小規模企業景気動向調査

小規模企業景気動向調査
[平成28年8月期調査]
~全項目で 4 期ぶりに改善を示した前期から一転、再び悪化を示した小規模企業景況~
2016 年 9 月 28 日
全国商工会連合会
<調 査 概 要>
調査対象:全国約 300 商工会の経営指導員
調査時点:2016 年 8 月末
調査方法:対象商工会経営指導員による調査票への選択記入式
<産 業 全 体> ◇…全項目で 4 期ぶりに改善を示した前期から一転、再び悪化を示した小規模企業景況…◇
8 月期の小規模企業景気動向調査では、産業全体の業況 DI(景気動向指数・前年同月比)は小幅悪化とな
った。項目別においては、売上額及び採算 DI は不変、資金繰り DI はわずかな悪化となった。経営指導員からは、
観光業を中心に好調であったとの一方、個人消費が低迷しており、昨年実施した商品券事業分の消費の落ち込
みや、仕入れ原価の上昇分を価格転嫁できないことによる採算への影響がみられるとの報告があった。
<製 造 業> ◇…自動車関連で利幅減少や繊維関係の売上減少により、小幅悪化となった製造業…◇
製造業の業況 DI は、小幅悪化となった。項目別に見ると、売上額 DI は若干の悪化、採算 DI は不変、資金繰り
DI は小幅な悪化となった。経営指導員から、悪化材料としては、①自動車関連で利幅の減少傾向が強くなっている、
②縫製関係は厳しい状況にあり、最低賃金の引き上げにより一層の悪化が予想される。また、好転材料として、金属関
連や機械部品で引き合いがあり堅調に推移しているとの報告があった。
<建 設 業> ◇…一定の需要はあるものの、コストの高騰による採算悪化により不変となった建設業…◇
建設業の業況 DI は、変化なし。項目別に見ると、売上額 DI は小幅に悪化、採算 DI はわずかに悪化、資金繰り DI
は、不変であった。経営指導員から、好転材料として、①前年より地区内の個人住宅新築工事・改築工事は増えて
いる、②リフォーム・内装関連で受注が好調であり、仕事量が保たれている。また、悪化材料としては、①土木工事
関連で労働者の不足や賃金上昇等により、受注困難やコスト増により収益を圧迫している、②公共工事、民間工
事とも受注はあるが人件費及び材料費の高騰により採算が合わず、赤字となる現場がでているとの報告があった。
<小 売 業> ◇…消費の落ち込みに加え、食料品価格の上昇などにより、大幅な悪化となった小売業…◇
小売業の業況 DI は、大幅な悪化となった。項目別においては、売上額 DI は変化なし、採算及び資金繰り DI は
小幅の悪化となった。経営指導員から、悪化材料としては、①商品券事業が未実施による消費の低迷、②衣料品
関連は、消費者の高齢化により一定の年齢を超えると購買を行うことがなくなるため、年々売り上げが減少してい
る、③食料品では、台風の影響により野菜を中心に仕入価格が上昇し、採算が悪化している。また、好転材料とし
て、①猛暑によりエアコンを中心に販売が好調、②飲料水関連でも猛暑により売上が増加との報告があった。
<サービス業> ◇…宿泊関連で復興割引の発行などにより、わずかな改善となったサービス業…◇
サービス業の業況 DI は、わずかな改善となった。項目別に見ると、売上額及び採算並びに資金繰り DI ともに小
幅な改善となった。経営指導員から、好転材料として、①宿泊関連で九州ふっこう割により順調に売上が推移して
いる、②理美容業で猛暑により来店客が増えたため、売上高がやや増加した。また、悪化材料としては、①クリー
ニング業でクールビズや形状記憶商品の普及により、需要が減少している、②飲食業や旅館関連で野菜等の材
料費の上昇により採算が悪化しているとの報告があった。
業種
売上額
採 算
資金繰り
業 況
7月
▲ 20.6
▲ 22.0
▲ 16.4
▲ 22.6
産業全体
8月
前月比
▲ 20.9
▲ 0.3
▲ 22.1
▲ 0.1
▲ 17.3
▲ 0.9
▲ 25.1
▲ 2.5
7月
▲ 30.0
▲ 26.8
▲ 20.3
▲ 27.9
小売業
8月
前月比
▲ 30.0
0.0
▲ 30.0
▲ 3.2
▲ 23.4
▲ 3.1
▲ 34.2
▲ 6.3
業種
売上額
採 算
資金繰り
業 況
7月
▲ 15.5
▲ 19.2
▲ 14.0
▲ 19.3
製造業
8月
前月比
▲ 16.5
▲ 1.0
▲ 19.1
0.1
▲ 16.5
▲ 2.5
▲ 23.6
▲ 4.3
サービス業
7月
8月
前月比
▲ 22.2 ▲ 17.8
4.4
▲ 18.6 ▲ 15.5
3.1
▲ 13.1 ▲ 10.8
2.3
▲ 21.6 ▲ 20.8
0.8
7月
▲ 14.9
▲ 23.4
▲ 18.2
▲ 21.6
建設業
8月
前月比
▲ 19.2
▲ 4.3
▲ 23.9
▲ 0.5
▲ 18.4
▲ 0.2
▲ 21.6
0.0
注)DI(景気動向指数)は
各調査項目について、増加
(好転)企業割合から減少
(悪化)企業割合を差し引い
た値を示す。
全国商工会連合会 企業環境整備課
〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-7-1 有楽町電気ビル北館19F TEL:03-6268-0085 FAX:03-6268-0997 担当:山元
小規模企業景気動向調査(月次)
産業全体の業況…過去10年のトレンド…
悪化
好転
DI
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
-80
-90
7月
5月
16年6月23日
英国のEU離脱に
関する国民投票
3月
2016年1月
11月
9月
7月
16年2月16日
日銀マイナス
金利導入
5月
3月
2015年1月
11月
14年4月
消費税率8%に引
上げ
9月
7月
5月
3月
2014年1月
11月
9月
7月
5月
3月
2013年1月
11月
9月
7月
5月
3月
2012年1月
11月
11年3月
東日本大震災
9月
7月
5月
3月
2011年1月
11月
9月
7月
5月
09年1月
調査開始以来最低数値
(-82.5)記録
3月
2010年1月
11月
9月
7月
5月
08年1月2日
08年09月15日
NY原油先物初 リーマン破産
の100ドル突破 法適用申請
3月
2009年1月
11月
9月
7月
5月
3月
2008年1月
11月
9月
7月
5月
3月
2007年1月
11月
9月
07年8月9日
BNPパリバ、傘下の3ファ
ンドの償還を一時凍結
16年/8月
-25.1
小規模企業景気動向調査(8月期)における商工会経営指導員の主なコメント
*コメントについては、経営指導員回答の原文を掲載。
1.景気全般
<改善傾向を示すコメント>
・外国人観光客の増加により地域の景気は上昇傾向にある。新規出店もあり活気もでてきている。
(広島県宮島町商工会)
・全体として例年並みもしくは例年より微増の意見が多かったように感じた。原材料費の増加はあるものの売り上げも
上がったということで景況感としては良化のコメントが比較的多く聞かれた。
(宮城県栗原南部商工会)
・旧設備の入れ替え、作業場の新築(製造業・自動車修理)、営業車両購入等前向きな借入が目立つ。また材
料仕入れの為の借入も増加している。
(三重県紀宝町商工会)
・プレミア旅行券の効果もあり、観光業特に宿泊業が好調だった。ただ一部事業者からは一過性のものではないかと
の懸念も出ていた。
(大分県九重町商工会)
<悪化傾向を示すコメント>
・夏物商戦でお盆などに期待したが、個人消費の動きは鈍く例年並みとなり低調であった。製造業や建設業の一部
企業で受注は増加傾向にあるが全体的には、横ばい状態が続いており、人材不足も依然解消されていない。
(香川県さぬき市商工会)
・昨年はこの時期に国の施策によるプレミアム商品券の発行より消費喚起があったが、前年同月と比較すると全般
的に低迷している。
(宮城県丸森町商工会)
・原価が上昇傾向となっており、価格への転嫁ができない事業者では採算への影響がでてきている。
(東京都小平商工会)
・特に観光地については、熊本地震の影響による集客・売上減少が続いている。地区内全般的に、消費者マインド
の低迷による売上不振が続いている。
(鹿児島県南九州市商工会)
2.製造業
<改善傾向を示すコメント>
・金属関連の製造業は、付加価値の高い商品の引き合いがあり、一部の事業所で昨年より売上が上がっている。
(石川県中能登町商工会)
・機械製造部品については堅調に推移。仕事の依頼もよく回ってきていて人員不足で断る事もあったとの事。
(宮城県栗原南部商工会)
・自動車部品はおおむね横ばいとなっているものの、自動車は緩やかな持ち直しの動きがみられることから、全体では
緩やかな持ち直しの動きがみられる。
(岐阜県本巣市商工会)
・食料品関連の製造業は、猛暑の影響で季節商品(特にペットボトル飲料など)の売上が好調であった。
(滋賀県甲賀市商工会)
<悪化傾向を示すコメント>
・自動車関連は、需要も一定化しているものの、利幅の減少傾向が強くなっている。
(山形県上山市商工会)
・縫製関係は厳しい状況が続いている。また、他の製造業においても最低賃金の大幅な引き上げにより、更に厳しさ
が増すことが予想される。
(兵庫新温泉町商工会)
・中国経済の減速や円高で元請の受注量が減少し、影響が出ている。
(埼玉県三郷市商工会)
・食料品関連の製造業は、原材料を輸入に頼っているところもあり、為替変動の影響が大きく採算的に厳しい。
(兵庫県太子町商工会)
3.建設業
<改善傾向を示すコメント>
・前年同月と比べると、事業者間の工事受注には差があるものの、町内全体では、個人住宅新築工事・改築工事
は増えている。
(北海道乙部町商工会)
・住宅リフォーム関連の建設業は町外からの受注が多くなってきており、受注件数・売上は増加傾向にあるが、仕入
品の単価の上昇などがあり、採算性は今までと変わりはない。
(千葉県鋸南町商工会)
・公共工事以外にも、島外の民間企業が韓国人を中心とした観光客の需要に対応した商業・宿泊施設の建設を
実施・予定しており受注が増加しつつある。
(長崎県対馬市商工会)
・内装関連の建設業では、リフォーム関連の受注が変わらず好調であり、仕事量が保たれている。しかし、従業員が
少ない事業所では外注に頼らざるを得ない状況であり、利幅があまり大きくなっていない状況。
(岡山県瀬戸内市商工会)
<悪化傾向を示すコメント>
・土木工事関連の建設業は、労働者の不足や賃金上昇等により、受注困難やコスト増により収益を圧迫してい
る。
(青森県大畑町商工会)
・公共工事、民間工事とも受注は結構ありますが、人件費高騰や慢性的な資材高騰により採算が合わない現状に
あり、改善が進まず赤字となる現場が結構でております。
(山形県南陽市商工会)
・公共工事の減少、新築、リフォームの減少で松山市等の遠隔地に行くため諸経費がかかり利益の低下が進んでい
る。
(愛媛県双海中山商工会)
・官公庁の需要が少ないため小規模企業にまで仕事が至ってない。
(静岡県菊川市商工会)
4.小売業
<改善傾向を示すコメント>
・耐久消費財関連の小売業は、きびしい暑さが続いたため、エアコンを中心とした販売が例年になく伸びた。
(愛媛県西予市商工会)
・家電小売業で猛暑による需要増で、一部事業所で売上が伸びているが、偏りが見受けられる。
(島根県石央商工会)
・酒類・飲料水関連の小売業は、猛暑の影響もあり飲料水の売り上げが増加した。
(青森県市浦商工会)
・衣料品は猛暑効果で業況は少々改善傾向だった。同様の理由で耐久消費財・空調関連の引合が上向き傾
向。食料品は仕入価格が落ち着き、採算は改善した。
(富山県射水市商工会)
<悪化傾向を示すコメント>
・前期はプレミアム商品券の発行事業で地域内の消費は好調であったが、今期は商品券発行事業が無いため消費
が低迷している。
(愛知県長久手市商工会)
・衣料品関連の小売業は、ある一定の年齢を超えると全く買わなくなって、年々売り上げが減少傾向になっている。
高齢者の比率が高くなりすぎている。
(奈良県田原本町商工会)
・食料品小売業は、台風の影響が大きく響き、野菜を中心に仕入価格が上昇し、採算が厳しい状況。
(北海道乙部町商工会)
・この夏の猛暑も影響してか、衣料品の売り上げが低調。また、食料品小売業では生鮮品はじめ仕入単価の上昇
がみられ、採算はやや低下したか。
(島根県雲南市商工会)
5.サービス業
<改善傾向を示すコメント>
・宿泊関連のサービス業は、こどもの夏休みや九州ふっこう割クーポン発行により順調に売上が推移している。
(大分県日出町商工会)
・理美容業において猛暑が続いたからか、来店客が増え売上高がやや増加した。
(岡山県浅口商工会)
・宿泊関連業は全般的に前年と大差はない状況であるが、海水浴場周辺の宿泊施設は軒並み前年度と比較して
10%前後の売り上げ増となった。
(島根県石央商工会)
・飲食業は暑さも例年並みでアルコールもよく出た。全体としては例年並みかやや増加といったところとの事。
(宮城県栗原南部商工会)
<悪化傾向を示すコメント>
・クリーニング業では、夏場はカジュアルファッションやクールビズと形状記憶シャツの普及で需要が減少している。また、
美容業では、顧客が固定化されて増減があまりない。
(岡山県備前東商工会)
・飲食業は、材料費の上昇で価格変更もできず、採算面で厳しい。運送業者は、円高で燃料費は下落傾向であっ
たため一息ついた状態であるが、変動を見守っている状況である。
(香川県さぬき市商工会)
・旅館関連のサービス業は野菜価格の高騰などによる仕入単価の増加があり、採算に若干影響が出ている模様。
まつり、お盆などの需要は例年並み。
(秋田県かづの商工会)
・理・美容関連のサービス業は、年々低料金設定の店舗が開業することから自社の売上に影響を与えている。高齢
化・後継者不足ということもあり、廃業者が徐々にではあるが、目立ち始めた。
(愛媛県長浜町商工会)