資料3−2 経済・財政一体改革推進委員会 社会保障WG 「経済・財政再生計画」の着実な推進に向けて ~公平な負担や給付の適正化に係る改革項目を中心に~ 株式会社大和総研 主席研究員 (パブリックポリシーリサーチ担当) 鈴木 準 2016年9月15日 Public Policy Research 2016年末までに結論を得るとされている制度改革事項 1.<②>介護療養病床等の効率的なサービス提供体制への転換について、関係審議会等において検討し、2016年末までに結論 2.<③>入院時の光熱水費相当額に係る患者負担の見直しについて、関係審議会等において検討し、2016年末までに結論 3.<⑨>かかりつけ医の普及の観点から、かかりつけ医以外を受診した場合における定額負担を導入することについて、関係審議会等において検討し、 2016年末までに結論 4.<⑰>地域差の分析結果を活用した介護保険事業計画のPDCAサイクルの強化、保険者機能の強化や市町村による給付の適正化に向けた取組への インセンティブ付けなどに係る制度的枠組み等について、関係審議会等において検討し、2016年末までに結論 5.<㉔(ⅰ)>外来上限や高齢者の負担上限額の在り方など、高額療養費制度の見直しについて、世代間・世代内の負担の公平や負担能力に応じた負 担等の観点から、関係審議会等において具体的内容を検討し、2016年末までに結論 6.<㉔(ⅲ)>高額介護サービス費制度の見直しについて、制度改正の施行状況や高額療養費との均衡の観点も踏まえつつ、関係審議会等において具 体的内容を検討し、2016年末までに結論 7.<㉔(ⅳ)>介護保険における利用者負担の在り方について、制度改正の施行状況や医療保険制度との均衡の観点も踏まえつつ、関係審議会等にお いて検討し、2016年末までに結論 8.<㉕(ⅰ)>社会保障改革プログラム法における検討事項である介護納付金の総報酬割導入について、関係審議会等において検討し、2016年末まで に結論 9.<㉖>医療保険において、介護保険における補足給付と同様の金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担を求める仕組みの適用拡大を行うことに ついて、関係審議会等において検討し、2016年末までに結論 10.<㉗(ⅰ)>軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付の在り方について、関係審議会等において検討し、2016年末までに結論 11. <㉗(ⅰ)>軽度者に係る生活援助、福祉用具貸与及び住宅改修に係る負担の在り方について、関係審議会等において検討し、2016年末までに結論 12. <㉗(ⅰ)>軽度者に係る福祉用具貸与及び住宅改修に係る給付の適正化について、地域差の是正の観点も踏まえつつ、関係審議会等において具体 的内容を検討し、2016年末までに結論 13. <㉗(ⅳ)>スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率の在り方について、関係審議会等において検討し、2016年末までに結論 ⇒関係審議会等における検討の結果に基づいて必要な措置を講ずる (法改正を要するものに係る2017年通常国会への法案提出を含む) (注)< >内の丸数字は、経済・財政再生計画改革工程表における社会保障分野における項目番号 (出所)「経済・財政再生アクション・プログラム」(2015年12月24日経済財政諮問会議決定、2015年12月25日閣議報告)より抜粋 Copyright © 2016 Daiwa Institute of Research Ltd. All rights reserved. 1 国民生活の質の向上や可処分所得の拡大が重点課題 家計可処分所得の増減とその要因(年率平均) 現役1世帯当たりでみた可処分所得の状況 (%、%pt) 実収入 その他 社会保険料 直接税 年金・生活保護等 雇用者報酬・個人企業所得等 家計可処分所得 6 5 4 3 直接税 2 0.1 0.3 1.0 1 0 -0.7 -1 -0.2 社会保険料 可処分所得 2000年(万円) 56.3 4.0 4.8 47.4 2015年(万円) 52.6 4.2 5.6 42.7 増減率(%) -6.6 4.7 17.1 -9.9 -0.3 (注)2人以上の勤労者世帯、1か月当たり。 -2 90-94 95-99 00-04 (出所)内閣府「国民経済計算」より大和総研作成 05-09 (出所)総務省「家計調査報告」より大和総研作成 10-14 (年度) 税や保険料を控除する前の家計所得は拡大局面に転じたが、社会保険料の増加が大きいために可処 分所得が増えにくい状況になっている。 高齢化等に伴って社会保険料は今後も増えざるを得ないが、その増え方をどう合理的にコントロールする かによって可処分所得の伸びは大きく異なることになる。 そもそも、「経済・財政再生計画」は、社会保険料や社会保障給付の増加率の抑制だけを目指している のではなく、家計所得そのものを拡大させるための成長戦略の一環である。それは今後も増える社会保 険料の負担能力を高めることにもなる。 Copyright © 2016 Daiwa Institute of Research Ltd. All rights reserved. 2 マクロでみた社会保険料負担の長期推移 家計の負担状況 企業の負担状況 (GDP比、%) (GDP比、%) 9 9 8 8 7 7 6 6 5 5 4 4 3 3 2 社会保険料本人負担分 2 1 家計が支払った所得税等 1 社会保険料雇主負担分 民間企業が支払った法人税等 0 0 70 75 80 85 90 95 00 05 10 70 75 80 85 90 95 05 10 (年度) (年度) (出所)内閣府「国民経済計算」より大和総研作成 00 (出所)内閣府「国民経済計算」より大和総研作成 所得税や法人税などの直接税の負担は時代や税制に応じて変化してきたが、社会保険料はほぼ一貫し て負担増のトレンドが続いている。 年金保険料率には上限が設定されていることを踏まえると、医療保険と介護保険の保険料負担の増加 をどう抑制していくかが課題。 Copyright © 2016 Daiwa Institute of Research Ltd. All rights reserved. 3 家計部門における社会保険料負担の構造 勤労者世帯の税と保険料の負担(年齢層別・金額) (万円/月) 勤労者世帯の税と保険料の負担率(収入十分位) (%) 14 社会保険料 14 12 消費税 12 所得税・住民税 10 10 6.4 8 6 4.1 0 2.0 2.1 1.8 1.4 1.9 2.9 ~29 30~39 4.0 40~49 所得税・住民税 消費税 社会保険料 8 5.2 4 2 6.7 4.5 50~59 6 3.8 2.2 4 2.0 1.6 2 2.1 1.7 60~69 70~ (注)2015年1か月当たり平均。2人以上世帯のうち勤労者世帯。 (出所)総務省「家計調査報告」より大和総研作成 0 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅷ Ⅸ Ⅹ (年間収入階級) (世帯主年齢、歳) (注)世帯の勤め先収入に対する割合。2015年平均。2人以上世帯のうち勤労者世帯。 (出所)総務省「家計調査報告」より大和総研作成 家計の負担の中でも重さが際立っているのは社会保険料。 現役層の中の低所得者層にとって負担感が強いのは、消費税ではなく、社会保険料になっている。 Copyright © 2016 Daiwa Institute of Research Ltd. All rights reserved. 4 生産活動における公共・公的サービスのプレゼンス 国内総生産に占める公共・公的サービスの割合 (%) 18 16 都道府県別にみた政府サービスのウエイトと生産性 (地域全体のマンアワー生産性、千円) 6.0 1990年基準 2000年基準 5.5 2005年基準 y = -0.1161x + 5.5238 R² = 0.6173 14 5.0 12 10 4.5 8 4.0 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 6 (注)内閣府「国民経済計算」より大和総研作成 (暦年) 3.5 3.0 5 10 15 20 25 (政府によるサービス生産が生産全体に占める割合、%) (注)2005年。横軸は名目付加価値ベースで計算した割合。縦軸は2000年価格での実質額。 (出所)経済産業研究所「都道府県別産業生産性データベース」より大和総研作成 生産活動に占める公共・公的サービスの割合は上昇傾向にあり、その生産性を高めて「新たな成長エンジ ン」の一つとすることがますます重要になっている。 政府によるサービス生産のウエイトが高い地域は、地域全体の生産性(≒賃金)が低い傾向にあり、地域差 も大きい。 国民の所得を拡大させ、厚生水準を引き上げるために、公的サービスの産業化と公共サービス・イノベーショ ンの強力な推進が求められる。改革工程表上の制度改革においても、それを促進する観点が求められる。 Copyright © 2016 Daiwa Institute of Research Ltd. All rights reserved. 5
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