流産してしまいました。 いったいどうして

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医
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早期流産
手術
①
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流 産してしまいました。
いったいどうして ?
ほとんどの原因は赤ちゃん側に。
お母さんのせいではありません !
● 自然流産は全妊娠の 8 ∼ 15% くらいの割合で起こる、比較的多い症例です。
妊娠 12 週までの流産を「早期流産」
、
妊娠 12 週以降 22 週未満の流産を「後
期流産」といい、ほとんどが妊娠 12 週までの早期流産です。
● この時期の流産の 50 ∼ 60% は妊卵の異常(染色体の病気)といわれてい
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出
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解
説
て、
現在の医療では治療することができません。つまり赤ちゃん側に原因があり、
お母さんの日常生活などに起因するものではありません。
● 流産は子宮の中身が完全に排出されている「完全流産」の場合と、一部が子
宮内に残留している「不完全流産」の場合があります。
「不完全流産」の場合、
流産手術を行って妊卵と胎盤を取り出すか、自然に排出されるのを待つかを検
討することになります。
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早期流産
手術
②
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流 産したら手術を
しなくてはいけないの ?
早期流 産は、手術をすることも
自然な排出を待つことも可能です
● 流産手術をした場合も、しないで待機した場合でも感染症の発症率に差はな
かったという研究報告があります。ただし待機の場合は、出血や腹痛による緊
急入院率や、突然の流産手術が必要になる率が高いという結果もあることか
ら、当センターでは手術を行うことをお勧めしています。
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● 出血や腹痛は妊卵を取り出し、子宮がリセットされることで改善します。流産手
術の目的は、出血や腹痛のリスクをなくすことと、胎盤から出る HCG というホ
ルモンを止めることです。
● 子宮内で少しずつ出血が始まっているような場合には、手術をせずに自然な排
出を待つ方法で 7 割くらいがうまくいくという報告もあります。その場合、希望
によっては経過観察も可能ですが、突然出血や腹痛が起きることがあり、手術
になる場合もあります。
● 妊娠 12 週∼ 22 週の後期流産の場合は、
薬を使用して子宮収縮を促すことで、
赤ちゃんと胎盤を排出する方法をとります。つまり外科的手術ではなく、出産と
同様の方法をとることになります。
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早期流産
手術
③
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流 産手術って
どう行われるの ?
1 泊入院で行いますが、
手術にかかるのは 30 分ほどです
● 手 術自体は 30 分以内に終了するものですが、当センターでは万全を期して 1
泊入院で流産手 術を行います。ご本人は点滴による全身麻酔で眠っている間
に手術は終了します。手術で摘出された子宮内容物は、病理組織学的検査に
提出し、絨毛組織であったことを確認し、子宮外妊娠の否定や絨毛性疾患で
ないことを確認します。手術時には、ご家族のどなたかに病棟での待機をお願
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いしております。
● 術後は病室で数時間休んでいただき、出血が少ないこと、お腹の痛みが軽度
であること、麻酔から覚めていることなどが確認できたら退院となります。少量
の出血が続くことは特に問題はありません。
シャワーや入浴も通常どおり可能で、
ご自宅で過ごす際に特にやってはいけないことはありません。
● 流産手術には、下記のリスクが考えられます。
① 感染:十分に消毒をし、清潔に行いますが、流産後長期間経過している場合など、ま
れに術後に発熱などの感染症を疑わせる症状がみられることがあります。その場合、
入院して抗生剤の投与などの治療が必要になることがあります。
② 頸管裂傷:頸管拡張処置などで裂傷が起こることがあります。これを防ぐため、ラミ
ナリア桿(「分娩誘発」参照)を用いてゆっくりと拡張処置をします。
③ 子宮穿孔:子宮内処置で穴をあけてしまうことがあります。小さな穿孔の場合は子宮
収縮薬、抗生剤を投与し、経過観察をしますが、大きい場合は開腹手術が必要になる
場合があります。
④ 子宮内容遺残:術後数週間しても出血が持続する原因になったり、感染源となって発
熱や腹痛の原因になることがあります。子宮収縮薬の投与で経過観察できる場合もあ
れば、再手術(子宮内容除去術)が必要になることもあります。
⑤ 子宮内腔の癒着:ごくまれに子宮内腔に処置のために過度に傷がつくと、癒着が起こ
ることがあるとされています。
⑥ 子宮収縮不全:子宮が収縮せず、大量に出血すること(
「弛緩出血」参照)
。