本文(和文) - 日本公認会計士協会

公開草案「体制とその有効性についての評議員会のレビュー:IFRS 財団定款の
修正案」への意見
2016 年 9 月 15 日
日本公認会計士協会
日本公認会計士協会は、2016 年 6 月に公表された公開草案「体制とその有効性について
の評議員会のレビュー:IFRS 財団定款の修正案」について、コメントの機会を提供してい
ただいたことに感謝する。
当協会は、国際財務報告基準(IFRS)の設定主体である国際会計基準審議会(IASB)及
び IFRS 財団の活動に対し、IASB の前身である国際会計基準委員会(IASC)の創設以来
約 40 年にわたり深く関与しており、その活動を継続的に支持している。また、IFRS 財団
の定款に掲げられている、高品質で容易に理解でき、かつ執行可能性を持ったグローバル
に受け入れられる単一の財務報告基準を作成するという IFRS 財団の目的を強く支持して
いる。さらに、戦略レビュー報告に記載されているとおり、IFRS 財団の究極の目的は、IASB
が策定した IFRS(
「ピュアな IFRS」
)が修正されることなくアドプションされることであ
ると理解している。
また、IFRS 財団の活動にとってその財務基盤を確立することは重要であるとの認識のも
と、我が国は、GDP 割に従って継続的かつ安定的に IFRS 財団へ資金拠出する仕組を確立
している。また、我が国の成熟した金融資本市場では IFRS の適用が容認されており、IFRS
適用済・適用予定企業が 110 社を超過し、時価総額は約 105 兆円(10,255 億ドル)、時価
総額の 22%程度を占めている(2016 年 6 月末時点)。我が国は、事業環境も文化的にも、
多様性を有するアジア・オセアニア地域にあって、グローバルに受け入れられる単一の財
務報告基準の設定、IFRS 適用拡大促進という IFRS 財団の戦略に寄与したいと考え、従来
から評議員・IASB ボードメンバーを輩出してきた。
意見募集「体制とその有効性についての評議員会のレビュー:レビューの論点」(以下、
意見募集(RFV)という)へのコメントに対応して、定款修正案では、アジア・オセアニ
ア地域からの評議員及び IASB メンバーの人数の削減を提案していないことを歓迎する。ま
た、評議員及び IASB メンバーとして、基準の実務適用上の問題に精通している監査人の選
出が確保されることを希望する。
我々のコメントが、IFRS 財団の定款の改訂に資することを希望する。
1
提案1:評議員会の地理的分布-「定款」第 6 条の変更案
1.評議員を選出する際に考慮する要因
評議員会は、代表を基準の採用又は資金拠出のいずれかに直接結び付けるべきではない
とする見解を取っているものの、基準を採用しておらず、資金拠出に関する原則に従って
財団の資金調達にも貢献していない法域に代表を与えすぎるべきではないことを認識して
いると言及している(ED 第 11 項)
。したがって、RFV へのコメントで我々が提案した考
え方1が実態上反映されるように、以下の点を考慮して評議員が選出されることを希望する。
·
現行の GDP 割を前提とした一定額以上の継続的な資金拠出、金融資本市場の成熟性・
先進性(例えば、時価総額、上場企業数、信頼性の高い財務報告制度の確立・運用状
況)
、IFRS 開発へのコミットメントなどを要因として、該当する法域
·
その他の追加的要因(潜在的な IFRS の適用拡大可能性等)を考慮して、上記の法域以
外の法域
·
グローバルなパブリックインタレストの観点
2.世界全体枠
世界全体枠での評議員の選任数を 2 名から 3 名に増加することに反対しない。当該変更
があるとしても、アジア・オセアニア地域からの選任数は現行定款のままの 6 名が確保さ
れていることに同意する。
評議員会が世界全体枠での選任の基礎に関するガイドラインを策定する(ED 第 15 項)
ことを歓迎する。当該ガイドラインでは以下の点を明確化していただきたい。
·
RFV へのコメントで記載したように各地域・出身の定義が曖昧であるため、定義を明
確化していただきたい。
·
地理的分布の考え方には、各地域の出身を国籍(二重国籍の考え方を含む)で考える
のか、主な活動地域で考えるのかという潜在的論点も存在すると考えるため、この点
を明確にしていただきたい。
3.アメリカ大陸区分への統合
「北米」と「南米」を「アメリカ大陸」区分に統合することに同意する。評議員の選任
をめぐる柔軟性を高めると同時に、世界の資本市場を代表するとともに幅広い国際的基盤
を確保すべきとの中心となる考えや会計基準アドバイザリー・ファーラム(ASAF)の地理
1RFV
へのコメントにおいて、評議員メンバーの安定化と IFRS 財団への資金拠出モデルの強化の観点から、
現行の GDP 割を前提とした一定額以上の継続的な資金拠出、金融資本市場の成熟性・先進性(例えば、時
価総額、上場企業数、信頼性の高い財務報告制度の確立・運用状況)
、IFRS 開発へのコミットメントなど
を優先的要因として、該当する法域からレギュラー(常任)メンバーを選出し、それ以外の法域から、そ
の他の追加的要因(潜在的な IFRS の適用拡大可能性等)を考慮してローテーション・メンバー、グロー
バルなパブリックインタレストの観点から全体枠のメンバーを選出することを提案した。
2
的分布と整合し、メキシコや他の中央アメリカ諸国が北米・南米のいずれに属するかとい
う混乱を解消することになると考える(ED 第 13 項)。
提案2:評議員会の職業的経歴-「定款」第 7 条
現在の評議員 21 名の内、監査人出身者は 1 名のみであり、専門家としての経歴に関する
適切なバランスが提供されていない。監査人は公益への貢献に敏感であり、IASB の独立性
への潜在的リスクであるとの考えには我々は同意していない。
会計士の経験・能力は IFRS 財団にとって貴重なものであることから、
「通常、評議員の
内 2 名は、著名な国際会計事務所のシニア・パートナーでなければならない」との定款の
文言を削除するとしても選任にあたっては適切な配慮がなされることを希望する。特に、
デュー・プロセス監視委員会(DPOC)の範囲は、IASB がデュー・プロセス・ハンドブッ
クに準拠しているかを監視することであり、IASB の活動の主軸の一つが IFRS の首尾一貫
した適用となった現在、IASB の技術上の決定に最終権限を持たないとしても、基準の実務
適用上の問題に精通している監査人の関与は不可欠であると考える。
提案3:評議員の報酬-「定款」第 11 条
特になし
提案4:IFRS 財団の体制と有効性のレビューの焦点及び頻度―「定款」第 17 条
従前、
「戦略レビュー」と称した報告が実施されており、むしろ、
「体制」よりも「戦略」
の方に慣れ親しんでいることから、
「戦略」に変更することは問題ないと考える。
評議員会は、遅くとも前回レビューの完了から 5 年後に開始すべき旨を明示するとの定
款修正案については、全体的な戦略レビューの期間の明確化の観点から同意する。しかし、
範囲を限定したフォローアップレビューは、状況の変化に応じ、5 年にとらわれず実施する
べきと考える。
提案5:審議会の人数-「定款」第 24 条
2014 年 7 月以降、IASB は暫定的に 14 名で運営されていることを考えると、運営上の問
題が存在するのであれば 16 名から 14 名までの削減には強い反対はしない。
しかしながら、
IASB は 14 名で十分に機能してきたと考えており、定款上、さらに 13 名まで減らす必要性
を見出せない。2016 年 6 月末に Mackintosh 副議長が退任したことで現在 13 名となって
いるものの、13 名で十分に機能しているかは即断できず、しばらくの間、観察する必要が
ある。したがって、定款上は 13 名まで減らすのではなく、14 名とするため、定款第 24 条
は「通常は 14 名のメンバーで構成する」とすることを提案する。
なお、RFV で示した理由により、16 名よりも少ないメンバーの審議会の方が効果的であ
3
ると引き続き考えていると記述されているが(ED 第 27 項)
、特に、ASAF に関する記述2は
説得的ではない。ASAF は基準設定における主要な技術的論点に関して法域・地域のインプ
ットを行う諮問機関である一方、審議会メンバーは基準設定における議決権を有するため、
両者の役割は全く異なるため、審議会メンバーを削減する理由として適切とは考えない。
提案6:審議会の職業的経歴-「定款」第 25 条及び第 27 条
IASB のメンバー資格の主たる要件として、専門的能力と直近の関連性のある専門的経験
に修正することに同意する。
市場及び金融規制当局者を含める修正案に関して、三層構造の十分かつ適切な機能で規
制当局者の観点は補完できること、かつ現状でも規制当局出身者はすでに 4 名いることか
ら、当該修正は不要と考える。
IFRS 開発及び IFRS 適用上の課題が増加する状況で、会計実務・監査実務の経験は多大
な貢献が期待でき、両方を備えた監査人出身者は IASB にとって不可欠であるため、監査人
を選出するように確保すべきである。また、監査人出身者は現在 1 名のみであり、最適ミ
ックスが提供されておらず、監査人出身者をさらに増やすべきと考える。
提案7:審議会の地理的分布-「定款」第 26 条
アジア・オセアニア、アメリカ大陸、欧州のそれぞれに 4 名の審議会メンバーという均
等な分布とする提案に同意する。アジア・オセアニア枠を 4 名から 3 名に削減するとの RFV
の提案が撤回されたことを歓迎する。
ただし、上記提案 5 で述べたように、定款上 14 名とすることを前提とすると、定款第 26
条(e)は「全体の地理的バランスの確保を条件に、任意の地域から 1 名」とすることを提案
する。
さらに、RVF へのコメントで述べたものと同様の意見を改めて強調したい。
多様性を確保する観点から、地域枠を設定することは適切であるとしても、単なる地
理的な分散にのみ集点を置くことは望ましくない。定款に示されているとおり、IASB
のメンバー資格の主たる要件は、専門的能力と実務経験3である。メンバー選出にあた
って、個人の属する法域の金融資本市場の成熟性、先進性、会計基準設定の経験、IFRS
開発へのコミットメントなどを優先的に考慮すれば、個人の資質(会計に関する高度
な知識、分析力など)も卓越している可能性が高く、その他、言語(英語を母国語と
するか)
・文化・慣習のバランス、ジェンダーバランスなどを加味することが、各法域
で受け入れやすいより高品質な国際基準設定の実現につながると考える。
RFV 第 90 項では、
「ASAF において地域的代表が拡大され、ASAF メンバーが貴重な法域・地域のイン
プットを提供することが確保されることから、ASAF の設置により審議会メンバー人数の削減する機会を
提供する」と記述されている。
3 本 ED では、
「実務経験」を「直近の関連性のある専門的経験」に変更することを提案している。
2
4
提案8:審議会の再任の任期-「定款」第 31 条
審議会メンバーの再任は原則として最長 5 年までとすべきと考える。再任期間を 5 年に
することにより、概念フレームワークの改訂など、審議に時間を要する重要なプロジェク
トに関して、当初からの審議に参加し、審議経過を熟知している IASB メンバーを投票時に
確保できるのではないかと考えられるからである。
しかしながら、通常は 3 年とすべきと記述すべきものの、評議員会が例外的な状況に応
じて最長 5 年までの再任を行い、かつ議長及び副議長と他のメンバーの間の区別を削除す
る定款修正案は、実質的にすべての審議会メンバーの再任の最長 5 年を容認するものと考
えられるため同意する。
また、遡及適用について同意する。ボードメンバーの経験年数の最適ミックスを達成す
るため、既存の IASB メンバーへも新たな任期の適用が認められるべきと考えるからである。
提案9:審議会の議決要件-「定款」第 36 条
特になし
提案 10:IFRS 諮問会議の会合-「定款」第 46 項
特になし
以 上
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