ﹂ クンティーは言わなかったのかい ﹁そんな││待て、かの、じょ ﹁⋮⋮⋮⋮あれ ﹁スラクシャは女の子だよ﹂ まった。 兄弟だと知らぬままに罵り、傷つけ、片割れを目の前で殺してし 姉に会うのが怖いだけなのだ。 出来ず、結局引き返した。 地下牢まで何度も足を運んだ。しかし、入り口から先に進むことが だ。 だから、会いに行けないのではない。会いに行く勇気がないだけ 下牢で自害できぬように拘束されていると聞いた。 常にクリシュナの部屋にいるという訳ではないらしい。普段は地 降、1度もスラクシャに会おうとはしていない。 あの後、アルジュナは逃げるように自分の部屋へ戻った。あれ以 ? ﹁構わないだろう ! ││挙句、彼女は戦士としても女としても辱められた。 25 ? ? ? ! そうして今日もまた、こうして足を運んでいる。 ﹁︵どのような顔をして会えというのだ⋮⋮︶﹂ 扉に手を掛けるが、開かない。開くことが出来ない。どうしても、 そこから1歩も先に進めない。 そうして、今日も何も出来ぬまま引き返そうとした。 ﹂ │││││。 ﹁っ ほんの微かだが、それでも確かに声が聞こえた。何と言ったかまで でも、会う 会いたく は聞き取れなかったが、アルジュナは自分が呼ばれているとわかっ た。 入り⋮⋮││ ﹂ !! ゆっくりと開いた。 ﹁⋮⋮⋮⋮スラクシャ ? 何故か鍵のかかっていないそれは、重く錆びついた音を立てながら ? ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ しかし、私は、やめる じっと、扉を見つめる。 ││入るか ? アルジュナは意を決し、目の前の扉を開ける。 ED1 壊れた英雄 そうしてアルジュナは││。 ない、会いたい││ ? 26 ! ﹁⋮⋮ぁ、⋮⋮ ﹂ 何故こんなに⋮⋮食事はどうしたのです れ、慌てて駆け寄った。 ﹁っ !? ﹁食べてください ﹁⋮⋮⋮⋮っ﹂ さあ ﹂ ! ﹁││││っ ﹂ ﹁何度も、来ていたでしょう 気付きますよ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮気づいて、いたのですか﹂ ﹁あ、⋮⋮はは。やっと、入ってきましたね⋮⋮﹂ い。スラクシャはアルジュナへと視線を向けた。 それを何度か繰り返すと、ようやく喋れるほどまで回復したらし 口へと注ぎこんだ。 アルジュナは水を掌へとこぼし、少しずつ、少しずつスラクシャの 見ると、水も飲んでいないようだった。 それ以前に、口を開こうとするたびにわずかに顔を顰めているのを が、飲み込むどころか噛むことすらできない。 暫らくぼんやりと差し出された食事を見つめ、わずかに口を開いた ! ゆっくりとスラクシャを寝台に横たえ、食事を手に取って戻る。 放置された貧しい食事と水差し。 焦点が合ってない彼女の視線の先を見れば、扉のすぐ横にポツンと ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ 朦朧とした目を向けるスラクシャに、アルジュナは先の躊躇など忘 れている彼女の姿。 真っ先に目に飛び込んだのは、牢にそぐわない豪華な衣服を着せら ? ? ! まるで子供にするように撫でる。 ﹁っ、申しわけ、ありませんでした⋮⋮ ﹂ 弟を拒否することなく彼女はゆっくりと腕を上げアルジュナの背を、 されたような姿勢になったが、下心などは一切なく、縋り付いてくる 力が入らない彼女はそのまま後ろへと倒れ込む。意図せず押し倒 いた。 微笑む彼女を見て、アルジュナは耐え切れずにスラクシャへ縋り付 ! 27 ! ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁知らなかったとはいえ、私達は、彼奴を、あなたを⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮誰から﹂ ﹁母、です﹂ その答えに、僅かにスラクシャの方が揺れた。 が、すぐに撫でるのを再開する。 ﹁⋮⋮⋮⋮ごめんなさい﹂ ﹁え⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁戦の前から知っていました。それでも、そちらに着くという選択肢 を蹴って敵対したのは私たちです﹂ ﹁貴方がたに、貴方に責任はありませんよ。むしろ、ごめんなさい。守 れなかった苛立ちを、貴方にぶつけてしまいました﹂ っ、ぁ﹂ 28 ﹁⋮⋮ごめんなさい﹂ ﹁⋮⋮⋮ その度に、アルジュナは目を見開く。それを見るたびに、彼女は、ア いようにと必ず言って聞かせた。 スラクシャはわがことのようにそれを喜んだが、決して無理はしな そのほとんどが、何を得た、何を成し遂げたという成功談ばかりで。 そしてその日に会ったことを話す。 か、あるときは甘いものを。あるときは花を毎日、毎日持ってくる。 窓1つ無い牢の中にいる姉を、少しでも楽しませようとしているの その代りと言わんばかりに、アルジュナは牢を訪れる。 にもいかないだろうとスラクシャ自らが断った。 最初はここから出すと言っていたが、流石に敵将を自由にするわけ それから、アルジュナは毎日スラクシャの元を訪れた。 つづけた。 服がぬれたような気がしたがスラクシャは何も言わずに、背を撫で ! ルジュナがどれだけの期待に晒されているのか実感した。 どんな天才にも、無理のないように言って聞かせるのは当たり前 だ。心配しているのだから。 なのに弟は、そんな当たり前のことを言うたびに驚き、嬉しそうな 顔をするのだ。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 回りの人間は、一体アルジュナの何を見てきたのか。 考えてもわかるはずがない。なら、彼がここを訪れなくなるまで、 せめて声をかけ続けようと思った。 ふと、複数の気配が近づいてきた。 アルジュナは今日はどうしても来られないと、酷く残念そうな顔を していたので彼ではないだろう。勿論、他の兄弟でもない。 と大きな音を立てて扉が乱暴に開かれる。 そして││││殺気。 バン ﹂ 雪崩れ込んできたのは複数のパーンダヴァの兵士だった。 ﹁⋮⋮⋮⋮なにか御用でも ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 兵士たちは答えない。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮は、はは﹂ 防げても、またすぐに斬られて終わりだ。 咄嗟に腕を前で交差させるが防ぐことはできないだろう。運よく 剣を抜き、大きく振りかぶる兵士。 ⋮⋮対抗するすべはないだろう。 いたせいで筋力も落ちている、戦士ですらないただの女だ。 今のスラクシャは足の腱を切られ、ずっと牢に閉じ込められ続けて ﹁⋮⋮⋮⋮はぁ﹂ ナが捕虜の元に毎日足を運んでいるのだから。 王子が、それも誰よりも期待され、それに応え続けているアルジュ 実を言うと予想はしていたのだ。 ただひたすらに殺気を向けてくる。 ? 29 !! 死が間近に迫った時、周りの景色がゆっくり見えるという。 ⋮⋮何故、抵抗しないのか。意味がないから 違う、壊れているからだ。カルナが死んだ時から既に壊れてしまっ ていた。生きることにも、殺されることにもなんの感慨もわかない。 アルジュナが居れば、別だっただろう。生きたいと思ったかもしれ ない。しかし、この場に彼はいなかった。 ﹁ごめん⋮⋮⋮⋮﹂ 最期に思い浮かべたのは、嬉しそうに笑う弟の姿だった。 ︵ごめんね、ありがとう︶ ED2 壊された英雄 遠ざかっていく気配にスラクシャは一抹の寂しさを覚え、ため息を 吐く。 毎日牢の前まで来ては、扉を開くことなく去っていく弟。仮に扉を 開けてくれたとしても自分がどうしたいのかスラクシャにはわから 30 ? なかった。 ﹂ ⋮⋮もしかしたら、アイツ以外の誰かと会いたかっただけかもしれ ない。 ﹁││││っ 寝台の上で体を丸め、ギリッ⋮⋮と歯を食いしばる。 カタカタと体が震えだすのを両肩に力の入らない爪を喰い込ませ ることで抑えようとする。 目を覚まして真っ先に目に入ったのはクリシュナの姿で、次の瞬間 にはそのまま上から抑え込まれた。 抵抗はしたがどうやってもその腕からは逃げられず、スラクシャは 舌を噛み切ろうとした。 折角カルナが庇ってくれた命をすぐに捨ててしまっ ││││けど。 ﹁いいのかい て﹂ その言葉に息を飲み、一瞬だけ動きを止めてしまった。 その一瞬で││││ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ そこで彼女は思考を止める。目を閉じる。これ以上考えると頭が おかしくなりそうだった。 ⋮⋮いや、既におかしくなっているのかもしれない。 ぐちゃぐちゃにされたあと、気が付いたら既にこの牢に閉じ込めら 31 ! ? れていた。 何時の間に着替えさせられたのか、おそろしく豪奢な、窓1つ無い 薄暗い牢にはとても似合わない衣服を身にまとっていた。 手元に武器が無いとはいえ、すぐに扉を破ろうとした。 が、気絶している間に足の腱を切られてしまったらしく、立ち上が る事すらできなかった。 自害しようにも、クリシュナの言葉が頭を過り、できない。 それから食事は運ばれてくるが、誰も訪れることなく数日が経っ た。 毒が入っているかを確かめようともせずに食事を口へ運ぶが、どう しても嚥下することはできずに、結局運ばれてきたほとんどの量を残 してしまっている。 毎日毎日その繰り返し。その間、誰とも合わずにいる。 咄嗟にその声の主から距離を取ろうとするが、ただでさえ狭い寝 台、その上足の腱を切られているため、思うように体を動かす事が出 来ずに崩れ落ちてしまった。 ﹁ああ。ロクに動けないんだから、急に動いたら危ないだろう﹂ ﹁││っ、ぁ、⋮⋮な、⋮⋮し、に﹂ ﹁⋮⋮水も飲んでいないのか﹂ 声の主││クリシュナは入口のすぐそばに置いてある水差しを手 32 本人は自覚していないが、スラクシャの体も精神も、既にボロボロ だった。 ロ ク に も の を 考 え ら れ な い。頭 が 重 く、ぼ ん や り す る。体 が だ る い。 ﹂ 起きていることすら辛く、そのまま眠ってしまいそうだった。 ﹂ ﹁││││寝てしまったのかい ﹁││││││ ? 唐突に聞こえた声に、本能が警鐘を鳴らす。 !! に取ると、スラクシャの口元へと持ってくる。 ﹁ほら、口を開けて﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ スラクシャは口を閉ざし、クリシュナを睨み続ける。 ぁ、ぐ⋮⋮ ﹁仕方ないなあ﹂ ﹁がっ ⋮⋮ぐっ、おまえ⋮⋮ ﹁⋮⋮⋮⋮何しに来た﹂ ? ﹁っ ふざけるな どけ ﹂ スラクシャの顔に、隠しきれない怯えが走った。 し付けた。 そういうと同時に、クリシュナは彼女を手首を一纏めにし、壁に押 ﹁⋮⋮分かってるんじゃないかい ﹂ それどころか、逆に目を細め、笑みを深くする。 殺意を込めて睨みつけてもクリシュナは顔色一つ変えない。 ! シュナは彼女から手を離した。 ﹁っげほ、ごほ ﹂ 耐え切れずに口内の水を全て飲み込んだのを確認して、やっとクリ ようにする。 咄嗟に履きだそうとした口を手で塞ぎ、鼻を押さえて息ができない まま水を流し込んだ。 酸素を少しでも取り込もうと彼女が口を開けたのを見計らい、その クリシュナはスラクシャの喉を締め上げる。 ! ﹁あはは。そう怒らないでよ﹂ ! どけ、どけよっ ﹁いやだ﹂ ﹁くそっ ! ﹂ 弱ってしまっている今ではそんな抵抗など、クリシュナにとって無い に等しかった。 い ﹁あーあ。すっかり弱くなってしまって⋮⋮ちゃんと食事をとらない から﹂ ﹁動けないままこんなところに閉じ込められてたら当たり前だ !! 33 !? スラクシャは必死で拘束を振りほどこうともがくが、ただでさえ ! ! !! ! いからどけ ﹂ ﹁ひどいなあ。⋮⋮久しぶりに会ったんだから、仲良くしようじゃな いか﹂ そういうが早いが、クリシュナは首筋に顔を寄せ、強く噛みつく。 いや、っ ﹂ その感覚に、痛みに、目を覚ました時のことを思い出し、スラクシャ は恐怖に悲鳴を上げた。 ﹁やめっ、や、やだ、いやだ ! しそうに首を舐める。 やだ、カルナ、たす⋮⋮⋮⋮ が、次の言葉を聞き、ピタリと動きを止めた。 ﹁ぁ、かるな、カルナぁ⋮⋮ ! ﹃助けて﹄⋮⋮かな と笑うと彼女の耳元でささやいた。 ﹁なんて言おうとしたんだい を言う。だって﹂ ││カルナは君が殺したんじゃないか。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮あ﹂ ? ﹁そうだろう 死ななかったんじゃないか ﹂ 君がカルナの代わりに戦場に出たりしなければ彼は めるためにクリシュナは続ける。 目を見開き凍りついたように動かないスラクシャを、さらに追い詰 ひゅう、と息が止まった。 おかしなこと 無表情でそれを聞いていたクリシュナは、最期の言葉を聞き、薄ら ないことを言ってしまったように口を閉ざす。 最期の言葉を口にしかけた途端、スラクシャはまるで言ってはいけ ﹂ 嗚咽交じりのその悲鳴に、クリシュナはやめるどころかますます楽 ! ! ? ? 34 !! ? ﹁あ、ぁあ﹂ ﹁余計な事さえしなければ、カルナは勝てなかったとしても、戦士とし て戦って死ぬことはできた。でも、君を庇ったことでそれすらできな かった﹂ ﹁あ、あぁあ、あ⋮⋮﹂ ﹁彼 は 奪 わ れ 続 け て き た。そ の 分 君 が 与 え よ う と し た。⋮⋮⋮⋮ で 違うなら、何故君の父、スーリヤは君を助 ちがう。ち、が﹂ も、最期の最期で彼から奪ったのは君だったわけだ﹂ ﹁ちがう ﹁なにも違わないだろう けない。カルナは彼と一体化しているはずなのにだ。⋮⋮あの2人 も、君を疎んでいるんじゃないのか﹂ ﹁カルナを殺したのは、スラクシャ、お前だよ﹂ ﹁│││││││││﹂ スラクシャは悲鳴一つ上げず、光を失った虚ろな目からただただ涙 を流した。 いや、悲鳴はあげたかもしれない。ただ、声にならなかっただけで。 そんな彼女をクリシュナは優しく抱きしめる。 ﹁安心していいよ。君が父に、兄に嫌われていても、私がいるからね﹂ ﹁ねえ、スラクシャ。死んでも一緒に居ようか﹂ 35 ? ! チョコレート・レディの空騒ぎ 第X節 苦いそれは なんの味 バレンタイン。 日本では女性が男性に愛情の告白としてチョコレートを贈るとい う日である。 西欧・米国でも似たような行事があるが、別にチョコレートに限っ た話ではない。 またバレンタインデー限定という訳でもない。女性から男性へ贈 るのがほとんどという事、贈るものの多くがチョコレートに限定され ているのは日本のバレンタインデーの大きな特徴。 長々と話してしまったが、2月14日とはそういう甘酸っぱい日 だ。 ﹂ きるかわからん。いや、半神半人に転生した上にサーヴァントになっ てるんだから人生も何もないけど。 ﹂ ﹁太陽と月と星⋮⋮それに剣と、これは、竜 ﹁誰に渡すのですか ? からエミヤにジークフリートですね﹂ ﹁ああ、マシュさん。えー、マスターと兄上と、一応アルジュナ。それ ? 36 外から切り離され、時間の概念がないカルデアではそういう季節感 を感じる行事を欠かさずやっている。勿論バレンタインデーも過言 ﹂ ではなく、女性サーヴァント全員でマスターや縁のある男性サーヴァ ントにチョコを贈るべく張り切っている。 スラクシャのチョコレート、とっても綺麗だわ そう﹁女性サーヴァント全員﹂で。 ﹁あら ! まさかバレンタインにチョコを贈る側になるとは⋮⋮人生何が起 ﹁ありがとうございます、マリーさん﹂ ! ﹂ 改めて多いな⋮⋮言っておくけど恋愛感情じゃないからね。感謝 の方だからね。 ﹁何故アルジュナさんには﹁一応﹂なんですか ﹁受け取ってもらえるかわかりませんからね﹂ だといいのですが﹂ けてもらえるようにもなったし、大丈夫だよな。 ? た。 ﹁それでは、ジークフリートさんは ﹂ ケーキだったけど感動のあまり目頭を押さえたくらいに美味しかっ 初めて食べたときは感動した。その時のおやつはお手軽なホット らってますし﹂ ﹁エミヤにはいっぱいお菓子をもらってますから。作り方も教えても ﹁え、えーと、何故エミヤさんとジークフリートさんにまで ﹂ クリスマス以降、ちょくちょく視線を感じるし、少しだけど話しか ﹁そうですか ﹁確実に受け取ってもらえるので大丈夫ですよ﹂ ていうか甘いもの大丈夫かな。 クリスマスは受け取ってもらえたから多分、大丈夫だと思うけど。 ? ﹁それで剣とドラゴンですか﹂ 気持ちとして渡しておく。 話になりっぱなしだ。もちろんその恩はちゃんと返すが、まあ感謝の おかげで寂しくなかったし、良く鍛練にも付き合ってくれるしお世 色々話してくれましたし﹂ ないんですよね⋮⋮。それに、兄が来るまで気を使ってくれたのか ﹁彼、カルナとアルジュナを足して割ったみたいな感じで放っておけ ? なによ いきなり爆発だなんて、火加減間違 ﹁え え。⋮⋮ よ し、後 は 固 め て 箱 に 入 れ れ ば 完 成 で す ね。そ れ ま で ⋮⋮﹂ ボフン ﹂ ﹁きゃあああああ えたかしら ! ﹁おかしいわね⋮⋮もう少し柔らかくなると思ったのだけど﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ! ! 37 ? ? ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ⋮⋮⋮⋮タコ、と八連双晶 る⋮⋮ しかも異様に赤い。イチゴ味と誤魔 どうしてわかったんですか ﹁やっぱりマスターにですか﹂ ﹁は、はい ﹂ 決戦前にクリシュナと会ったときと同じレベルで危険を訴えてい なると本能が行警報をガンガン鳴らしている。 見なかったことにしよう。聞けば最後、確実にドクターのお世話に ﹁⋮⋮マシュさんのチョコレートは気合が入ってますね﹂ んな色になるんだ。 化すのが不可能なくらいに赤い。一体全体、どんなものを入れたらあ ? ください﹂ ﹁⋮⋮はい 起こして事情を説明してもらいたい衝動に駆られる。 色々ツッコみ所が多すぎるその配置と状況に今すぐにでも2人を 右にカルナ。左にはアルジュナ。 ﹁どういう⋮⋮ことだ⋮⋮﹂ 元で、ついうたた寝をしてしまったらしい。 食堂を出てからフラリと立ち寄ったそこ。ひときわ大きな木の根 うに色々再現したらしいがここまでするとは。 今は冷凍されている者達も含め、マスターがストレスを感じないよ 現している。 超・リアルなVR的な奴だが森林特有のにおいも木漏れ日も完璧に再 カルデア内の共有スペースの一つである森林。勿論本物ではなく、 ﹂ ﹁きっと、喜んでくれますよ。私は終わったので戻りますが、頑張って ﹁先輩、喜んでくれるでしょうか⋮⋮﹂ 表情をしているんだ。そりゃわかる。 そんなに楽しそうというか、幸せそうというか、とにかくかわいい ! ! が、抱き枕のごとく兄にホールドされ、手はしっかり弟に握られて 38 !? ! いるため起きるに起きられない。 なぜ起きなかった私。そしてなぜ一緒に昼寝してるんだこの2人。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 暫らく悩んだ末、だした結論は││ ﹁⋮⋮⋮⋮寝よう﹂ 考えるのをやめる事だった。 ││死んでいる、そう思った。 木の根元で体を横たえる赤い髪に息が止まった。慌てて駆け寄り、 確認する。 ﹁︵││息がある︶﹂ ﹁静かにしろ。起きてしまう﹂ ハッと横を向くと白い男の姿。 ﹁⋮⋮カルナ﹂ ﹁貴様らしくないな﹂ オレに気が付かないとは。 そういう宿敵に何も言い返せない。すぐ傍に居たのに、声を掛けら れるまで気付かなかったのだ。戦士としては致命的である。 同時に、ここまで接近したのに彼女が起きない理由もわかった。カ ルナが傍に居ることに無意識に安心しているのだ。 ﹁⋮⋮死んでいると思ったか﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮オレもだ﹂ 脳裏に過るのは生前の戦。 あの顔を、地に横たわる姿を今でも覚えている。 ﹁⋮⋮ふん﹂ カルナとは反対側に腰を下ろし、手を握る。奴はそれを見詰めてい たが結局何も言わなかった。 39 ││握った手は暖かく、仮初めとはいえ確かに生きていた。 ﹂ ﹁はい、バレンタインです。甘いので苦手ならばコーヒーなどで飲む といいですよ﹂ ﹁感謝する﹂ ﹁⋮⋮ありがとうございます﹂ ﹁いえいえ﹂ ﹁ところで、スラクシャ。そのチョコレートは誰に渡すつもりだ ﹁ジークフリートです。エミヤには渡したので、あとは彼だけですね﹂ ﹁姉上。私が代わりに届けましょう。なのでそれを今すぐ渡してくだ さい﹂ ﹁え⋮⋮、いや、やめておきます﹂ ﹁︵チッ︶﹂ アルジュナか。なにか⋮⋮﹂ ﹁ジークフリート﹂ ﹁ ﹂ ﹂ すのですから、間違っても好意などと思わないように﹂ ﹁ ﹁では﹂ ﹁⋮⋮俺は何かしてしまったのだろうか⋮⋮ ? ?? 40 ? ﹁勘違いしないでください。スラクシャはあくまで感謝の気持ちで渡 ? ? それにその姿で戦車はアウト 言い訳はありますかキャスターのみなさん﹂ ネタ ジューンブライド ﹁⋮⋮⋮⋮で ﹂ ﹁気持ちは分かるが落ち着きたまえ だ ﹂ 暫ら ? おしまい﹂ ﹂ ﹁ありがとう、スラクシャ ちを読んで ﹁あ、はい﹂ とーっても素敵だったわ 次はこっ ! ﹁⋮⋮お姫様とハッピーエンドばかりですね﹂ レラ。その前は白雪姫だし、今差し出されているのはラプンツェル。 せがまれるのは全部お姫様が出てくる絵本。今読んでたのはシンデ 読 み 終 わ っ た 側 か ら 新 し い 絵 本 を 差 し 出 さ れ る。何 度 目 だ こ れ。 ! ﹁こうしてシンデレラは王子様と結婚して幸せに暮らしましたとさ。 のでカルナやアルジュナと一緒にレイシフトしているとか。 日はセイバー、アーチャー、ライダークラスがいる所を周回している 最近セットのジャック・ザ・リッパーの姿はなかった。なんでも今 だ。 たところナーサリーライムがやってきて読み聞かせをせがまれたの しかし休みを貰っても特にする事が無く、図書室で暇をつぶしてい くは休んでていいよ﹂と暇をもらったのだ。 盤に差し掛かるらしく﹁ずっと連れまわしちゃってごめんね 方からレイシフトに参加していたのだが、そろそろアイテム集めも終 ライダークラスが駆り出される場所も多々あり、私はかなり最初の ターが必死でレイシフトする日々が続いていた。 天 竺 が ど う の 札 が ど う の ド 〇 ゴ ン ボ ー r ⋮⋮ 玉 が ど う の と マ ス 事の発端はこうだ。 ﹁それ以前にカルデア内で宝具の使用はやめてくれないか ! ? ? 41 !! ! ﹁ハッピーエンドは大好きよ しまったもの﹂ 反応すればいいんだ。 でもバッドエンドは嫌い。見飽きて ﹁それにお姫様とお嫁さんは女の子の夢よ ! 翌日。 かった。 ﹂ 途中、ハッと何かを思いついたような顔をしたことに私は気が付かな 過去を思い出して一人頷く私をナーサリーライムがずっと見つめ、 ていうか結婚自体してないし。 着たことなかったな。 れで被害は減るし、全然バレないしで結局死ぬまで女らしい服なんぞ 身を守るため&私の精神衛生上ずーっと男装してたしな。実際そ 良くわからないというか﹂ ﹁生前は死ぬまで男装してましたからね。あまり女の子って言うのが ﹁あら、どうして ﹁想像がつきませんね⋮⋮﹂ ⋮⋮ていうか お 嫁 さ ん ね え ⋮⋮。元 男 と か そ う い う の 抜 き に し て も 興 味 な い ﹁へー﹂ ﹂ 元が絵本の〝子供たちの英雄〟にこんな事言われた時ってどんな ! バラケルスス ﹂ 薬のようなものが握られている。 ﹂ いやな予感しかしない。 ﹁私に何か用事でも ﹁いやですけど ﹂ ﹁ええ。⋮⋮これを飲んでくれませんか﹂ ? なにを言ってるんだこの魔術師。 !? 42 ? ﹁ああ。ちょうどよかった﹂ ﹁ ? 廊下を歩いているとPことパラケルススが近づいてきた。手には ? ﹁大体なんなんですかそれ﹂ ﹁効果は言えませんが⋮⋮どうしても飲んでくれませんか﹂ ﹁当たり前です﹂ 効果は言えないとか怪し過ぎるだろうが。誰が飲むんだよそんな の。 ﹁仕方ありません⋮⋮施しの英雄辺りに頼み﹂ ﹁飲みます﹂ あの施しバカのことだから頼まれたらどんな効果だろうと百パー 飲むに決まってるじゃないかそんな怪しいもん呑ませるくらいなら 私が飲むわ パラケルススから薬を受け取る。 今すぐに床に叩きつけたいところだが、また同じものを作られて私 のいないところでカルナに呑ませられたらアウトだ。マスターが何 といおうがブラフマーストラする自信がある。 ﹂ 覚悟を決めて薬を飲み干す。味は特に悪くない⋮⋮というか水と 変わらない。 ﹁⋮⋮これでい、い゛っ んだ。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮ ﹂ バッと目を覚ますこすと⋮⋮医務室 ﹁良かった、目が覚めたようだね﹂ ﹁ドクター。⋮⋮あのイカレ魔術師はどこですか ﹂ 良くわかんないけど起きたら絶対に轢いてやる事を誓い、意識が飛 ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ 申 し 訳 あ り ま せ ん。し か し、あ の 子 に 頼 ま れ て し ま っ た の で れていた。目の前が暗くなっていく。おま、毒か。毒なのか。 電流が走ったような衝撃が来たと思った次の瞬間には床にぶっ倒 !? し﹂ ﹁う ん 怒 る の は 分 か る け ど 落 ち 着 い て。ま だ 薬 抜 け て な い み た い だ ? ? !? 43 !! 言われると気付くが、確かに体が動きにくい。仕方ない、ベッドか ら降りるのは諦めよう。 ﹁私にいったい何の恨みがあるんだあの野郎﹂ 記憶を探るが心当た ﹁う わ あ。こ ん な に 口 の 悪 い ス ラ ク シ ャ 初 め て 見 た ⋮⋮。ど う や ら ナーサリーライムに頼まれたらしくてね﹂ ﹂ 間接的に幼女に毒盛られたって事 ﹁私本気で何かしました え りは一つもない。 ﹂ 私が何をした それからジャンヌ・ダルクに説教されている﹂ 着替え めっちゃ参加してんじゃねーか ﹁ん ! ﹁そこかぁあ ﹂ い。が、そういったことは全力で無視した。 他のサーヴァントがやらかした、という可能性もあるかもしれな 食堂の方から話し声⋮⋮というか嗜める声が聞こえてくる。 ターストップを後方に聞きながら食堂に向かって全速力で走った。 それが目に入った瞬間、重い体を無理やり動かし、文字通りドク 味だと気づいて衣服を確認する。 苦笑いをしながら布団を指差すドクター。めくってみろ、という意 !? とダ・ヴィンチちゃんが面白がって協力した。今はエミヤとマルタ、 させたのがマリー王妃とメディア。アンデルセンとシェイクスピア だのがジークフリート。ナーサリーライムの提案に賛成して着替え ﹁えーとね。実を言うとこの2人だけじゃなくて。気絶した君を運ん ? ? ﹁あー、えー、うん。そのー⋮⋮﹂ ? 場所を譲ってくれた3人に目線で礼を言い、床に正座で座らされて ﹁そうですね﹂ ﹁その方が良いわね﹂ ﹁⋮⋮当事者が来たようだ。後は彼女に言わせよう﹂ 声を荒げて食堂へ飛び込むと、その場の視線が一気に集中した。 !! 44 ? ? いる︵女性陣は免除︶面々に向き直る。 お姫様みたい 凶 ﹂ ﹁ごきげんよう、スラクシャ。やっぱり良く似合うわね﹂ ﹁とっても可愛いわ 元 ﹁当たり前よ。私の目に狂いはないわ 使っても良かったかしら﹂ ⋮⋮でも、もう少し宝石を 無 邪 気 に 褒 め て く る ナーサリーライム。反 省 す る ど こ ろ か 改 善 点 を話しはじめたフランスの王妃とコルキスの女王に頭が痛くなった。 ﹁⋮⋮あの、いつもの服に着替えようとしてもできないんですが﹂ こめかみを押さえ、椅子に座りながら何とか絞り出した一言。 私が今着ているのは、宝石とレースがふんだんに使われたレヘンガ と呼ばれる、シャツとスカートに分かれたドレスの上に、ストールを サリーのように巻いたもの⋮⋮の現代版ウェディングドレス。 ご丁寧に宝石やら花やらが縫い付けられている当たりやる気が伺 えた。 ﹁しかも寝てたのに皺1つないって⋮⋮﹂ ﹁そりゃあ素材からこだわったからね。おかげで次の礼装をどうする か、大まかにだけど決まったよ﹂ ﹁はあ⋮⋮﹂ ぐ⋮⋮。礼装はマスターの役にも立つし⋮⋮仕方ない、言いたいこ とはあるけどダ・ヴィンチは不問としよう。 次は作家どもだ。 ﹁﹁カルナとアルジュナの反応が面白そうだったから﹂﹂ ﹂ ﹁そ ん な に 座 に 還 り た い ん で す か。い い で し ょ う、潰 れ た メ ロ ン ゼ リーにしてあげます﹂ とても似合ってます ﹁落ち着きなさい、スラクシャ。﹂ ﹁大丈夫です ! ﹁因 み に そ の 服 が 皺 に な ら な い の は 彼 ら の エ ン チ ャ ン ト の お か げ だ よ﹂ 45 ! ! ! ﹁フォローになってないぞ2人とも⋮⋮﹂ ! 何という魔術と技術の無駄遣い ﹁⋮⋮ジークフリート﹂ ﹂ ﹂ ! 合どうなる 大丈夫か ﹂ 再臨で鎧が無い上に不意打ちだったから余計に痛 ちょ、肩砕ける ヒント:筋力差 ﹁いだだだだだ ﹂ 問題。咄嗟のことで力加減が出来ずに思いっきり掴み掛られた場 私 身長/体重:168cm・52kg。筋力:D。 ジークフリート 身長/体重:190cm・80kg。筋力:B+。 す。咄嗟に私の肩を掴んでバランスを取ろうとするが、 慣れない正座で足が痺れたらしく、ジークフリートがバランスを崩 ﹁うわっ ﹁ああ、すまな⋮⋮ ﹁立っていいですよ﹂ だこれ。 これはジークフリート悪くない。どう考えても善意でやっただけ ﹁ジークフリート無罪﹂ ﹁すまない⋮⋮﹂ れた、と。 運ぶように頼まれて、言われるまま運んだらなんか着せ替え人形にさ あー、なるほどわかった。倒れている私を見てパラケルスス辺りに ﹁⋮⋮すまない⋮⋮その、体調が悪いのかと⋮⋮﹂ !! !! 痣になっているのでは⋮⋮﹂ ? に手を掴まれた。 肩の部分をずらして確かめさせ⋮⋮ようとするとジークフリート ﹁ああ、確か痛かったですけど大丈夫でしょう。ほら﹂ ﹁本当に大丈夫か あぶねー⋮⋮。危うく肩の骨粉砕されるところだった⋮⋮。 !? チクショウ ! !! ﹁は、はい。なんとか⋮⋮﹂ ! ! ? 46 ! なんか涙出てきた い ! す、すまない ﹁っ ! ﹁ というか何をやって⋮⋮ 放してください﹂ ﹁だ、ダメだ どうしたのですかマス⋮⋮タ⋮⋮﹂ ﹁ ﹂ どうした。入り口で固まっては邪魔⋮⋮﹂ ﹁ ﹁ただいまー。みんなで集まってどうし⋮⋮﹂ ! 待ってアルジュナ 事情を聴く前に宝具はやめて !! !! ﹁⋮⋮⋮神聖領域拡大、空間固て﹂ ﹁ワー ﹂ 食堂が静まりかえ⋮⋮あ、いや作家英霊sはなんか目輝かせてる。 ? ﹂ に叩かれた。 ﹁あいたっ ﹂ ﹁何を考えているのだね君は ない あ、そういうことか﹂ !? ! 嫁⋮⋮ ﹂ ﹂ ﹂ 一度でいいから、綺麗な格好をしなくちゃ﹂ だって、スラクシャったら一度も女の子の格好したこと無 いっていうんだもの ﹁え、それでこんな大がかりなことを 因でこうなったのか すらさせてやれなかったからな﹂ ﹁そうか⋮⋮思えば女らしい恰好どころか、女として生きていくこと !? おい嘘だろ。昨日のあの世間話ともいえないようなあの会話が原 ? ﹁ええ ? ! ! ﹁ ﹁あのね、お嫁さんよ ﹁泣いているのは事故です。そしてこの格好は⋮⋮﹂ ﹁何故泣いている。それにその姿は⋮⋮﹂ ﹁ああ﹂ ﹁あ、兄上。お帰りなさい﹂ ﹁スラクシャ﹂ あー、そっか。そういうことね。うん。完全に失念してたわ。 ﹁ 女性がそう簡単に肌を晒すものでは マスターの叫び声にハッとジークフリートが手を放し、私はエミヤ !! ?? !! ! 47 ! ? ? ? ? ﹁待ってカルナ。別に私が自分からやった事ですから、そんな重くと らえなくても﹂ ﹂ ﹁今はサーヴァントの身。とはいえ、お前が奴⋮⋮ジークフリートと ﹂ ろくな事が無 とんでもない誤解が生じているぞ落ち着いてください 添い遂げるというのならオレは応援しよう﹂ ﹁待て 何がどうしてそうなった⋮⋮この格好のせいか ⋮⋮だからジークフリートに矢を向けない ﹂ ﹁うんアルジュナ落ち着いて誤解だからその言い方やめてください。 ﹁⋮⋮スラクシャ。本気でそこの男と生涯を共にする気で いな女装 !! 物心ついた頃には男装を始めていたので慣れないのだろう。 確 か に 部 屋 に た ど り 着 く ま で に 何 度 も 躓 い て い た の を 思 い 出 す。 ﹁最低でも明日まで脱げないそうです。動きにくいったら⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮脱がないのか﹂ ようだった。 無意識か、目を細めて気持ちよさそうに頭を摺り寄せるそれは猫の ぐらせて直接撫でる。 ぐったりとした様子で机に突っ伏す妹の頭を、サリーの下に手をく ﹁⋮⋮疲れた﹂ にそれはやめてくれと言われたので諦めた。 私としては戦車で轢いてやりたいところだったが、流石にマスター シェイクスピアは肉体労働を命じられた。 たが、薬を盛ったパラケルスス、面白半分で加担したアンデルセンと ンだが一応善意ということで軽いお仕置き︵3日間おやつ抜き︶だっ 原因のナーサリーライム、マリーさん、メディア⋮⋮は微妙なライ この後事情を説明するのに30分以上かかった。 ! ナーサリーライムの言葉が思い出される。結局、死ぬまで一度も女 らしい服も生活もさせてやれなかった。 48 ? !! !! !! 双子ゆえに男装をしても違和感はなかったが、こうして着飾ると確 かに女なのだと実感する。近すぎたからこそ忘れていた。オレが一 番忘れてはならないというのに。 婚礼用の衣装と言っていた。スラクシャが女として生きていたの ﹄ なら、きっと死ぬ前に着ることもあったのだろう。 はい﹂ コンコン ﹁ ﹃私です。入ってもよろしいですか ﹁ああ、アルジュナ。どうぞ﹂ スッと扉が開き、手に何か⋮⋮トレイを持ってアルジュナが入って ﹂ くる。一瞬オレを見て動きを止めたが、すぐに視線をそらしてスラク シャへ近づく。 ﹁何か用事ですか く今日手に入れた仙桃。 ? とくに果実には目が無かったな。 ﹁それでは、私はここで﹂ ﹁あ、待ってください。その1つは貴方のでしょう ﹂ ? チラリ、とこちらに目を向ける。どうやら、オレを気にしているら ﹁いえ、そうではなく⋮⋮﹂ ﹁嫌ならいいです。無理しないで﹂ スラクシャの誘いにアルジュナは戸惑ったような表情を見せる。 緒に食べませんか どうせなら、一 嬉しそうに器を手に取り、机の上に並べる。そういえば、甘いもの、 ﹁そうですか。わざわざありがとうございます﹂ した。1つは貴女ので⋮⋮もう一つはカルナに、と﹂ ﹁先ほどの騒ぎで疲れただろうから、これを食べて休めと言っていま ﹁桃のコンポートですか。これをエミヤが ﹂ 上に乗っていたのは涼しげな硝子の皿が3つ。その中には、おそら ﹁はい。エミヤがこれを持って行けと﹂ ? ? 49 ? ? しい。 ﹁オレはかまわない﹂ ﹁⋮⋮いいでしょう。ここで食べます﹂ 宿敵と共に、それもこの距離で食事をするのは思うところもある が、嬉しそうな顔をする妹を見るとそれもいいかと思えた。 ﹂ ﹁ああ、そうだ。スラクシャ﹂ ﹁ ﹁似合っている。明日になれば脱いでしまうのだろうが、たまには着 っ、スラ、クシャ。⋮⋮私も見たいので、その時は呼んでくださ てくれ﹂ ﹁ い﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮考えておきます﹂ 50 ? ! EXTRA 守護の英霊ルート ︻予選︼ 痛みで、立っていられない。怖い。消失が怖い、ここで何もわから ず消えるのが怖い。 だから。諦めたくない。諦めない。 だってこの手はまだ一度も、自らの意志で戦ってすらいないのだか ら││ ﹃死にたくない、ですか。王になるだの、世界平和だのという願いより はるかに共感できます﹄ どこからか響いた、凛として涼やかな声。 パリンとステンドグラスが割れる音がして、私の前には││青年 が立っていた。 ﹁貴女が私のマスターですか﹂ 赤い髪、白い肌。 どうして。 ﹁まだ内緒ですね﹂ ライダーの真名は ︻一回戦︼ 私は訳が分からないまま、しかし安堵を感じながら頷いた。 外見の華美な印象とは裏腹に、その目はとても優しい。 かに見える。 身に纏う黄金の鎧の隙間からは、胸元に埋め込まれた赤い宝石が僅 ? 繊細なハートにグサリと突き刺さった。 申し訳なさそうな顔で、微塵の遠慮もなく言い放たれた言葉は私の 戦争に参加している人間の中でも一番弱いでしょう﹂ ﹁貴女は魔術師として未熟です。こういっては失礼ですが、この聖杯 ? ﹁そういう人ほど図太かったりするんですよ﹂ 失礼な ! 51 !! まあ、それは置いといて⋮⋮そんな目をするんじゃない。それは置 いといて理由を説明してほしい。 ﹁真名がばれる=弱点がばれる、ですからね。貴方が敵の策に嵌って あの人 情報がばれたらその時点でおしまいです。自分でいうのもなんです が、私は戦闘向きではありませんから﹂ む⋮⋮そう言われると何も反論できない。 というか戦闘向きではないというのは謙遜しすぎでは 形、木端微塵になってたけど。 理由。自分が、生きる。相手を殺して、生きる理由 ﹁貴女は予選で戦うことを選んだ。生きる理由があるのでしょう﹂ 顔を上げると、座り込んだ私の正面に立つライダーと目が合った。 ﹁⋮⋮マスター﹂ 殺した。私が慎二を。⋮⋮友人を。 ︻一回戦終了︼ の 何処かは分からないけど、ライダーの故郷の英雄ってどうなってる よ﹂ 左右されるでしょうが││あの空間そのものが破壊されかねません ﹁あれくらい普通です。私の兄や異父弟なら││マスターの実力にも ? 凛のアドバイス通り、自分の名前をしっかり手に書き留めてアリー ︻三回戦︼ か分からなかった。 俯いてしまった私には、その時ライダーがどんな表情をしていたの 由がわからなくても、一度選択したのならそれを貫くべきです﹂ ﹁仮初とはいえ、友人の死を悼む心はよくわかります。しかし、まだ理 ? ﹂ ナへ入る。固有結界が発動するが、対策はバッチリだ。 フランシスコ、ザビ││﹁マスター !? 52 !? ⋮⋮ハッ 私は今何を言おうとした⋮⋮ なんで普通に立ってるんだ 魔力が供給されず、生命の危機に瀕している、はずなのだが⋮⋮。 敵の攻撃を受けて倒れてしまったライダー。 ︻五回戦︼ イダーの言葉に小さくなるしかなかった。 ていうか、こんなに小さいのに何でそこを読むんですか。というラ いですよ﹂ ﹁⋮⋮遊び心を持つ余裕は大事ですが、それで死にかけては意味がな に小さくフランシスコ・ザビ⋮⋮と書いてある。 ライダーが見つめるのは名前を書いた掌。そこには私の名前と、下 ﹁⋮⋮﹂ さあ、進もうと一歩踏み出そうとするとライダーに手を取られた。 を言うと結界が敗れる。 ライダーの呆れたような目に、慌てて﹁岸波 白野﹂と自分の名前 ? てるの ﹂と返ってきた。私が知りたい。 凛にメールでこのことを伝えると﹁アンタのサーヴァントどうなっ そ、そうなのか。 少しアレですが、アリーナにも行けます﹂ ﹁いえ、放っておけば3日目くらいには全快します。普段と比べると じゃあどっちにしろ魔力供給は必要だって事か。 もダメージは残ってますが﹂ ﹁鎧の効果ですよ。兄のと違って私の鎧は回復特化なんです。それで !? が良いわ﹂という旨のメールが届いた。やっぱり凛は頼りになる。 ライダーに方針を伝えると少し不満げな顔をするが絶対に譲らな い。また倒れられたらこっちの心臓がもたない。 とにかく横になってくれとライダーの体をぐいぐい押すと、諦めた のか大人しく横になってくれる。 53 !? そして﹁すぐに3日目には治るならそのまま大人しくしておいた方 !? ふむ⋮⋮ライダーは押しに弱いと。 ﹁今何か余計なことを覚えませんでしたか﹂ いえ、なにも。 その後で魔力が足りないのなら補充すればいいのでは でカレーパンをもそもそと食べた。 麻婆も進めけど、珍しく全力で拒否された。 ︻聖杯の中︼ ﹁案外、普通ですね﹂ ヴァント。 か ﹂だろう。 と二人 スラクシャの言いたいことは分かる。﹁今すぐにでもそうしないの できたでしょう﹂ ﹁聖杯に望めば、貴女は地上で生きていけるのに。凛と共に歩む事も だって地上で生きていける。これ以上ないくらい、満足だ。 勿論。トワイスの野望は絶った。聖杯戦争はもう起こらないし、凛 ﹁随分と満足そうですね﹂ 会った時と変わらず、とても優しかった。 そ う 言 っ て 彼 │ │ い や、彼 女 は 私 の 手 を 取 る。そ の 目 は、初 め て ﹁サーヴァントがマスターを1人にするわけがないでしょう﹂ ││スラクシャ どうして 拍子抜けしたような、しかし興味深げに辺りを見渡す、私のサー ? 貴女と﹁彼女﹂は同じでも別人です﹂ うのは地上の私に任せる。 ﹁後悔しないのですか ありがとう。でも、スラクシャが私の立場だったらしないでしょう ﹁私は貴女に生きてほしい。地上の﹁彼女﹂ではなく、貴女に﹂ うん。﹁彼女﹂がどんな願いを持っても納得できる。 ? 会うことが出来た。あなたは、座から出ることが出来た。 54 ? ││いいんだ。私は﹁彼女﹂の再現データにしか過ぎない。そうい ? 願いに貴賎はない。死にたくない、という私の願いでスラクシャに ? だから﹁彼女﹂も大丈夫だ。 ﹁⋮⋮はあ﹂ なんでそこで溜息 ﹁まったく、何で最弱のマスターである貴女を守ろうと思えたのか分 かりましたよ﹂ なんだ、なんなんだ かわからない暗闇に包まれていく。 少しずつ、意識が薄れていく。いつの間にか目の前がどこまで続く るだけだった。 問い詰めるがスラクシャは答えない。ただ笑って、優しい目私を見 ? ﹁おやすみなさい、私の最初のマスター。またいつか││﹂ 55 !? カ ル デ ア サ マ ー メ モ リ ー 第 X 節 水 浴 び に は ご 用 心 レイシフトに失敗し、漂着した場所は無人島 ヴァントたちだけ カルデアには連絡が取れず、頼りになるのは共に辿り着いたサー !? しかし して遊ばないなんてそんな選択しあるか これらを目の前に ││否 ! ∼スカサハ師匠が一瞬でやってくれました ! 飛び込もうじゃないか ります ﹂ ※人理焼却の進み具合によって遅れることもあ ﹂ 目を覚ましましたか ﹁││なんだって ﹁あ、先輩 !? 近日発売予定 カルデアサマーメモリー∼癒しのホワイトビーチ∼ !! 無人島を開拓しつつ、脱出を目指しつつ、さあ、この光輝く海へと ∼ サーヴァントたち それぞれ水着に││ついでにクラスも││着替えてはしゃぐ女性 !! 目の前に広がる青い海、白い砂浜 衣食住の保証がない、いつ連絡が取れるかもわからない危険な状況 ! ! ? ﹂ ? ﹁む。目を覚ましたのか、マスター﹂ ﹁⋮⋮え、なんで る、守護の英雄││。 その川の中でじっと、まるで戦場にいるかのように水面を見つめ の光と、それに照らされてキラキラ光る川。 ぼんやりする頭で周りを見渡すと、木々のすき間からこぼれる太陽 視界に入ったのは、ほっとした顔でオレを覗き込む可愛い後輩。 ! 56 !? ! ! ﹁うわっ﹂ ﹂ 突然後ろから聞こえてきた声に、驚いて振り向けば川に入っている 英霊の兄と弟がいた。何故かボロボロだけど。 ﹂ ﹁カルナ、アルジュナ⋮⋮。まって。これどういう状況 ﹁覚えていないんですか、マスター 2。 とアルジュナの言葉に首を傾げると気まずそうに目を逸ら ? たので一緒に食べましょう﹂ ぷらすもう1人。 ﹁ごめん、マシュ。説明してくれるかな ﹁はい、先輩。実は││﹂ ﹂ ﹁あ、マスター。起きましたか。ちょうどよかった。魚も大量に取れ すインドの大英雄 え ? ゆっくりすることはできない。 になるべく人目に付く事が無いよう上流の方へと進み、見つけたのが クー・フーリンから川があることを聞いていたため森へ入り、さら の発言。スラクシャは動くのに1秒のためらいもなかった。 沐浴が趣味の兄には物足りないのでは と思った矢先にカルナ ただ、サーヴァントが大勢いる中、余り長湯をしては迷惑だろうと 別に開拓で作った風呂に文句があるわけではない。 できる場所をと探し出したのだ。 カルナの﹁沐浴がしたい﹂という呟きを拾ったスラクシャが、なら そんな2人がわざわざ海ではなく、川に来た目的は沐浴だった。 れている方だった。 むしろ、生前に食料を確保するためにあちこち走り回ってた分、慣 馴染んでいる英雄も多く、この兄妹も例外ではなかった。 無人島に飛ばされサバイバル生活を強制されている状況だが、割と ﹁そうだな﹂ ﹁あ、カルナ。ここなら沐浴できそうです﹂ ? ? 57 × ? この場所である。 いい場所を見つけたと道筋を覚え、カルナの手を引いてきたのがこ こだ。 ﹁では、ごゆっくり。私は、誰か人が来ないか見張っておきます﹂ ﹂ ﹁一緒に入るぞ﹂ ﹁へ 念のために言っておくが、カルナは純粋に好意で言っている。 今の言葉を詳しく訳すと﹁オレのために川を探して汗もかいただろ う。ついでにここで汗を流していくといい﹂といったところだ。 兄の言葉を正しく理解する妹は﹁では、お言葉に甘えて﹂と一緒に 沐浴することにした。 ほら、性 ﹁おっけー。とりあえずスラクシャは恥じらいを覚えよう﹂ ﹁恥じらうもなにも⋮⋮。生前も一緒に入ってましたよ 別誤魔化さないといけなかったですし﹂ ﹁うーん、そういわれると⋮⋮﹂ ﹁いまでもたまにですが、一緒に寝ますもんね﹂ よ﹂ ﹂ ﹁分かりました﹂ ﹁ ﹁で、アルジュナはなんで ﹁それが││﹂ ﹂ ﹁マシュ。カルデアに戻ったらスラクシャを女子ライダー部屋に移す ? かのように弓兵はため息を吐いた。 ﹂ ﹁誤解です﹂ ﹁は で、こんないつ誰が来るともわからない川で沐浴をしている││﹂ ﹁マスター。想像してみてください。兄妹とはいえ男女が、服を脱い ? 58 ? チラリ、とマシュがアルジュナに目を向ける。その様子に観念した ? !? ﹁わかった。それ以上言わなくていい﹂ それ以上はオレの精神上よくない。最初は男だと思ってたけど、改 めて知らされると、スラクシャは確かに女の子だ。そして俺は健全な 男子。良くない、これは非常によくない。清姫に焼かれる。 ﹁でも、せめて事情くらいは聞いてもいいだろう﹂ ﹁⋮⋮腰を引き寄せ、抱き着くような体勢でいてもですか﹂ ﹁⋮⋮カルナ﹂ ﹁スラクシャが滑りかけたのでな。咄嗟に支えたのだが⋮⋮﹂ つまり兄妹とはいえ、嫌いな兄と慕っている姉が沐浴をして、しか も傍から見たら映画のラブシーンのようなツーショットを目撃して プッチーンとキれ、そのまま戦闘に入ったところでたまたま来たオレ とマシュが巻き込まれたと。 闘を見ていらしたんです。でも、私達が来て先輩が流れ弾で気絶して しまったのを見て、その⋮⋮﹂ ﹁すいません。つい、宝具を﹂ 解放しちゃったのかー。どっちでやったのかはわからないけど、ど うりでカルナもアルジュナもボロボロなわけだ。 そしてオレの気絶した理由は流れ弾だけど、このだるさは魔力不足 による貧血らしい。 ﹁マスター。お詫びにはなりませんが、魚を獲りましたので焼いて食 59 気絶したのは、多分、流れ弾てきなのにでも当たったか、インドの 大英雄が遠慮なく魔力を持って行って貧血でも起こしたと。 ﹂ ﹁なるほど⋮⋮。でもなんでスラクシャは無傷で、2人はボロボロな の ﹂ ? ﹁ええとですね、スラクシャさんは最初、ポカンとしながらお2人の戦 ﹁スラクシャが ﹁それは私のせいです、マスター﹂ ら本気で編成考えないといけないし。 なんだか起きてから質問ばかりだなあ。でも、ここまでやり合うな ? べましょう。丁度昼時ですし﹂ ﹁ありがとう。でもよくこんなに捕まえたね﹂ ﹁慣れてますので﹂ ﹁慣れてるんだ﹂ ﹁はい。幼少期は養父たちが用意してくれるもの以外に、自分たちで も何とかしないと足りませんでしたから﹂ 確かに、昔のインドの生活水準はよくわからないけど、余り裕福で はなさそうだし。育ち盛りの子供2人にはキツそうだ。 ﹁安 心 し ろ マ ス タ ー。ス ラ ク シ ャ の 食 料 を 調 達 す る 技 量 は、宝 具 と 言っても差し支えないほどだ。兄であるオレよりも先に飛び出す姿 はまるで猟犬の様だった﹂ ﹁女 性 に 向 か っ て 猟 犬 は な い だ ろ う。こ れ だ か ら 貴 様 は ⋮⋮ デ リ カ シーをしらんのか﹂ ﹁兄上より先にいっぱい獲って置かないと、兄上が持っていたら他の ろう﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ あ、スラクシャが頭抱えた。あ、アルジュナが慰めるみたいに頭撫 でた。あ、カルナの手で叩き落された。 ﹁スラクシャさんはどちらとも仲が良いのに⋮⋮﹂ 60 人に強請られた時に何の見返りもなくあっさり渡しちゃうじゃない ですか﹂ 言いたかったことを全部言ってくれた。宝具レベルの食料調達能 力って。そういえばカルデアから持ってきた食料とかがあったとは いえ、あの人数の食料が数日持つのはおかしい。あのアルトリアだっ ているんだし。 もしかして ﹂ ? ﹁そうだな⋮⋮。もしや、その動物の主食かもしれん。置いていくだ た動物が、物欲しそうにそれを見ていたらどうします ﹁カルナ⋮⋮。⋮⋮因みに、もし食料を持っているときに腹を空かせ に立つ﹂ ﹁次からはオレも呼べ。お前と一緒に過ごしたのだ、多少なりとも役 ? ﹁初めてあの2人を召喚した時はクッションになると思ったんだけど ね﹂ いや、なってはいるんだけど。別のところに於いては悪化している というかなんというか。 ﹁⋮⋮とりあえず、お腹すいたなあ﹂ 61
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