ポーラスアスファルト舗装の非破壊式浸透型補修工法

関西道路研究会 舗装調査研究委員会 技術講演会
2016.9.16
ポーラスアスファルト舗装の
非破壊式浸透型補修工法
浸透型補修工法研究会
上坂 憲一
<講演内容>
1.開発の背景
2.浸透型補修工法(散布工・注入工)とは
3.散布工の特徴と施工方法
4.注入工の特徴と施工方法
5.浸透型補修工法の効果
6.浸透型補修工法の適用の流れ
7.おわりに
1
1.開発の背景・・・ポーラス舗装の主な損傷と原因
◆ポーラスアスファルト舗装の顕在化した損傷
①
②
③
④
⑤
ポンピング
亀甲状ひび割れ
局部陥没
ポットホール
表層骨材の飛散
ポーラス表層からの舗装内部への
雨水等の浸透
基層(以深)のはく離破壊が原因
基層(以深)を雨水から保護する必要性
2
1.開発の背景・・・予防保全の重要性
◆ 道路法等の一部を改正する法律が公布
(平成25年9月2日施行)
 道路の適正な管理を図るため、予防保全の観点も
踏まえて道路の点検を行うべきことが明確化
道路の劣化が進行してから修繕を行う「事後対応」
型ではなく、損傷が軽微なうちに修繕などの対策を
講じる「予防保全」型の維持・修繕が重要
3
1.開発の背景・・・ポーラス舗装補修の現状
◆ 現状
 ポーラス舗装に適用可能な予防保全型維持・修繕工法なし
 損傷が顕在化した段階で舗装打換え等の事後対応が実情
「予防保全型補修工法」として、
浸透型補修工法(散布工・注入工)を開発
(NEXCO西日本様と共同開発)
予防保全的に舗装を維持・修繕し、舗装補修サイクルの最適化を図る
4
2.浸透型補修工法とは
2.1 散布工と注入工
散布工
ポーラス舗装平面に
浸透型補修材を散布
注入工
ポーラス舗装ジョイントに
浸透型補修材を注入
切削しない(既設舗装に散布・注入するのみ)=“非破壊式”
5
2.浸透型補修工法とは
2.2 使用材料
◆ 浸透型補修材
カチオン系 ポリマー改質アスファルト乳剤
✓ 低粘度: ポーラス舗装表層やクラックへの
浸透性確保
✓ 改質アスファルト: 遮水層のたわみ追随性や
骨材把握力向上
◆ 分解材
弱アルカリ性 無機塩水溶液
✓ 浸透型補修材の分解促進
6
3.散布工
3.1 特徴
①遮水層の形成
②表層骨材の飛散を抑制
③舗装構造の維持
④スピード施工
浸透型補修材を散布
③骨材被膜
(飛散防止)
①遮水層の
形成
②粒状化した
骨材 の接着
②基層及び
上層路盤の
クラックへの
浸透、強化
(ポーラス舗装)
40mm
(基層)
60mm
(上層路盤)
80mm~
7
3.散布工
3.1 特徴
①遮水層の形成
・ポーラス舗装表層の
排水機能を損なうこと
なく浸透
・基層上面に遮水層を
形成
・雨水による基層以深
の損傷を抑制
浸透型補修材を散布
③骨材被膜
(飛散防止)
①遮水層の
形成
②粒状化した
骨材 の接着
②基層及び
上層路盤の
クラックへの
浸透、強化
(ポーラス舗装)
40mm
(基層)
60mm
(上層路盤)
80mm~
8
3.散布工
3.1 特徴
②表層骨材の飛散を抑制
・ポーラス舗装表層の骨材
に被膜
・骨材と骨材の接着
強度を高めることに
より骨材飛散を抑制
浸透型補修材を散布
③骨材被膜
(飛散防止)
①遮水層の
形成
②粒状化した
骨材 の接着
②基層及び
上層路盤の
クラックへの
浸透、強化
(ポーラス舗装)
40mm
(基層)
60mm
(上層路盤)
80mm~
9
3.散布工
3.1 特徴
③舗装構造の維持
・表層と基層の界面の
はく離部分を再接着し
強化
浸透型補修材を散布
③骨材被膜
(飛散防止)
①遮水層の
形成
・基層にひび割れが
②粒状化した
生じている場合、
骨材 の接着
そのひび割れに浸透し ②基層及び
上層路盤の
再接着強化
クラックへの
浸透、強化
(ポーラス舗装)
40mm
(基層)
60mm
(上層路盤)
80mm~
・舗装構造を延命化
10
3.散布工
3.2 施工方法
◆施工の流れ
① 路面標示等の養生
② キャリブレーション
③ 浸透型補修材の散布
④ 養生材の撤去
⑤ 分解材の散布
⑥ ブラッシング
完了
11
3.散布工
3.2 施工方法
①路面標示等の養生
浸透型補修材が飛散付着しないように養生テープ等で
マスキング
(路面標示、起終点、橋梁ジョイント、補修箇所等)
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3.散布工
3.2 施工方法
②キャリブレーション
浸透型補修材の散布量のキャリブレーション
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3.散布工
3.2 施工方法
③浸透型補修材の散布
標準散布量=2.1ℓ/㎡
14
3.散布工
3.2 施工方法
④養生テープ等の撤去
15
3.散布工
3.2 施工方法
⑤分解材の散布
浸透型補修材が黒変した後、全面に分解材を散布
分解材のスプレー状況
標準散布量=0.5ℓ/㎡
16
3.散布工
3.2 施工方法
⑥ブラッシング
分解材散布後、全面をブラッシング
17
3.散布工
3.2 施工方法
施工完了
18
4. 注入工
4.1 特徴
①舗装構造の維持
センタージョイントに
浸透型補修材を注入
②表層骨材の飛散を抑制
(ポーラス舗装)
40mm
②骨材被膜
(飛散防止)
①基層部及び
上層路盤の
クラックへの
浸透、強化
縦継目
または
ひび割れ
(基層)
60mm
(上層路盤)
80mm~
19
4. 注入工
4.1 特徴
①舗装構造の維持
・表層打継目下の基層
及び上層路盤の縦継目
またはひび割れに浸透・
遮水し雨水の浸入を抑制
・ひび割れの再接着強化
により舗装構造を維持
センタージョイントに
浸透型補修材を注入
(ポーラス舗装)
40mm
②骨材被膜
(飛散防止)
①基層部及び
上層路盤の
クラックへの
浸透、強化
縦継目
または
ひび割れ
(基層)
60mm
(上層路盤)
80mm~
20
4. 注入工
4.1 特徴
②表層骨材の飛散を抑制
センタージョイントに
浸透型補修材を注入
・ポーラス舗装表層の継目部
の骨材に被膜
・骨材と骨材の接着強度を
高めることにより骨材飛散
を抑制
(ポーラス舗装)
40mm
②骨材被膜
(飛散防止)
①基層部及び
上層路盤の
クラックへの
浸透、強化
縦継目
または
ひび割れ
(基層)
60mm
(上層路盤)
80mm~
21
4. 注入工
4.2 施工方法
走行・追越車線境界に位置する表層打継目に
専用の電動式注入機により注入
(注入量は事前に採取したコアにより求める)
22
5.浸透型補修工法の効果
5.1 路面性状調査
散布箇所
無散布箇所
変化なし
ポンピングが発生
散布直後
散 布
5カ月後
23
5.浸透型補修工法の効果
5.1 路面性状調査
散布箇所
散布
19か月後
無散布箇所
局所陥没が発生
変化なし
表・基層の部分打換えを実施
変化なし
全層打換えを実施
散 布
32カ月後
24
5.浸透型補修工法の効果
5.2 遮水層形成の確認
採取コアの観察
基層上面に遮水層が形成
25
5.浸透型補修工法の効果
5.2 遮水層形成の確認
採取コアの加圧透水試験
1.0E-04
散布区間
無散布区間
透水係数 (cm/s)
1.0E-05
1.0E-06
Level 0
散布区間平均
Level 0
無散布区間平均
Level 4 散布区間平均
ポーラス表
層
40mm
基層
10mm(カット)
供試体
1.0E-07
1.0E-08
1.0E-09
0
1
2
破損Level
3
破損Level
Level 0:ひび割れなし
Level 1:上層路盤のみひび割れ or 基層のみひび割れ
Level 2:上層路盤 + 基層ひび割れ
Level 3:上層路盤 + 基層ひび割れ + 基層横にひび割れ
4 Level 4:上層路盤 + 基層ひび割れ + 基層横に破壊
透水係数が小さくなる → 遮水層が形成
26
5.浸透型補修工法の効果
5.3 表層基層の再接着の確認
採取コアの引張試験
表層
4㎝
基層
4㎝
表層基層界面剥がれ無
→ 表層基層が再接着・強化
27
5.浸透型補修工法の効果
5.4 基層以深のひび割れへの浸透・充填の確認
採取コアのひび割れ内部の状況観察
表層
4cm
A-A’断面
a部
基層
6cm
A
A’
上層路盤
8cm
a部拡大
浸透型補修材の充填
基層、上層路盤のひび割れに浸透型補修材が浸透充填
→ 基層以深のひび割れが再接着・強化
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5.浸透型補修工法の効果
5.5 ポーラス表層の骨材飛散抑制の確認
採取コアのカンタブロ試験
90
80
最大81.1
損失率(%)
70
60
50
63.8
最小53.3
最大44.3
40
30
30.5
20
最小17.9
10
0
無散布区間
1
散布区間
2
散布区間:損失率が小さくなる
→ ポーラス表層の骨材飛散抵抗性が改善
29
5.浸透型補修工法の効果
5.6 ポーラス表層の排水性能への影響の確認
現場透水試験
7
400ml流下時間(sec)
6
規定値:6sec/400ml以内(空隙20%)
5
4
3
2
4.1
4.77
1
0
無散布区間
1
散布区間
2
流下時間の増加少 → ポーラスの排水機能維持
30
5.浸透型補修工法の効果
5.7 FWDたわみ測定
Di:アスファルト層の損傷指標
Di=(D0-D90)/t
D0:載荷点からの距離0㎝の位置でのたわみ量(mm)
D90:載荷点からの距離90㎝の位置でのたわみ量(mm)
t:アスファルト層の設計厚(mm)
アスファルト層の損傷指標Diによる評価区分
アスファルト層の
設計厚t(mm)
損傷指標 Di (×10-6)
損傷区分A
(全層損傷)
損傷区分B
(表基層損傷)
損傷区分C
(表層損傷)
180以上220未満
1500以上
800以上1500未満
800未満
220以上260未満
800以上
500以上800未満
500未満
260以上280未満
500以上
200以上500未満
200未満
31
5.浸透型補修工法の効果
5.7 FWDたわみ測定
3000
2000
1000
損傷区分 損傷区分
C
B
0
0
1000
損傷区分
A
2000
散布直後のDi
〇
△
□
◇
―
FWD測点
散布①計測区間
散布②計測区間
無散布①計測区間
無散布②計測区間
Y=X
3000
散布19か月後のDi
散布5か月後のDi
3000
2000
FWD測点
散布①計測区間
散布②計測区間
無散布①計測区間
無散布①計測区間
(部分打換え直後)
◇ 無散布②計測区間
― Y=X
〇
△
□
●
1000
損傷区分 損傷区分
C
B
0
0
1000
損傷区分
A
2000
3000
散布直後のDi
無散布区間:5か月後でDiが上昇(損傷が進行)
散布区間:19か月後もDiの上昇なし
延命効果
32
6.浸透型補修工法の適用の流れ(事前調査)
1.同一舗装構成区間の事前調査
1.同一舗装構成区間の事前調査
(1) 路面性状の目視調査
(2) 施工予定区間の設定①②
2.施工予定区間の事前調査
(1) 表層の透水性調査
(2) 縦継目の調査
本工法(散布工・注入工)の採用
(1)路面性状の目視調査
ポンピング、局部陥没、ひび割れ等
(2)施工予定区間の設定
①ポンピングがある場合
→散布工適用予定区間の設定
②ポンピングはないが骨材飛散が
ある場合
→骨材飛散対策として散布工
適用予定区間の設定
(コアを採取し室内散布試験実施)
33
6.浸透型補修工法の適用の流れ(事前調査)
1.同一舗装構成区間の事前調査
(1) 路面性状の目視調査
(2) 施工予定区間の設定①②
2.施工予定区間の事前調査
(1)表層の透水性調査
平面散布式現場透水試験器による
→透水時間30秒以下で散布工採用
2.施工予定区間の事前調査
(1) 表層の透水性調査
(2) 縦継目の調査
(2)縦継目の調査
コア採取し、基層以深にひび割れ等
がある場合
→注入工採用
本工法(散布工・注入工)の採用
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6.浸透型補修工法の適用の流れ(透水試験)
平面散布式現場透水試験器によるポーラス表層の透水性評価
水バケットスライド(約3s/30㎝)
水バケット
水(189ml)
ポーラス舗装表層
平面散布式
現場透水試験状況
水散布スペース
(30×30㎝)
試験器の水散布機構
水たまり
水散布直後
水浸透終了
浸透不良
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7.おわりに
◆ これまでは・・・
ポーラス舗装に適用できる予防保全型の維持・
修繕工法なし
損傷が顕在化した段階で舗装打ち換え等の事後対応
◆ これからは・・・
損傷が軽微な初期段階で浸透型補修材散布・注入
工を適用
雨水の浸透による急激な損傷の進行を抑制可能
⇒ ポーラス舗装の予防保全に貢献
36
浸透型補修工法研究会 ホームページ
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浸透型補修工法研究会 会員
2016.9.16現在
ご清聴ありがとうございました
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