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災害を知る
(中越地震2年目の節目に訪ねた旧山古志村、復興まで三年かかった)
災害のことを知っていればよかった...
災害は怖いけれど...自分には関係ないかも?
(1)リスクゼロはないと理解すること
(2)リスクとベネフィットの両方を考えることが必要であること
(3)リスクについて確実なことはなく,不確実性は避けられないこと.
近藤昭彦(環境リモートセンシング研究センター)
予定
第0回 ガイダンス
第1回 水害(洪水・高潮)
第2回 土砂災害Ⅰ(斜面崩壊・土石流)
第3回 土砂災害Ⅱ(地すべり・河道閉塞)
第4回 火山災害(噴火・火砕流・ラハール)
第5回 地震・津波(震度分布と地盤・歴史地震と津波)
第6回 地盤災害・海岸侵食
第7回 文明社会と災害
災害を理解するために
●人と自然の関係
自然現象も人が係われば災害になる...地理学、地球科学で扱う
●ハザードとディザスター
ハザード:災害を起こすこともある自然現象・・・地震、台風
ディザスター:ハザードを誘因として引き起こされた被害
●素因と誘因
素因:土地の持つ性質ー自然にある素因(地形)・社会的素因
誘因:災害を引き起こす直接の原因-ハザード
●私たちが生活している場所
どんな地形の上に我々は暮らしているか
地形を作ったプロセスは何か
そのプロセスはハザード
ハザードをディザスターにしないために
どういった土地で
液状化を
起こしやすいか
地形変化とひとの関係
人がいるから災害、いなければ自然現象
自然現象
地形はそこにあって
変わらないものか?
地形は必ず変化する
地形変化の様式
がけ崩れ(斜面崩壊)
地すべり
土石流
火山噴火
火山泥流
・・・
長期的な予測は不可能ではない
起こるとわかっていたら?
群馬県砂防課のホームーぺージより
http://www.pref.gunma.jp/h/06/d-saigai/hp/main_page_01.htm
(左)新潟地すべり地帯、
(上) 2006年7月諏訪土石流
(下左) 2004年7月新潟洪水
(糸魚川柵口(ませぐち)地すべり、古谷尊彦「地すべり」)
(下)1974年多摩川水害
(写真:牛山素行、静岡大学)
災害を避けるには
土地の性質を理解し、適切な土地利用を計る
科学知、世界知 <> 生活知、経験知 ●分家災害ということばは知っていますか?
災害時、本家は助かったが分家は被災した...災害の記憶
●自分がどのような土地に住んでいるか知っていますか?
⇒土地条件(土地の性質)
もし、知っていたら災害を避けることができたかも知れない
●我々の生活を維持するために、どのような投資がなされて
いるか知っていますか?
もし、知っていたら、どのような未来を築きたいか、
考える価値があることに気づいたかも知れない
目的その1:土地条件を知る
土地条件とは
防災対策や土地利用・土地保全・地域開発等の計画策定に必要
な,土地の自然条件等に関する基礎資料
2万5干分の1土地条件図(国土地理院)
内容:(1)地形分類、(2)地盤高、(3)各種機関および施設
(1)地形分類
・土地を、その形態、生いたち、性質などから分類したもの
・その土地が山地であるか、台地であるか、低地であるか、ま
た同じ低地の中でも高燥な土地であるか、低湿な土地である
か、あるいは自然の地形を人工的にどのように改変しているか
などを、一見してわかるように区分して表示したものです
国土地理院1:25000土地条件図
低地の凡例 低地の微高地 扇状地
自然堤防
砂丘
低地の一般面 谷底・氾濫平野
海岸平野・三角州
後背低地・旧河道
頻水地形
日本の多くの都市
は低地に形成さ
れ、人口の大半は
低地にすんでいる
地形を学ぶことは大切
形から、それを作った
プロセスがわかるから
かつての低地は今はどうなっているのか?
生活基盤を維持するために様々な投資がなされている
埋立地で
何が起きたか
白髭西地区市街地再開発事業(東京都再開発事務所)
都市に住むということはどういうことか?
東京湾の過去の海岸線
赤:6~8世紀
緑:15世紀頃
青:1600年頃
紫:1880年
黄:1945年
河は洪水によって陸地を形成してきた...その河とは?
高潮・防潮堤の配置状況(左)
水門と排水機場の配置状況(下)
(東京都江東治水事務所)
3月の津波は隅田川の
高水敷を越えている
国土交通省・江戸川河川事務所・首都圏外郭放水路
豪雨時に中川低地の水を江戸川に排水するために、国道16
号線の地下50mに建設される長さ6.3kmの地下放水路
http://www.kajima.com/news/digest/nov_2000/tokushu/toku02.htm
http://www.g-cans.jp/
東京都下水道局
第二溜池幹線
ブラタモリでも
やっていました
地下鉄に溜池山王という駅がありますが、この周
辺は雨が降るとすぐに湛水します。そもそも溜池と
いうからには、昔池があったのだろうか。
http://www.kajima.com/news/digest/nov_2000/tokushu/toku04.htm
なぜ溜池山王付近で洪水が起きるか?-1460年頃の東京と深度分布
過去の土地被覆を
知ることは重要な
ことなんですね
木造住居被害から推定した大正関東地震の震度分布
かつての沖積低地は地震時の震度も大きい
(ドキュメント災害史、国立歴史民族博物館、2003)
東京都神田川・環状七号線
地下調節池
神田川の水害対策として工事が進行
中の地下トンネル
http://www.kajima.com/news/digest/nov_2000/tokushu/toku03.htm
高
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ミツカン水の文化センター http://www.mizu.gr.jp/kikanshi/mizu_20/no20_j01.html
神田川流域浸水予想区域図
平成12年9月の東海豪雨と同規模の豪雨が神田川流域(妙正寺川を含む)に降っ
た場合を想定した図
● 色の濃い部分は、浸水の深さが0.5m~5mになる危険性のある地域
水め地
が、表
発雨面
生がが
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る時を
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流質
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込覆
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にた
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都
市
型
洪
水
http://www.city.shinjuku.tokyo.jp/bousai/chiiki_bou/sugai.html
洪水対策にも限界?ー2000年9月東海豪雨ー
・拡大した都市を守るためのコストも膨大に
・水防法の改正へ
・ハザードマップを知る必要
(アジア航測:http://www.ajiko.co.jp/topics/ct/nagoya/toukai.htm)
ハザードマップとは
自然災害を回避するために危険な地区(ハザードゾーン)を予測し
て表現した地図
例)洪水ハザードマップ、土砂災害ハザードマップ、
地震ハザードマップ、火山ハザードマップ、
雪崩ハザードマップ、など
水防法、土砂災害防止法、等の関連法の改正(2001年)
情報システムのあり方が明記
ハザードマップの作成が自治体に義務づけられた
災害に対するソフト対策
知らないと、財産や
命の危険性が...
災害に遭遇する可能性がある場所を周知
住民の自己判断を促す
自分の家族は自分で守りたい・・・・・自助
自分の地域は自分たちで守りたい・・・公助
http://www.city.shinjuku.tokyo.jp/bousai/hazard%20map/mapkouhyou.htm
ただし、ハザードマップの整備は容易なことではありません
災害は予測しやすい場所で起こるとは限りません
では、土地条件を知っていれば何らかの対策をとることができるだろうか
戦後の重要な経験
●カスリーン台風(1947年9月)
9月16日埼玉県(現)大利根町において右岸堤防が決壊
東京下町低地が浸水する
●伊勢湾台風(1959年9月)
伊勢湾西部を北進する台風により、高潮が発生
参考文献
立松和平、「大洪水の記憶」、サンガ新書
木曽川上空より弥富駅方向。下記URLより転載
http://www.d1.dion.ne.jp/~kwx/isewan.htm
栗橋町付近の状況
https://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/maga
zine/7_aback/1_ayumi/region_02.htm
(地理調査所、1960)
カスリーン台風では、洪水
の進行が自然堤防といった
微地形の影響を受けている
ことが明らかになった。
((
左右
図図
))
利伊
根勢
川湾
及台
び風
荒の
川浸
の水
洪状
水況
の
進
行
伊勢湾台風では、高潮災害
の範囲が事前に作成されて
いた地形分類図で説明でき
ることが明らかになった。
(地理調査所、1947)
国土調査、土地条件図、等の作成へ-空間情報
このような背景から、土地条件図の作成(国土地理院)や、国
土調査(現国土交通省)が始まった。
●国土調査成果図表
●土地条件図
●洪水地形分類図
このキーワードを使って
自分で調べてみよう!
これらの地図は公開されている。さらに、
●地形図(旧版地形図)
●空中写真
●衛星画像
もかなり公開されている。
これらの空間情報を使って、土地条件を判読することができる
ようになれば自分で地域の安全性を確認することができる
自助・共助・公助
行政には限界があるから自助・公助?
⇒受動的態度
自分の家族は自分で守りたい!
自分の地域は自分たちで守りたい!
⇒主体的態度
自立した大人の社会へ
東日本大震災をまず乗り越える
そして振り返ってこの震災の意味について考える
我々は何を学ぶべきか
大都市と地方の関係は?
地域力を高めることは防災力を高めること(嘉田ほか,2011)
高等学校の科目
地学や地理学って、
暗記することが多い
からいや!
数学、物理学、化学、生物学、地学、...
~学 内容が体系づけられた
学問分野
大学で学ぶ学問
まだわかっていないことも多いし、
知識を応用することができれば
社会に役立てることができますね
まだ体系づけられていない分野
⇒環境・災害(学)・・・人と自然の関係
知識を応用、活かすことができる力
⇒関係性を意識する力
受講の要件
私語を慎むことができる学生
・講義はテレビではない
・自分の周りに講義を聴いている他の
学生がいることに気づく
・自分と周囲との関係性を意識すること
ができること