金融テーマ解説 Financial Market Update 2016/09/20 チーフ・アナリスト 大槻 奈那 日銀・金融政策に関する個人投資家アンケート結果 ~緩和効果に対し一層懐疑的に マネックス証券では、9 月 14 日から 16 日にかけて、個人投資家向けに日銀の金融政策に関するサ ーベイを行い、554 名から回答を得た。 これによれば、総じて日銀の金融政策の効果について懐疑的な見方が強くなっており、期待感よ りは懸念が強くなっている様子がうかがえる。 政策の中では、特に、マイナス金利深堀りの可能性が投資家マインドに悪影響を与えている。も っとも、株式市場動向次第でこれらの回答は変化しうることから、今後も定期的に個人投資家の センチメントを確認していくこととしたい。 【金融政策に関するアンケート調査結果のポイント(9 月 14~16 日実施)】 1年前に比べて「家計を引き締めている」という回答は、「緩めている」という回答の 10 倍 近い 44.9%に上った。この値は、前回 8 月の調査に比べても上昇している(図表 1) 。 同じく投資意欲の変化についても訊いたところ、マイナス金利導入以降「投資意欲が減退し た」という回答が前回調査を上回る 32.1%に上った(図表 2) 。逆に、 「投資意欲が高まった」 という回答は 8.8%と、前回調査から更に低下した。 また、日銀のマイナス金利導入はインフレ期待醸成に貢献しているかどうかという問いに対 しては、過半数の 51.8%の個人投資家が「貢献していない」と答える一方、「貢献している」 という答えは 9.4%と一桁台に留まった(図表 4) 。 今後の金融緩和の時期の予想は、9 月がやや低く、それ以降の会合にほぼ均等に分散した(図 表 5)。 予想される緩和手段を複数回答で選んでもらったところ、意外にも「マイナス金利の拡大」 が最も多かった(図表 6)。ところが、続く「日銀がどのような金融政策を行ったら、投資に 強気になれるか (複数回答可)」という質問については、「マイナス金利の拡大」は選択肢の 中で最低値となった(図表 7)。マイナス金利深堀りへの懸念が投資マインドを冷やしている 模様である。 回答者のプロフィールを見ると、株式投資の経験が 10 年以上の人の割合が 58%と高い(回答 者プロフィール欄参照) 。投資経験が長い人々までも、近時の金融政策で投資意欲を削がれつ つあるという点に注意が必要であろう。 -1– Copyright (C) 2008 Monex, Inc. All rights reserved. Financial Market Update 図表 1:昨年の今ごろと比べて、家計支出を引き締めていますか、緩めていますか(回答者数 554 名) 201609 44.9% 201608 4.7% 37.7% 0% 50.4% 9.1% 20% 40% 引き締めている 53.2% 60% 緩めている 80% 100% 変わらない (出所)マネックス証券作成 図表 2:今年 1 月の日銀のマイナス金利導入決定後、あなたの投資意欲に変化はありましたか?(回答 者数 554 名) 201609 8.8% 201608 10.7% 0% 59.0% 32.1% 76.0% 20% 投資意欲が高まった 40% 13.3% 60% 投資意欲は変わらない 80% 100% 投資意欲が減退した (出所)マネックス証券作成 -2Copyright (C) 2016 Monex, Inc. All rights reserved. Financial Market Update 図表 3:具体的にはどのような資産に投資、または投資を検討しましたか(回答者数 49 名) 具体的にはどのような資産に投資、または投資を検討しましたか 日本株/日本株投信 42 外国株/外国株投信 12 その他 8 J-REIT 7 日本債券関連投信 5 外国債券関連投信 4 0 10 20 30 40 50 (出所)マネックス証券作成 図表 4:日銀のマイナス金利導入は、インフレ期待の拡大に貢献していると思いますか(回答者数 554 名) 日銀のマイナス金利導入は、インフレ期待の拡大に貢献していると思いますか 9.4% 38.8% 51.8% 貢献している 貢献していない わからない/どちらともいえない (出所)マネックス証券作成 -3Copyright (C) 2016 Monex, Inc. All rights reserved. Financial Market Update 図表 5:日銀の次の追加緩和の時期はいつだと思いますか(回答者数 554 名) 日銀の次の追加緩和の時期はいつだと思いますか 17.9% 27.6% 26.2% 28.3% 9月 10月 12月 それ以降 (出所)マネックス証券作成 図表 6:2016 年 9 月と回答した方におたずねします。今回 9 月に追加緩和があった場合に、予想され る手段をお選びください。 (複数選択可) 今回9月に追加緩和があった場合に、予想される手段をお選びください 67 マイナス金利幅の拡大 36 ETF・JREITの更なる増額 22 長期金利を引き上げ、長短金利差を拡大 国債の買い入れ対象の拡大(財投機関債、地方債、長 22 期社債等) 18 国債買い入れ増額 10 国債の直接引き受け(いわゆるヘリコプターマネー) 4 その他 0 20 40 (出所)マネックス証券作成 -4Copyright (C) 2016 Monex, Inc. All rights reserved. 60 80 Financial Market Update 図表7:日銀がどのような金融政策を行ったら、投資に強気になれますか? (複数回答可) 日銀がどのような金融政策を行ったら、投資に強気になれますか? (複数回答可) 156 ETF・JREITの更なる増額 153 長期金利を引き上げ、長短金利差を拡大 125 国債の直接引き受け(いわゆるヘリコプターマネー) 国債の買い入れ対象の拡大(財投機関債、地方債、長期社 118 債等) 97 その他 82 国債買い入れ増額 78 マイナス金利幅の拡大 0 50 100 150 200 (出所)マネックス証券作成 【回答者のプロフィール】 回答者数 554 名 年代 未成年 20代 30代 40代 50代 60代 70歳超 全体 株式投資の経験 売買頻度 0.2% 0.7% 9.9% 26.0% 27.1% 25.3% 10.8% 100.0% デイトレード 週に数回 月に数回 数ヶ月に1回 それより少ない 全体 5.4% 14.1% 31.9% 26.7% 21.8% 100.0% 1年未満 1年~5年 5年~10年 10年以上 全体 -5Copyright (C) 2016 Monex, Inc. All rights reserved. 7.6% 15.3% 18.8% 58.3% 100.0% Financial Market Update 当社は、本書の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではござい ません。記載した情報、予想及び判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推 奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではご ざいません。 提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。当 社は本書の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資に かかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。本書の内容に関する一 切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはでき ません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。 マネックス証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第165号 加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会 -6Copyright (C) 2016 Monex, Inc. All rights reserved.
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