一般精神科病棟における新人看護師・准看護師の教育 ~2 年目以降

一般精神科病棟における新人看護師・准看護師の教育
~2 年目以降、日々リーダーの独り立ちを目指して~
鶴川サナトリウム病院 東京都町田市真光寺町 197
発表者名
TEL 042-735-2222 FAX 042-735-2264
石村 雄介
Ⅰ.はじめに
車椅子に乗車し日中を過ごす患者が中心。経口摂
平成 27 年 4 月より病棟開棟後、初めてとなる
取する患者は基本的に B チームとなり、自宅、施
新人看護師 F・准看護師 M の 2 名が配属となった。
設への退院が可能な患者が多い。平均退院患者1
リーダー業務を委譲できるスタッフが少ないた
名/月(約半数は死亡退院)。看護師 9 名 准看護師
め、新人看護師が 2 年目以降に日々リーダーとし
4 名 介護福祉士 5 名 介護助手 3 名 内科医師
て独り立ちできる、また新人准看護師が固定チー
2 名 精神科医師 2 名で構成される。平成 26 年 9
ムナーシングにおける日々リーダーとしての視
月より固定チームナーシングを導入。平均在院日
点を持ち日々の業務を行えることができる、を目
数 392.7 日 病床稼働率 97% 2 交代制 夜勤は
標に 1 年を通し固定チームナーシングについて教
看護職 2 名、介護職 1 名にて行う。看護職員の平
育を行った。
その結果、
入職 2 年目となった現在、
均経験年数は 14.7 年。
悪戦苦闘しながらも日々リーダーを務める看護
Aチーム
師 F と日々リーダーの視点を持つことにより日々
Bチーム
リーダーへのサポートや他チームへの配慮を行
うことのできる准看護師 M の姿がある。日々リ
倉庫
C棟屋上へ
EV
EVホール
トイ レ
カンファレンスルーム
スタッフステーション
EV
ーダーを務めることができるようになるまでの
リネン庫
カルテ庫
非常階段
過程や教育的な関わりをここに報告する。
男子トイレ
倉庫
車椅子用
Ⅱ.概要
トイレ
汚物
女子トイレ
処理室
図 1 病棟平面図
〈病院概要〉内科および老年内科と認知症の治療
を主体としている。開設以来、初期より認知症医
師長
(2/35)
療に専門的に取り組んでおり、平成 27 年 9 月、
東京都より地域連携型認知症疾患医療センター
Aチーム
の指定を受ける。病床数 587 床 診療科目:
内科、
老年精神科 病棟:一般精神病棟、精神療養病棟、
認知症治療病棟 計 379 床
E
(2/9)
○F
(1/1)
Aチームリーダー
(2/8)
Bチームリーダー
(2/14)
◎ Cサブリーダー
(2/16)
Dサブリーダー(主任)
(2/6)
G准 介福A 介福B 介福C 助手A
(2/35) (2/11) (2/9) (1/1) (1/1)
Bチーム
H
I
准J ◎准K ○准M 介福D 介福E 助手B 助手C
(2/14) (2/19) (1/14) (1/19) (1/1) (2/10) (2/6) (2/5) (2/6)
内科計 127 床 在籍
職員:看護師 138 名 准看護師 58 名 介護職員
145 名 内科医師 11 名 精神科医師 7 名
〈病棟概要〉平成 25 年 6 月開棟 一般精神科病
棟
准 准看護師
✩ 教育担当者
○ 育成対象者
◎ プリセプター
✩主任
(2/6)
病床数 36 床 精神科治療とともに内科的治
療を必要とする患者が入院する。精神科疾患とし
てアルツハイマー型認知症、統合失調症、脳血管
図2
病棟組織図
Ⅲ.取り組みの実際
平成 27 年 4 月~9 月
・全病棟スタッフへ新人看護師教育について説明。
・新人看護師・准看護師に基準を用いて、固定
チームナーシングの説明。
性認知症、内科疾患として心不全、脳梗塞後遺症、
・受け持ち看護業務の自立へ向けて支援する。
2 型糖尿病、高血圧症の患者が多く入院する。A
・夜勤オリエンテーションを行い、プリセプター
チーム:内科的な問題を抱え医療介入が多い。生
とともに夜勤業務実施。
活のほとんどをベッド上で過ごす患者が多く全
平成 27 年 10 月
面的な介助を必要とする患者が中心。B チーム:
・夜勤業務の独り立ちへ。
平成 27 年 11 月
くの関わりを持つことができたこと、そして病棟
・日々受け持ち看護師役割の評価を行う。
として初めての新人を迎えるにあたって開催さ
・新人・教育担当者・プリセプターと面接。
れた勉強会において病棟全体で新人を育てると
平成 28 年 1 月~4 月
いうことを強調して伝えたことである。北浦らは
・日々リーダーの役割についての勉強会実施。
「プリセプティに対する学習サポートには、プリ
・毎月最終日に教育担当者・プリセプターと面接
セプターだけでなく、プリセプティに接するすべ
自己、および他者評価を行い現状把握とアドバ
ての看護メンバーの支援的な態度が不可欠」1)と
イスを行う。
述べている。そのため、プリセプターのみならず
・フォローを受けながら日々リーダーを実施。
病棟全体で新人と関わったことや教育担当者が
Ⅳ.結果
新人とプリセプター、その他の病棟スタッフの間
6 月の勉強会後、2 名に理解度を確認したとこ
に入り不安を取り除いたことが効果的であった
ろ「なんとなくわかりました」との返答が得られ
と考える。
た。9 月の面接時には「前の勉強会の説明が理解
固定チームナーシングに関する勉強会と現場
できるようになってきました」との発言が聞かれ
での教育が噛み合ったことも新人の成長を促す
た。10 月の夜勤独り立ちまで順調な経過であった。
要因であったと考える。西田が「OJT と Off-JT
12 月より予定していた日々リーダーのトレー
がそれぞれよい連携をしていくことができると、
ニングが1月下旬からの開始となった。開始が遅
新人にとって、とてもよい学びとなります」2)と
れた要因としてはコミュニケーションに関する
述べている通り、新人 2 名の発言からも勉強会で
課題があり新人 2 名からは「先輩ナースに依頼が
の学びを、実践を通し理解していることが伺える。
できない」「萎縮してしまい思っていることを言
入職 1 年目から日々リーダーの教育を行うこと
えない人がいる」との発言が聞かれた。そのため
は時期尚早であるようにも思えたが、教育担当者、
新人を迎えるにあたって教育に関する勉強会を
プリセプター、そして病棟スタッフが連携するこ
開きプリセプターだけでなく病棟全体で新人を
とにより 2 年目看護師が日々リーダーを務めるこ
育てていくことの重要性を全スタッフに伝え、理
とができるという目標を達成できたと考える。
解を得られていることを説明。プリセプターやそ
Ⅵ.まとめ
の他のスタッフに対しても新人がコミュニケー
プリセプターのみならず病棟全体で新人と関
ションに不安を抱いていることを伝えた。徐々に
わることや教育担当者が新人とプリセプター、ス
ではあるが必要に応じたフォローの依頼なども
タッフの間を取り持つことが新人育成には重要
以前よりできるようになった。トレーニング開始
であり、今回の 2 年目看護師が日々リーダーを務
前には当初予定していなかった日々リーダーの
めるという目標を達成することができた。
役割に関する勉強会を再度実施した。新人 2 名よ
引用文献・参考文献
り「具体的なイメージを持つことができた」との
1)北浦暁子・渋谷美香:プリセプターシップを変え
意見が得られている。
る新人看護師への学習サポート,第 9 版,P7,医学
理解度について新人 2 名に大きな差はなく 2 年
書院,2009.
目を迎えており、看護師 F は現在、日々リーダー
2)西田朋子:新人看護師の成長を支援する OJT,第
を務めることができている。
1 版,P33,医学書院,2016.
Ⅴ.考察
新人 2 名が順調な経過を辿ることができた要因
として、それぞれのプリセプターである C と K
の勤務形態が月 2 回の夜勤であり、新人 2 名と多
3)西元勝子編集:看護現場を変える固定チームナー
シング-問題解決のツールとして,第 1 版,看護の科
学者,2008