ITPGRにおける多数国間制度の運用改善と生物多様性条約名古屋議定書の状況について 山本 昭夫(農林水産省大臣官房政策課環境政策室) Functioning of the Multilateral System of the ITPGRFA + recent progress in implementing the Nagoya Protocol to the CBD YAMAMOTO Akio (Environment Policy Office, Policy Planning Div., Minister’s Secretariat, MAFF) ポイント (1)食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR)では,その中心的な仕組みである「多数国間の制度」(Multilateral System: MLS)の機能改 善方策(より具体的には「定型の素材移転契約」(Standard Material Transfer Agreement: SMTA)の改定)を検討中である.この検討 には,利益を配分すべき側に立つ,遺伝資源利用者の声を反映させることが重要である. (2)名古屋議定書は,生物多様性条約(Convention on Biological Diversity: CBD)の下で遺伝資源へのアクセスが適正に行われたこ ととなるような措置(手続き)を定めているだけである, 議定書14条に基づき設けられる情報交換センター(Access and Benefitsharing Clearing-house: ABSCH)への掲載事項を見ると,こうした議定書を機能させるための仕組みのイメージがつかめる. なお, 我が国では,政府内部で同議定書を実施するための国内措置を,引き続き検討中である. 説 明 (2)名古屋議定書について (1) ITPGRの多数国間の制度(MLS)の改善 ●次回理事会((締約国会議) 2017年秋頃)までに,次の方 向をめざして検討する. ・利益配分面・・・利益配分基金への資金流入の増大 ・アクセス面・・・入手可能な遺伝資源の増大 ●名古屋議定書は,遺伝資源への「アクセス」が適正 に行われていることとなるよう要求しており,遺伝資 源の「利用」場面を問題としているわけではない(15 条). ●利益配分面では,現在利用されている「定型の素材移転 契約」(SMTA)を改定し,従来の利用素材ベースではな く利用者に着目して課金する Subscription System を導 入するほか,現行の支払いルール(支払い水準,義務 的支払いかどうかなど)の変更を検討する. ●このことは,ABSCH(下のURL参照)の主要掲載事 項から明らかであり,提供国側の法制度やアクセス の許可証など,アクセスに関する情報が提供されて いる. ●アクセス面では,MLSへの登録遺伝資源数の増大などを 検討する. https://absch.cbd.int/ ●この検討は,次回理事会の半年前までに結果を得るので, 来年春までが実質的な検討期間である(次の交渉は7月 に実施). 次回理事会議長による総合解説は, ●よって,ABSCHを活用することは,名古屋議定書 が求めていることに対応する上で大きなポイントと思 われる. http://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/pdf/itpgr.pdf ●我が国政府は,現在も国内措置を内部検討中. 依頼事項 ●MLSの見直しについては,このシステムの利用者(附属書Ⅰに属する作物の育種や研究を行っている者) は,主として国の独立行政法人や都道府県の試験場(旧指定試験地)及び大学等が想定されるので,とくに これらの者との間で意思疎通のチャンネル強化が必要である(下の連絡先までご意見を). ●名古屋議定書について,まずは同議定書が求めていること(=アクセスの適正化)を正確に理解していた だくとともに,ABSCHをご覧いただいてその運用イメージをつかんでいただきたい. ●ご質問・ご意見は, 農林水産省大臣官房政策課環境政策室(利用推進班) 電話:03-6744-2017 ●参考となるサイトは, http://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/s_win_abs.html (この内容は,園芸学会においても発表予定です.)
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