第五十回自衛隊高級幹部会同 稲田防衛大臣訓示 本日

第五十回自衛隊高級幹部会同
稲田防衛大臣訓示
本日、最高指揮官である安倍内閣総理大臣の御臨席の下、全
自衛隊の高級幹部が一堂に会し、自衛隊高級幹部会同を開催で
き、大変嬉しく思います。
就任から1ヶ月が経ち、これまで、小松、横須賀、相浦など
の駐屯地や基地、また、海賊対処部隊が活動拠点としているジ
ブチを訪問することができました。現場の隊員の皆さんが、整
斉と任務を遂行する姿を目の当たりにし、大変心強く、誇らし
く感じたところです。改めて、日々黙々と任務に精励して頂い
ている自衛隊員の皆さんに、心から敬意と感謝を表する次第で
す。
今後とも機会を捉えて出来るだけ各地の部隊を訪問し、隊員
の皆さんを激励するとともに、現場の声を聞きたいと考えてお
ります。
現在、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増して
います。北朝鮮は今月9日に5回目となる核実験を行うととも
に、過去に例を見ない頻度で弾道ミサイルを発射するなど、度
重なる軍事的挑発行為を繰り返しており、我が国やアジア太平
洋地域、国際社会の安全に対する重大かつ差し迫った脅威とな
っています。
また、中国は我が国周辺海空域で活動を急速に拡大・活発化
させ、力を背景とした一方的な現状変更の試みを続けています。
本年6月には、中国海軍戦闘艦艇が尖閣諸島の接続水域内へ初
めて入域しました。また、先月上旬には多数の漁船群とともに、
多数の中国公船が尖閣諸島周辺海域で航行し、連日侵入を繰り
返すなど、一方的に現場の緊張を高める行動をとっています。
また、グローバル化と技術革新が急速に進む中、国際テロの
増加など、一国・一地域で生じた混乱が直ちに国際社会全体の
課題へと拡大するリスクが高まっています。
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厳しい現実を直視した上で、今後取り組むべき課題5項目に
ついて述べたいと思います。
第一に、平和安全法制についてです。
我が国の平和と独立、国民の生活と幸せな暮らしを守り抜く
ことは、政府に課せられた最も重要な使命です。
我が国は、先の大戦から70年にわたり、日本国憲法の平和
主義や民主主義の理念のもと、平和国家としての歩みを続けて
きました。この間、自衛隊の創設、日米安全保障条約の締結・
改定など、現実の問題に対し、必要な安全保障政策を講じてき
ました。
本年3月には、安全保障環境の大きな変化を踏まえて、憲法
9条の平和主義の理念、法の支配を貫徹した立憲主義の堅持、
専守防衛などの伝統を守りながら、抑止力を維持強化し、あら
ゆる事態に対し、切れ目のない対応を可能とする平和安全法制
が施行となりました。
先月には、平和安全法制に基づく新たな任務について、必要
な訓練を開始することを発表いたしました。様々な任務の遂行
のための能力を高める努力を不断に行うことにより、あらゆる
事態に適切に対応できるよう、皆さんとともに万全を期してい
きたいと思います。
第二に、統合機動防衛力の構築についてです。
我々が取り組むべき課題として、防衛力、即ちその中核であ
る自衛隊の能力の強化が最も重要であることは言うまでもあ
りません。
我々は、周辺海空域における安全確保や島嶼部に対する攻撃
への対応など、求められる役割を十分果たすことができるよう、
今後とも、防衛力の「質」と「量」を必要かつ十分に確保し、
対処力を高めるため、「統合機動防衛力」の構築を進めていか
ねばなりません。
第三に、日米同盟の強化についてです。
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昨年4月、18年ぶりに日米ガイドラインを策定いたしまし
た。平時から緊急事態まで「切れ目のない」形での協力、グロ
ーバルな平和と安全のための様々な分野における日米協力な
どについて明記しています。
皆さんにおいては、この新たなガイドラインに基づき、日米
同盟の抑止力と対処力を一層強化して頂きたいと思います。
また、日米同盟による抑止力を維持しつつ、地元の基地負担
を軽減することも重要です。
特に現在も、多くの米軍施設・区域が集中している沖縄の負
担軽減のため、できることはすべて行う、目に見える形で実現
するという基本方針の下、北部訓練場の過半の返還のための着
陸帯移設工事や、普天間飛行場の移設・返還などの各種取り組
みを引き続きしっかり行う必要があります。
第四に、安全保障協力の積極的な推進についてです。
米国に限らず、基本的価値や安全保障上の利益を共有する
国々との防衛協力・交流は不可欠です。
私は、これまでオーストラリアやサウジアラビアなどの国防
大臣と会談し、協力の進展に向けて議論してまいりました。今
後とも、諸外国との共同訓練や、防衛装備・技術協力、能力構
築支援などを大きく前に進めて欲しいと思います。
具体的な協力の一環として、今月6日、安倍総理とフィリピ
ンのドゥテルテ大統領との間で、フィリピンの能力向上のため、
海自練習機TC-90の移転に加えて、フィリピン海軍のパイ
ロット教育や整備基盤の能力向上を行うことについて合意し
ました。
海洋安全保障分野での協力は、「開かれ安定した海洋」の秩
序を強化することにもつながり、海洋国家である我が国にとっ
て非常に重要です。
皆さんには、このように大局的・長期的なヴィジョンを持っ
て、安全保障協力を推進していただきたいと思います。
第五に、女性職員の活躍推進についてです。
本日は講師として、村木厚子 前厚生労働事務次官にお越し
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いただき、「女性活躍はなぜ必要か」というタイトルでご講演
いただきます。
防衛力の根幹である質の高い人員の確保は大きな困難に直
面しています。現在、政府を挙げて、少子化対策を講じていま
すが、若年人口の減少は今しばらく続くことが予想されます。
そうした中、今後も、防衛省・自衛隊が国民に対して、その
責任を果たしていくためには、防衛省・自衛隊における女性の
活躍の推進は不可欠です。
女性自衛官の配置制限の見直しなど、女性隊員の活躍推進の
ための取組は着実に進展していますが、今後とも、働き方改革
や、育児介護等と両立して活躍できるための施策を推進したい
と思います。
最後になりますが、幕末の福井藩主、松平春嶽公の言葉を紹
介したいと思います。
「我に才略無く我に奇(き)無し。常に衆言を聴きて宜しきと
ころに従ふ。」
松平春嶽公は、幕末の四賢侯(しけんこう)の一人とも謳わ
れた、傑出した人物でありますが、「私にはすぐれた才能も知
恵もなく、特別な力もない。ただ、常に皆の言葉によく耳を傾
けて、その中で良いと考えられる意見に従うまでだ」と述べて
います。
松平春嶽公は、このように非常に謙虚な姿勢で、後に「五箇
条の御誓文」の起草に参画した由利 公正(ゆり きみまさ)な
ど、日本の将来について優れた識見を持つ者を登用し、激動の
幕末期において幕政や藩政にあたっておりました。
この場にいる皆さんにおかれても、部下の声や現場の部隊か
らの声に十分に耳を傾け、しっかりと判断し、任務の遂行にあ
たって欲しいと思います。
また、私自身も、皆さんの意見を広く聴き、固定観念にとら
われることなく自由かつ活発な議論を通じ、防衛大臣としての
職責を全うしていきたいと思っています。
厳しい安全保障環境に直面する私たち防衛省・自衛隊は、困
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難に直面したとき、明治維新がそうであったように、守るべき
伝統を守りながら創造するという真の改革の精神をもって、職
務にあたる必要があります。
私は、安倍総理の下、皆さんと心を一つにし、国家の存立と
国民の暮らしを守りぬくという決意を新たにしつつ、引き続き
職責を全うすることを深く誓い、私の訓示といたします。
平成28年9月12日
防衛大臣 稲田 朋美
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