MRI Daily Economic Points

日本:貿易統計(2016年8月)
MRI Daily Economic Points
―円高続くも、8月の輸出数量は小幅なプラスに―
貿易収支
3
(兆円)
September 21, 2016
評価ポイント
輸出入金額の寄与分解
(兆円)
8
※名目季調値
2
7
1
6
0
5
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
-20
30
(前年比、%)
16年8月の結果
輸出価格
輸出数量
輸出金額
(前年比、%)

16年8月の貿易統計は、輸出が前年比▲9.6%と11ヶ月連続で減少。輸入も
同▲17.3%と20ヶ月連続で減少した。貿易収支(季節調整値)は、+4,084億
円と10ヶ月連続の黒字。

8月の輸出金額の内訳をみると、輸出数量は前年比+0.9%と小幅なプラスに
転じた一方、輸出価格が同▲10.4%の低下となった。輸出価格は、10ヶ月連
続のマイナスであり、資源価格の下落は持ち直しつつあるものの、円高の影
響により下落している。

輸入金額も減少が続いている。8月の輸入数量は前年比+3.7%のプラスと
なったものの、前年対比の円高・原油安により引き続き輸入価格が大幅下落。

地域別の輸出数量をみると、米国向けは、設備投資の低調さを背景に一般
機械輸出が不振であり、前年比▲5.6%と減少。一方、EU向けは、輸送用機
械輸出の増加などから、同+10.2%と高い伸びをみせたほか、アジア向けは、
中国向けを中心に、新型スマートフォン向け部品とみられる電気・電子機器
輸出が増加に寄与しており、同+3.3%のプラスとなった。
20
-1
貿易収支(左軸)
輸出(右軸)
輸入(右軸)
-2
4
10
0
輸入価格
輸入数量
輸入金額
-10
3
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
-20
-30
1
2014
2015
3
5
2016
7
9 11 1
2014
3
5
7
9 11 1
2015
3
5
78
2016
資料:財務省「貿易統計」より三菱総合研究所作成
地域別輸出数量寄与分解
(前年比寄与度、%)
15
米国
10
輸出数量(季節調整値)
120 (季節調整済、2010年=100)
基調判断と今後の流れ
EU
中国
ASEAN,NIEs
その他
輸出数量
110
5
100
0
90
-5
80
70
-10
1
3
5
7
2015
9
11
1
3
5
7
2016
資料:財務省「貿易統計」より三菱総合研究所作成
世界計
米国
EU
アジア
12341234123412341234123
2011
2012
2013
2014
2015
2016
注:三菱総合研究所による季節調整値。16年3Qは、
16年7-8月の値。
Copyright (c) Mitsubishi Research Institute, Inc.

足元の輸出は、前年比では改善傾向もみられるものの、依然として横ばい圏
内で推移している。

先行きの輸出は、米国経済の堅調持続や中国の景気刺激策の下支えによ
る減速ペースの緩和もあって、緩やかながらも回復に向かうと見込むが、そ
の回復ペースは非常に緩慢なものになるであろう。円高による輸出環境の悪
化が重石となるほか、好調を維持してきた米国の自動車販売も銀行貸出基
準の厳格化により陰りがみられ始めていることが背景にある。

世界経済は引き続き不確実性の高い状況にある。日米の金融政策の行方、
米国大統領選の動向、英国のEU離脱問題の今後の展開次第では、海外経
済の下振れや一段の円高進行が、輸出の下振れ要因となるリスクを抱える。
担当: 政策・経済研究センター 米良有加
TEL 03-6705-6087