林 裕子 - 佐賀大学 産学地域連携機構

教育学部
HAYASHI
Y U K O
林 裕子
准教授
「小学校英語教育における初期リテラシー活動」
「外国語学習におけるワーキングメモリトレーニングの効果」
[キーワード]
小学校英語,ワーキングメモリトレーニング,読み聞かせ,
語彙発達,第二言語習得
子どもたちの学習意欲と英語習得の促進に向け,外国語教育を科学する
研究紹介
◆研究概要
大規模な英語教育改革が進む今日,小中接続,並びに,
小学校に併設予定の「領域」と「教科」学習の接続を見据
え,多面的・多角的な外国語教育研究・授業実践が求めら
れます.当研究室では,絵本の読み聞かせ活動を中心と
する初期リテラシー活動と,集中力や意欲の向上に効果
的なワーキングメモリトレーニングの実践に焦点を当
て,それらが語彙知識やスピーキング力など,外国語能
力に与える効果について検証しています.
◆絵本の読み聞かせ活動
読み聞かせは,読書に音声の補助が加わった初期リテ
ラシーの獲得を支援する活動であり,文字指導の経験が
浅い児童でも大きな不安や抵抗感を感じることなく取り
組める活動です.小学校外国語活動(必須領域)では,児
童は特定の(連語)表現(例:‘Wash your face.’,
‘What would you like?’)を未分析のかたまり(チ
ャンク)として記憶することで生産的な言語能力を獲得
していきます.読み聞かせ活動は音声と文字のバランス
に富む質の高いインプットを提供する活動であり,領域
と教科学習の円滑な橋渡しに寄与する初期リテラシー活
動と位置付けられます.今日,さまざまな英語絵本の読
み聞かせの実践・実証研究が実施されており,単語の意
味理解や外国語学習意欲,更に,連語表現(語彙チャン
ク)の意味理解の向上においてその有効性が示されてい
ます.一方で,日本語(L1:First Language)での背景的知
識(スキーマ)の活性化を図る絵本の活用例が大半を占
める傾向があります.
そこで当研究室では,L1 スキーマへの依存度が高い絵
本と低い絵本の両方を活用し,語彙知識や英語運用能力
の向上における英語絵本活用の効果についてより総合的
な検証・論考を行っています.
◆ワーキングメモリトレーニング
ワーキングメモリ(作業記憶,以下 WM)は,一時的な
情報の保持と処理の並立処理を担い,発話・読解・暗算な
ど,様々な高次認知機能を支える動的な記憶システムを指
します.したがって,対面コミュニケーション活動など,
情報のリアルタイム処理を要する言語活動は WM 容量の
個人差の影響を受けやすいと考えられます.項目学習が中
心となる外国語活動では特に,語彙チャンクの並立処理の
効率性がコミュニケーション活動において重要な役割を
果たします.このことから,WM 容量が増加すると,学習
者の語理解・産出の効率も増し,コミュニケーションが円
滑化するという可能性が期待されます.実際に,WM 機能
の強化を図る WM トレーニング(以下 WMT)
(イメージ
図・写真)を実施した欧米の研究では,WMT を受けた児
童の WM 評価値(近似領域)のみならず,学力や IQ 評価
値(応用領域)においても有意な伸びが示され,その効果
は約 6 ヶ月間維持されたという例があります.
当研究室で成人学習者を対象として実施した WMT の
研究では,①いくつかの情報要素をかたまりとして処理す
るチャンキングや,②自らの学習を計画・評価するなどの,
認知方略(①)
・メタ認知方略指導(②)を実践した場合,
外国語能力の発達においてより顕著な WMT 効果が期待
できることが示唆されました.
ワーキングメモリトレーニング (左)イメージ図・(右)写真
掲載情報 2016 年 9 月現在
学校関係者
教育委員会の皆様へ
一言アピール
産学・地域連携機構より
佐賀大学研究室訪問記
2016
英語絵本の読み聞かせ活動と WMT を実施し,児童の英語語彙チャンクの知識の発
達に与える効果を検証していきます.その成果を基に,領域と教科学習の円滑な接
続に資する単元設計や教材開発についての研究・実践活動を進めていきます.
林准教授は,小・中・高の現職教員を対象としてワークショップ形式による英語指導力向上
研修を行っています.教室英語・発音・音読指導,教材の研究・開発,単元構想など,実践
的な指導技術の向上を目指したい方はご相談ください.
佐賀大学
産学・地域連携機構
(佐賀県佐賀市本庄町1番地)
(お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課
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