<研修のテーマについて>

<研修のテーマについて>
・なぜ意思決定支援が重要になるのか?
・成年後見を利用し、どのようにして権利擁護に繋げるのか?
・成年後見の広がりにより、これから地域と福祉の何が変化していくのか?
・コンプライアンスに則った契約とは何か?
以上のことが理解できる研修内容を予定しています。
<福祉契約における問題>
成年後見制度は介護保険が開始された 2000 年にスタートしました。この年を境と
して福祉が“契約”というスタイルに大きく変化したことを受け、自身で契約を結べな
い方を守る意味で整備された大事なシステムなのですが、弁護士や司法書士からは実際
の法律上の仕事において「福祉契約には近づきたくない。」といった言葉がよく聞かれ
ます。何が問題で近づきたくないのでしょうか?
我々障害サービス事業所では、契約書に自らサインできない方の場合、親や兄弟が代
筆して契約書を作成している場合が多いかと思います。20歳未満の方であれば親の
“代理権”が民法で認められますが、20歳を過ぎた方の場合は本人でしか自分の契約
を行うことができません。福祉サービスにはこのような「正式な代理権の無い者が結ん
だ契約」が多く、それは法律的に「成立していない契約である」ということなのです。
もし、この成立していない契約に基づき実施されている福祉サービスにおいて、「事
件や事故が起こったら?」
、
「このような状態を悪用されたら?」
、
「何が起こるかわから
ない。」
、弁護士や司法書士が“福祉契約には近づきたくない”とはこういったことから
なのです。
契約能力の無い方が福祉サービスを使う場合は、成年後見制度により選任された後見
人が、その“代理権・同意権”を行使して福祉サービス利用契約を行うしかないのです。
<申し立てについて>
成年後見制度を利用するためにはまず、“家庭裁判所に申し立て”を行う必要があり
ます。
“申し立て”は 4 親等内の親族であれば誰でも行えますし、4 親等内の親族がい
ない場合には市町村長が親族の代わりに申し立てを行うこともできます。ちなみに“無
縁化”が進む現代では、こちらの方が年々増加しています。
申立書は相当にボリュームがあります。司法書士等の専門家に有料(5~10万円程
度)で作成を依頼することもできます。高齢者であれば地域包括に手伝って貰う事も可
能ですが、今は素人でも時間をかければ裁判所への申立てができます。
<後見人について>
制度開始当初は後見人の9割が親族によるものでしたが、社会の無縁化も進む中、相
続の際に問題が発生しそうなケースの場合、家庭裁判所が“第三者後見人”を選任する
ようになったため、平成24年からは親族より第三者による後見人の数が多くなってい
ます。
第三者後見人としては弁護士・司法書士や社会福祉士の他、市民後見人やNPO団体
などがあります。“不動産等の財産管理”のニーズが高いようであれば弁護士・司法書
士、長期の施設入所や入院など“身上監護”に関するニーズが高いようであれば社会福
祉士と言ったように、本人の状況やニーズに合った後見人を選ぶことが重要です。
<権利擁護としての成年後見>
誰もが認知症や事故等により“契約能力を失う”可能性があり、そのような場合には
速やかに成年後見制度が使えるということが理想なのですが、なかなかそうはいかない
ようです。
第三者後見の場合、本人に資産が無いと報酬が支払えないため、第三者に後見人を“受
任”してもらえない場合があります。このような場合、市町村事業(必須)による「成
年後見利用支援事業」という制度が利用できますが、どの市町村でも決して“潤沢な予
算措置”がなされているわけでなく、これを利用できる人数には限りがあるのが実情で
す。
成年後見人は、本人の代わりに代理権・同意権や取消権を使いながら“権利”を守る
のが使命です。しかしスーパーマンではなく、一個人としては限界があります。ものの
見方の偏りもあるでしょうし、たとえ本人の気持ちに寄り添ったとしても、意思表示が
困難な方の気持ちを全て汲み取り理解することは不可能です。そのためにも支援チーム
を整え、関係者から様々な情報や意見を収集した上で後見活動を進めることが大切です。
意思表示の難しい方や意思決定能力の乏しい方でも、しっかりその権利が擁護される
仕組みを持つ社会は、誰もが個人として尊ばれる“共生社会”と言えます。今後の成年
後見制度の“広がり・深化と運用”が期待されます。