1. 脳血管動静脈分離

第 20 回
CT サミット報告
●エキスパートによる新たな技術の展開─その 2
1.脳血管動静脈分離
近藤 康洋 ザイオソフト(株)臨床応用開発グループ
ザイオソフトは医用画像処理メーカー
く,依頼することができたとしてもスライ
言い換えれば,この「後処理」さえ解決す
であり,1998 年に CT や MRI などで得ら
ス厚や再構成関数の変更程度であったと
ることができれば,多くの施設が 1 相撮影
れたボリュームデータからポストプロセッ
思われる。
を選択できる可能性があるとも言える。
シングにより三次元画像を構築するワー
しかし,近年ワークステーションによる
本稿では,
「ポストプロセッシングの立場
クステーションを製造開始した。以降今
画像処理は,放射線科のみならずそのほ
から撮影方法を変えることができるのか」
日までこのポストプロセッシングの研究開
かの診療科での利用も増えている。その
というテーマの下,それを実現するための
発に注力してきた。
用途は後処理した画像を利用した診断や
脳動静脈自動分離の技術開発について紹
モダリティの近年の進歩については言
治療方針の決定,術前のシミュレーショ
介する。
うまでもないが,モダリティの発展に伴い
ンなど多岐にわたる。
さまざまな分野でのボリュームデータの利
そのような流れを受け,臨床において質
ポストプロセッシングの
立場から撮影方法を
変えることができるのか
用や,各診療科から求められる質も高まり,
の高い画像への要求が強まる中,診断価
高度な画像処理が必要となる機会が増え
値の高い元画像の撮影プロトコールが存
ている。ボリュームデータを最大限に生か
在しているのにもかかわらず,実際には撮
すためのポストプロセッシングによる画像
影が行われていないものが存在する。その
「撮影方法を変えることができるのか」
処理を確立すること,また画像処理技術
一つが脳血管 CTA であり,脳血管の動脈
という大きなテーマではあるが,本稿で
の進歩を緩めないために,われわれは歩み
および静脈の解剖構造や走行を細部まで
は「被ばく」の面から話を進めたい。
を止めることなく「実臨床での画像処理の
把握するため,末梢血管が最も造影され
被ばくに関してわれわれがかかわるこ
効率化」と「最先端技術の研究開発」とい
る 1 相を撮影することが理想とされてはい
とができるのは,1 つ目は被ばく線量そ
う 2 本の柱を軸に製品開発を行っている。
るが,実際の撮影では動脈相と静脈相を
のものを低減することができるのか,2 つ
ただし,われわれの製品が貢献できるの
分けた 2 相撮影という方法がとられている。
目は撮影回数を減らすことができるのか
はあくまでポストプロセッシング,すなわ
開頭手術前に脳内の動脈と静脈の位置
という 2 点 であり, 前 者 については
ち「後処理」である。撮影装置を持たない
関係を術者が把握することは重要であるた
“PhyZiodynamics”を用いたアプローチ
われわれにとっては,モダリティで生成さ
め,脳血管 CTA データを用いた 3 D 画像
による被ばく線量低減の検討が 2013 年
れた画像データをどれだけ活用できるか,
は術前シミュレーション画像として利用さ
の製品リリース以降,多くの施設で行わ
というのが大きなテーマである。
れており,近年ではコンピュータグラフィッ
れている。
一昔前であれば,造影を含む撮影方法
クスを用いた表示方法についても報告さ
脳血管 CTA の撮影とは異なるが,神
に対して,画像処理メーカーが口を出す
れている 。しかし,実際の臨床現場で多
戸大学の Nishiiらの報告 2)では,冠動脈
のは「タブー」とされていたはずである。な
くの施設が 1 相撮影ではなく,動脈相と
CTA の撮影プロトコールにて通常の 1 / 4
ぜなら,CT や MRI などの診断は元画像
静脈相に分けた 2 相撮影を選択し,画像
の線量で撮影したデータに対し,周囲の位
による読影・診断が基本であり,三次元
処理に利用している理由はなぜだろうか。
相のデータを利用した PhyZiodynamics
1)
画像やボリュームデータの画像処理はあく
それは皮肉なことにも「後処理」の手間
処理を行うことでノイズ低減効果が認
まで付加価値という立場であった(現に
が非常に複雑で,時間がかかることであっ
められ,CNR などの画質評価において
保険点数が加算されている対象は,一部
た。施設間で差はあるものの,実臨床で
の領域に限られているのが現状である)
。
1 症例に多くの画像処理時間を費やすこ
も良好な結果が得られると報告があった
(図 1)
。
特に CT においては,被ばくの面からも
とは難しい。そのため,1 相撮影のデータ
同様に脳血管 CTA についてはザイ
読影を行う元画像に影響を与えてしまう
を利用した脳動静脈の画像処理は一部の
オソフトでの検討結果ではあるが,フ
ような条件をわれわれが提案することはな
施設でしか行われていないのが現状である。
ル再構成の元データと,ハーフ再構成
30 INNERVISION (31・10) 2016
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