C F 予 算 の 必 要 性 と 構 築 モ デ ル

古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、「人間は目標を追い
ガバナンスに関する報告書」
に明記することが上場会社に義務づけ
則の実施状況及び実施していない場合の理由」
を
「コーポレート・
げ、 負 債 の リ ス ク を 引 き 下 げ て
「人
財 純 資 産 価 値 の 最 大 化 」を 図 る こ と
が「 経 営 の 本 質 」で あ る。「 働 く 」と い
お 金 は 勝 手 に 増 え る も の で は な く、
う字は
「 イ( ヒ ト )」が「 動 く 」と 書 く。
画実現のための具体策を、株主にわかりやすい言葉・論理で明確
やす」
手段が「予算」である。
予算管理のポイント
予実
結集し、チーム力によってお金を増
「共通目標を設定して人の行動を
人が動くからこそ増える。
す活動の目標となるCF予算の構築が不可欠であると考える。
来の成長のための投資」
が必要であり、
その原資である
「お金」
を増や
ある。「持続的成長」
を実現するためには、M&Aをはじめとする
「将
コーポレートガバナンス・コードの主たる目的は
「持続的成長」
で
営のPDCAサイクル」
についての厳格な説明責任が問われる。
開示される中期経営計画は実質上
「投資家への公約」
となり、「経
に説明を行うことが要請されている。
同原則5―2
「経営戦略や経営計画の策定・公表」
では、経営計
られた。
求める動物である」
という言葉を残している。
会社経営のうえでは
「社員
(=人間)
が追い求める目標のベクトルを会社の経営目標に
キャッシュ・フロー経営が標榜されて久しい。
しかし、経営目標
統合するために
『予算』
を設定する」
ことが合理的である。
はキャッシュ・フロー予算
(以下、「CF予算」
という)
になっていな
い。損益予算
(以下、「PL予算」
という)
のままである。経営者がP
L予算の達成目標を無理に押しつけると、不正会計の引き金にな
る。
東芝は不正会計再発防止のため、「CF予算に基づく業績評価
制度」
を導入した。
開示制度に目を向けると、有価証券報告書の財務諸表には減損
予算作成」、「
着地予想」の3つに分かれ
予算業務は「
管理」、「
予算作成」とは、当期の第4四
対 照 表 に は 掲 載 さ れ て い な い( オ フ
(オンバランス)。一方、「人」は貸借
「お金」は貸借対照表に掲載される
る。
のも人であり、リスクとしての負債
ある一方、不正や違反などを起こす
に大きな差が生まれる。人は資産で
人の価値になるのかでは会社の成長
人の価値しか生み出せないのか、
において全社・部門別に月次予算と
「
される。
期予実管理の課題を基礎として作成
予実管理」とは、次期月次決算
算編成方針は中期経営計画および当
バ ラ ン ス )。 本 来 で あ れ ば、 目 に 見
経営の本質は
「 お 金 」と
「 人 」で あ
る。
月次実績を比較し、差異原因を分析
期業績評価の基礎となる。なお、予
を得る業務をいう。各部門予算は次
し、内容を検証して取締役会の承認
た部門予算を集計、総合予算を作成
門が次期行動計画に基づいて作成し
算編成方針を各部門へ示達し、各部
半期において、次期目標としての予
「
関係上、以下の概要説明にとどめる。
予算業務の内容については紙幅の
る。
1
会計や繰延税金資産の回収可能性など、予測の概念が多く含まれ
そこで、本稿では
「どのように予算の精度を向上させ、さらに予
算の高度化を図って、CF予算の構築を実現するか」
について考察
する。
なお、
本稿の見解に係る部分は、
筆者個人の私見である。
2
ている。
IFRSでは
「将来キャッシュ・フローの予測に資する」
こ
とが重視される。
2015年6月1日より
「コーポレートガバナンス・コードの原
不正の予防にも役立つ
CF予算の必要性と
構築モデル
3
でもある。人財の資産価値を引き上
だ。たとえば、 人が働く会社が3
1
えない
「人財貸借対照表」があるはず
液 」で あ り、 流 れ が 止 ま れ ば 死 に 至
10
「 お 金 」は 人 の 身 体 に 例 え る と
「血
経営の本質と
予算の関係 第1 章
2
30
10
経理情報●2016.10.1(No.1458)