排湿外壁構造の開発と建築・屋外 照明器具等への応用の可能性 金沢工業大学 環境・建築学部 教授 垂水 弘夫 建築学科 1 従来技術とその問題点 既に実用化されているものに、調湿機能を有する 壁仕上げ材がある。 屋内が湿気っている時に吸湿し、 屋内が乾燥すれば屋内へ放湿する、 のが調湿建材である。 2 「排湿外壁構造」の特徴 これに対し排湿外壁構造は、透湿性に優れる薄板 を外壁に単層で適用することにより、 屋内の水蒸気分圧が屋外よりも高い時に吸湿し、 その水分をそのまま屋外へ放湿する、 と云う特徴を有している。 3 排湿外壁構造の特徴・従来技術との比較 • 屋内外の水蒸気分圧差が0.4∼0.6kPa以上で、 排湿外壁構造の排湿メカニズムが機能する。 • 湿気問題に悩んでいる住宅のリフォームに適 用すれば、除湿機やエアコンの除湿運転用の 電力消費が不要となる。 • 原料は稚内層珪質頁岩や珪藻土など、国産の 自然素材である。 4 想定される用途 • 計画換気システムを有する断熱・気密住宅では、 屋内の乾燥が問題となる場合が多い。 • 一方で大量のストックがある既存の住宅では、 キッチン・トイレ・風呂からの局所換気、十分で ない断熱レベル、開放型石油ストーブやファン ヒーター(年間国内出荷300万台以上)の使用、 寒さによる冬期夜間の換気停止などによって、 屋内の高湿度や結露が問題となっているケース が多々みられる。 5 想定される用途 • 排湿外壁構造は、このような住宅のリフォーム における選択肢の一つに位置付けられる。 • 外壁の断熱強化や、窓のペアガラス化などの 省エネリフォームの際に、同時に行われること を想定している。 • また、ライトアップ用の屋外照明器具などで、 浸入した水分がガラス面で結露している様子を よく目にする。 6 想定される用途 • 点灯時に高温となる照明器具内では、住宅の 屋内と比較して水蒸気分圧が極めて高くなる ことから、排湿外壁構造をタブレット状にして適 用することで、大きな排湿効果が見込まれる。 屋内外の水蒸気圧力差 約1.4kPa (屋内20℃、外気5℃の飽和時) 照明器具内外の圧力差 約11.4kPa (器具内50℃、外気5℃の飽和時) 7 想定される用途 8 9 10 11 金沢工業大学・日射人工気象室と4坪試験棟 排湿外壁構造パネル 屋内相対湿度低下グラフ 吸放湿量 熱電対2外壁表面温度 おんどとり外気側相対湿度 INNOVA実験箱内空気温度 熱電対4内壁表面温度 INNOVA外気側空気温度 おんどとり実験箱内相対湿度 日射なし 30 100 実験箱内相対湿度 実験箱内空気温度 内壁表面温度 20 90 10 80 0 70 吸 湿 放 湿 吸放湿量 外気側相対湿度 -10 60 外気側空気温度 -20 50 10mm -30 40 0:00 1:00 2:00 時間(hour) 3:00 相対湿度(%RH) 吸放湿量(g)、空気温度(℃) 外壁表面温度 22:00 加 湿 前 23:00 加 湿 直 後 23:30 排湿外壁あり 3 0 分 間 経 過 0:00 排湿外壁なし 1 時 間 経 過 85→60%RH 80→60%RH 75→60%RH 80→65%RH 85→70%RH 80→70%RH 85→65%RH 75→60%RH 80→60%RH 85→60%RH 3 0.06 2 建材負荷率 [m /m ] 0.07 0.05 85→65%RH 0.04 80→70%RH 85→70%RH 0.03 80→65%RH 0.02 0.01 1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 4:00 4:30 相対湿度低減に要する時間 5:00 5:30 6:00 金沢工業大学・フィールド試験棟 フィールド試験棟内・排湿外壁パネル 加湿器 プログラム タイマー 電子上皿天秤 Webカメラ 水蒸気発生モニタリングシステム 屋内外水蒸気分圧差と日積算排湿量の期間推移 冬期における1ヶ月あたりの排湿量の推定結果 屋内湿気問題の市場性 排湿外壁パネル設置工事費 • 戸建て住宅:約2700万棟 • (1%の27万棟)×リフォーム単価50万円 =1350億円 (畳2枚程度の施工面積として) 電力節減費 • 冬期の除湿機稼動 27万棟×2kWh/日×100日/シーズン×25円/kWh ×住宅残存期間20年 =270億円 (除湿機稼動(200W×10時間/日)として) 24 実用化に向けた課題 • 現在、排湿外壁構造と換気運転との併用効 果について、理論的な能力比較と、フィールド 試験棟を使用した実証実験を予定している。 25 企業への期待 • 建築・住宅への適用にあたっては、実住宅で の性能把握・アンケート調査等を経る必要が あると思われる。これに協力頂ける企業との 共同研究を希望する。 • 屋外照明器具への適用については、小型タ ブレットの適用効果をこれから実証する必要 があるが、器具自体が小さいことから、希望 社さえあれば保有する2室型人工気象室等 を用いて、速やかに検証可能である。 26 本技術に関する知的財産権 • • • • • • 発明の名称 :排湿外壁構造 発明者 :垂水弘夫 出願人 :金沢工業大学 出願番号 :特願2008-183159 公開番号 :特開2010-19054 登録番号 :特許第4682334号 27 産学連携の経歴 • 2011年 JSTイノベーションジャパン参加 28 お問い合わせ先 金沢工業大学 産学連携局 産学連携東京分室 新川 実、杉田 享子 TEL 03-5777-2243 FAX 03-5777-2226 e-mail [email protected] 29
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