東京医科歯科大学

蔵前人の
キャンパス
ライフ
はじめに
筆者は平成4年に工学部制御工学科を卒業後,
大学院理工学研究科制御工学専攻に進学し,平成
9年に博士課程を修了しました。学部2年時には,
名物講義である創造設計第1において,決められ
た材料の中でロボットを設計製作しました。この
経験が今日の基礎となっています。4年生では清
水優史先生と香川利春先生の研究室に所属し,今
の職場の東京医科歯科大学との共同研究で人工呼
吸器の研究を行いました。
修士課程からは香川先生のご指導の下,圧縮性
流体の流量計測の研究に取り組み,大学院修了後
は鮫洲にある東京都立工業高等専門学校(現東京
都立産業技術高専)で4年弱機械工学科の助手と
して勤務しました。学生さんと一緒に機械設計や
実習の勉強を行い,またNHKロボコンの顧問と
して全国大会に出場できたことが思い出です。そ
東京医科歯科大学
生体材料工学研究所
生体機能修復研究部門
バイオメカニクス分野
教授
川嶋 健嗣
(H4 制 9 博)
の後,東工大精密工学研究所において,香川教授
の下で助教授として12年間勤務する機会をいた
だきました。四大学連合の交流の中から,平成
15年より東京医科歯科大学外科の先生方と手術
支援ロボットの研究開発をスタートし,その縁も
あって平成25年から東京医科歯科大学に異動し
ました。今でも客員教員の立場で東工大には大変
お世話になっています。
東京医科歯科大学について
四大学連合で東工大とも関係の深い東京医科歯
科大学は,JR中央線御茶ノ水駅の目の前にあり
ソフトボール大会集合写真
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ます。ここは,江戸時代に幕府の昌平
坂学問所があった由緒ある場所です。
1928年に東京高等歯科医学校として
発足しました。現在は医歯学系の総合
大学ですが,大学院修士課程には医歯
理工学専攻,博士課程には生命理工学
専攻があり,理学系や工学系の学生さ
んも学ぶことができます。臨床の先生
方が身近にいるので,密な医歯工連携
研究が実施できる点が魅力です。
筆者が所属する生体材料工学研究所
は,昭和26年に国内発の生体材料を
研究する歯科材料研究所として発足し
ました。現在は,材料系,電気系,機
械系,化学系,薬学系などの教員が所
内視鏡操作システム 手術室で外科の先生方と
属し,生体工学の幅広い領域を研究しています。
コピストと呼ばれる医師の代わりに内視鏡を保
広島大学ナノバイオ融合研究所とネットワークを
圧駆動のシステムです。すでに,20以上の病院
東工大精密工学研究所,静岡大学電子工学研究所,
組み,平成28年4月からは生体医歯工学共同研究
拠点としても活動予定です。
筆者の研究
圧縮性流体の計測制御の研究からスタートし,
現在は制御工学,ロボット工学,流体工学を基盤
として,人間と機械の融合,融和をキーワードに
新しいシステムの研究開発を行っています。医歯
学系大学の附置研究所に所属していることもあ
り,実用化を重視しています。特に空気圧アクチ
ュエータの精密制御を用いた手術支援ロボットの
開発に力を入れています。
研究の一例として,東京工業大学の只野耕太郎
准教授と共同で開発,実用化したものが内視鏡操
作システムです。低侵襲な外科手術において,ス
持,執刀医の頭部の動作に連動して動作する空気
で泌尿器科,腹部外科,肝胆膵外科などで80症
例以上の実績があります。東工大と東京医科歯科
大学発のベンチャー企業で製造を行っています。
また,肝胆膵外科の先生方と共同研究で,大型
の手術ロボットではなく,執刀医が手に持って操
作できるロボット鉗子の研究開発を進めていま
す。従来の鉗子では鉗子先端にグリッパしかなく,
動作の自由度が不足していることが課題です。そ
こで,外径5mmの鉗子先端に2つの関節を有し,
根元に配置した空気圧シリンダを用いてワイアを
引っ張ることで先端の関節を駆動します。また鉗
子では縫合などの作業においてグリッパ部での回
転運動が必要です。そこで,ジャイロセンサを搭
載し,鉗子先端の角度が変わっても手首の回転に
合わせて鉗子先端が回転する制御が実装されてい
ます。動物実験ができる施設が同じ建物内にあり,
定期的に評価実験を行って改良を進めています。
おわりに
これからは大学間の連携が益々重要となると考
えます。生体医歯工学共同研究拠点などを通じて,
今後とも東工大との共同研究を推進していく所存
です。この度は寄稿の機会をいただきましたこと
を感謝いたします。最後に母校の益々の発展を祈
ロボット鉗子
念いたします。
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