このコラムをPDFで印刷する - 新卒採用支援

新卒採用サポネット
HR リサーチコラム
◆地方創成をけん引する企業への就職◆
地方創成をけん引する企業への就職
投 稿 日 : 2016 年 09 月 23 日
今回のコラムのテーマは「地方創成をけん引する企業への就職」です。U ターンから派生した言葉に「I ターン」(大都市
でもなく自分の地元でもない地方で職に就くこと)がありますが、これは長野県の元参議院議員の小山峰男さん という方
が考案した言葉だそうです(出典:ウィキペディア「I ターン」より)。先日、長野県にあるテレビ局、テレビ信州の方から「東
京の大学生に地元の企業を見学してもらうというイベントを取材するのですが、I ターン就職が増えているというデータは
ありませんか」という問い合わせを頂きました。残念ながらご希望に沿うデータを用意できなかったのですが、「各地方の
地元企業への就職を東京の学生にアピールする」という活動を応援するため、「地方(=東京以外)に本社のある企業
への就職」というテーマを追求してみたいと思いました。
使用するデータは「2017 年卒マイナビ内定者意識調査(調査期間:2016 年 6 月 22 日~7 月 18 日)」です。この中の「す
でに入社予定先の企業を決めている」学生の「入社予定先の本社所在地」をもとに、「東京(=東京に本社のある企業
に入社予定)」と「東京以外(=東京以外に本社のある企業に入社予定)」 に分けて、その違いを分析します。さらに「東
京以外」を 10 地区「北海道」「東北」「関東(東京除く)」「甲信越」「東海」「北陸」「関西」「中国」「四国」「九州」に分け、各
地区の特色を分析します。また、同調査の「卒業高校所在地の都道府県(=地元)」と「入社予定先本社所在地の都道
府県」が一致する学生を『地元就職予定』と定義します。「I ターン就職」は「東京以外に本社がある企業に『地元就職予
定』でない学生が就職した場合」と考えます。これらを踏まえて分析を進めていきます。
なお、「地元就職」に関する考察としては、以前、法政大学キャリアデザイン学部の田澤実准教授に「出身高校・卒業
大学・希望勤務地と地元志向」というコラムをご執筆いただきました。また「2016 年度(2017 年卒)新卒採用・就職戦線
総括」の P44 でも「今年の内々定保有者の『地元就職予定』状況」と題したレポートを掲載しております。これは「卒業高
校所在地区」を軸にした分析です。これらも合わせてご覧頂ければと思います。
学生の入社予定先本社所在地の分布と『地元就職予定』割合
まずは「学生の入社予定先本社所在地の地区別分布」です。入社予定先を決めている学生 2,920 名のうち「入社予定
先の本社所在地」が「東京」の学生は 44.8%を占めています。このコラムのテーマである「地方(=東京以外)に本社の
ある企業への就職」に該当する学生は残りの 55.2%です。各地区の分布は下図の通りとなっています。
==================================================================================
©Mynavi Corporation
※HR リサーチコラムは、 新 卒 採 用 人 事 担 当 者 の た め の 採 用 支 援 サ イ ト 新 卒 採 用 サ ポ ネ ッ ト で
毎 月 更 新 さ れ て い ま す 。 http://saponet.mynavi.jp/column
新卒採用サポネット
HR リサーチコラム
◆地方創成をけん引する企業への就職◆
図 1 学生の入社予定先本社所在地の地区別分布
次に『地元就職予定』の学生の割合(=出身高校都道府県が入社予定先本社所在地都道府県と一致する学生の割
合)を見ていきます。入社予定先の本社所在地が「東京」の学生の『地元就職予定』の割合は 20.1%で、約 8 割は他の
道府県出身であることが分かります。一方、入社予定先の本社所在地が「東京以外」の学生の『地元就職予定』の割合
は 51.1%と半数を超えています。地区別に見ていくと、最も『地元就職予定』の割合が高いのは、入社予定先の本社所
在地が北海道地区(77.2%)のケースで、甲信越地区(76.3%)、北陸地区(74.6%)がこれに続いています。最初に述べ
た通り「I ターン就職」を「東京以外に本社がある企業に『地元就職予定』でない学生が就職した場合」と考えると、北海
道地区、甲信越地区、北陸地区に本社のある企業に就職する学生の「I ターン就職」の割合は相対的に低いと言えます。
図 2 入社予定先本社所在地区別・『地元就職予定』割合
==================================================================================
©Mynavi Corporation
※HR リサーチコラムは、 新 卒 採 用 人 事 担 当 者 の た め の 採 用 支 援 サ イ ト 新 卒 採 用 サ ポ ネ ッ ト で
毎 月 更 新 さ れ て い ま す 。 http://saponet.mynavi.jp/column
新卒採用サポネット
HR リサーチコラム
◆地方創成をけん引する企業への就職◆
入社予定先本社所在地区別の従業員規模の内訳
続いて、入社予定先企業の従業員規模別の内訳 を「学生の入社予定先の本社所在地」の地区で分析します。「従業
員 5,000 人以上の企業に入社予定の学生の割合」は、入社予定先の本社所在地が「東京」の学生では 29.8%であるの
に対し、「東京以外」の学生では 12.3%と半分以下です。地区別では、四国地区(0.0%)、東北地区(3.3%)、中国地区
(3.9%)で特に低くなっています。一方「従業員 100 人未満の企業に入社予定の学生の割合」は、入社予定先の本社所
在地が「東京」の学生では 4.4%であるのに対し、「東京以外」の学生では 9.2%です。地区別では北海道地区(15.8%)、
九州地区(12.3%)、四国地区(12.2%)で特に高くなっています。以上のことから、東京以外の地区では新卒学生の就
職先において中堅・中小企業の占める割合が比較的高いと言えます。
図 3 入社予定先本社所在地区別・従業員規模別の内訳
地区ごとの特徴的な業種と本社所在地域別ランキング
今度は、入社予定先企業の業種の内訳 について「学生の入社予定先の本社所在地」の地区で分析したとき、特に特
徴的なものについて取り上げていきます。入社予定先として割合が高い業種は、入社予定先の本社所在地が「東京」の
==================================================================================
©Mynavi Corporation
※HR リサーチコラムは、 新 卒 採 用 人 事 担 当 者 の た め の 採 用 支 援 サ イ ト 新 卒 採 用 サ ポ ネ ッ ト で
毎 月 更 新 さ れ て い ま す 。 http://saponet.mynavi.jp/column
新卒採用サポネット
HR リサーチコラム
◆地方創成をけん引する企業への就職◆
学生と「東京以外」の学生で、下表のとおり大きな違いがありました。
図 4 入社予定先として割合の高い業種・入社予定先本社所在地が「東京」「東京以外」で比較
このうち入社予定先の本社所在地が「東京以外」の学生について、地区別に業種の内訳の特徴を見ていきます。最も
割合が高い「銀行・証券・信金・労金・信組」は、中国地区(23.5%)、甲信越地区(17.1%)、東北地区(16.7%)で特に高
い割合です。また、2 番目に割合の高い「食品・農林・水産」は、中国地区(17.6%)、東北地区(13.3%)、九州地区
(10.7%)で高くなっています。他の業種で特徴的だったのは、東海地区における「自動車・輸送用 機器」の割合の高さ
(東京以外 6.7% → 東海 20.1%)です。
こういった業種が、特定の地区で入社予定先として高い割合になる理由について考えたとき、関連がありそうなのが
「2017 年卒マイナビ大学生就職企業人気ランキング」(調査期間:2016 年 3 月 1 日~4 月 20 日、日本経済新聞社と共
同で実施)の「本社所在地域別ランキング」です。これは「北海道」「東北」「東海・北陸」「関西」「中国・四国」「九州・沖縄」
のそれぞれの地域に本社のある企業に対する就職活動中の学生の人気ランキングです。 この「本社所在地域別ラン
キング」と「入社予定先企業の業種の地区別内訳」を見比べたとき、特に強い関連がありそうなのが、東海地区の「自動
車・輸送用機器・自動車部品」と中国地区の「食品・農林・水産」です。
図 5 入社予定先本社所在地区別・業種の内訳(特徴的な業種を抜粋)
==================================================================================
©Mynavi Corporation
※HR リサーチコラムは、 新 卒 採 用 人 事 担 当 者 の た め の 採 用 支 援 サ イ ト 新 卒 採 用 サ ポ ネ ッ ト で
毎 月 更 新 さ れ て い ま す 。 http://saponet.mynavi.jp/column
新卒採用サポネット
HR リサーチコラム
◆地方創成をけん引する企業への就職◆
図 6 本社所在地域別企業人気ランキング・東海・北陸/中国・四国
東海・北陸地域に本社所在地のある企業のランキングでは、トップ 30 に「自動車・輸送用機器」の企業が 8 社ランクイ
ンしています(1 位 トヨタ自動車、3 位 デンソー、4 位 アイシン・エィ・ダブリュ、5 位 アイシン精機、10 位 豊田自動織機、
19 位 ヤマハ発動機、23 位 スズキ、24 位 トヨタ紡織)。本社所在地はヤマハ発動機とスズキが「静岡県」、他は「愛知
県」と、すべて東海地域です。ランク外の 31 位から 50 位にも、さらに 3 社の「愛知県」に本社のある「自動車・輸送用機
器」の企業がランクインしています。
中国・四国地域に本社所在地のある企業のランキングでは、トップ 30 に「食品・農林・水産」の企業が 6 社ランクインし
ています(2 位 オハヨー乳業、3 位 カバヤ食品、4 位 アヲハタ、5 位 山田養蜂場グループ、6 位 オタフクソース、11 位
アンデルセングループ)。本社所在地はオハヨー乳業、カバヤ食品、山田養蜂場グループが「岡山県」、アヲハタ、オタフ
クソース、アンデルセングループが「広島県」で、すべて中国地域です。ランク外の 31 位から 50 位にも、さらに 2 社の「岡
==================================================================================
©Mynavi Corporation
※HR リサーチコラムは、 新 卒 採 用 人 事 担 当 者 の た め の 採 用 支 援 サ イ ト 新 卒 採 用 サ ポ ネ ッ ト で
毎 月 更 新 さ れ て い ま す 。 http://saponet.mynavi.jp/column
新卒採用サポネット
HR リサーチコラム
◆地方創成をけん引する企業への就職◆
山県」に本社がある「食品・農林・水産」の企業がランクインしています。
これら 2 つのケースについては、その地域の「人気企業」が多くある「業種」が就職のけん引役になっていると推察さ
れます。多くの学生は企業の本社所在地を知りません。そんな中、全国的に知名度がある「地域に根差した優良企業」
が積極的に新卒採用 PR を行うことで、就職活動中の学生の人気を獲得し、「地方に本社のある企業」に目を向けるきっ
かけとなったのではと思います。
なお、「銀行・証券・信金・労金・信組」についても、東北地域のランキングで 15 社、中国・四国地域のランキングで中国
地域に本社のある企業が 7 社と多数ランクインしています。これらについては地域に根ざした金融機関が就職をけん引
していると言えるでしょう。
入社予定先本社所在地区別の企業選択の理由
最後に「地方に本社のある企業」に入社予定の学生の企業選択の理由について特徴を調べてみました。「企業属性
(2 つ選択)」の「やりたい仕事がある(ありそう)」の割合は、入社予定先の本社所在地が「東京」の学生は 45.6%、「東京
以外」の学生は 45.5%とほぼ同じでした。地区別では、四国地区(31.7%)、中国地区(40.2%)、九州地区(40.2%)、で
特に低くなっています。四国地区、中国地区、九州地区では「やりたい仕事」の創出が地方に学生を呼び込むための課
題の 1 つなのではと思われます。「社風が良い・よさそう(全体 32.3%)」については、入社予定先の本社所在地が「東
京」の学生は 29.0%なのに対し「東京以外」の学生は 35.0%と高い割合でした。地区別では四国地区が 43.9%と目立っ
て高く、次が関東地区(東京除く)(39.3%)、関西地区(36.2%)です。
図 7 入社予定先本社所在地区別・企業選択の理由・企業属性(2 つ選択)
「やりたい仕事がある(ありそう)」「社風が良い・よさそう」の割合
==================================================================================
©Mynavi Corporation
※HR リサーチコラムは、 新 卒 採 用 人 事 担 当 者 の た め の 採 用 支 援 サ イ ト 新 卒 採 用 サ ポ ネ ッ ト で
毎 月 更 新 さ れ て い ま す 。 http://saponet.mynavi.jp/column
新卒採用サポネット
HR リサーチコラム
◆地方創成をけん引する企業への就職◆
「人物(2 つ選択)」で差が出たのは「社長・役員の印象が良かった」で、「東京」が 20.5%に対し「東京以外」は 29.2%で
した。中国地区(40.2%)、甲信越地区(35.5%)、九州地区(35.2%)で高い割合で、これらの地区には「魅力的な社長・
役員」の方が多いのではと想像されます。中堅・中小企業に入社する割合が高いので社長や役員の方に直接会う機会
が比較的多いのでしょう。「先輩社員(OB・OG)の印象が良かった(東京 33.6%、東京以外 33.2%)については、四国
地区(46.3%)で非常に高く、東北地区(40.0%)、中国地区(38.2%)、九州地区(36.1%)でも高い割合でした。
図 8 入社予定先本社所在地区別・企業選択の理由・人物(2 つ選択)
「社長・役員の印象が良かった」「先輩社員(OB・OG)の印象が良かった」の割合
魅力的な社長や役員の講演で社風の良さをアピールし、仕事のやりがいについては先輩社員を通じて伝えていく 。基
本的なことではありますが、こういったことが地方の企業への就職につながるひとつの戦略であると言えそうです。
==================================================================================
©Mynavi Corporation
※HR リサーチコラムは、 新 卒 採 用 人 事 担 当 者 の た め の 採 用 支 援 サ イ ト 新 卒 採 用 サ ポ ネ ッ ト で
毎 月 更 新 さ れ て い ま す 。 http://saponet.mynavi.jp/column