新千歳空港プロジェクトリスクへの対応力と協議条項の再構築

PPPニュース 2016 No.12 (2016 年9月 25 日)
新千歳空港プロジェクトリスクへの対応力と協議条項の再構築
(資料)内閣府資料より作成。
日本経済の消費低迷が続いている。勤労者の実質消費支出は、2016 年7月現在で前年比マイナス
動向にある。夏のボーナスの支給総額は増加したものの、一人当たりの額はほとんど伸びておらず、
賃金の引き上げも限定的となり、雇用所得環境が厳しい中で消費態度も慎重な動きとなっている。8
-9 月も台風等の気象条件がおもわしくなく、消費活動は基本的に低迷を続けていると見込まれる。
こうした国内消費が低迷する中で、観光地の地域経済をけん引してきた外国人訪日旅行者の消費も、
昨年来、伸びが限定的となっており、今年に入ってからは減速する動きもみられる。訪日外国人の人
数は増加しているものの、日本国内での消費は限定的となり始めており、地域経済への影響も懸念さ
れ、インバウンドに対するビジネスモデルの再構築も必要な段階に入っている。
外国人訪日旅行者の消費動向は、地域経済やビジネスモデルに加えて PPP による空港経営にも影
響を与える。例えば、民間化が検討されている新千歳空港では、①国際線については国際線旅客から
施設利用料を徴収(航空券代に上乗せ)しているため、国際線旅客数の増減に影響を受けやすいこと
に加え、②お土産品などの物販収入の比率が高く、旅客ターミナルビルを運営する北海道空港株式会
社(HKK)の売上高は、羽田空港に次いで全国2位であるものの、外国人訪日旅行客への依存が高
く、グローバル経済からの影響を受けやすい実態にあることが指摘できる。空港経営として安定性を
確保するには、バンドリング方式による民間化が抱えるリスクを可能な限り洗い出し、コンセッショ
ン等民間企業との契約、あるいは国とのリスク配分関係に盛り込み、対処も含めて明確化する必要が
ある。
地方自治体が当事者となる契約書、協定書、そして指定管理者等の公募要綱等に示されるリスク分
担の考え方は、地方自治体と民間事業者等が最終的に「協議する」という条項を盛り込むことで処理
する場合が圧倒的に多い。施設の民間委託、指定管理などの協定書において「本協定書に記載してい
ない事項が発生したときは、協議のうえでその対処措置及び費用負担を決定する」などがその例であ
る。協議する条項は、経済変動等に伴う契約対象目的物の変化等将来ある程度想定しうるリスクへの
対処を、先送り型としてきた。将来の事情変更に柔軟に対応する利点がある一方で、法律的にリスク
が顕在化した場合は、協議の方向性や権利・義務の存否、程度、協議方法も何も定めていないことを
意味する。協議するとは、協議する機会を設け事態の処理を話し合うことであり、協議が不調に終わ
った場合の措置、協議に応じない場合の措置も不明確である。コンセッション契約はとくに複雑であ
り、こうしたリスクを可能な限り洗い出し PPP の契約で明確にすることできるか、地域での事業の
持続性と過度な負担を生じさせないために大きなカギを握る。
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