鋼床版舗装の耐久性向上へ 周辺環境にも配慮した 高耐久改質グースアスファルト舗装 eグース 大林道路株式会社 エンジニアリング部 菅野善次郎 1 グースアスファルト舗装とは グースアスファルト混合物を用いた不透水性、たわみ性 等の性能を有する舗装 粗骨材 アスファルトモルタル 主に鋼床版上橋面舗装の基層に適用 鋼床版用改質As(シーロフレックス)を用いた 表層:密粒度As舗装など 砕石マスチック混合物(SMA) 厚さ 40mm ゴム入りアスファルト乳剤(タックコート) 特殊改質材を用いた グースアスファルト舗装 高耐久グースアスファルト 厚さ 40mm 鋼床版 厚さ12mm アスファルト・ゴム系溶剤型接着剤 最近、鋼床版厚さは、疲労損傷防止のため16mmとなっている グースアスファルト混合物は,一般に床版防水機能を有する 舗装として鋼床版の基層に用いる。この場合、防水層を省 略できる。 2 グースアスファルト混合物 グースアスファルト混合物は、ストアスにトリニダッドレイクアスフ ァルト(TLA)を混合した硬質アスファルトと、粗骨材、細骨 材およびフィラーを配合して、アスファルトプラントで混合し、流 し込み施工が可能な作業性(流動性)と安定性が得られ るように、クッカ車の中で高温(220~240℃程度)で攪拌 、混合したもの 施工は、この流動性を利用して、流し込みながら専用フィ ニッシャまたは人力で敷きならして仕上げ、これを自然冷 却して舗装体とするもの 3 グースアスコンの配合例 骨材は、砕石、砂、フィラーを用いるが、フィラーの使用 量が30%程度と通常混合物に比べ非常に多い 配合割合 配合 決定配合 6号砕石 20.2 骨材配合率(%) 7号砕石 粗目砂 細目砂 20.2 16.2 粒度範囲 石粉 7.8 アスファルト(%) ストアス TLA 27.6 6.0 2.0 合計 100 100 通過質量百分率(%) 90 80 70 60 50 40 粒度範囲 30 決定粒度 20 10 0 0.01 0.1 1 10 100 ふるい目(mm) 混合物粒度 平成22年度 今治管内橋面防水他工事の事例 4 グースアスファルト混合物に関する試験方法 室内試験によるグースアスファルト混合物の 製造方法 室内パグミルミキサ 室内縦型クッカ(70kg練り) 5 グースアスファルト混合物に関する試験方法 流動性試験と各供試体作製 リュエル流動性試験 ホイールトラッキング試験供試体 曲げ試験供試体 貫入試験供試体 6 グースアスファルト混合物に関する試験方法 各種混合物試験 – ホイールトラッキング試験 – 貫入量試験 – 曲げ試験 7 従来のグースアスコンの使用材料 使用アスファルトは、一般的にストアス20-40とトリニダッドレイク アスファルト(特殊天然アスファルトTLA)のブレンド品(硬質アスフ ァルト)を用いる。(配合例⇒ストアス20/40:TLA=75:25) TLAの荷姿 TLAの小割り TLAの袋詰め 8 混合物の製造および運搬 グース混合物は、多量の石粉を使用するため、常温の石粉を用 いるとプラントミキサでの混合温度が急激に低下するため、石粉 加熱装置を設ける場合がある。(最近、使用は少ない) TLAはドラム状の固体で納入されるため、機械あるいは人力によ る小割り作業が必要である。 プラントの製造能力は、一般的に通常混合物と比べ30~40%程 度に低下する。 運搬は、クッカと呼ばれる加熱保温 装置および攪拌機を備えた車両に より行う。1台あたりの積み込み量 は、5~7t程度である。 クッカでのクッキング時間は、60~ 120分程度である。 9 クッカ車 従来クッカ車(LPガス加熱式) 新型クッカ車(電気加熱式) 電気加熱式クッカ車の特徴 – 加熱しながらの運搬が可能 – LPガスを積載しない – 温度制御が容易にできる 10 グースアスファルト舗装の施工とプレコートチップ 表層との噛み合わせや耐流動性向上のため プレコートチップを散布圧入することが多い プレコートチップの散布量 – 舗装施工便覧5~15kg/㎡⇒ 6kg/㎡程度が妥当 プレコートチップの配合例 – 5号砕石98%、ストアス1.0%、石粉1.0%程度の事例が多い – 置き場搬入→固まった場合は、ほぐして現場へ搬入 11 新型グースフィニッシャについて 新型グースフィニッシャ(HGP55W) 住友建機㈱製 施工幅員2.4m~5.5m、機械総重量12.1t(フル装備時)、第3次排ガス基準適合 従来機から、改善・付加された機能 – – – – – – スライド式レベルローラー格納 フィーダースイング機能 スクリードリフトシリンダーによる舗装厚制御 自動舗装厚制御に対応 フィーダー逆転機能及び材料片送り機能 自動温度制御を装備したスクリード加熱装置 12 鋼床版舗装の損傷 橋梁等の鋼床版上舗装 – 交通荷重、水の浸入など 様々な要因で損傷 – アスファルト舗装の全層打換え ケースが増加 鋼床版の舗装構成 – – – – アスファルト系の材料が多い 接着層:アスファルト系プライマー 基層:グースアスファルト、SMAなど 表層:密粒度As、排水性Asなど 鋼床版舗装の損傷事例 接着層 表層 基層 (グースアスファルト) 鋼床版 舗装 (6~8cm) 鋼床版の舗装構成例 13 鋼床版舗装破損状況事例1 スコップで容易にはく脱 縦断方向の舗装のズレ 基層がSMA 接着不良、はく離が原因 か? 14 鋼床版舗装破損状況事例2 縦断ひびわれ 縦リブなど橋梁構造上 の原因か? 側方流動 混合物不良? 接着不良? 15 鋼床版舗装破損状況事例3 ブリスタリングによるひびわれ ブリスタリング 水の浸入? 16 平成22年今治管内橋面防水他工事 大島大橋鋼床版舗装調査 測点 表層面の状態 下り +108m 鋼床版面の状態 健全部 グース混合物裏面の状態 錆や滞水等は見うけられない。ま ブリスタリングやひび割れ等の異 小さい気泡が若干見られるが、特 た吊金具跡等の凹凸も無く平滑 常は見うけられない。 に異常は見うけられない。 で良好な鋼床版面を有している。 測点 下り +97m 表層表面の状態 鋼床版面の状態 グース混合物裏面の状態 損傷部 錆や滞水等は見うけられない。健 全部に比べてグース混合物が付 全体的に大きな気泡が多く粗面と 大きなブリスタリングが見られ、ひ 着している箇所が多く見うけられ なっており、また広範囲におこし び割れも発生している。 る。鋼床版の溶接箇所(縦断)が 状になっている箇所が見られる。 ある。 表層面の状態 表層表面の状態 鋼床版面の状態 鋼床版面の状態 溶接位置 グース混合物裏面の状態 グース混合物裏面の状態 損傷部は、グース裏面に異常がある。ただし、グース裏面 に異常があっても表層が損傷していない箇所もある。 17 調査結果まとめ 本線部調査より – 健全部と損傷部の混合物に大きな差はなく、表層は劣化が進 行している。 – 損傷部は、グース裏面に異常が見られた。 未供用部調査より – グース混合物の劣化は認められない。 ブリスタリング発生原因 – グース裏面の異常は、供用中にできたものではなく、施工時 にできたものと考えられる(別調査より)。 – グース裏面に水が浸入し、浸入路が閉塞されることでブリスタ リングが発生したものと考えられる。 18 グースアスファルト混合物と課題 鋼床版舗装の要求性能 防水性、たわみ追従性 表層:改質As混合物(密粒混合物、ポーラス混合物) 基層:グースアスファルト混合物が一般的(信頼性高い) SMAが検討されたが課題多い グースアスファルト混合物の課題 重交通路線→耐流動性向上、ひびわれ抵抗性の向上 調達が困難な材料:ストアス20/40、トリニダッドレイクAs(TLA) 製造方法:TLAの小割、高温な混合物 特殊な施工方法:クッカによる攪拌運搬 特殊なフィニッシャ 19 改質グースアスファルト混合物 「eグース」の開発 従来グースAsの課題解決 表層(改質アスファルト混合物) 厚さ30~40mm 耐久性向上 タックコート 入手容易な材料の使用 特殊添加剤を用いた 改質グースアスファルト混合物 厚さ 35~40mm 接着層 eグースアスコンの 鋼床版 改質グースアスファルトを用いた鋼床版の舗装構成例 使用材料 ストアス20/40やTLAを使用 せず、調達が容易な改質ア スファルトや特殊添加剤を 用いて製造 20 eグースアスコンとは eグースアスコン ストアス20/40とTLAを使用せず、代替えとして、「ポリマー改 質アスファルト」に「特殊添加剤」を添加したバインダを使用 骨材 改質As 特殊添加剤 従来のグースアスコン ストアス20/40とTLAを混合した「硬質アスファルト」を使用 硬質アスファルト 骨材 ストアス 20/40 T L A 21 eグースアスコンの特長 耐久性の向上 良好な混合性を有した特殊添加剤従来のグース混合物に比べ、 耐流動性・曲げ破断ひずみが向上 ポリマー改質アスファルトに特殊添加剤を加えたバインダーを使用すること で曲げ疲労抵抗性が大きく向上 防水性とたわみ追従性 防水性→同等の性能を確保 たわみ追従性→同等以上の性能 アスファルトプラントにおける作業効率の向上 調達しやすい汎用的な改質アスファルトや特殊添加剤の使用 グース混合物の製造が容易(専用ケットルやTLA小割の必要なし) 周辺環境への負荷低減 「硬質アスファルト」を使用しないため、従来グース混合物に比べ、 混合温度を下げることができる。(240℃→220℃程度) 従来のグース混合物独特の臭気が少なくなる。 22 eグースアスコンの性状例 動的安定度(回/mm) リュエル流動性(秒) 20 15 10 5 0 従来グース 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 従来グース eグース 動的安定度 リュエル流動性 14 曲げ破断ひずみ(×10-3 ) 6 5 貫入量(mm) eグース 4 3 2 1 12 10 8 6 4 2 0 0 従来グース 貫入量 eグース 従来グース eグース 破断ひずみ 23 2層構造によるホイールトラッキング試験の比較 動的安定度(回/mm) 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 従来グース+高機能Ⅱ型 通常グース+高機能Ⅱ型 Ds = 1070 回/mm 基層(グース)も流動 eグース+高機能Ⅱ型 eグース+高機能Ⅱ型 < Ds = 3500 回/mm 基層(eグース)は殆ど変形していない 曲げ疲労試験結果 1000 設定ひずみ(μ) 従来グース eグース 800 600 400 200 100 1,000 10,000 100,000 1,000,000 10,000,000 破壊回数 混合物種別 通常グース 改質グース 試験用供試体 供試体寸法(mm) 縦40×横40×長さ400 (300×400×70の供試体からの切り出し, 左右上下4面カット) 載荷周波数 試験条件 試験温度 5Hz 0℃ 設定ひずみ(μ ) 400 600 800 各設定ひずみにおいてeグースのほうが1オーダー大きい破壊 回数を示した。 eグースは、通常グースに比べ、曲げ疲労抵抗性が優れる。 25 臭気測定結果 液面から臭気計 (臭気吸引部) までの高さ6cm 改質グースアスファルト混合物の施工 時の臭気を評価 – 使用するバインダを臭気計で測定 – 試料の液面より高さ6cmの位置で測定 改質グース用バインダの硬質アスファ ルト(従来グースAs)に対する優位性 を確認 臭気計 温度計(アスファルト温度) <参考> 外気の臭気 80程度 26 eグース舗装の適用事例 ・工事名:九島大橋舗装工事 ・工事場所:愛媛県宇和島市 九島大橋 ・発注者:宇和島市役所 ・施工者:大林道路株式会社 ・出荷アスファルトプラント:愛媛アスコン(当社JVプラント) ・施工時期:平成28年3月 ・施工個所:鋼床版上橋面舗装(基層) ・施工数量:施工面積3,380m2 ・施工厚さ t=4cm 27 eグースの適用事例(1) 特殊添加剤 クッカによる攪拌・運搬 アスファルトプラントでの製造 グースフィニッシャによる敷きならし 28 eグースの適用事例(2) プレコートチップ散布 リュエル流動性試験 プレコートチップ圧入 仕上がり表面の例 29 eグースの適用事例(3) 完成写真 30 eグースの施工実績 発注者 工事件名 施工面積 (㎡) 施工厚さ (mm) 東京都墨田区立花5丁目 ~江戸川区平井5丁目 471 40 北海道標津郡標津町 693 40 191 40 9,345 40 2,880 60 三重県四日市市 1,575 35 愛媛県宇和島市 (九島大橋) 3,380 40 施工場所 № 施工年月 1 2008年2月 墨田区役所 中平井橋橋面整備工事 2 2010年3月 北海道開発局 釧路開発建設部 一般国道244号 標津町標津橋補修工事 3 2011年11月 東日本高速道路(株) 東名高速道路東京~大井松田間舗装 東京都町田市 (横浜町田IC Gランプ) 補修工事 4 2013年10月 東日本高速道路(株) 常磐自動車道 谷和原管理事務所 舗装補修工事 5 2014年7月 北海道開発局 札幌開発建設部 一般国道231号 石狩市 花畔大橋舗 北海道石狩市 装補修外一連工事 6 2015年5月 中日本高速道路(株) 新名神高速道路四日市舗装工事 7 2016年3月 宇和島市 九島大橋舗装工事 茨城県つくば市 (圏央道つくば高架橋) 合 計 18,535 31 鋼床版舗装補修工事への適用 橋梁等の鋼床版上舗装補修 • 交通荷重、水の浸入など様々な要因で損傷 • アスファルト舗装の全層打換えケースが増加 • 小規模な補修も増加する IH式舗装撤去工法とeグースを組み合わせ • 騒音・振動を低減し、環境と安全に配慮した補修工法の提案 • 施工の流れ • IH式舗装撤去 → 一種ケレン(ショットブラスト) → 接着剤塗布 → eグース施工 → 表層(改質As混合物)施工 32 IH式舗装撤去工法による舗装版剥ぎ取り 電磁誘導加熱により、鋼床版とアスファルト舗装の界面を 加熱し、接着を解く – アスファルトの剥離・撤去を容易にできる工法 – 鋼床版を傷つけることなく、騒音・振動・粉塵の発生を抑制できる – 安全性や工事環境改善にも寄与できる IH式加熱機による舗装版剥ぎ取り状況 33 鋼床版舗装の新設・補修工法 新設工事 補修工事 提案工法 IH舗装撤去工法 eグース 34 環境と安全に配慮した 高耐久な鋼床版舗装補修工法の提案 IH式舗装撤去工法とeグースを組み合わせる 工法 騒音・振動を低減でき、環境と安全に配慮した 補修工法 さらに高耐久な舗装が構築できる補修工法 35 ご清聴ありがとうございました。
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